JIS B 8842:2020 クレーン―耐震設計に関する原則

JIS B 8842:2020 規格概要

この規格 B8842は、JIS B 0146規格群に規定する全てのクレーン(移動式クレーンを除く。)のクレーン構造物,又はその構成要素である構造部材及び機械要素に対する,クレーンが地震を受けたときの荷重及び荷重の組合せについて規定。

JISB8842 規格全文情報

規格番号
JIS B8842 
規格名称
クレーン―耐震設計に関する原則
規格名称英語訳
Cranes -- Principles for seismically resistant design
制定年月日
2020年9月25日
最新改正日
2020年9月25日
JIS 閲覧
‐ 
対応国際規格

ISO

ISO 11031:2016(MOD)
国際規格分類

ICS

53.020.20
主務大臣
経済産業,厚生労働
JISハンドブック
‐ 
改訂:履歴
2020-09-25 制定
                                                                                   B 8842 : 2020

pdf 目 次

ページ

  •  序文・・・・[1]
  •  1 適用範囲・・・・[1]
  •  2 引用規格・・・・[2]
  •  3 用語,定義及び記号・・・・[2]
  •  4 耐震設計の概念・・・・[4]
  •  4.1 一般・・・・[4]
  •  4.2 修正震度法・・・・[4]
  •  4.3 応答スペクトル法・・・・[4]
  •  4.4 時刻歴応答法・・・・[5]
  •  5 修正震度法による地震設計荷重の算定・・・・[5]
  •  5.1 一般・・・・[5]
  •  5.2 設計水平震度KHの計算・・・・[5]
  •  5.3 設計垂直震度KVの計算・・・・[11]
  •  5.4 地震設計荷重の計算・・・・[11]
  •  6 応答スペクトル法による地震設計荷重の算定・・・・[12]
  •  6.1 一般・・・・[12]
  •  6.2 地震応答の総和(TSR)の計算方法・・・・[13]
  •  7 地震と地震以外の荷重との組合せ・・・・[14]
  •  7.1 一般・・・・[14]
  •  7.2 静的強度の照査(JIS B 8833-1による荷重の組合せ)・・・・[14]
  •  7.3 静的強度の照査(SRSS法による荷重の組合せ)・・・・[14]
  •  7.4 全体安定度の照査・・・・[15]
  •  7.5 性能照査・・・・[15]
  •  8 時刻歴応答法による地震設計荷重の算定・・・・[15]
  •  8.1 レベル1地震動による地震設計荷重の算定・・・・[15]
  •  8.2 レベル2地震動による地震設計荷重の算定・・・・[16]
  •  9 免震・制振クレーン・・・・[16]
  •  附属書A(参考)修正震度法による耐震設計・・・・[17]
  •  附属書B(規定)設計加速度・・・・[18]
  •  附属書C(参考)応答スペクトル法・・・・[20]
  •  附属書D(参考)時刻歴応答法と応答スペクトル法・修正震度法との比較・・・・[22]
  •  附属書E(参考)リヒタースケール,地表面地震加速度及び震度階の関係・・・・[24]
  •  附属書F(参考)垂直震度影響係数・・・・[25]
  •  附属書JA(参考)地盤種別補正係数β2の算定 26附属書JB(参考)クレーンの固有周期の簡易計算・・・・[28]

――――― (pdf 一覧ページ番号 1) ―――――

B 8842 : 2020

pdf 目次

ページ

附属書JC(参考)リスク係数γnの考え方 31
  •  附属書JD(参考)JISと対応国際規格との対比表・・・・[33]

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                                                                                   B 8842 : 2020

まえがき

  この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本クレーン協会(JCA)及び
一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出があ
り,日本産業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣及び経済産業大臣が制定した日本産業規格である。
  この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
  この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。厚生労働大臣,経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の
特許出願及び実用新案権に関わる確認について,責任はもたない。

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                                       日本産業規格                             JIS
                                                                              B 8842 : 2020

