JIS B 7763-2:2009 機械振動―神経損傷の評価のための振動感覚いき(閾)値―第2部:指先における測定値の分析方法 | ページ 3

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B 7763-2 : 2009 (ISO 13091-2 : 2003)
図1−タクトグラム
注記 対応国際規格では,座標と目盛だけを表示した図となっているが,この規格では,理解を助け
るために図B.2のデータも含めて表示した。

5.6 いき(閾)値移動の一致度

  一つの測定点において,ある機械受容器群によって伝えられる複数の周波数又は等価周波数(JIS B
7763-1の規定による。)で振動感覚いき(閾)値を測定した場合には,相対的いき(閾)値移動又は基準
いき(閾)値移動の一致度を検査することができる。その一致度とは,一つの機械受容器群によって伝え
られる複数の周波数又は等価周波数(JIS B 7763-1の表3参照)についての相対的いき(閾)値移動又は
基準いき(閾)値移動のデシベル値の差として表す。一つの機械受容器群でだけ,振動感覚いき(閾)値
の値が6.5による健常者の振動感覚いき(閾)値の期待値の範囲から外れるような場合には,一致度が低
下することもある。このような状況下では,この受容器群によって,通常,伝えられる幾つかの周波数に
おけるいき(閾)値が,健常者での期待値の範囲内において,別の振動感覚いき(閾)値の受容器群によ
って伝えられる可能性がある。
注記 JIS B 7763-1の規定によって測定した,機械受容器別のいき(閾)値移動間での一致度を算出
することは,被験者の測定における問題となる要因を同定することを容易にする。問題となる
要因のない同一の受容器群を介するいき(閾)値移動は等しくなる。

5.7 機械受容器群のいき(閾)値移動の平均

  一つの測定点において,ある機械受容器群によって伝えられる複数の周波数又は等価周波数(JIS B
7763-1の規定による。)で振動感覚いき(閾)値を測定した場合には,相対的いき(閾)値移動又は基準
いき(閾)値移動を,機械受容器群のいき(閾)値移動の平均として表してもよい。機械受容器群のいき
(閾)値移動の平均は,振動感覚いき(閾)値が単一の機械受容器群によって伝えられるすべての周波数
又は等価周波数の相対的いき(閾)値移動,又は基準いき(閾)値移動のデシベル値を算術平均した値で
ある。適用可能な測定周波数は,JIS B 7763-1の表3による。機械受容器群のいき(閾)値移動の平均は,
デシベルで表す。

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機械受容器群における相対的いき(閾)値移動の平均ΔT(fj) rel,Mは,式 (9) によって算出する。
m
1
ΔT fj
rel,M
ΔT fj (9)
rel, j
mj 1
ここで,同じ受容器群によって伝えられるいき(閾)値を,m個の周波数又は等価周波数について加算
する。
任意の機械受容器群における平均の基準いき(閾)値移動ΔT(fj) ref,Mは,式 (10) によって算出する。
m
1
ΔT fj
ref, M
ΔT fj (10)
ref, j
mj 1
ここで,同じ受容器群によって伝えられるいき(閾)値を,m個の周波数又は等価周波数についてを加
算する。
この手順は,振動感覚いき(閾)値の値がその測定点での一つの機械受容器群についてだけ6.5で定義
した健常者の振動感覚いき(閾)値の期待値の範囲を外れるような場合には,注意深く適用することが望
ましい。このような状況下では,この受容器群によって,通常,伝えられる幾つかの周波数におけるいき
(閾)値が,健常者での期待値の範囲内において,別の振動感覚いき(閾)値の受容器群によって伝えら
れる可能性がある。
注記 機械受容器別に平均いき(閾)値移動を求めることで,機械受容器のわずかな変化,すなわち
感覚の鋭敏さのわずかな変化の識別が容易になる。

6 振動感覚いき(閾)値及び いき(閾)値移動の分析方法

6.1 一般

  指先での振動感覚いき(閾)値及びいき(閾)値移動の値は,検査対象とした上肢における指,手及び
腕における末しょう(梢)感覚神経機能に関する情報を提供する。いき(閾)値変化の大きさは,6.26.5
に示す一つ又は複数の方法のどれかで報告してもよい。

6.2 振動感覚いき(閾)値の測定誤差及び統計学的有意性

  指先における振動感覚いき(閾)値がJIS B 7763-1の規定によって繰り返し測定する場合,デシベルで
表した振動感覚いき(閾)値の平均に適用する測定誤差は,デシベルで表した振動感覚いき(閾)値の測
定値から式 (2) によって算出した標準偏差である。
意味をもつ標準偏差を算出することが困難である場合[例えば,指先における振動感覚いき(閾)値が
1回だけしか測定されない場合など]では,振動感覚いき(閾)値の測定値に適用できると仮定する測定
誤差は,4.3による測定方法で推測できる測定−再測定間の変動とする。これは,測定した振動感覚いき(閾)
値に適用できる標準偏差としてデシベルで表され,統計解析に使用することが望ましい。

