JIS C 5630-1:2017 マイクロマシン及びMEMS―第1部:マイクロマシン及びMEMSに関する用語 | ページ 3

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リッパは,マイクロロボットの手として用いられる物に比べて,機構の大きさは大きいが精密
な制御が必要とされる。マイクログリッパの機能は,単に対象物を把持するだけなので多自由
度のハンドリングのためには適切なマニピュレータと組み合わせることが必要である。マイク
ログリッパなどを用いる接触式ハンドリングを,レーザ光などを利用した非接触式と比較した
場合,対象物の姿勢との制御は容易であるが,対象物の大きさが,数十μm程度以下になると
マイクログリッパの指と対象物との間に働く表面間力のために,対象物の操作が困難になる。
2.4.24
マイクロポンプ(micropump)
微小量の気体又は液体を,昇圧又は減圧し搬送する機械要素。
注記 マイクロポンプは,材料として主にシリコン及びガラスを用い,微細加工技術でダイアフラム
とアクチュエータとを結合して作製する例が多い。応用例としては,圧電素子によってダイア
フラムを駆動し超小形逆止弁を用いたダイアフラム形ポンプ,マイクロヒータとともに熱膨張
形アクチュエータを用いた一体形ポンプなどがある。積層形圧電アクチュエータによってダイ
アフラムを変形させて液体の排出,吸入を行うポンプでは,ポンプの駆動周波数によって流量
を制御できる。また,脈流低減形ポンプでは,デュアル形ポンプと同期バッファポンプとによ
って送液量を高精度で制御できる。
2.4.25
マイクロバルブ(microvalve)
気体又は液体の微小な流路における流れを制御する機械要素。
注記 マイクロバルブは,アクチュエータ,シリコンなどで作製されたダイアフラムなどによって構
成され,微小な流路(数μm以下)の流れを制御する。気体流量制御用バルブは,積層形圧電
アクチュエータとダイアフラムとによって構成される。また,血液などの粘度の高い液体を制
御するためには,流路を広げてバルブ駆動部分のストロークを大きくする必要がある。このた
めに,形状記憶合金コイルとバイアスばねとを用いる機構,又は静電,電磁若しくは圧電アク
チュエータによって流路を変化させる機構が試作されている。
2.4.26
CMOS MEMS(CMOS MEMS)
同一シリコン基板上にセンサなどのMEMS構造と信号処理用のCMOS回路とが形成された集積化
MEMSデバイス。
注記 MEMS要素とCMOS回路とを一体化したMEMSデバイスの一形態である。通常,CMOS工程
の後にMEMS工程を行うため,MEMS工程では,CMOS回路に損傷を与えないプロセスが要
求される。
2.4.27
マイクロ燃料電池(micro fuel cell)
電気化学的プロセスによって,燃料の化学的エネルギーを直接電気に変換する微小なデバイス。
2.4.28
光電変換素子(photoelectric transducer)
入射した光の量に応じて電気的出力を発生する素子。
注記 光電変換素子は,応用の仕方によって受光素子と呼ばれる光信号を取り扱う光検出器と光エネ
ルギーに応じる太陽電池のような光起電力素子とに分けられる。前者では,検出感度及び応答

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速度とが,後者ではエネルギー変換効率が重要である。また,動作原理から分類すると,光導
電セル又は撮像管に代表される光導電形と,フォトダイオード及び太陽電池に代表される光起
電力形とに分けられる。

2.5 加工技術

(Terms relating to machining technology)2.5.1
マイクロマシニング(micromachining)
微小構造の実現に使用される加工技術。
注記 通常は広く微細加工技術全般の意味で用いられるが,文脈によっては次のような狭義でも用い
られる。
1) 半導体製造技術から派生し,マイクロマシン又はMEMSにおける微小構造の実現に使用さ
れる加工技術。
2) 切削又は研削などの機械加工技術の応用によって,マイクロマシン又はMEMSにおける微
小構造を実現する加工技術。
2.5.2
シリコンプロセス(silicon process)
シリコンを材料として使用する超精密加工技術の総称。
注記 表面微細加工とバルク微細加工とに大別されるが,それらの工程はほぼ共通であり,薄膜積層
工程,パターン作成工程,微細組立,アニール及び被覆といった流れになる。加工技術として
蒸着,拡散,化学腐食,リソグラフィなどの多くの技術を複合させて用いる。大きなウエハ上
にバッチ処理で大量に部品を作ることができるのが特徴である。
2.5.3
厚膜技術(thick film technology)
基板上に厚膜を形成する技術。
注記 厚膜とは,インク状ペーストなどを塗布,スプレー印刷などで塗り,焼き付ける方法で作製し
た,およそ5 μm以上の膜を指す。圧電素子,磁性膜などアクチュエータとして使用される厚
膜の作製が試みられている。
2.5.4
薄膜技術(thin film technology)
基板上に薄膜を形成する技術。
注記 薄膜とは,基板上に真空蒸着,イオンスパッタなどによって得られる膜で,膜厚は単原子層,
単分子層のものからおよそ5 μmまでのものをいうが,通常は,厚さ1 μm以下を指す場合が多
い。薄膜の特徴は,物体の形状を実質的に変えることなく,色,反射率,摩擦係数などの性質
を変えられ,例えば,干渉,表面拡散などが顕著に変化する。また,薄膜の形成は非平衡,不
均質核形成過程をたどることが多く,形成膜の構造組織は普通の平衡条件下で作られたバルク
物質と異なる。具体的な事例としてサーマルプリンタヘッドの製作が挙げられ,従来,厚膜技
術で製作されていたものを,薄膜技術とエッチング技術とを組み合わせることで高集積化でき
た。
2.5.5
バルク微細加工(bulk micromachining)
基板そのものの一部を除去加工する技術。

