JIS C 5630-1:2017 マイクロマシン及びMEMS―第1部:マイクロマシン及びMEMSに関する用語 | ページ 4

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反応性の薬液を用いた液相でのエッチング加工技術。
注記 ウェットエッチングは,被加工材の加工を施す部分を露出させ,そうでない部分をマスクで覆
ってから,反応液に浸して加工を行う。被加工材の結晶構造に依存しない等方性エッチングと
これに依存する異方性エッチングとに大別できる。等方性エッチングではマスクのない部分か
ら全ての方位に等速度で浸食が進むため断面が半円状になりやすい。一方,異方性エッチング
では被加工材の結晶方位ごとにエッチング速度が異なるため,エッチング速度の遅い面が最終
的に残り,最終形状を決める。
2.5.22
ドライエッチング(dry etching)
反応性ガス,反応性プラズマなどを用い,気相での物理・化学反応を利用してエッチングする加工技術。
注記 基本的には,電気エネルギーによって反応性の気体を作りだし,基板と反応させて,所望の形
状を作る。化学的反応を利用した等方性エッチングとなるプラズマエッチングと物理的反応(ス
パッタリング)を利用した方向性エッチングとなるイオンエッチングとに分けられる。これら
の一方又は両方を同時に利用するドライエッチングは,現在のLSIの製造プロセスにおいて盛
んに用いられている。
2.5.23
等方性エッチング(isotropic etching)
結晶方位及びエネルギービームの方向によって,エッチング速度が変化しないエッチングプロセス。
注記 シリコンの代表的な等方性エッチング液は,HF/HNO3/CH3COOH (HNA)溶液である。
2.5.24
異方性エッチング(anisotropic etching)
結晶方位及びエネルギービームの方向によって,エッチング速度が異なるエッチングプロセス。
注記 シリコンの代表的な異方性エッチング溶液は,水酸化カリウム(KOH)溶液であり,様々なバ
ルク微細加工用に広く用いられている。
2.5.25
エッチストップ(etch stop)
非常に低いエッチング速度の層を形成することによってマイクロマシニングで使用されているエッチン
グプロセスを停止させる技術。
注記 エッチングプロセスを停止させる層として定義されることもある。マイクロマシニングで使用
されているエッチング停止方法には,ドーパントエッチストップ及び電気化学的エッチストッ
プの二つの基本タイプがある。
2.5.26
犠牲層エッチング(sacrificial etching)
二つの層の間に挟まれた異なる材料の中間層を選択的にエッチング除去するマイクロ加工プロセス。
注記 通常,中間層とそれを挟んでいる二つの層の間での,エッチングの選択性は高い。犠牲層の目
的は,挟んでいる層の片側又は両側を機械的に分離することにある。一般に,酸化シリコンが
犠牲層として用いられる。
2.5.27
超臨界乾燥(supercritical drying)
超臨界流体を用いた乾燥方法。

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注記 超臨界流体は高い拡散性又は溶解性をもち,表面張力も働かない。これらの特徴を利用し,従
来の乾燥方法では大きな変形又は構造破壊を伴っていた繊細な物質でも,構造を保ったまま乾
燥させることができる。超臨界流体には二酸化炭素が多く使用されている。これは超臨界二酸
化炭素が高い溶解性をもち,臨界点以下にすると気化して飛散するため,乾燥試料だけを取り
出すことが可能だからである。MEMSの製造においては,試料のスティクションを避けるため
の乾燥に利用されている。
2.5.28
反応性イオンエッチング,RIE(reactive ion etching)
反応性ガスによるエッチング作用とイオンのスパッタ作用とを複合させた加工法。
注記 反応性イオンエッチングでは,化学的な反応作用とプラズマで発生したイオン及びラジカルが
加工対象に衝突“スパッタ”する作用との両方によって,マスクから垂直方向に選択的に進む。
異方性エッチングが結晶方位に対する異方性を示すのに対し,これはイオンの流れの方向に対
する選択性を示す。湿式のエッチングに見られるようなアンダーカット“マスクの下に回り込
んだ腐食”を起こしにくい。
2.5.29
深掘反応性イオンエッチング,DRIE(deep reactive ion etching)
垂直な側壁をもつ高アスペクト比の構造体を形成できる反応性イオンエッチング加工法。
注記 深掘りエッチング法とも呼ばれている。例えば,反応性イオンエッチング装置にエッチング用
ガスと保護膜形成用ガスとの導入を交互に繰返すことによって,高いアスペクト比の形状を形
成することが可能となる。
2.5.30
誘導結合型プラズマ,ICP(inductively coupled plasma)
誘導結合によって発生された高密度プラズマ。
注記 ICPは,Inductively Coupled Plasmaの略語である。DRIEのようなエッチングプロセスでしばし
ば使用される。
2.5.31
蒸着(vapour deposition)
蒸気状にした物質を固体表面上に付着堆積させる技術。
注記 通常,真空中において,金属などの物質を加熱又は電子線の照射によって蒸気にし,その蒸気
を基板にあてて付着させる薄膜形成技術の一つ。反応容器内の圧力“真空度”によって膜の純
度が影響されること及び単なる付着のため比較的付着強度が弱く,また,結晶性は良好とはな
らないことがある。このため,基板を加熱しておいて付着後に,化学反応によって付着強度を
高めたり,結晶性を改善するなどの処理が行われている。
2.5.32
原子層堆積プロセス,ALD(atomic layer deposition)
原子1層単位での薄膜製造プロセス
注記 CVDプロセスで複数の前駆体ガス導入を逐次,正確に制御することで原子層レベルの厚さの堆
積が行われる。関連する技術として分子線エピタキシがあり,これによると単結晶基板上に同
じ結晶構造をもつ層が得られる。