クレーン−耐震設計に関する原則

Cranes-Principles for seismically resistant design

序文

  この規格は,2016年に第1版として発行されたISO 11031を基とし,日本特有の地震環境を考慮するた
め,技術的内容を変更して作成した日本産業規格である。
  なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。
変更の一覧表にその説明を付けて,附属書JDに示す。
  一般に,クレーンは細長の構造物であるため,地震時に構造部材の塑性変形による地震エネルギー吸収
能力が建築構造物などに比べて少ないと考えられる。この点がクレーンの耐震設計を行う上で留意すべき
重要な点である。
  地震による損傷を防ぐための経済的な手法として,使用限界状態(SLS)及び極限限界状態(ULS)の
二つの設計限界状態の照査を考える。これらは稼働中に遭遇する可能性のある中地震動及び設置場所で発
生し得る大地震動を受けたときの応答を限界値と比較することによって行う。この規格では,地震エネル
ギー吸収能力が少ないクレーンの特徴を鑑みて,SLSに対する性能照査を行うための地震設計荷重の算定
を必須とし,ULSに対する性能照査は任意とする。また,SLSに対する性能照査は,中地震動に対する修
正震度法に基づくことを基本とする。

1 適用範囲

  この規格は,JIS B 0146規格群に規定する全てのクレーン(移動式クレーンを除く。)のクレーン構造物,
又はその構成要素である構造部材及び機械要素(以下,クレーン構造部材という。)に対する,クレーンが
地震を受けたときの荷重及び荷重の組合せについて規定する。
  この規格は,クレーンが設置されている地域の地震に対する特性,地盤の状態及びクレーンの支持構造
物を考慮し,地震を受けたときのクレーンの動的応答を計算する方法を規定する。
  さらに,この規格は,クレーンの運転状態及び地震によるクレーンの損傷に対するリスクについての荷
重の決定方法も規定する。
  この規格は,ULSについては考え方を示しているが,塑性変形を含む性能照査までは含まない。クレー
ンの受渡当事者間の協議によって,他の規格又は関連文献を用いてもよい。
    注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
          ISO 11031:2016,Cranes−Principles for seismically resistant design(MOD)
            なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
          ことを示す。

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B 8842 : 2020

2 引用規格

  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
    JIS B 0146(規格群) クレーン−用語
      注記 対応国際規格 : ISO 4306 (all parts),Cranes−Vocabulary
    JIS B 8822-1 クレーン及び巻上装置−分類及び等級 第1部 : 一般
    JIS B 8829 クレーン−鋼構造部分の性能照査
      注記 対応国際規格 : ISO 20332,Cranes−Proof of competence of steel structures
    JIS B 8833-1 クレーン−荷重及び荷重の組合せに関する設計原則−第1部 : 一般
      注記 対応国際規格 : ISO 8686-1,Cranes−Design principles for loads and load combinations−Part 1:
             General

3 用語,定義及び記号

3.1   用語及び定義
  この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS B 0146-1,JIS B 0146-3及びJIS B 0146-5によるほか,次に
よる。
3.1.1
地震
  地球を構成する地下の岩盤が,断層面と呼ばれる破壊面を境として急激にずれる現象。
3.1.2
地震動
  地震波が伝わってきたある地点での地表及び地中の揺れ。
3.1.3
使用限界状態,SLS(Serviceability Limit State)
  クレーン稼働寿命期間に据付場所で遭遇する可能性のある中地震動を受けたときに,クレーンの機能を
損なわず継続して使用することに影響を及ぼさない限界状態。
3.1.4
極限限界状態,ULS(Ultimate Limit State)
  クレーンが設置場所で発生し得る大地震動を受けたときに,クレーン構造物が塑性変形しても,クレー
ン構造物の倒壊,クレーンの構造的不安定,脱輪,つり荷又はクレーン部品が落下しない,運転者又は作
業者,公共物などの安全が保たれる限界状態。
3.1.5
レベル1地震動
  クレーンの稼働寿命期間中に発生する確率の高い地震動であり,SLSを検討する地震動。
3.1.6
レベル2地震動
  クレーンの稼働寿命期間中に発生する確率は低いが,大きな震度をもつ地震動であり,ULSを検討する
地震動。
3.1.7
震度

