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2.6.8
非接触ハンドリング(non-contact handling)
非接触で物体の捕捉及び移動を行うこと。
注記 例えば,細胞操作では,細胞をガラス製のミクロピペットで吸引し機械的に取り扱うのが一般
的であるが,接触によって試料を傷めたり,物理的,化学的な条件を変えてしまうという問題
がある。これに代わる非接触の操作法の一つとしてレーザ捕捉“レーザトラッピング”がある。
これは,光が物体に及ぼす力“放射圧”を利用して試料を非接触・非破壊的に操作する方法で
ある。電磁理論によると1 mWのレーザ光で発生する力は,7 pNといわれている。
2.6.9
パッケージング(packaging)
構成部品を保護するために外部端子をもつ容器に組み込む工程。
注記 パッケージングの目的は,構成部品が外部から受ける化学的,物理的なダメージを小さくする
ことである。ただし,寸法が微細化するにつれてパッケージングの応力ひずみに起因する問題
を生じることがある。そのため,シリコンチップ,微細構造部材などの接合技術が非常に重要
である。また,センサシステム分野では,ハイブリッド集積化技術が必要とされ,特別なパッ
ケージング技術が研究されている。
2.6.10
ウエハレベルパッケージング(wafer level packaging)
ウエハの切断前にパッケージジングを終了させるプロセス。
2.6.11
シリコン貫通電極,TSV(through-silicon via)
シリコン基板を垂直方向に貫通する電極。
注記 シリコン貫通電極は,主にICなどの半導体素子を三次元的に積層実装する技術として適用され
ている。MEMS分野ではウエハレベルパッケージングを目的に採用される。シリコン貫通電極
は貫通穴,絶縁材及び電極材で構成される。はんだ,銅,ドープされたポリシリコンなどが電
極材料として使用される。また,低抵抗シリコンの周囲を絶縁することによって,直接的にシ
リコン貫通電極として適用することもできる。
2.7 評価技術
(Terms relating to measurement technology)2.7.1走査プローブ顕微鏡,SPM(scanning probe microscope)
原子レベルの大きさの先端をもつプローブを試料に近接させた状態で,試料の表面との間で発生する物
理量を計測しながらプローブをラスタ走査することで画像情報を得る顕微鏡。
注記 プローブ“探触子”の先端を原子の大きさまでとが(尖)らせ,物体の表面に近接させると,
原子レベルの分解能で物体とプローブとの間に働く種々の物理量を計測することができる。一
般に計測した物理量が一定となるよう物体表面に沿ってプローブをラスタ走査し,それに伴う
プローブの変位を画像化することで,その物理量に基づく物体の微細な画像を構成することが
できる。これが,走査トンネル顕微鏡,原子間力顕微鏡,静電力顕微鏡,走査イオン顕微鏡,
走査磁場顕微鏡,走査温度顕微鏡,走査摩擦力顕微鏡など種々の走査プローブ顕微鏡の共通原
理である。
――――― [JIS C 5630-1 pdf 21] ―――――
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2.7.2
原子間力顕微鏡,AFM(atomic force microscope)
片持ちはりを走査する間に片持ちはりに作り込んだ探針と試料との間の原子間力によって起こされた片
持ちはりの変位を検出することによって,微視的な形状を測定する顕微鏡。
注記 光てい(梃)子法が片持ちはりの変位を監視することに有効である。片持ちはりの変位は片持
ちはりから反射した光を検出することによって測定される。測定において次の3タイプの片持
ちはりの動きがある。
1) 片持ちはりを試料に接触させる方法。
2) 振動する片持ちはりを周期的に試料に接触させて片持ちはりの振幅変化を検出する方法
“タッピングモード”。
3) 振動する片持ちはりと試料とを接触させずに,振動する片持ちはりの周波数変化を検出す
る方法。
AFMは,atomic force microscopeの略語。
2.7.3
走査トンネル顕微鏡,STM(scanning tunneling microscope)
プローブと試料との間のトンネル電流を一定に保ちながらプローブをラスタ走査して,試料表面の微細
形状を測定する顕微鏡。
注記 極端にとが(尖)らせたプローブを固体表面12 nm近づけて電圧を加えるとトンネル電流が
流れる。これを一定に保つようにプローブ位置を制御し,さらに,水平方向への走査を行うと,
原子スケールで表面形状を求めることができる。この顕微鏡は,固体表面の分子を切り離した
りするマイクロマニピュレーションにも応用されている。
