JIS B 8672-1:2011 空気圧―試験による機器の信頼性評価―第1部:通則 | ページ 7

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規定している。この方法は,他法に比べて信頼区間の幅が狭くなる傾向があるといわれており,支持者が
多いとされる。
ここでは,片側信頼水準95 %におけるB10寿命の下側信頼限界を求める方法について示す。
注記 フィッシャーのマトリックス法では,所定の信頼度に対して推定した寿命時間の信頼限界を求
める場合,及び所定の時間に対して推定した信頼度の信頼限界を求める場合がある。このこと
は,ソフトウェアなどを用いるときに留意しなければならない。
JA.5.2 フィッシャーのマトリックス
式(JA.6)において,与えられた信頼度に対応する対数寿命x=ln tを推定する式を示した。既に母数が推
定されているときの期待値をxとすると,xの100(1−α) %下側信頼限界は,次によって求めることができ
る。
xL x
K Var)(
x (JA.13)
ここに, Kα : 標準正規分布の下側α %点,値は統計数値表などから読む。
x : xの期待値
Var(x) : xの分散
ここで,xの分散は,式(JA.6)の関係から次の式で評価できるとされている。
2
y 2y 1
Var x Var Cov , Var (JA.14)
4 2 2
ここに, Var( ) : の分散
Var( 栂 ) : 栂 の分散
Cov( , 栂 ) : と 栂 の共分散
y : 1
ln ln
1 F
注記 式(JA.14)は,時間の信頼限界を求める場合の式である。
式(JA.14)を求めるためには,β及びηの分散及び共分散が知られていなければならない。これを求める
のが,フィッシャーのマトリックス法である。具体的には,式(JA.10)の対数ゆう度ln Lをβ及びηで2回
偏微分し,次のように計算を行う。
1
2 2
Var ln L ln L
Cov , 2
(JA.15)
Cov ,
2 2
Var ln L ln L
2
フィッシャーのマトリックスを書き下すと,行列の各要素は次のように表される。すなわち,大きさn
個の標本において,r個の故障データ(t1,t2,··· tr),及び(n−r)個の打切りデータ(tr+1,··· tn)が得られてい
る場合,式(JA.16)式(JA.18)になる。
2 n 2
ln L r ti ti
2 2 ln I11 (JA.16)
i1
2 n
ln L r 1 ti
2 2 2 I22 (JA.17)
i1
n
2
ln L r ti 1 ti
ln I12 I21 (JA.18)
i1
したがって,逆行列の一般公式を用いると,式(JA.19)式(JA.21)になる。

――――― [JIS B 8672-1 pdf 31] ―――――

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B 8672-1 : 2011
1I
Var 22 (JA.19)
Δ
1I
Var 11 (JA.20)
Δ
1
Cov , I12 (JA.21)
Δ
ここに, 1 1
I11I22I12I21
このようにして得られた各値を,式(JA.14)に代入することでxの分散を求め,式(JA.13)からxの信頼下
限xLを導くことができる。推定寿命時間の100(1−α) %下側信頼限界は,式(JA.22)になる。
tL exp xL (JA.22)
JA.5.3 適用例
例として,次の完全データが得られた場合の,時間の信頼限界における,B10の95 %下側信頼限界を推
定する。母数としては,β=1.932 7,η=73.525 5が得られているものとする。表JA.2及び式(JA.23)から式
(JA.25)に,各要素の計算結果を示す。
表JA.2−フィッシャーのマトリックス要素計算結果
終了サイクル数ti [β(β+1)/η2](ti/η)β
(ti/η)β[ln(ti/η) ]2 (ti/η)β[1/η+β/η ln(ti/η) ]
16×106 0.122 040 0.000 055 −0.001 390
34×106 0.133 980 0.000 236 −0.001 503
53×106 0.056 917 0.000 557 0.002 654
75×106 0.000 410 0.001 089 0.014 675
93×106 0.086 943 0.001 651 0.031 145
120×106 0.618 460 0.002 702 0.068 240
計 1.018 750 0.006 291 0.113 821
戀 6
I11 2 .1018 75 .1018 75 .2625 03 (JA.23)
.1932 7 2
r 6 .1932 7
I22 2 .0006 291 .0006 291 .0004 146 (JA.24)
73.525 52
r 6
I12 I21 .0113 821 .0113 821 .0032 217 (JA.25)
73.525 5
したがって,フィッシャーのマトリックスは,次の式(JA.26)のように表せる。
1
Var Cov , .2625 03 .0032 217
(JA.26)
Cov , Var .0032 217 .0004 146
分散・共分散行列は,最終的に式(JA.31)のように求められる。
1 1
.2625 03.0004 146 .0(032 217.0032 217)
(JA.27)
1
101.570 277
.0009 845 4