――――― [pdf 3] ―――――

                                                                                   B 8842 : 2020
  地震動の最大加速度の大きさを重力加速度に対する比として表したもの。
3.1.8
刺激係数
  多自由度系とみなした各振動モードがクレーン全体の応答にどれだけ寄与しているかを表す係数。刺激
係数の大きさによって地震時にどの振動モードが支配的となるかが分かる。
3.1.9
減衰比
  質点・ダッシュポット(粘性減衰器)・ばねからなる振動系において,実際のダッシュポットの大きさと,
振動しないで振動量が単調減少する限界のダッシュポットの大きさである臨界減衰との比。減衰定数とも
いう。
3.1.10
リスク係数
  基本地震設計荷重及びつり荷による地震設計荷重を算出するときに,人的被害の可能性,及び二次被害
の可能性を考慮した係数(附属書JCを参照)。
3.1.11
固有振動モード
  振動している系内の各点が特定の振動数に対して単振動(線形系の場合)している場合,節及び腹から
なる固有の振動形状。
    注記 多自由度系では,同時に二つ以上の固有振動モードが含まれることがある。
3.1.12
有効振動モード質量
  各固有振動モードに対応したばね−質量系の質量成分。その総和は系の全質量に一致する。
3.1.13
稼働寿命期間
  クレーンを計画したときに想定した使用期間。
3.2   主な記号
  この規格で用いる主な記号を,表1に示す。
    注記 この規格では垂直とは鉛直のことをいう。
                                         表1−主な記号
        記号                                        説明
        KH       設計水平震度
        KV       設計垂直震度
        Abg      基本水平震度
        Asg      地表面の基本震度
        fcon     地震動の再現期間及びリスクに関する変換係数
         β2     地盤種別補正係数
         β3     加速度応答倍率
          *
                 クレーン構造物の減衰比0.025の場合の基本加速度応答倍率
         γn     リスク係数

――――― [pdf 4] ―――――

B 8842 : 2020
                                     表1−主な記号(続き)
        記号                                        説明
         η      減衰比の違いを考慮した加速度応答倍率の補正係数
         δ      支持構造物による応答増幅率
         ζ      減衰比(減衰定数)
         c       垂直震度影響係数
         FH      リスク係数を考慮しない水平地震設計荷重
         FV      リスク係数を考慮しない垂直地震設計荷重
      FRH,FRV   リスク係数を考慮しないつり荷の地震設計荷重(水平及び垂直)
        FHr      リスク係数を考慮した水平地震設計荷重
        FVr      リスク係数を考慮した垂直地震設計荷重
        FRHr
                 リスク係数を考慮したつり荷の地震設計荷重(水平及び垂直)
        FRVr

4 耐震設計の概念

4.1 一般

  耐震設計に用いる応答解析には,修正震度法,応答スペクトル法及び時刻歴応答法の三つの主な方法が
あるが,この規格では,クレーンの構造特性,設置される地域,地盤性状などを勘案したレベル1地震動
に対して,修正震度法に基づく弾性域内での応力設計(限界状態設計)を耐震設計の基本とする。
  ただし,修正震度法に基づく応力設計を行った際,クレーン構造部材が弾性的な応答を示す場合であっ
ても,機種又は構造によっては1次固有振動モード以外の応答が無視できないときがある。また,免震・
制振装置を設置した場合などにおいても適切な検定ができないときがある。このようなケースにおいては,
有限要素法(FEM)などを用いて詳細な解析モデルを構築し,応答スペクトル法,又は適切な地震波を用
いた時刻歴応答法による解析を行い,応力,変位などを算定し,その結果を設計限界応力などの許容値と
比較することによって,耐震性を照査するような設計方法も選択してもよい。
  クレーン設置場所の地盤特性を考慮して作成されたレベル1地震動に対応した地震波が得られて,時刻
歴応答法などで安全性及び機能が評価できる環境が整っている場合は,機能を損なわない範囲でクレーン
構造部材が局所的に降伏応力を超えて塑性域に入ることを考慮してもよい。この場合,局所的に若干の塑
性化が発生しても,クレーンの基本的機能及び安全性が維持されることなどの適用する要求性能は,受渡
当事者間で協議して定める。

4.2 修正震度法

  修正震度法(箇条5参照)は,クレーン構造物を1自由度系とみなして,その振動特性から得られる震
度とクレーンの質量による荷重(垂直静荷重)との積として計算される地震設計荷重を,クレーン構造物
に作用する静的な荷重として用いる。震度は,クレーン設置場所,その地盤特性及びクレーンの動的特性,
すなわち3方向(垂直1方向及び水平2方向)の固有周期又は固有振動数,減衰などによって評価する。
  この方法は比較的簡便で,その手順は,附属書Aのフローチャートに示すように設計過程の一部となる。

