JIS B 1587:2019 滑り軸受―固体潤滑剤分散型軸受 | ページ 2

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6 材料

6.1 金属母材

  固体潤滑剤分散型軸受の金属母材の組成は,材料の物理特性,化学特性及び機械特性を担う。化学成分
及び製造方法(焼結方法及び熱処理)によって,各々の特性値に影響を及ぼす。
主な合金系列として,銅系,ニッケル系及び鉄系があり,表2に合金ごとの使用温度を示す。
表2−合金系列及び使用温度
合金系列 使用温度 a)

銅系合金 −200450
ニッケル系合金 −200600
鉄系合金 0700
注a) 成分配合比によって数値は異なる。
銅系合金は,最も一般的に使用するCu-Sn系合金の他に,耐熱性及び強度を向上したCu-Ni-Sn系合金,
Cu-Ni-Fe系合金などがある。
ニッケル系合金は, Ni-Cu-Fe系合金などがあり,耐食性に優れた合金である。
鉄系合金は,銅系合金より高い温度で使用でき,鉄の酸化膜を潤滑に利用したFe-Cu系合金,高い耐熱
性をもつFe-Ni-Cu系合金,ステンレス系合金(Fe-Cr-Ni系合金など)がある。
金属母材には用途に応じて少量の添加物を含有させることがある。
金属母材の表面になじみ性の向上としてコーティングを施すことがある。
固体潤滑剤分散型軸受の金属母材選定のための目安を附属書Aに示す。

6.2 固体潤滑剤

  固体潤滑剤には多くの種類があり,使用環境によってしゅう動特性は左右されるため,使用条件に応じ
て固体潤滑剤を選択する。固体潤滑剤分散型軸受に使用する代表的な固体潤滑剤は,黒鉛及び二硫化モリ
ブデンである。他に低摩擦の固体潤滑剤として,二硫化タングステン,窒化ほう素,及びポリテトラフル
オロエチレン(以下,PTFEという。)を特定環境下で使用する。これらの固体潤滑剤について,使用温度
及び使用環境を表3に示す。固体潤滑剤の粒径及び種類は,使用条件に応じて選択する。
表3−固体潤滑剤の種類及び特性
種類 使用温度 使用環境
℃ 大気中 水中 真空中
黒鉛 −120600 良好 適用可 不適
二硫化モリブデン −100400 良好 不適 良好
二硫化タングステン −180600 良好 不適 良好
窒化ほう素a) 900 良好 − −
PTFE −260260 良好 良好 良好
注a) 窒化ほう素は,高温酸化雰囲気で潤滑性能を発揮する。

6.3 金属母材と固体潤滑剤との組合せ

  軸受の組織は,金属母材と固体潤滑剤の種類,粒度及び含有量との組合せ,更に製造方法を選択するこ
とによって,広い範囲の用途に対応することが可能である。金属母材と固体潤滑剤とをどのように組み合

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わせるかが重要である。
代表的な金属母材と固体潤滑剤との組合せ例を,その用途とともに表4に示す。また,固体潤滑剤分散
型軸受の適用例を,附属書Bに示す。
表4−代表的な金属母材と固体潤滑剤との組合せ例及び用途
合金系列 金属母材 a) 固体潤滑剤 a) 用途
銅系合金 Cu-Sn系 黒鉛 一般用 (350 ℃)
二硫化モリブデン
黒鉛及び 大気中,真空中用 (350 ℃)
二硫化モリブデン
Cu-Ni-Sn系 黒鉛 耐摩耗用 (350 ℃)
Cu-Ni-Fe系 黒鉛 耐食用 (450 ℃)
ニッケル系 Ni-Cu-Fe系 黒鉛 耐食用 (550 ℃)
合金 Ni系 黒鉛 優れた耐食用 (600 ℃)
鉄系合金 Fe-Cu系 黒鉛及び 高温(大気中)用 (600 ℃)
二硫化モリブデン
Fe-Ni-Cu系 黒鉛及び/又は 高温,耐食用 (700 ℃)
窒化ほう素
注a) 含油処理を行うことがある。含油効果が必要な場合は,120 ℃以下の使用条件に限定する。

7 寸法

7.1 一般事項

  軸受材料,用途及び使用条件の範囲の多くの組合せがあるため,軸受構成部品(ハウジング,ブシュ及
び軸)に対する許容誤差は画一的に規定することはできない。最適なはめあい及び隙間は,使用環境によ
って異なるため,受渡当事者間の協定による。
注記 軸受の寸法を決定する際に,ハウジングのはめあいと軸との隙間は,考慮すべき重要な要素と
なる。

7.2 基本寸法

7.2.1 シームレスブシュ

  図5は,シームレスブシュの例である。内径及び外径の公称寸法,並びにブシュ幅は,表5による。表
5に示していない軸受寸法は,受渡当事者間の協定による。
注記 ブシュは,強度を維持するのに十分な厚さをもつ必要がある。
xは表面粗さで,表7による。
図5−シームレスブシュ

