JIS B 7763-2:2009 機械振動―神経損傷の評価のための振動感覚いき(閾)値―第2部:指先における測定値の分析方法 | ページ 2

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B 7763-2 : 2009 (ISO 13091-2 : 2003)
3.1.19
心理測定関数 (psychometric function)
被験者によって刺激が検出されたことを示す,正の反応の比率又は百分率と刺激の大きさの物理量との
関係を表す関数(JIS B 7763-1 3.1.19参照)。
3.1.20
感受性の指標 (sensibility index)
ある周波数において測定したいき(閾)値と150 dBの初期値との差をA,同年齢の健常者に対して測定
したいき(閾)値と150 dBの初期値との差をBとしたとき,A/Bで定義する比の値をそれぞれ求めて,す
べての測定周波数又は等価周波数について合算した値。
注記1 鋭敏性の減少に付随して振動感覚いき(閾)値が上昇した場合,感受性の指標が健常者の値
である1よりも小さくなる。
注記2 感受性の指標は,次の式で示すことができる。
fN
T fjobs
T fj base
TSEI
j 1T fj T fj
healthy base
3.1.21
タクトグラム (tactogram)
周波数の関数として示したいき(閾)値移動の図による表示。
3.1.22
プローブ (probe)
運動の刺激及び振動の刺激を皮膚表面に伝える手段(JIS B 7763-1 3.1.12参照)。
3.1.23
周辺支持部 (surround)
指先が置く固定された堅く平たん(坦)な表面で,皮膚表面に接するプローブが通る穴をもち,これに
よって刺激部位の周辺を支持する部分(JIS B 7763-1 3.1.13参照)。

3.2 略語及び量記号

  この規格で用いる略語は,次による。
FA I タイプI 機械受容器の速い応答特性
FA II タイプII 機械受容器の速い応答特性
SA I タイプI 機械受容器の遅い応答特性
VPT 振動感覚いき(閾)値
この規格で用いる量記号は,次による。
N 被験者の数
NF 指の数
p 確率
s(fj) 周波数f jにおけるT(fj) refのガウス分布パラメータ
TSEI 感受性の指標
T(fj) base 周波数f jにおける振動感覚いき(閾)値の初期値
T(fj) i 周波数f jにおけるi番目の振動感覚いき(閾)値
T(fj) M 周波数f jにおける振動感覚いき(閾)値の平均

――――― [JIS B 7763-2 pdf 6] ―――――

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B 7763-2 : 2009 (ISO 13091-2 : 2003)
T(fj) obs 周波数f jで測定した振動感覚いき(閾)値
T(fj) ref 周波数f jにおける振動感覚いき(閾)値の基準値
T(fj) ref,M周波数f jにおける振動感覚いき(閾)値の基準値の平均
V 測定−再測定間の変動
ΔT(fj) ref周波数fjにおける基準いき(閾)値移動
ΔT (fj) ref, i 周波数fjにおけるi番目の基準いき(閾)値移動
ΔT (fj) ref,M 周波数fjにおける基準いき(閾)値移動の平均
ΔT (fj) rel
周波数fjにおける相対的いき(閾)値移動
ΔT (fj) rel,i 周波数fjにおけるi番目の相対的いき(閾)値移動
ΔT (fj) rel, M 周波数fjにおける相対的いき(閾)値移動の平均
注記 大文字の記号Tは,デシベル(10−6 m/s2基準)で表したいき(閾)値を示す。等価いき(閾)
値をメートル毎秒毎秒で表す場合には小文字の記号tで示す。
ここに, n : 上昇法及び下降法によるいき(閾)値の対の番号

4 振動感覚いき(閾)値の取扱い

4.1 一般

  JIS B 7763-1の規定によって測定した振動感覚いき(閾)値の報告,分析方法に関して必要な情報は,
JIS B 7763-1の箇条7による。通常,振動感覚いき(閾)値は,被験者一人について1回測定する。分析
を容易にするため,別の機会に測定を繰り返し行う予定のある場合(例えば,別の日)には,振動感覚い
き(閾)値の予想可能な変動を把握しておく必要がある。
この規格では,二つの状況を念頭に置く。被験者の振動感覚いき(閾)値が,同じ指先を使って,数日
の間に繰り返し測定した場合,測定値の平均値(デシベルで表示)に適用する測定−再測定間の変動は,
測定値から求められる標準偏差(デシベルで表示)とする。実施した測定から意味をもつ標準偏差を求め
ることが不可能である場合[例えば,被験者の振動感覚いき(閾)値が1回しか測定されない場合]には,
振動感覚いき(閾)値の測定−再測定間の変動は,測定に使用した方法に基づく推定値とする。この場合
は,健常者において同じ方法で繰り返し行われた測定に基づいて推定する。