6.3 相対的いき(閾)値移動の測定誤差及び統計学的有意性

  指先における相対的いき(閾)値移動を繰り返し測定する場合,相対的いき(閾)値移動の平均に適用
する測定誤差は,デシベルで表した相対的いき(閾)値移動の測定値から計算できる,デシベル表示の標
準偏差である。
指先における相対的いき(閾)値移動が1回,すなわち二つの振動感覚いき(閾)値からだけしか得ら
れない場合,測定した相対的いき(閾)値移動に適用する測定誤差は,4.3による測定方法で推測できる測
定−再測定間の変動の1.414倍とする。これは,測定した相対的いき(閾)値移動に適用できる標準偏差
としてデシベルで表され,統計解析に使用することが望ましい。

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6.4 健常者における振動感覚いき(閾)値

  ある者の指先で測定した振動感覚いき(閾)値を,健常者で構成する対照集団群と比較することがしば
しば必要となる。30歳の健常者のデシベル(10−6 m/s2基準)で表した振動感覚いき(閾)値及びメートル
毎秒毎秒で表した値を,附属書Aに示す。それらの値は,JIS B 7763-1に規定したそれぞれの刺激周波数
又は等価周波数について,その集団の2.5,15,50(平均値),85及び97.5パーセンタイル値を表している。
いき(閾)値は,デシベルで表した場合,ガウス分布に近似できる。
附属書Aの値は,JIS B 7763-1によって測定した振動感覚いき(閾)値の分析を用いてもよい。50パー
センタイル値は,式 (5) のT(fj) ref及び式 (6) のt(fj) refのように,基準いき(閾)値移動の算出及び分析に
おけるいき(閾)値の基準値として用いる。
注記1 健常者における振動感覚いき(閾)値の平均は,SA I受容器で伝えられる周波数では0.03 dB/
歳,FA I受容器で伝えられる周波数では0.08 dB/歳,FA II受容器で伝えられる周波数では0.25
dB/歳0.35 dB/歳の割合で,加齢にともなって上昇する。
注記2 疫学的研究においては,対照集団群の振動感覚いき(閾)値は対照群から得てもよい。

6.5 健常者の振動感覚いき(閾)値からの偏差

  健常者の振動感覚いき(閾)値及び基準いき(閾)値移動からの偏差は,健常者における平均からの偏
差の可能性として評価する。振動感覚いき(閾)値の測定値に関する測定誤差は,6.2によって決定する。
健常者における,振動感覚いき(閾)値の基準値の平均に関する測定誤差は存在しない。
附属書Aで示す,健常者のいき(閾)値の2.5パーセンタイル値及び97.5パーセンタイル値は,JIS B 7763-1
による測定法を用いて被験者から得た期待値の上限及び下限として用いてもよい。振動感覚いき(閾)値
の測定値が,健常者の2.5パーセンタイルが示す値未満,又は97.5パーセンタイルが示す値を超える場合
は,期待値の範囲外と考えるのが望ましい。同様に,測定した基準いき(閾)値移動が,健常者が示す基
準いき(閾)値移動の2.5パーセンタイル又は97.5パーセンタイルの範囲外である場合には,期待値の範
囲外と考えるのが望ましい。
注記 被験者個人について,健常者における平均値又は基準いき(閾)値移動からのいき(閾)値の
偏差の可能性は,必ずしも,末しょう(梢)感覚神経障害に関連すると考えられる症状若しく
は障害又は疾患についての陽性反応適中度,又は陰性反応適中度に一致する必要はない。

6.6 振動感覚いき(閾)値の変化による生理学的及び臨床的な影響

  いき(閾)値移動にかかわる生理学的,機能的及び臨床的な影響を,附属書Bに示す。
振動感覚を,全身性であろうと局所性であろうと,疾病,神経毒性的因子,化学的因子及び物理学的因
子への暴露によって引き起こされる,末しょう(梢)神経障害の検出のための客観的検査として用いても
よい。振動感覚いき(閾)値を幾つかの刺激周波数又は等価周波数で測定する場合,感受性の指標を算出
し,タクトグラムを作成することは,測定結果の分析に効果的である。
相対的いき(閾)値移動を繰り返し測定することは,病理学的過程又は回復過程を長期間追跡する場合
に有用である。
振動感覚いき(閾)値及び基準いき(閾)値移動の変化は,感覚機能のある側面に影響を与えることも
あり,潜在疾病を反映してもよい。異なる周波数又は等価周波数において記録された基準いき(閾)値移
動は,タクトグラムとして図示した場合に特有のパターンを示すことが分かっている。例を,附属書Bに
示す。

