JIS C 2550-1:2011 電磁鋼帯試験方法―第1部:エプスタイン試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法 | ページ 4

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7 直流磁気測定の一般的原理

7.1 エプスタイン試験器法の原理

  エプスタイン試験器は,一次コイル,二次コイル及び鉄心として組み立てられた試験片とで構成され,
無負荷変圧器を形成する。この無負荷変圧器の直流磁気特性を,次に規定する方法に従い測定する。

7.2 試験片

  試験片は,4.2に適合しなければならない。

7.3 エプスタイン試験器

  エプスタイン試験器は,4.3に従って構成する。

7.4 空隙補償

  空隙磁束の影響は,4.4に規定したように,相互誘導器によって補償する。

7.5 励磁電源

  励磁電源は,必要とする最大の磁界の強さを発生させるのに十分な定格電流を備えるものとする。リッ
プル成分は,0.1 %以下とし,電流の安定性は,相対的な磁束の変動において0.2 %を超えないものとする。

7.6 装置の精度

  測定装置の精度は,次のとおりとする。
7.6.1 磁束計(magnetic flux integrator)
磁束計は,±0.3 %以内の精度のものを使用する。
注記 IEC 60404-4:2008の附属書Bに記述されている方法の一つによって,磁束計を校正してもよい。
7.6.2 直流電流計
直流電流計は,±0.2 %以内の精度のものを使用する。

8 磁束密度の直流測定手順

8.1 測定準備

  エプスタイン試験器と計器は,図7に示すように結線する。
A : 直流電流計 S2 : 磁束計の入力極性切替スイッチ
S1 : 励磁電流の極性切替スイッチ MD : 電流波高値検出用の相互誘導器
Rv : 励磁電流調整用の可変抵抗器 It : 校正電流
M : 空隙補償用の相互誘導器 Im : 一次コイル電流
Wb : 磁束計(magnetic flux integrator)
図7−直流試験回路(磁束密度の離散値測定用)

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5.1の記述に従い,試験片をひょう(秤)量し,エプスタイン試験器に組み込む。
試験片を,交流磁界を減衰させるか,又はエプスタイン試験器の一次コイル内に流れる直流電流を徐々
に減少させながら反転を繰り返すことによって消磁する。消磁電流によって生成する磁界の強さの初期値
は,前の測定に使用した値よりも高い水準でなければならない。
試験片の断面積は,式(5)を用いて算出する。

8.2 磁束密度の測定

  磁界の強さに対応した磁束密度の離散値は,図7に示す回路を用いて測定できる。また,一連の離散値
から初磁化曲線を得ることができる。第二法として,連続記録法を用いてもよい。校正された4端子抵抗
器を,エプスタイン試験器の一次コイルに直列に結線する。図8に示すように,4端子抵抗器の電圧端子
をX-YレコーダのX入力に接続し,磁束計の出力をX-YレコーダのY入力に接続する。X-Yレコーダの
代わりに,プロッタ又はコンピュータインターフェイスを用いてもよい。
A : 直流電流計
S1 : 励磁電流の極性切替スイッチ
Rv : 励磁電流調整用の可変抵抗器
R : 校正済みの4端子抵抗器
M : 空隙補償用の相互誘導器
Wb : 磁束計(magnetic flux integrator)
X-Y : X-Yレコーダ,プロッタ又はコンピュータインターフェイス
図8−直流試験回路(連続記録法)
磁界の強さは,エプスタイン試験器内の一次コイルに流れる励磁電流を測定し,式(13)から算出する。
N1I
H (13)
lm
ここに, H : 磁界の強さ(A/m)
N1 : 一次コイルの総巻数
I : 励磁電流(A)
lm : 実効磁路長(m),lm=0.94
磁束密度の離散値を求めるには,磁束計を零調整するとともに,磁界の強さが所要の値に到達するまで,
一次コイルに流す励磁電流を増加する。
励磁電流と磁束計の読取り値の変化を記録する。磁束密度の値は,磁束計の読取り値の変化と,磁束計
の校正定数から,式(14)によって算出する。

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j
K j
J (14)
N2 A
ここに, ΔJ : 磁束密度の変化の算出値(T)
Kj : 磁束計の校正定数(Vs)
αj : 磁束計の読取り値
N2 : 二次コイルの総巻数
A : 試験片の断面積(m2)