4.3 応答スペクトル法

  応答スペクトル法(箇条6参照)は,クレーン構造物を多自由度系とみなして,地震応答に影響する複
数の振動モードの振動特性からクレーンの地震応答を算定する方法であり,次の場合に適用する。
− 修正震度法によるものより詳細なクレーンの地震応答を必要とする場合。

――――― [pdf 5] ―――――

                                                                                   B 8842 : 2020
− コンピュータを使用した解析が経済的に許容される場合。
  応答スペクトル法は線形システムに適用でき,応答特性に非線形性があってもそれが省略可能である非
線形システムならば適用できる。応答スペクトル法は,クレーンの固有周期又は固有振動数と各振動モー
ドの形状とを計算することから始める。地震応答は,クレーン構造物の選択した振動モードから最大応答
加速度(クレーン設置場所の地盤特性とクレーン構造物の減衰特性とを考慮した応答スペクトルから選択
する。),振動モード形状,振動数又は周期,及びクレーンの質量分布を用いて計算する。

4.4 時刻歴応答法

  時刻歴応答法(箇条8参照)は,クレーン構造物をFEMなどによってモデル化した上で,地表面に時
間とともに変化する地震動を与え,クレーンの地震応答を求める方法であり,次の場合に適用する。
− クレーンの詳細な地震応答を求める必要がある場合(附属書D参照)。
− 非線形性(塑性変形,材料の弾塑性特性及びギャップ,摩擦,車輪のレールからの浮上り,及びワイ
    ヤロープの緩みなどの非線形特性)があって,これを考慮する必要がある場合。
− コンピュータの使用による高い費用が許容される場合。
  時刻歴応答法では,クレーン設置場所における代表的な地震動を入力し,クレーン構造物(必要であれ
ば,クレーンの支持構造物を含む。)の運動方程式を数値的に解くことによって,時刻ステップごとの集積
による地震応答を評価する。

5 修正震度法による地震設計荷重の算定

5.1 一般

  地震時に励起されるクレーンの振動モードのうち,最も重要な1次固有振動モードに着目して震度を求
め,それに対応した地震設計荷重をクレーンの質量による荷重(垂直静荷重)などの荷重と組み合わせる
ことで,部材に生じる応力,変位などを算定し,設計限界応力などの許容値と比較検討することによって
耐震性を照査する。その手順を附属書Aに示す。
  なお,修正震度法に基づく応力設計を行わない場合は,合理的な根拠がある場合に限って,例えば適切
な入力地震波を用いて動的応答解析を行うなどの方法を選択することも可能である。ただし,修正震度法
に基づく応力設計以外の方法を選択した場合にあっても,修正震度法に基づく一次評価を行い,両者の結
果を比較して差異が生じた場合,その要因を分析して,両者から得られた結果の妥当性を評価する。
  クレーンに作用する地震設計荷重又は設計地震加速度は,水平及び垂直の設計震度(KH,KV)を用いて
計算する。クレーンのリスクに応じて,箇条7に規定する1以上のリスク係数γnを適用する。

5.2 設計水平震度KHの計算

5.2.1  一般
  設計水平震度KHは,式(1)から求める。
                        KH=Abg×β2×β3×fcon=Asg×β3×fcon     (1)
                      ここに,        Abg :  基本水平震度(5.2.2参照)
                                      Asg :  地表面の基本震度
                                       β2 :  地盤種別補正係数(5.2.3参照)
                                       β3 :  加速度応答倍率(5.2.4参照)
                                      fcon :  地震動の再現期間及びリスクに関する変換係数
  再現期間475年相当(5.2.2参照)の地震動を,クレーン構造物が耐えられるSLSとしての再現期間72
年相当の中地震動に変換すること,及びリスク係数を考慮することでfcon=0.16としている。