――――― [JIS B 8672-1 pdf 32] ―――――

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Var( ) 1
I22 101.570 277 .0004 146.0421 11 (JA.28)
Var)( 1
I11 101.570 277 .2625 03 266.625 024 (JA.29)
1
Cov( , ) I12 101.570 277 .0032 217 .3272 29 (JA.30)
Var)( Cov),( .042111 .3272 29
(JA.31)
Cov),( Var)( .3272 29 266.625 024
これを用いて,式(JA.14)からB10寿命に対するxの分散を計算すると,次の値が得られる。
1 2 1
Var)(
x ln ln 9.0 .0421 1 266.625 024
.1932 7 4 73.525 52
1 ln ln 9.0
2 .3272 29 .0255 784 (JA.32)
.1932 7 2 73.525 5
一方,式(JA.6)からB10寿命に対するxの推定値を計算すると,ここではメディアンランク回帰法による
母数β=1.44及びη=76.11を用いた場合,次のようになる。
1
x
ln ln 9.0 ln 76.11 .2769 245 (JA.33)
.144
xL x
K Var)(
x .2769 245 .1645 .0505 751.1937 28 (JA.34)
tL exL e.1937 28
.694 (JA.35)
以上によって,B10寿命の95 %片側信頼限界として,6.94×106が得られた。
なお,この結果を最ゆう推定法による結果と合わせて図示すると,図JA.1のようになる。

――――― [JIS B 8672-1 pdf 33] ―――――

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図JA.1−フィッシャーのマトリックス法によるB10寿命の信頼限界
注記 この規格,附属書A,附属書Bなどにおける連続した信頼限界線は,故障確率を連続的に変化
させて,このような解析を行って得られたtLをプロットしたものである。
参考文献 Abernethy, Robert; The new Weibull handbook, 5th ed., North Palm Beach, R.B.Abernethy, 2006.
http://www.weibull.com/;eText boos on Reliability, Life Data(Weibull) nalysis Reference, (Rev, 2005)

――――― [JIS B 8672-1 pdf 34] ―――――

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附属書JB
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS B 8672-1:2011 空気圧−試験による機器の信頼性評価−第1部 : 通則 ISO 19973-1:2007 Pneumatic fluid power−Assessment of component reliability by
testing−Part 1: General procedures
(I) JISの規定 (II) (III)国際規格の規定 (IV) JISと国際規格との技術的差異の箇条(V) JISと国際規格との技術的差異の
国際 ごとの評価及びその内容 理由及び今後の対策
規格
箇条番号 内容 箇条 内容 箇条ごと 技術的差異の内容
番号
及び題名 番号 の評価
1 適用範囲 1 適用範囲 変更, Noteの記載内容を,適用範囲に規定内容をより明確にし,注記によっ
追加 入れ,新たに注記を追加。 て追加説明を行っている。
ISO規格見直し時に修正を提案する。
4 記号及び 4 記号及び単位 追加 表1に記号tを追加。 信頼性評価における関数(t)は,必ずし
単位 も時間ではなく,定義を明確にした。
ISO規格見直し時に修正を提案する。
8 試験条件 8.3 試験環境 8.3 試験環境 変更 表2の空気の品質における露点 従来規格(JIS B 8392-1)との整合の
を+3 ℃から−20+7 ℃に ため。
変更。 ISO規格見直し時に修正を提案する。
10 試験の 10.1 要求最小故障数 10 試験の終了 変更 表3の要求最小故障数の 理解を助けるため。
終了 “>10”の記載を“11以上”にISO規格見直し時に修正を提案する。
変更。
12 試験報 12 試験報告書 追加 “母数を推定するためのグラ 母数及び信頼性特性値を決定した証
告書 フ”を報告書記載項目として追拠を明確にするため。
加。 ISO規格見直し時に修正を提案する。
附属書A A.1 概要 附属書A A.1 概要 追加 概要を追加し,附属書の位置づ理解を助けるため。
(参考) (参考) けを明確にした。 ISO規格見直し時に修正を提案する。
A.2.4 B10寿命の推定値 A.2.4 式(A.1) 変更 式の展開を簡潔な表現とした。理解を助けるため。
B8
削除 技術的差異はない。 ISO規格見直し時に修正を提案する。
67
附属書B B.1 概要 附属書B B.1 概要 追加 概要を追加し,附属書の位置づ理解を助けるため。
2-
1
(参考) (参考) けを明確にした。 ISO規格見直し時に修正を提案する。
: 2011
4

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JIS B 8672-1:2011の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 19973-1:2007(MOD)

JIS B 8672-1:2011の国際規格 ICS 分類一覧

JIS B 8672-1:2011の関連規格と引用規格一覧