8.3 ヒステリシスループの測定

  必要があれば,ヒステリシスループを,IEC 60404-4:2008に従って測定する。このとき,リングをエプ
スタイン試験器及び試験片に置き換えるものとする。

8.4 磁束密度測定の再現性

  この箇条に規定した手順で得られた結果の再現性は,1.0 %の相対標準偏差であるとみなされる。

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附属書A
(参考)
デジタルサンプリング法による磁気特性測定
A.1 一般原理
デジタルサンプリング法は,この規格の測定手順の電気関連に多く使用されている。二次電圧U2(t)及び
励磁コイルに直列に接続された無誘導精密抵抗器(図5参照)の両端の電圧降下U1(t)のデジタル化,並び
にこれらのデータから数値処理によって試験片の磁気特性を判定することを特徴としている。この目的の
ため,電圧の時間関数からjの添え字をもつこれらのそれぞれ電圧の瞬時値u2j及びu1jを,サンプル−ホ
ールド回路によって,等しい時間間隔でそれぞれサンプリングする。サンプリングされた電圧の瞬時値は,
アナログ−デジタル変換器(ADC)によって,デジタル値に変換される。一周期又は複数周期にわたり採
取されたデータから,この規格で要求される全ての磁気特性をコンピュータ処理で求めることが可能であ
る。
デジタルサンプリング法は,図3図8の計器の全ての機能を,データ捕捉装置とソフトウエアとの組
合せによって実現する。二次電圧の正弦波制御もデジタル法によって可能である。
デジタルサンプリング法は不確かさを低くするが,不適切な使用法によっては,大きな誤差をもたらす。
A.2 技術的詳細及び要求事項
デジタルサンプリング法の原理は,電圧及び時間の離散化にある,すなわち無限小の時間間隔dtを有限
の時間間隔Δtで置き換える。
T 1 1
t (A.1)
n fn fs
ここに, Δt : サンプリング点の間隔(s)
T : 励磁周期の長さ(s)
f : 励磁周波数(Hz)
n : 1周期にサンプリングされた瞬時値の個数
fs : サンプリング周波数(点/s)
不確かさを低くするためには,励磁周期長さをサンプリング間隔で除した値が整数(ナイキスト条件)
で,サンプリング周波数fsが入力信号帯域の2倍より大きいことが望ましい。
平均値形交流電圧計に倣い,磁束密度の波高値は,1周期の間に採取されたu2jの値の合計から,次のよ
うにして算出する。
T n1
1 1 1
J U2 (t) t uj2 (A.2)
4 fN2 AT t 0 4 fs N2 A j 0
鉄損は,u2j及びu1jを1点ごとに乗じて,1周期の間の合計することから,次のように算出する2)。
T n1
N1 1 N1
Ps U1 (t) U2 (t) dt uj1uj2 (A.3)
lmRN2 A m Tt 0 lmRN2 A m j 0
ここに, J : 磁束密度の波高値(T)
f : 励磁周波数(Hz)

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N : 1周期の間にサンプリングされた瞬時値の個数
A : 試験片の断面積(m2)
T : 励磁周期の長さ(s)
fs : サンプリング周波数(点/s)
u2 : 二次電圧(V)
j : 瞬時値の連続番号
N1 : 一次コイルの総巻数
lm : 実効磁路長(m)
R : 励磁コイルに直列に接続された無誘導精密抵抗器の抵抗値
(Ω)
Ps : 試験片の鉄損(W/kg)
N2 : 二次コイルの総巻数
ρm : 試験片の密度(kg・m−3)
u1 : 無誘導精密抵抗器の両端の電圧降下(V)
注2) 磁界の強さの波高値,及び皮相電力はそれぞれ次の式によって算出する。
n n
N1 及び S N1 1 2 1 2
H U s u1 j u2 j
Rlm RlmRN2 A m n j 0 n j 0
u2j及びu1jの演算はコンピュータ又はデジタル信号処理器(DPS)によって処理できる。ナイキスト条件
を成り立たせるには,サンプリング周波数fs及び励磁周波数fを,共通の高い周波数のクロックで生成す
ることが必須であり,この場合,必然的に整数比のfs/fが得られる。ナイキスト条件が成り立つ場合には,
1周期128点のサンプリング数で,十分な精度をもって波形を測定できる。1周期128点の数は,シャノン
定理に基づき,H(t)が通常41次以上の周波数の高調波を含んでいないことによって導かれる。しかし,市
販のデータ捕捉装置には励磁周波数と同期できないものがあり,この場合,必然的にfs/f比は整数とはな
らず,ナイキスト条件が成り立たない。ナイキスト条件が成り立たない場合,真の励磁周期の長さとサン
プリングされた周期との相違を最小とするために,サンプリング周波数を十分高く(1周期に500サンプ
ル以上)する必要がある。ナイキスト条件を成立させることは,高い周波数の測定(例えば,この規格の
範囲に含まれる400 Hz)では決定的に有利である。また,デジタルサンプリング過程で生じるエリアシン
グノイズの原因となる,無関係な高周波成分を除去するために,ローパス・アンチエリアシングフィルタ
を使用することを推奨する。
振幅の分解能については,12 bitより低い場合はデジタル化誤差が無視できない。このため,測定波形
の振幅に対して最低12 bitの分解能をもつことを推奨する。さらに,二つの電圧信号測定チャンネル間の
位相差を,鉄損測定の誤差がこの規格で規定している値,0.5 %を超えないように,十分小さくすることが
望ましい。位相差の問題は,低い力率cos(φ)(φは二つの信号の基本成分間の位相差)の場合により重要
となる。この理由によって,二つの電圧信号の瞬間値を異なる時間でサンプリングする方式である,マル
チプレクサを用いた計器は推奨できない。
信号調整に用いる増幅器は,低い周波数での位相シフトを防ぐために,a.c.結合ではなくd.c.結合である
ことが好ましい。しかし,増幅器のd.c.オフセットは数値計算の値に大きな誤差をもたらすことがある。
このd.c.オフセットの影響を除く方法には,計算による補正消去法を適用することができる。
A.3 校正
この規格の繰返し性及び再現性要件を満たすには,測定装置は適切に校正する必要がある。増幅器及び
ADCを含む二つの電圧信号測定チャンネルについては,標準交流電源を用いて校正することが可能である。

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JIS C 2550-1:2011の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 60404-2:2008(MOD)

JIS C 2550-1:2011の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 2550-1:2011の関連規格と引用規格一覧