――――― [pdf 6] ―――――

B 8842 : 2020
  基本震度Abg及びAsgの方向は,他の地震学的な考慮がない場合は,任意とする。すなわち,クレーン構
造物への影響が最大となる方向の地震動を適用する。
  地震荷重の作用する方向がレールと平行(レール方向という。)で,クレーンが基礎地盤などに拘束され
ていない場合のKHは,滑りの摩擦係数を考慮して式(2)から求める。
                                  b
                         KH  3.0      (2)
                                  a
                      ここに,        KH :  設計水平震度
                                       a :  総車輪数
                                       b :  制動車輪数
  なお,全高と車輪幅とのアスペクト比が大きく,かつ,両脚の制動車輪数が等しくないクレーンにあっ
ては,モーメントを考慮してKHを決定する。ただし,KHの最小値は0.10とする。
5.2.2  基本水平震度Abgの算定
  基本水平震度Abgは,附属書B及び式(3)から求める。
                        Abg=ag/g       (3)
                      ここに,         ag :  最大基本水平加速度(m/s2)
                                       g :  自然落下の加速度(重力加速度)(m/s2)
5.2.3  地盤種別補正係数β2の算定
  地盤種別補正係数β2は,地震動が基盤から表層地盤を伝わって地表面に達する間の増幅及び周期の影響
を表す。図1に地震動伝ぱ(播)の原理を示す。
   1 地表面の加速度(記録された加速度) この規格では,最大値をAsgとする。
  2 岩盤
  3 軟質から中間堅さの表層地盤
  4 堅い表層地盤
  5 基本水平震度Abg(基盤の加速度)
                                図1−地盤種別補正係数β2の図解

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                                                                                   B 8842 : 2020
  表2の地盤種別は,深さ30 mまでの地盤の平均せん断波速度Vs,30によって分類される。クレーン設置
場所の地盤種別によって,この表からβ2の値を選択する(附属書JA参照)。
                             表2−地盤種別補正係数β2の決定及び値
          種別                       地盤の種類                    平均せん断波速度   β2
                                                                     Vs,30[m/s]
       地盤種別0    第三紀以前の岩盤                                    800超         1.0
                    岩盤が砂,砂利,又は堅い粘土によって覆われた堅い
       地盤種別1                                                  360を超え,800以下  1.4
                    砂地の土壌によって構成される堅い地盤
       地盤種別2    地盤種別1と3との中間                          180を超え,360以下  1.6
                    沖積層又はその深さが30 m以上の中間から柔らかな土
       地盤種別3                                                       180以下        2.0
                    壌によって構成される中間から柔らかな地盤
5.2.4  加速度応答倍率β3の算定
5.2.4.1  一般
  加速度応答倍率β3は,次によって決める。
a) クレーンの支持構造物がある場合,その動特性
b) 地震によって励起される振動モードのうち,クレーンの方向を考慮して最も重要な振動モードの固有
    振動数又は固有周期
c) 振動モードの減衰比
d) クレーン設置場所の地盤種別
  最も地震の影響を受ける振動モードの固有振動数又は固有周期として,計測又はコンピュータを使用し
た計算で得られる1次の振動モードに着目する。
  β3は,式(4)から求める。
                              *
                        β3= 3β×η×δ    (4)
                                      3β : クレーン構造物の減衰比を0.025とした場合の基本加速
                      ここに,         *
                                             度応答倍率(5.2.4.2参照)
                                       η  :  減衰比の違いを考慮した加速度応答倍率の補正係数
                                             (5.2.4.3参照)
                                       δ  :  支持構造物による応答増幅率(5.2.4.4参照)
                            *
5.2.4.2  基本加速度応答倍率 3β
  クレーン構造物の固有振動数又は固有周期及びクレーン設置場所の地盤種別による値を,図2に示す。
  天井クレーン,コンテナクレーンなどの橋形クレーンの固有周期は,附属書JBに示す簡易計算法を用
いて求めてもよい。