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2.5.33
物理気相堆積プロセス,PVDプロセス(微小電気機械デバイス)(physical vapour deposition process, PVD
process)
主に物理蒸着を用いた薄膜の製造プロセス。
注記 PVDプロセスは,真空蒸着,又は不活性ガス若しくは活性ガス雰囲気中における単一若しくは
複数ターゲットを用いたスパッタ成膜によって,主に薄膜を構成する。例として,RFマグネト
ロンスパッタリング,イオンビームスパッタリング,分子線エピタキシ,レーザアブレイショ
ンなどがある。PVDは,physical vapour depositionの略語(IEC 60050-815参照)。
2.5.34
自己組織化単分子膜,SAM(self-assembled monolayer)
固体表面に対する親和性によって分子が自発的に化学吸着して形成された単分子厚さの膜。
注記 LB膜(Langmuir−Blogett膜)が静電力などの弱い力で基板に物理吸着されているのに対し,
SAMは化学結合で固定される場合が多く,密着強度は一般的に高い。
2.5.35
電鋳法(electroforming)
後に離型される心棒及び型の表面への電着による物品の生産法又は複製法。
注記 樹脂などの母型を無電解めっきによって導体化し,それを陰極として所要の金属を厚くかつ高
速で電着させ,その後離型することで成型品を得る技術。母型の形状精度及び表面粗さを高い
精度で転写することができ,コンパクトディスク及びレーザディスクのスタンパ製作に用いら
れている(JIS H 0400参照)。
2.5.36
マイクロ放電加工(micro-electrodischarge machining)
微小工具電極と加工対象との間の放電を利用した微細加工技術。
注記 従来の放電加工と原理は同様であるが,微小エネルギー放電技術及び微小工具電極との作成が
異なる。すなわち,電極と加工対象との間の浮遊容量を小さくする必要があり,工具もワイヤ
放電研削加工(WEDG)などの方法で微細にする必要がある。WEDG法では,直径2.5 μmの
電極も成形可能であり,微細穴の加工が可能となる。
2.5.37
ナノインプリント(nanoimprint)
ナノスケール構造体の転写を行う型成形加工。
注記 ナノインプリントは,成型方法によって大きく二つに分類される。熱可塑性材料への温度・圧
力制御を用いた加工法を熱ナノインプリント,光硬化材料への光照射を用いた加工法を光ナノ
インプリントという。従来技術であるホットエンボスは熱ナノインプリントと類似の工程をも
つ加工法である。バルク膜を形成する場合をホットエンボス,基板上薄膜を形成する場合をナ
ノインプリントと呼び分ける場合もある。
2.5.38
マイクロモールディング(micromoulding)
液状化した材料を型に流し込んで所望の形状をもった微細部品を得る加工。
注記 金型を用いて圧縮,トランスファー,射出,ブローなどの手段によって材料を所望の形にする
微細加工。高分子,セラミックなどの原材料を鋳型に流し込む方法で形を作ることができる。

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精密モールディング技術を用いて,LIGAプロセスでは金属の鋳型にプラスチックをモールド
している。典型的な例として次のようなものがある。狭い隙間にも樹脂材料が入るように,低
粘度の材料を用いて気泡が生じないように脱気し,鋳型の内部は,注入前に真空にして樹脂材
料を高い圧力で注入する。樹脂の硬化,ストレス除去及び収縮分の補償のために,熱処理は高
圧,高温下にて行う。この方法をリアクションインジェクションモールディングと呼び,この
技術で製作したプラスチック構造体は,これを再び鋳型として用いて金属をめっきし,金属の
構造体を作ることもできる。
2.5.39
STM加工(STM machining)
走査トンネル顕微鏡(STM)を利用し,原子分子レベルの表面加工(アトミックマニピュレーション)
を行う加工。
注記 原子で文字を書いたりする例としてアトミックマニピュレーションは知られており,分子原子
レベルで加工が行えるが,振動を極端に嫌うなど,実用化には課題が多い。