4.2 繰返し測定での平均値

  ある周波数又は等価周波数fjにおいて,JIS B 7763-1の規定によって,指先で繰り返し振動感覚いき(閾)
値の測定を行った場合,振動感覚いき(閾)値の平均値は,測定した振動感覚いき(閾)値(デシベルで
表示,10−6 m/s2基準)の平均として,式 (1) によって計算する。
n
1
T fj M
T fj (1)
ni 1 i
注記 式 (1) で測定したデシベルで表した振動感覚いき(閾)値(10−6 m/s2基準)の測定値の算術平
均から求めた平均値は,メートル毎秒毎秒で表した振動感覚いき(閾)値の測定値の幾何平均
値と等価である。

4.3 いき(閾)値の測定-再測定間の変動

  振動感覚いき(閾)値を一人の被験者の同じ指先で,別の機会(例えば,別の日など)に繰り返し測定
する場合は,個人内の測定−再測定間の変動を,その被験者について計算する。デシベルで表した測定−
再測定間の変動Vは,繰返し測定で求めたデシベルで表した振動感覚いき(閾)値の平均値から標準偏差
として表す。ある刺激周波数又は等価周波数fjにおいて,繰返し測定で得られた振動感覚いき(閾)値T(fj) i

――――― [JIS B 7763-2 pdf 7] ―――――

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がデシベル(10−6 m/s2基準)で表示される場合には,デシベルで表した測定−再測定間の変動Vは式 (2) に
よって計算する。
12
n
1 2
V T fj i T fjM

(pdf 一覧ページ番号 )

                             n  1i 1
ある被験者について意味をもつ標準偏差を算出することが不可能な場合[例えば,被験者の振動感覚い
き(閾)値について1回しか測定されない場合]には,観測された振動感覚いき(閾)値の測定−再測定
間の変動は,使用した測定方法に対して推定する。この場合,同じ測定方法を用いてある一人の健常者の
指先で測定した振動感覚いき(閾)値の標準偏差から推定する。その標準偏差は,少なくとも10回の別々
の機会(例えば,別々の10日間)に行った振動感覚いき(閾)値の測定に基づくものとする。この測定は,
JIS B 7763-1の規定によって行われ,デシベルで表した標準偏差は,式 (2) を用い,デシベルで表した振
動感覚いき(閾)値の測定値から算出する。ある周波数又は等価周波数における,3人以上の健常者から
記録した標準偏差の算術平均を,その周波数又は等価周波数における,個人内の測定−再測定間の変動の
推定値として用いる。
女性の場合は,月経周期中,通常のホルモンの変化によって,FA II受容器で最大20 dBのいき(閾)値
の変化が起こる。女性のFA IIのいき(閾)値に関する測定−再測定間の変動を推定する場合,すなわち,
100 Hz,125 Hz及び160 Hzの測定周波数での振動感覚いき(閾)値については,月経周期によってこのよ
うな傾向を示すことを考慮しなければならない。そのいき(閾)値の変化は,排卵前後の数日間に生じる。

4.4 問題となる要因の取扱い

  ある状況では,測定者が,いき(閾)値の測定中に解決できない問題となる要因が発生したと考えるか
もしれない。また,問題となる要因は,JIS B 7763-1で説明しているように,異常のある皮膚面で測定を
行うことで発生することもある。このような状況では,その問題となる要因を説明する情報がある場合に
限って,この規格による方法及び手順を用いた振動感覚いき(閾)値の分析が可能となる。
より信頼性の高い振動感覚いき(閾)値を得ることができると考えられる場合には,JIS B 7763-1の規
定によって2回目の測定を行う。2回目の測定で得られた振動感覚いき(閾)値の測定値を,この規格の
規定に従った分析を用いる。
注記 単一の測定部位で,二つ以上の周波数又は等価周波数について,同一の機械受容器群を介して
振動感覚いき(閾)値を測定した場合には,問題となる要因の存在を確認するため,5.6によっ
て算出したいき(閾)値移動との一致度を検証することで,問題となる要因の存在を確認して
もよい。

4.5 測定-再測定間の疑わしい変動の増加の取扱い

  ある状況では,用いる測定方法に対して適用する測定−再測定間の変動が,ある被験者について適切で
はないと測定者が判断することがある。その判断は,JIS B 7763-1の6.3による上昇法及び下降法でのいき
(閾)値の測定における一貫性の欠如,又はその他の情報に基づいてなされることもある。
このような状況では,その被験者における変動が確定されている場合に限り,この規格による方法及び
手順を用いた振動感覚いき(閾)値の分析が可能となる。個々の被験者における測定−再測定間の変動は,
その被験者で4.3による繰り返しいき(閾)値の測定を行うことで確定する。

――――― [JIS B 7763-2 pdf 8] ―――――

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5 いき(閾)値移動の算出

5.1 一般

  いき(閾)値の測定値の初期値又は基準値からの変化を算出することによって,振動感覚いき(閾)値
の分析が容易になる。いき(閾)値移動は,各周波数又は等価周波数で箇条4によって振動感覚いき(閾)
値を求めた指先について算出する。