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                                     *
            図2−基本加速度応答倍率 3β(クレーン構造物の固有周期又は固有振動数及び
                              クレーン設置場所の地盤種別による。)
5.2.4.3  減衰比の違いを考慮した加速度応答倍率の補正係数η
  式(4)に示す減衰比の違いを考慮した加速度応答倍率の補正係数ηは,クレーン構造物の減衰比ζによっ
て表3から求める。
                     表3−減衰比の違いを考慮した加速度応答倍率の補正係数η
           減衰比ζ     0.01    0.015    0.02   0.025    0.03    0.04     0.05     0.1
              η        1.24    1.15     1.06    1.0     0.94    0.87     0.80    0.62
  部材の応力が弾性限度内にある構造物の減衰比の代表的な値は,溶接構造物に対してζ=0.025,ボルト
接合に対してζ=0.04,溶接とボルトとの組合せ構造に対してζ=0.03である。部材が弾性限界に近い応力
で使われる場合は,減衰比を割増してもよい。
  減衰比は,次の方法によって得てもよい。
a) 計測
b) 構造部材の非線形挙動又は摩擦接合部の摩擦力変位関係のヒステリシス評価
5.2.4.4  支持構造物による応答増幅率δ
  支持構造物上で運転されるクレーンの場合,δは,式(5)から求める。ただし,地表面又は地表面に敷か
れたレール上で運転されるクレーンの支持構造物[建築物,ふ(埠)頭,岸壁など]による応答増幅率を
求める場合,δ=1とする。

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                                          2
                                      1
                            .071               ≧1  (5)
                                   2      2   2
                                      1
                      ここに,         λ :  表4で与えられるクレーン構造物と支持構造物との固有
                                            周期比に関する係数
                                       κ :  図3で与えられるクレーン構造物と支持構造物との相互
                                            作用における減衰効果に関する係数であり,図3のζは,
                                            クレーン構造物の減衰比(5.2.4.3参照)を示す。
                  表4−クレーン構造物と支持構造物との固有周期比に関する係数λ
               固有周期比                                    λ
                                                                       2
                                                              1.8 TT
                                                                  c p
               Tc/Tp≦0.9                           1  1      2      2
                                                             Tc 0.81 Tp
             0.9<Tc/Tp≦1.1
                                                                       2
                                                              2.2 TT
                                                                  c p
               Tc/Tp>1.1                           1  1
                                                             Tc2 1.21 Tp2
                    ここに,
                               mc
                                    :  クレーン構造物とクレーンを含む支持構造物との質量比
                             mc  ms
                                 mc :  クレーン構造物全体の質量
                                 ms :  支持構造物全体の質量
                                 Tc :  支持構造物を剛体とした場合のクレーン構造物の固有周期
                                 Tp :  クレーン構造物を剛体とした場合の支持構造物の固有周期

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                  κ
                                        クレーン構造物の減衰比 ζ
                                 図3−係数κと減衰比ζとの関係
  減衰比をζ=0.025とし,クレーン構造物とクレーンを含む支持構造物との質量比θをパラメータとした
場合の,支持構造物による応答増幅率δの固有周期比に対する変化を図4に示す。クレーン構造物の固有
周期が支持構造物の固有周期に近接し,かつ,支持構造物の質量がクレーンの質量より相当大きな場合,δ
は大きくなる。
  なお,垂直方向に十分な剛性がある支持構造物では,一般に支持構造物の垂直方向の固有周期が短いた
め,水平方向ほど地震動が増幅されない。

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                                                                                   B 8842 : 2020
                              図4−式(5)によるδのTc/Tpによる変化

5.3 設計垂直震度KVの計算

  設計垂直震度KVは,式(6)から求める。
                        KV=c×KH        (6)
                      ここに,         c :  垂直震度影響係数
                                            ただし,この規格では0.5とする(附属書F参照)。
                                      KH :  式(1)の設計水平震度
                                            ただし,KV用にKHを算出する場合の支持構造物による
                                            応答増幅率は,δ=1を用いる(図4参照)。

5.4 地震設計荷重の計算

5.4.1  設計地震加速度の計算
  設計水平地震加速度aH及び設計垂直地震加速度aVは,式(7)及び式(8)によって,設計水平震度KH及び
設計垂直震度KVから求める。
                        aH=KH×g        (7)
                        aV=KV×g        (8)
5.4.2  地震設計荷重の計算
  クレーン構造物又はクレーン構造部材に働く水平地震設計荷重FH,及び垂直地震設計荷重FVは,式(9)
及び式(10)から求める。
                        FH=KH×Wc 又は FH=aH×mc           (9)
                        FV=KV×Wc 又は FV=aV×mc           (10)
                      ここに,        Wc :  クレーン構造物の質量による荷重(垂直静荷重)
                                      mc :  クレーン構造物の質量
  つり荷による地震設計荷重は,水平及び垂直それぞれ式(10)及び式(11)から求める。水平地震設計荷重が