――――― [JIS B 7763-2 pdf 13] ―――――

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附属書A
(規定)
健常者における振動感覚いき(閾)値
A.1 健常者における振動感覚いき(閾)値
健常者における振動感覚いき(閾)値に関する幾つかの研究では,基本的にJIS B 7763-1の規定に基づ
いた検査方法を用いてきた。それらの方法を表A.1に示す。すべての研究がこの規格の発行以前のもので
あり,表A.1の注に示すように,JIS B 7763-1の要求事項から若干離れている部分もある。
いき(閾)値の出典は,表A.1の左側の列による。報告されたプローブの直径及びプローブの周辺支持
部の直径を,第2列及び第3列に示す。参考文献 [25] の研究では,直接,皮膚の凹みを測定及び制御し
ている。他の研究の静的な皮膚の凹みは,プローブの接触力及び必要に応じてプローブと周辺支持部の接
触力から推定している(第4列)。表A.1の皮膚刺激装置の接触力を制御するすべての研究では,周辺支持
部が使われた場合には,皮膚の周辺支持部の接触力も制御している。振動感覚いき(閾)値を記録した被
験者の性別(男性,女性),人数及び平均年齢とともに,心理物理学的アルゴリズムの類型についても表
A.1に示す。
振動感覚いき(閾)値を得たヒト集団群について,簡単な説明も記載している。医学的スクリーニング
を実施した場合,被験者の兆候,症状及び末しょう(梢)神経障害の病歴又は神経毒性要因若しくは手腕
振動への暴露歴についても記載している。すべての研究において,報告されている振動感覚いき(閾)値
は,健常者についてのものである。
健常な男性及び女性の振動感覚いき(閾)値として,JIS B 7763-1によって決定した,いき(閾)値の
デシベルで表した値(10−6 m/s2基準)を表A.2,メートル毎秒毎秒で表した値を表A.3に示す。振動感覚
いき(閾)値は,JIS B 7763-1の表1で規定する,各刺激周波数又は等価周波数における集団群の2.5,15,
50(平均値),85及び97.5パーセンタイル値で表す。デシベルで表したいき(閾)値は,ガウス分布で近
似される。平均値以外のパーセンタイルにおけるいき(閾)値は,ある周波数又は等価周波数時fjのデシ
ベル(10−6 m/s2基準)で表した振動感覚いき(閾)値から式 (A.1) によって推定してもよい。
2
1 T fj T fj 2s2 fj
ref ref, M
pT fj ref
e (A.1)
2πs fj
ここに,振動感覚いき(閾)値の基準値の平均T(fj) ref,M,及びs(fj) は,それぞれ,表A.2及び表A.4に
示す値である。
表A.2の振動感覚いき(閾)値は,表A.1に記載のデータセットから構成され重み付けされた値であり,
平均年齢30歳に調整されている。いき(閾)値の計算に使用された指の総数NFを,刺激周波数又は等価
周波数ごとに示す。各データセットの重み付けは,刺激周波数又は等価周波数における指の数で決まるが,
検討中である。正中神経と尺骨神経に介在するいき(閾)値に有意な差がなければ,振動感覚いき(閾)
値は,中指及び薬指(5.5の注記2を参照)並びに親指で得られたいき(閾)値から求めている。
注記 JIS B 7763-1に記載している測定方法を交互に使うと,振動感覚いき(閾)値の値にわずかな
違いが生じる可能性がある。表A.1の各研究における,平均振動感覚いき(閾)値と表A.2の
50パーセンタイル値との間に残る説明不能な相違は,通常,2 dB未満である。幾つかの研究で

――――― [JIS B 7763-2 pdf 14] ―――――

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は,振動感覚いき(閾)値の上昇(すなわち機能の低下)が尺骨神経支配の指で観察されてい
る。
月経周期における通常のホルモンの変化は,女性の振動感覚いき(閾)値に影響を与えるが,特にFA II
受容器を介する周波数(すなわち100 Hz,125 Hz,及び160 Hz)で影響が大きい。これによって,表A.4
において男性のs(fj) と比較して女性のs(fj) の方が大きい値であることを説明できる。
健常者の振動感覚いき(閾)値の平均は,年齢とともに上昇するが,その程度は,SA I受容器を介する
周波数で1年につき約0.03 dB,FA I受容器を介する周波数で1年につき0.08 dB,FA II受容器を介する周
波数で1年につき0.25 dB0.35 dBとなる。FA II受容器を介するいき(閾)値の加齢による影響は,100 Hz
で測定した振動感覚いき(閾)値の平均の方が,160 Hzの場合より年齢による上昇傾向が少なく測定周波
数に依存するようである。30歳以外の年齢における健常者の振動感覚いき(閾)値の平均を,このデータ
から推定してもよい。一人一人の年齢によるいき(閾)値の変化は,健常者の振動感覚いき(閾)値の平
均から有意に逸脱する恐れがあるため,このデータから推定すべきではない。
表A.2及び表A.3の50パーセンタイル値は,基準いき(閾)値移動の計算及び分析のためのいき(閾)
値の基準値として用いる。したがって,式 (5) のT(fj) refの値及び式 (6) のt(fj) refの値は,それぞれ表A.2
及び表A.3の50パーセンタイル値として示されている。

――――― [JIS B 7763-2 pdf 15] ―――――

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