2.6 接合・組立技術

(Terms relating to bonding and assembling technology)2.6.1
ボンディング(bonding)
材料と材料とを接合する加工。
注記 典型的な例として,陽極接合,拡散接合,シリコンフュージョンボンディング,超音波ワイヤ
ーボンディングなどがある。これらの例では,接着剤は用いない。
2.6.2
接着接合(adhesive bonding)
ポリマーを接着剤として使用することによって2種類の材料を接合する技術。
2.6.3
陽極接合(anodic bonding)
可動イオンを含むガラス,シリコンウエハ,金属などを密着接合する方法。重ね合わせた基板を加熱し
て,ガラス側を軟化させる。また,同時にシリコン側を陽極として両者の間に高電圧を付加することによ
って,電気的二重層を発生させ静電引力によって基板同士を接合する。
注記 接合は,固相で行われるので高精度の接合が達成される。シリコンフュージョンボンディング
ほどではないが,接合強度は表面の平たん度に大きく影響される。シリコンウエハ,パイレッ
クスガラスなどを接合し,容量形圧力センサ,マイクロポンプなどの内部キャビティをもつ構
造が作られている。シリコン同士,並びにシリコン及び金属を接合するためには,表面にガラ
ス薄膜を形成したり,シリコン表面を酸化したりする方法が試みられている。薄膜を用いる方
法では接合温度を高くすると薄膜の絶縁破壊電圧が低下し,十分な電圧が印加できないという
問題があった。低融点ガラスをスパッタ膜付けし,プロセス温度を常温に下げる試みもなされ
ている。プロセス温度を常温に下げると,熱応力に起因するひずみ,変形などの諸問題が解決
し,精度の向上,材料の選択性が広がるなどの多くの利点がある。
2.6.4
拡散接合(diffusion bonding)
材料同士を融点以下の温度に加熱,加圧密着させ互いの原子の相互拡散によって固相のまま接合する方
法。

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注記 固相で接合できるので溶融接合に比べて精度の高い接合を行うことができる。主に金属同士及
びセラミックスと金属との接合に用いられる。異種材料の接合においては,接合後の冷却時に
互いの熱膨張係数が異なるために,熱応力が発生する。これに起因するクラックの発生を回避
するための,熱応力緩和方法が主な研究課題である。緩和方法としては,両方の材料のほぼ中
間の熱膨張係数をもつ材料及び変形しやすい材料を間にはさみ込む方法などがとられている。
熱膨張係数が厚さ方向に徐々に変化する材料“傾斜機能材料”を中間に挟む方法も盛んに研究
されている。
2.6.5
表面活性化接合,SAB(surface activated bonding)
基板表面にイオンビーム,プラズマなどを照射して表面エネルギーを増加させることによって,基板同
士を直接接合するプロセス。
注記 表面活性化接合は,接合時温度の低温化が可能となるため,熱応力の低減に有効である。微小
電気機械デバイスでは,基板の封止接合への適用が期待されている。
2.6.6
シリコンフュージョンボンディング(silicon fusion bonding)
親水化されたシリコン,酸化シリコンなどの基板を,まず,水素結合で貼り合わせた後,加熱処理をし
てSi-O-Si結合によって接合する技術。
注記 シリコンウエハ同士,又は少なくともどちらかが酸化されているシリコンウエハ同士を貼り合
わせることによって,ウエハ内部に不純物拡散層及び絶縁物層を形成するときに用いられる。
また,不純物の種類及び濃度の異なるウエハを接合することによって,高温長時間を要する深
い不純物拡散及びエピタキシャル成長の代替技術として用いられる。この技術の最大の欠点は,
プロセス温度が高いことであり,より低温で行わなければならないプロセスは,この後に行わ
なければならない。プラズマ酸化処理などを施した後に,接合することによってプロセス温度
を低下させる試み,シリコン以外の材料の接合にこの技術を応用する試みなどが盛んに研究さ
れている。酸化ウエハの貼り合わせによって,絶縁層をシリコンではさみ込んだ構造であるSOI
(Silicon on Insulator)構造を得ることができる。SOIは,集積化された素子を酸化物などの誘
電体によって分離し,高性能化する技術に利用され,フォトダイオードアレイの製造などに利
用される。また,穴あけ,溝切り加工を施したウエハを接合すれば内部に微細加工が施された
構造を得ることができ,圧力センサ,内部に冷却構造をもったレーザダイオード用の熱交換器
の製作などに利用されている。
2.6.7
マイクロマニピュレータ(micromanipulator)
遺伝子,細胞,微小部品,微小工具などの微細な対象物を操作することを目的とした機構。
注記 駆動方式としては,純機械式タイプ,空気圧駆動タイプ,油圧(水圧)駆動タイプ,電磁力駆
動タイプ,電動モータ駆動タイプ,圧電駆動タイプなどがある。細胞操作用マイクロマニピュ
レータは,一般に微動用と粗動用とで別々の駆動方式を用い,これらを組み合わせた構成とな
っている。制御方式としては,顕微鏡,カメラなどから得られる視覚情報を用いて,マニュア
ル操作で,その微小位置の制御を行っているのが主流である。将来,微小対象物を組み立てる
微細力作業又はマイクロテレオペレーションシステムを実現するときには,力制御機構をもつ
マイクロマニピュレータの開発が望まれる。

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