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注記 バルク微細加工の一例として,化学的溶液の腐食作用によって基板の不要な部分を除去する加
工方法がある。材料を残したい部分にはSiO2及びSi3N4のマスクを施しておくと表面からの腐
食が進まない。また,ほう素を注入した層を設けておくと,その部分で腐食を停止させること
ができる。最近では,シリコンフュージョンボンディングによって,より複雑な構造もできる
ようになってきている。
2.5.6
表面微細加工(surface micromachining)
基板表面で種々の物質を種々の微細形状に形成する加工技術。
注記 一例として,化学蒸着(CVD)を応用して種々の薄膜を基板上に形成し,マスクによって選択
的な除去を行うことで,可動部分などの構造を作るための加工方法がある。ここで,一度堆積
させた後,溶かしさる層を犠牲層という。代表的な犠牲層材料は,phosphosilicate glass(PSG)
である。この加工を応用してはり(梁),ベアリング,リンクなどが作られる。
2.5.7
表面改質(surface modification)
材料表面の物理的,化学的及び生化学的な特性を改変させる加工技術。
注記 表面改質処理は,電子用途向けのドーピング,機械及び/又は化学用途向けの材料堆積,生化
学用途のための分子修飾などを含む。
2.5.8
化学機械研磨,CMP(chemical mechanical polishing)
化学反応によるエッチングとと(砥)粒による機械的研磨とを組み合わせた基板平たん(坦)化プロセ
ス。
注記 化学機械研磨は,主に半導体製造工程で基板に生じる段差を平たん(坦)化するために適用さ
れる。段差は,基板,酸化膜,金属膜など複数の材料で形成されるため各種材料を選択的に除
去するスラリーによって平たん(坦)化する。MEMSデバイスでは,ウエハレベルパッケージ
ングにおける接合面の平たん(坦)化などに適用されている。
2.5.9
フォトリソグラフィ(photolithography)
光を利用して微細パターンを基板に転写する技術。
注記 ガラス板上に所望のパターンを描いたものをマスクとし,フォトレジストと呼ばれる感光性材
料の薄層を形成しておいた基板に,マスクを通した可視光又は紫外光を露光する。露光によっ
てフォトレジストの現像液に対する溶解度が変化するため,現像工程で,マスクに対応するパ
ターンがフォトレジストに転写されることになる。この技術は,シリコンプロセスには欠かす
ことができないものである。半導体関連で必要とされるパターンの横分解能は,サブマイクロ
メータのオーダに達しており,より短い波長の光が用いられるようになってきている。
2.5.10
フォトマスク(photomask)
光投影によって転写するためのパターンが描かれた,部分的に透明な膜又はガラス板。
注記 ICの製造では,最終的な回路パターンの数十倍から百倍近い大きさの原図を作り,これをフォ
トマスクとしてフィルム又はガラスに縮小する。この原版をそのままウエハの露光に使うか,
生産用に原版と同じパターンとをもつ加工用版を作る。原版の材料は,露光に用いる光線の波

