JIS C 5381-12:2021 低圧サージ防護デバイス―第12部:低圧電源システムに接続するサージ防護デバイスの選定及び適用基準 | ページ 36

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図M.4−シミュレーションに用いた代表的なTT系統
図M.2の通信線に印加した雷サージ電流の影響を,コンピュータシミュレーションで解析した結果は,
実際の試験結果と同様となった。このシミュレーションでは,配電用変圧器の高周波モデル及び線路への
伝搬効果(両方の線路で200 m)を用いた。電源用SPDは,MOV(電圧制限部品)で構成し,通信線用SPD
は,GDT(電圧スイッチング部品)で構成する。
接地抵抗Rbは,GDTの放電電圧(Uam)と同様に,この検討のパラメータである。電源用SPD(三つの
防護モード)は,公称放電電流10 kA及び電圧防護レベル1.5 kVである。
L1=L2=10 mのシミュレーション結果を次に示す。通信用SPDのボンディング点と電源用SPDのボン
ディング点との間のリード線長L1に発生する電圧降下は,電源システムから侵入する雷サージの場合,
12.5 kVとなり,通信回線線から侵入する雷サージの場合,23 kVとなった。このレベルは,機器内部でフ
ラッシオーバが発生するのに十分な値である。
そのため,電源線及び通信線の両方を,SPDで防護し,同一の接地システムにボンディングした場合で
も,機器内部のフラッシオーバは,まだ発生する可能性がある。
これらの結果を一般化するため,電源線及び通信線の両方に負荷を追加して,シミュレーションを実施
した結果は,同じであった。さらに,その他の接地系統の種類(TN系統及びIT系統)及び各種の雷サー
ジ波形のシミュレーションも実施した。
シミュレーション結果を,表M.1に示す。
表M.1−シミュレーション結果
接地系統の種類 侵入する L1の電圧降下
雷サージ電流 電源線から侵入 通信線から侵入
する雷サージ する雷サージ
TN系統 8/20 10 kA 12 kV 35 kV
IT系統(中性線の接地イ 8/20 10 kA 8 kV 35 kV
ンピーダンスは1 000 )
TT系統 10/350 10 kA 8 kV 23 kV
機器のフラッシオーバのリスクに関する結果は,全ての接地系統で同じであることが分かる。機器の雷

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サージに対する耐電圧は,一般に最大2.5 kV程度であり,中程度の雷サージ電流(10 kAだけ)によって
発生する電圧は,機器の雷サージに対する耐電圧を超過する(8 kV35 kV)。
注記 10/350で10 kAの雷サージ電流は,通信線では現実的ではない。通信線は,約2 kAで溶断し,通
信線での測定値は,100 A程度である。通信線での10/350で10 kAの雷サージ電流は,電源線と
通信線との比較のために用いた。
可能な解決策
この附属書に示す問題点を避けるためには,次の二つの解決策がある。
− 各種配線間のループ面積(この附属書に示す例では,通信用SPDのボンディング点と電源用SPDの
ボンディング点との間の距離)を低減するために,別の配線経路を見つけ,インダクタンスLを小さ
くする。ただし,これは,既存の建築物等に対しては容易ではない。新築の建築物等では,引込口で
の通信線と電源線のボンディング点を単一とすることが,最良の解決策である。
− 機器の近傍で,電源端子と共通のボンディング点(接地)との間にSPDを設置し,その他のシステム
(例えば,通信)端子と共通のボンディング点(接地)との間にSPDを設置する。一般に,これらの
SPDは,電源用SPDと通信用SPDとを,単一の外郭(一つのパッケージ)に収納しており,多用途
SPDという。このような複合SPDは,機器に接続する全ての端子に,サージ防護を備え,共通ボンデ
ィング点(接地)との間の接続リード線が最短となるようにしている。この共通ボンディング点は,
接地(PE)に接続する。共通ボンディング点を接地(PE)に接続する場合,被保護機器のきょう(筐)
体(フレームグランドFG)と接続することが可能である。
図M.1に示す実験での,多用途SPDの効果を,図M.5に示す。図M.5は,図M.3と比較することが望
ましい。

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電圧 電流
(V) (A)
400
200 250
(U)
0 200
-200 150
2 4 6 8 10 12 14 16
100
(I)
50
0
記号説明
I : 通信用SPDに流れる電流 : 一目盛50 A di/dt=75 A/μs
U : 通信ポートと接地(PE)との間の電圧 : 一目盛200 V 最大200 V
横軸 : 一目盛2 μs
図M.5−図M.1に示す構成の回路で多用途SPDを設置した場合,
雷サージ印加中の電圧波形及び電流波形