2.7.4
近視野顕微鏡,走査近視野顕微鏡(near-field microscope, scanning near-field microscope)
導波路を通して,試料に極めて近接したところから電磁波及び超音波の放射強度を計測し,この導波路
先端をラスタ走査することで分解能の高い画像情報を得る顕微鏡。
注記 走査近接場顕微鏡とも呼ばれる。通常の顕微鏡では,観測に用いる電磁波及び音波の波長の長
さの1/2の長さが分解能の限界となる。しかし,開口角を大きくとることで分解能を向上でき
る。すなわち,試料に極めて近接したところから導波路を通して電磁波及び音波を計測しなが
ら,この導波路先端を走査することで画像を得た場合,その分解能は波長に関係なく,先端の
寸法だけに依存するようになる。この原理を利用して画像を得ようとするのが近視野形の顕微
鏡である。しかし,先端を小さくするほど受信できる信号は弱くなるため,高感度の受信器が
必要となる。具体的には近視野超音波顕微鏡,レーザ走査顕微鏡,蛍光顕微鏡などがある。
2.7.5
分光エリプソメトリー(spectroscopic ellipsometry)
数種類の単波長光を順次試料に照射し,それらの反射偏光強度から,膜厚及び屈折率が同時に得られる
光学的測定方法。
注記 分光器によって得られた単色光を,偏光子に通して直線偏光化し,薄膜試料に照射する。そし
て試料から反射した偏光成分によって,試料の膜厚及び複素屈折率を算出する。
2.7.6
アスペクト比(微小電気機械デバイス)(aspect ratio)
――――― [JIS C 5630-1 pdf 22] ―――――
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立体形状の垂直(高さ) : 水平(幅)の寸法比で,構造物の相対的な厚さを示す指標。
注記 シリコンプロセスで作られる形状のアスペクト比はせいぜい10 : 1といわれ,厚さのある立体
形状は作りにくい。異方性エッチング又はLIGAプロセスを用いるとアスペクト比が100 : 1以
上の深穴,溝などを作ることができる。
2.8 応用技術
(Terms relating to application technology)2.8.1バイオMEMS(bio-MEMS, biomedical MEMS)
生物学及び生医学分野へ応用したMEMS。
2.8.2
RF MEMS(radio frequency MEMS)
高周波無線通信分野へ応用したMEMS。
2.8.3
MOEMS(micro-optical-electromechanical systems)
光学分野へ応用したMEMS。
2.8.4
パワーMEMS(power MEMS)
動力を発生したり,エネルギーを変換する分野へ応用したMEMS。
注記 パワーMEMSには,推力発生装置,マイクロ熱機関,燃料電池などのほかに,エネルギーハー
ベスティング技術,エネルギースキャベンジング技術などの環境エネルギーを利用した電力供
給装置が含まれる。
2.8.5
エネルギーハーベスティング,パワーハーベスティング,エネルギースキャベンジング(energy harvesting,
power harvesting, energy scavenging)
外部環境から電気エネルギーを引き出し,蓄積デバイスに蓄える技術。
注記 エネルギーハーベスティングは,パワーハーベスティング又はエネルギースキャベンジングと
も呼ばれる。エネルギー変換デバイスとして,しばしばMEMSが用いられる。環境エネルギー
の例は,太陽エネルギー,熱エネルギー,風力エネルギー,機械振動エネルギーなど。エネル
ギー蓄積デバイスとしてはキャパシタ,スーパーキャパシタ,蓄電池が用いられる。エネルギ
ーハーベスティングの重要な応用には,広範な地域又は遠隔地の環境モニタリングシステム,
セキュリティシステム,ビル管理システム,工場管理システムがある。
2.8.6
ラブオンチップ(lab-on-a-chip)
化学,生化学又は生物工学で用いられるプロセスを行うためにマイクロチップに組み込まれたシステム。
注記 ラブオンチップは,微量の液体を計量したり,試薬混合したり,集積化され温度制御された反
応槽に混合物を移動させたり,分離したり又は検出器で結果を調べたりするためのシステムな
どをもつチップである。このシステムは,分析及び合成の両面に使うことができる。
2.8.7
マイクロTAS(micro TAS)
微小化され集積化された化学的,生化学的又は生物工学的な分析システム。
注記 マイクロTASは,Micro Total Analysis Systemの略語。
――――― [JIS C 5630-1 pdf 23] ―――――
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2.8.8