――――― [pdf 12] ―――――

B 8842 : 2020
省略可能であるとしても,垂直地震設計荷重は考慮する必要がある。
                        FRH=KH×χ×WR 又は FRH=aH×χ×mR         (11)
                        FRV=KV×χ×WR 又は FRV=aV×χ×mR          (12)
                      ここに,          χ :  つり荷への地震の影響係数
                                      WR :  クレーンのつり荷の質量による荷重(垂直動荷重)
                                      mR :  つり荷の質量
  χは0.01.0の範囲で,JIS B 8822-1のクレーン分類に従って選択する。χの値は,表5によって選択す
る。
                                表5−つり荷への地震の影響係数χ
     クレーン分類
                       A1       A2       A3       A4        A5       A6       A7       A8
    (JIS B 8822-1)
          χ          0.0      0.14     0.28      0.43     0.57     0.71     0.86      1.0
  リスク係数γnを考慮した水平地震設計荷重FHr,垂直地震設計荷重FVr並びにつり荷による地震設計荷重
のFRHr,及びFRVrは,式(13)式(16)から求める。
  なお,リスク係数の考え方については,附属書JCに示す。
                        FHr=FH×γn        (13)
                        FVr=FV×γn        (14)
                        FRHr=FRH×γn        (15)
                        FRVr=FRV×γn        (16)

6 応答スペクトル法による地震設計荷重の算定

6.1 一般

  応答スペクトル法は,クレーン構造物を多自由度系とみなしたモデルの,地震応答に関係する振動数範
囲における複数の振動モードを包含した範囲で,クレーンの地震応答を計算する方法である。
  実際のクレーン構造物は無限な自由度をもつが,FEMなどの認知された方法によって,多自由度系の質
点−ばねモデル法を使った有限な自由度の動的システムに離散化して,クレーンの主要な振動特性を得る
ことから応答計算を開始する。
  構築したモデルを固有値解析することによって,各次の固有周期又は固有振動数,振動モードの形状及
び振動モードの刺激係数を計算する。
  クレーン構造物の応答は,通常,3方向(垂直1方向及び水平直交2方向)別々に計算し,各次の固有
振動モード応答は,固有振動モードの振動数又は周期,減衰,及び有効振動モード質量に対応した応答ス
ペクトルから得られる最大応答加速度又は変位として計算する。
  この規格では,垂直応答スペクトルは水平応答スペクトルの50 %として計算する。水平直交2方向のス
ペクトルが異なる場合は,大きい方の値から垂直応答スペクトルを計算する。ただし,支持構造物上のク
レーン構造物にあっては,δ=1として垂直応答スペクトルを計算する。
  3方向それぞれの応答は,次の認められた方法によって,各次の固有振動モード応答を重ね合わせて得

――――― [pdf 13] ―――――

                                                                                   B 8842 : 2020
られる。
a) 全ての値の合計
b) ルート平均(二乗和平方根法)(SRSS)
c)   QC(Complete Quadratic Combination)法
  3方向それぞれの応答は,クレーン構造物の地震応答のほかに,クレーンのつり荷の質量によって生じ
る荷重(垂直動荷重)による影響も考慮する。
  応答スペクトル法による地震応答解析の主要なステップを,表C.1に示す(X方向の地震動だけを例と
して示す。)。
  この方法は,クレーン構造部材が弾性範囲及びクレーン構造物の地震応答が線形であると仮定している
ため,解析に用いる振動モードの数が増えれば精度は向上する。また,この方法によって耐震計算を行う
場合も,修正震度法に基づく一次評価を行い,両者の結果を比較して差異が生じた場合,その要因を分析
して,両者から得られた結果の妥当性を評価する。