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附属書N
(参考)
過電流保護及びサージ耐量
N.1 一般
サージ電流は,SPDだけに流れるのではなく,サージ専用ではないその他の機器にも流れる。SPDの上
位(電源側)に設置する過電流保護器及び全ての種類の故障電流保護器は,この状況にあるため,サージ
電流によって,不必要な動作又は溶断が発生する可能性がある。サージ防護において,これらの機器を適
切に用いるためには,これらの機器のサージ耐量を知ることが有効である。
サージ電流が,過電流保護器に流れる場合,追加の電圧降下が発生する可能性がある。この電圧降下は,
過電流保護として用いる機器の種類,及びその定格電流に依存する。
N.2,N.3及びN.4は,形式試験並びにSPD製造業者及びヒューズ製造業者から得た実験データに基づ
いて,ヒューズのサージ耐量に関する,明確な計算方法及び情報を示す。その他の過電流保護器OCPDの
サージ耐量は,過電流保護器の種類及び設計に大きく依存してもよい。SPD分離器として用いるヒューズ
又は配線用遮断器の長所と短所を比較する幾つかの情報を,N.5に示す。特別な目的のために設計した過
電流保護器は,その他の特性をもってもよい。
必要に応じて,製造業者は,SPDと配線用遮断器MCCB,ミニアチュアサーキットブレーカMCB,漏
電遮断器RCDなど(対応国際規格では,これらは,CBsという。)との関連性の情報を明示することが望
ましい。使用者は,製造業者の資料を参考とすることを推奨する。
我が国及び一部の国で用いるSPD分離器に対する追加の試験値を,N.6に示す。
使用者は,SPD故障時の安全性及びサージ耐量によって,SPD分離器の選定が異なる場合があることに
注意が必要である。使用者は,常にこれを考慮して,SPDの製造業者の取扱説明書を参照することが望ま
しい。
N.2 8/20及び10/350の電流インパルスに1回耐えるヒューズの情報
インパルス波形から計算したI2tを用いて,ヒューズ製造業者が明示するヒューズの溶断I2t(1 ms)と比
較することで,電流インパルスに1回耐えるヒューズのサージ耐量を推定することが可能である。
インパルス電流のI2tは,インパルス電流の波高値(Icrest)及び波形から,次の式を用いて推定すること
が可能である。
· 10/350電流インパルスの場合(JIS C 5381-11:2014の8.1.1も参照)
I2t[A2s]=2.5×10-4×Icrest2[A2]
· 8/20電流インパルスの場合
I2t[A2s]=0.14×10-4×Icrest2[A2]
注記 この計算式は,公称インパルス波形(波頭長及び波尾長)に基づいており,波形の最大許容差を
含めていない。
計算例は次による。

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C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
· 波高値が9 kAの8/20電流インパルスに1回耐えるヒューズは,次の計算値よりも大きい最小溶断I2t
とする。
I2t[A2s]=0.14×10-4×9 0002=1 134[A2s]
· 波高値が5 kAの10/350電流インパルスに1回耐えるヒューズは,次の計算値よりも大きい最小溶断
I2tとする。
I2t[A2s]=2.5×10-4×5 0002=6 250[A2s]
溶断I2tが21 200 A2sで,未使用の定格電流100 AのgGヒューズは,次に示す波高値の8/20電流インパ
ルスに1回耐えることが可能である。
21200
Icrest[A]= =38 914[A]
0.1410 4
ヒューズの特性,寸法及び製造業者によって異なる,各種I2t値は,ヒューズのデータシートで確認可能
である。
N.3 動作責務試験及び追加の責務試験のためのヒューズに影響する低減係数
JIS C 5381-11に規定する動作責務試験及び追加の責務試験では,ヒューズは,1回の電流インパルスだ
けでなく,試験を構成する一連のインパルスに耐えなければならない。これら複数の電流インパルスは,
ヒューズを劣化させるため,1回の電流インパルスに耐える電流値(N.2参照)に比べ,一連のインパルス
に耐える電流値は,小さくなる。
動作責務試験及び追加の責務試験に合格するためには,1回の電流インパルスに耐える電流値に0.5
0.9の低減係数を適用することを,実験的に示す。
この低減係数は,次の三つの条件を考慮する。
· InとIimpとの関係 動作責務試験は,クラスI試験の場合,Iimpの波高値と等しい8/20電流インパルス
を15回印加し,クラスII試験の場合,Inを15回印加する。クラスI試験の場合,追加の責務試験は,
Iimpの0.1倍,0.25倍,0.5倍,0.75倍,1倍を印加する。Inの波高値がIimpの波高値と比較して低い場
合,動作責務試験による劣化は,Iimpの印加に伴うストレスに比べ,無視することが可能である。一方,
Inの波高値がIimpの波高値と比較して近い又は大きい場合,動作責務試験によるストレスを,無視す
ることは,可能ではない。
· In値及びIimp値とヒューズの1回の最大サージ耐量との比較 In値及びIimp値が,ヒューズの最大サ
ージ耐量値(N.2参照)に近い場合,ヒューズは各電流インパルスの印加に伴い劣化する。一方,In値
及びIimp値が,ヒューズの最大サージ耐量値よりもかなり低い場合,各電流インパルスの印加による
影響は,無視することが可能である。
· ヒューズの溶断I2tの許容差 ヒューズの製造業者は,ほとんどの場合,ヒューズ規格に従って,ヒュ
ーズの許容差を指定している。この許容差は,実際のサージ耐量には関連しないため,計算に用いる
ことは,可能ではない。

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JIS C 5381-12:2021の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 61643-12:2020(IDT)

JIS C 5381-12:2021の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 5381-12:2021の関連規格と引用規格一覧