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表5−シームレスブシュの公称寸法
単位 mm
ブシュ内径 ブシュ外径 ブシュ幅 a)
Di Do B
8 12 8 10 12 − − − − −
10 14 8 10 12 15 − − − −
12 18 8 10 12 15 − − − −
13 19 10 12 15 20 − − − −
14 20 10 12 15 20 − − − −
15 21 10 12 15 20 − − − −
16 22 10 12 15 20 25 − − −
18 24 10 12 15 20 25 − − −
20 28 10 12 15 20 25 30 − −
20 30 10 12 15 20 25 30 − −
22 32 12 15 20 25 30 − − −
25 33 12 15 20 25 30 35 − −
25 35 12 15 20 25 30 35 − −
28 38 15 20 25 30 35 40 − −
30 38 15 20 25 30 35 40 − −
30 40 15 20 25 30 35 40 − −
32 42 15 20 25 30 35 40 − −
35 45 20 25 30 35 40 50 − −
40 50 20 25 30 35 40 50 60 −
40 55 20 25 30 35 40 50 60 −
45 55 25 30 35 40 50 60 70 −
45 60 25 30 35 40 50 60 70 −
50 60 30 35 40 50 60 70 80 −
50 65 30 35 40 50 60 70 80 −
55 70 30 35 40 50 60 70 80 −
60 75 30 35 40 50 60 70 80 −
65 80 35 40 50 60 70 80 − −
70 85 35 40 50 60 70 80 100 −
70 90 35 40 50 60 70 80 100 −
75 90 40 50 60 70 80 100 − −
75 95 40 50 60 70 80 100 − −
80 100 40 50 60 70 80 100 120 −
90 110 50 60 70 80 90 100 120 −
100 120 50 60 70 80 90 100 120 140
注a) 複数のブシュをつなげて,幅寸法Bを確保してもよい。

7.2.2 巻きブシュ

  裏金を備えた巻きブシュの推奨寸法は,JIS B 1584-1による。
裏金を備えた大口径の巻きブシュは,高剛性を得るために,内径が75 mm以上の場合は肉厚3 mm,内
径が250 mm以上の場合は肉厚3 mm又は5 mmを使用してもよい。

7.3 公差クラス及び許容差

7.3.1 一般事項

  表6に,常温で使用する場合の推奨公差クラス及び許容差を示す。

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表6−公差クラス及び許容差
ブシュの内径 ブシュの外径 ハウジング穴径 軸径
C7 a) r6 H7 h7 a)
D6E6 b) r6 H7 g6 b)
注a) 一般的な場合
b) 高精度(クリアランス小)

7.3.2 軸受のはめあい

  一般に,しまりばめとすることが望ましい。ブシュとハウジングとが異なる材料の場合,ブシュとハウ
ジングとの間の熱膨張差によって,広範囲の使用温度では適切なしめしろを維持することが困難となる場
合がある。さらに,高温運転は応力緩和を引き起こす可能性があり,また,高い交番荷重運転はしめしろ
を減少させる又は消滅させる可能性があるため,このような運転条件下では,ねじ又はダウエルピンを使
用した機械的保持を適用するのが望ましい。

7.3.3 軸受隙間

  ブシュと軸との隙間についての注意事項は,次による。
a) ハウジング内径とブシュ外径とのしめしろによって,ブシュ内径が収縮する。
b) ブシュが広い温度範囲で使われる場合,熱膨張又は収縮を考慮する必要がある。高温用途には,ブシ
ュと軸との隙間を大きくすることを推奨する。

8 組立

  固体潤滑剤分散型軸受は,多くは圧入で取り付け,マンドレル及びプレス機を使用する。
しめしろが大きい軸受の場合,軸受の外側及びハウジングの内側を面取りすることによって,圧入作業
を容易にすることができる。
シームレスブシュは,液体窒素又はドライアイス(CO2)を使用し冷却することによって,取付けを容
易にすることができる。
この方法は,軸受の変形を少なくし,ハウジング形状に精度よく合うが,金属材料によっては不適切で
あるため,組立方法は受渡当事者間の協定による。

9 表面仕上げ

  ブシュの表面粗さは,表7による。
表7−ブシュの表面仕上げ
単位 μm
表面 図5中の表面粗さ a)
内面 Ra 1.6
外面 Ra 3.2
注a) 表面粗さは,固体潤滑剤の部分を除いた金属母材について示す。

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附属書A
(参考)
固体潤滑剤分散型軸受の金属母材の選定の目安
適正な金属母材の選定の手順を,図A.1のフローチャートに示す。
金属母材の選定手順
使用温度 はい
450 ℃以下
いいえ なし
化学反応
あり
なし
腐食問題
あり
ニッケル系合金 鉄系合金 銅系合金
・Ni-Cu-Fe系 ・Fe-Cu系 ・Cu-Sn系
詳細な使用条件
・Ni系 ・Fe-Ni-Cu系 ・Cu-Ni-Sn系
によって選定
・Cu-Ni-Fe系
図A.1−固体潤滑剤分散型軸受の金属母材の選定手順

――――― [JIS B 1587 pdf 10] ―――――

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