6.2 地震応答の総和(TSR)の計算方法

  6.1に規定する応答の重ね合せについて,この規格ではSRSSを振動モードの重ね合せ及び地震設計荷重
の方向の重ね合せの標準方法とすることとし,修正震度法を準用して必要なパラメータを求める。
  FEMなどを使用して,クレーン構造物のモデル化を行う場合の応答スペクトル法は,次の手順で行う。
− 剛体限界の振動数を30 Hz(周期0.033秒)以上として,それ以下のクレーンの全ての固有振動数又は
    固有周期を計算する。
                                                                                  *
− クレーン設置場所の地盤種別から,図2によって適切な設計カーブを選択し,適切な 3βを求める。
− 何次までの固有振動モードを使用するか定める。各有効振動モード質量の合計が,全質量の90 %を超
    えることを目標とする。ただし,堅いサドルのある天井クレーン,バラスト上のクレーン,及び大き
    なつり荷があるクレーンの場合は,その目標は達成できない。
                                                                                           *
− 解析モデルのうち,使用されなかった全ての有効振動モード質量には,30 Hz(周期0.033秒)の 3βを
    用いる。
      *
     3βに,次の値を乗じて各固有振動モードの最終設計スペクトル加速度を計算する。
− 変換係数fcon=0.16[式(1)]
− クレーン設置場所による基本水平震度Abg(5.2.2参照)
− 地盤種別補正係数β2(5.2.3参照)
− 減衰比の違いを考慮した加速度応答倍率の補正係数η(5.2.4.3参照)
− 3方向(水平X,垂直Y及び水平Z方向)の地震動それぞれに対して,最終設計スペクトル加速度及
    び刺激係数を各固有振動モードの要素部材の内力,応力,節点変位などを計算するための入力として
    使用する。3方向の振動それぞれに対して,全ての固有振動モードの要素部材の計算結果をSRSSに
    よって重ね合わせて合計値[respt(X),respt(Y) 及びrespt(Z)]を計算する。
− 3方向の計算結果respt(X),respt(Y) 及びrespt(Z) をSRSSによって重ね合わせて要素部材の地震応答の
    総和(TSR)を式(17)によって計算する。
                                          2         2         2
                        TSRSRSS   respX
                                     t      respY
                                               t      respZ
                                                         t       (17)
  SRSSに代わる方法としては,3方向の応答計算結果を次の式(18)又は式(19)によって重ね合わせる。
− 100-40-40法

――――― [pdf 14] ―――――

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                        TSR1004040   1.0 respX
                                             t     0.4 respY
                                                           t     0.4 respZ
                                                                         t   ,
                        TSR1004040   0.4 respX
                                             t     1.0 respY
                                                           t     0.4 respZ
                                                                         t   又は
                        TSR1004040   0.4 respX
                                             t     0.4 respY
                                                           t     1.0 respZ
                                                                         t     (18)
− 全ての組合せの絶対和
                        TSRabs   1.0 respX
                                         t     1.0 respY
                                                       t   又は
                        TSRabs   1.0 respZ
                                         t    1.0 respY
                                                      t      (19)

7 地震と地震以外の荷重との組合せ

7.1 一般

  静的強度に関する地震と地震以外との荷重の組合せについては,7.2及び7.3で二つの方法を示すが,こ
の規格では7.2を用いるのがよい。
  クレーンの全体安定度に関しては,7.4に示す。

7.2 静的強度の照査(JIS B 8833-1による荷重の組合せ)

  箇条5で計算する耐震設計荷重は,JIS B 8833-1の特殊荷重相当の扱いとなる。荷重の組合せCJで示さ
れるものは定常荷重,非定常荷重及び特殊荷重の組合せを対象としており,耐震設計荷重は表6による組
合せを適用する。
                          表6−JIS B 8833-1による耐震設計荷重の組合せ
                            荷重                                 荷重の組合せ
                                                            CJ1               CJ2
        クレーン構造物の質量による荷重(垂直静荷重)         1                1
        つり荷の質量による荷重(垂直動荷重)                 1                1
        垂直方向のクレーン基礎振動によるFVr,FRVr            1                0.4
        水平方向のクレーン基礎振動によるa)   Hr,FRHr         0.4               1
        注a) 水平荷重FHr,FRHrはどの水平方向へもかけることができ,検討中のクレーン要素の方向は最
             も不利な方向となるように選択する。

7.3 静的強度の照査(SRSS法による荷重の組合せ)

  6.2のSRSSによる計算結果に対する荷重は,表7によって他の荷重と組み合わせる。

JIS B 8842:2020の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 11031:2016(MOD)

JIS B 8842:2020の国際規格 ICS 分類一覧

JIS B 8842:2020の関連規格と引用規格一覧