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長によって選ぶ。
2.5.11
フォトレジスト(微小電気機械デバイス)(photoresist)
フォトリソグラフィにおいて用いる感光剤。
注記 フォトレジストは,感光性機能分子を含む高分子化合物から成り,水溶性と溶剤性とがある。
通常,試料にレジストの塗布→プリベーク→露光→現像→ポストベークのプロセスを経てパタ
ーンとなる。パターン露光された部分が現像でなくなるポジレジストと露光部分が残るネガレ
ジストとがあり,また,サブマイクロメータの微細パターン用に,極短波長の電子線又はX線
に感光する各種のレジストもある。
2.5.12
電子ビームリソグラフィ(electron beam lithography)
電子ビームを利用して高分解能の微細パターンを基板に形成する技術。
注記 パターン分解能は,使用する電磁波の波長に依存し原理的には,その波長以下は得られないた
め電子ビームを利用することで分解能を高めた技術である。マスク製作用のCADとリンクさ
せることでマスクパターンなしのより柔軟なリソグラフィ技術が可能となる。ただし,パター
ンどおりに電子線をラスタ又はベクタ走査しなくてはならないため,一括露光と比較して露光
時間がかかるという欠点がある。
2.5.13
LIGAプロセス(LIGA process)
X線(シンクロトロン放射光)リソグラフィによる深いリソグラフィと電鋳とを組み合わせ,形として
用いることのできる微細構造を製作するプロセス。
注記 LIGAは,Lithographie Galvanoformung und Abformungの頭字語で,リソグラフィ,電鋳及びモ
ールディングを意味するドイツ語の頭文字をとって名付けられた。特徴として,線幅110 μm,
高さ数100 μm程度の高アスペクト比の微細構造体が,一括して大量に生産でき,また,プラ
スチック,金属及びセラミックスといった多様な材料を選択できること,シリコン半導体素子
などと組み合わせることが可能といったことが挙げられる。
2.5.14
UV-LIGA(UV-LIGA)
LIGAプロセスで用いられるX線を,紫外線に置き換えたプロセス。
2.5.15
X線リソグラフィ(X-ray lithography)
X線を利用して微細パターンを基板に転写する技術。
注記 リソグラフィ技術では,当初可視光を用いていたが,パターンの集積度が高まるにつれ,より
波長の短いエキシマレーザ及び紫外線が用いられるようになってきた。また,一括露光は,困
難であるが電子線及びイオンビームを用いることもある。この中で,X線は,エキシマレーザ
よりも更に波長が短く集積度が高まると考えられるが,X線に対する高効率,高精度なレンズ
の製作が難しいため,その光学系には技術的課題が多い。
2.5.16
ビーム加工(beam processing)
高密度エネルギービームを用いて微細な形状を加工する技術。

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注記 微細加工に用いられる高密度エネルギービームとしては,レーザビーム,電子ビーム,イオン
ビーム(代表的な例として集束イオンビーム : FIB),分子・原子ビームなどが挙げられる。レ
ーザ光による微細加工は,微細パターンマスクを通した方法又は微小径のレーザ光を用いた方
法によって行われる。マスクを使用する場合にはマスクの精度又はレンズの収差によって,集
光レーザ光の場合にはレーザ光の波長とレンズの焦点距離とによって加工の微細度が決まる。
また,イオンビーム加工は,せん(尖)鋭部分の仕上げ加工に用いられる。
2.5.17
スパッタリング(sputtering)
加速されたイオンの運動エネルギーを利用して固体表面の構成原子をたたき出すこと,又はある母材の
上に薄膜として堆積する技術。
注記 不活性又は反応性のイオンを利用したスパッタリング作用によって種々の加工が行える。スパ
ッタリングを利用した除去加工,たたき出した原子を付着させる堆積加工などがある。IEC
60050-521:2002,521-03-17,modified−Sputtering is often used as a removal process as well as a
deposition process参照。
2.5.18
集束イオンビーム加工,FIB加工(focused ion beam machining, FIB-machining)
集束された加速イオンのスパッタ作用によって,材料表面の微視的な除去を行う加工法。
注記 0.1 μm前後まで集束したビームによって加工を行うため,微細な加工穴を精度よくあける,種々
の探針(プローブ)をせん鋭化する,非球面レンズの修正加工をするなどができる。また,被
加工物の原子がスパッタされたときに飛び出す2次イオン及び2次電子の強度変化を見ること
によって,加工深さも精度良く制御できる。しかし,加工速度が遅くまた,高い真空度を要す
るため,装置が比較的複雑になる。
2.5.19
レーザーダイシング(laser dicing)
レーザー光を基板上のダイシングラインに沿って照射・走査することによって,基板を小片化する切断
技術。
注記 ブレードダイシングが難しい分離工程においては,レーザー光を基板内部に合焦し,改質層を
切断線下の基板内部に形成し,機械的な引張り力でウエハを小片化する,レーザーダイシング
法が多用される。
2.5.20
エッチングプロセス(微小電気機械デバイス)(etching process)
化学的腐食作用を利用した除去加工技術。
注記 エッチングには等方性エッチングと異方性エッチングとがあり,気相又は液相中の腐食性雰囲
気の中で加工対象材料の一部を除去する。電気エネルギーのアシストを加える場合もある(電
気化学エッチング)。マイクロマシン技術では異方性エッチングが多用される。具体的には単結
晶シリコンを水酸化カリウム(KOH)又はエチレンジアミンピロカテコール(EDP)でエッチ
ングすると,結晶面(1 1 1)のエッチング速度が他の結晶面に比べて遅くなるため,(1 1 1)面
で構成される立体形状を作ることができる。
2.5.21
ウェットエッチング(wet etching)

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JIS C 5630-1:2017の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 62047-1:2016(MOD)

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