5.2 相対的いき(閾)値移動

  相対的いき(閾)値移動は,デシベル(10−6 m/s2基準)で表した振動感覚いき(閾)値の二つの測定値
間の差として算出するか,又はメートル毎秒毎秒で表した振動感覚いき(閾)値の二つの測定値の比とし
て算出する。この場合,一方は振動感覚いき(閾)値の測定値であり,他方は振動感覚いき(閾)値の初
期値となる。その二つの振動感覚いき(閾)値は,一人の被験者について同じ指先で,同じ測定方法及び
同じ測定周波数又は等価周波数で求める。デシベルで表したj番目の周波数fjにおける相対的いき(閾)
値移動ΔT(fj) relは,各測定周波数又は等価周波数において式 (3) によって算出する。
ΔT fj
rel
T fj −T fj
obs
戀愀 (3)
式 (3) と等価な,メートル毎秒毎秒で表したいき(閾)値からの相対的いき(閾)値移動の算出式は,
式 (4) によって算出する。
ΔT fj
rel
20 log10 t fj
obs
t fjbase

(pdf 一覧ページ番号 )

    注記 相対的いき(閾)値移動を算出することで,感覚の変化パターンによって個人差の識別が容易
になる。相対的いき(閾)値移動を算出することは,既知の病理学的過程又は回復過程の個々
について,長期間追跡するような場合に有益である。このような場合では,振動感覚いき(閾)
値の初期値は,通常,その被験者について最初に記録した振動感覚いき(閾)値である。

5.3 基準いき(閾)値移動

  基準いき(閾)値移動は,デシベル(10−6m/s2基準)で表した振動感覚いき(閾)値の測定値とデシベ
ルで表した振動感覚いき(閾)値の基準値との差として算出するか,又は両者がメートル毎秒毎秒で表さ
れる場合はその二つの振動感覚いき(閾)値の比として算出する。デシベルで表したj番目の周波数fjに
おける基準いき(閾)値移動ΔT(fj) refは,各測定周波数又は等価周波数において式 (5) によって算出する。
ΔT fj
ref
T fjobs
T fj 攀

(pdf 一覧ページ番号 )

  式 (5) と等価な,メートル毎秒毎秒で表したいき(閾)値からのいき(閾)値移動の算出式は,式 (6) に
よって算出する。
ΔT fj
ref
20 log10 t fjt fj
obs ref

(pdf 一覧ページ番号 )

    注記 基準いき(閾)値移動を算出することで,機械受容器及び神経機能の変化として理解できる感
覚異常のパターンの識別が容易となる。基準いき(閾)値移動と症状の訴えとの間に関連があ
ることが認められるなら,基準いき(閾)値移動は,上肢の神経障害に関連することがある。

5.4 いき(閾)値移動の平均

  ある刺激周波数又は等価周波数でいき(閾)値移動を,変化することが予期できない状況下で指先で繰
り返し測定するような場合には,相対的いき(閾)値移動又は基準のいき(閾)値移動の算術平均値は,
デシベルで表したいき(閾)値移動から算出する。周波数fjにおける,デシベルで表した相対的いき(閾)
値移動の平均は,式 (7) によって算出する。

――――― [JIS B 7763-2 pdf 9] ―――――

8
B 7763-2 : 2009 (ISO 13091-2 : 2003)
n
1
ΔT fj
rel,M
ΔT fj (7)
rel,i
ni 1
周波数fjにおける,デシベルで表した基準いき(閾)値移動の平均は,式 (8) によって算出する。
n
1
ΔT fj
ref,M
ΔT fj (8)
ref,i
ni 1

5.5 タクトグラム

  タクトグラムは,図1のように,横軸を周波数又は等価周波数の対数とし,縦軸をデシベルで表したい
き(閾)値移動として示す。いき(閾)値移動の範囲は,−20 dB60 dBとしてもよい。周波数は,機械
受容器群によって伝えられる周波数の範囲をとる。
注記1 JIS B 7763-1の規定によって測定した振動感覚いき(閾)値が,SA I,FA I,FA II機械受容器
群に関与する周波数の範囲は,JIS B 7763-1の表3に示されている。
タクトグラムは,個々の指,手,被験者又は被験者の集団について作成してもよいが,該当する相対的
又は基準のいき(閾)値移動を縦軸に図示する。個々の指,手,被験者又は被験者の集団について,異な
る周波数又は等価周波数における該当する値を線で結んでもよい。
タクトグラムがある被験者の片方又は両方の手についてのものである場合,個々の指についてのいき
(閾)値移動は,異なる記号で識別する。右手の指のいき(閾)値移動は丸で,左手の指のいき(閾)値
移動は四角で表示するのが望ましい。
注記2 指の番号は,次のとおり,それぞれの手に対応する記号内に番号を示すか又は記号の色を変
えることによって,容易に識別できるようにしてもよい。
− 指1 人指し指
− 指2 中指
− 指3 薬指
− 指4 小指
− 指5 親指

――――― [JIS B 7763-2 pdf 10] ―――――

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JIS B 7763-2:2009の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 13091-2:2003(IDT)

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