マイクロリアクタ(microreactor)
マイクロメータ規模の化学反応槽。
注記 マイクロリアクタは,化学的プロセスにおける処理装置の一つでマイクロメータ規模の空洞状
になっている。マイクロリアクタの特徴は,寸法が小さくなるにつれ温度,圧力及び濃度の勾
配がきつくなり,熱伝導率,物質移動又は拡散が増加することである。例えば,寸法が1/100
に減少すれば分子の拡散時間は1/10 000に短縮する。マイクロリアクタのもう一つの潜在的な
利点は,反応条件の優れた制御性,高い安全性及び携帯性である。優れた制御性は,反応槽の
もつ高い表面積/体積比から得られる温度の精密な制御性に起因する。マイクロリアクタの製
造工程,材質及び形状は,応用例によって異なる。
2.8.9
マイクロサージェリー(microscopic surgery, microsurgery)
顕微鏡下で行われる外科手術。
注記 最近の手術のうち注目されている技術の一つに,実体顕微鏡の下で行われる手術がある。顕微
鏡下の外科手術という意味でマイクロスコピック・サージェリーと呼ぶのが正式であるが,我
が国ではマイクロサージェリーと呼ばれている。耳鼻科,眼科,脳外科,血管外科,形成外科
などで,このような顕微鏡下の手術が実施されている。現在最も微小なレベルの手術では,直
径800 μm程度の動脈,静脈及び神経を,直径20 μm程度の針付きの糸で縫合することも行わ
れている。しかし,医者が持針器,ピンセット及びメスを手で持って通常の手術と同じような
動作をするので,この程度の太さの血管及び神経の縫合が限界だといわれており,マイクロテ
レオペレーションなどのマイクロマシン技術が今後期待されている。
2.8.10
能動カテーテル(active catheter)
湾曲動作用のマイクロアクチュエータを搭載し,外部からの操作信号によって自由に湾曲して,目標地
点に到達することが可能なカテーテル。
注記 曲がりくねった管くう(腔)臓器内でもカテーテルを外部からの操作で確実に自由に曲げるこ
とが可能になれば,血管でつながった体内の必要な場所に,治療などのための器具を容易に挿
入することができる。能動カテーテルが実現化するためには,今後様々なマイクロアクチュエ
ータ及びマイクロ機構の開発が重要である。
2.8.11
ファイバー内視鏡(fibre endoscope)
体外から直接見ることのできない体の中を観察するために用いられる器具で,光ファイバを用いて画像
を伝達する方式のもの。
注記 レンズだけで構成された硬性鏡に比べ,細い繊維を束ねているため,柔軟性に富み屈曲できる。
このため,消化管,血管などの中空状の臓器の内部を観察するのに用いられている。また,工
業的にもパイプ内,ジェットエンジン内部の観察などに利用されている。この内視鏡の内部に
マイクロ化した手術器具を組み込むことで,患部を観察しながら手術できるようになった。手
術器具のマイクロ化についても研究開発が進められている。
2.8.12
スマートピル(smart pill)
――――― [JIS C 5630-1 pdf 24] ―――――
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生体内で計測及び薬剤送達を行うロボット。
注記 現在提案されている例として,消化管用スマートピルがある。この提案されたスマートピルは,
計測検体を採取するサンプリング装置,シリコンウエハの上に作られたインテリジェントセン
サ回路,信号の増幅制御器,治療用薬剤のタンク,その放出メカニズム,マイクロ電源などに
よって構成されている。
2.8.13
バイオチップ(bio-chip)
短時間に種々の生物学的反応を起こすことのできるように,微小化した反応部及び検出部を基板上に配
列したチップ。
2.8.14
DNAチップ(DNA chip)
多量の遺伝子を同時に高効率で解析するのが容易になるよう,固体表面にDNAの短い断片を結合させ
高密度に配列したチップ。
2.8.15
プロテインチップ(protein chip)
多量のたんぱく質を同時に高効率で解析するのが容易となるよう,抗体などの種々のたんぱく質に対し
強い親和性をもつ物質を高密度に配列したチップ。
2.8.16
細胞操作(cell handling)
細胞に対して行う種々の操作。
注記 バイオテクノロジーの分野では,細胞を保持して種々の操作が行われる。例えば,細胞の核の
中にガラスの細管を突き刺して,遺伝子を注入するなどの操作である。このような操作には,
光学顕微鏡,マイクロマニピュレータ,マイクロステージ及びマイクロピペットが使用される。
現在の装置の多くは,操作に熟練を要するため自動化装置が開発されることが期待されている。
リモートオペレーション,多自由度マニピュレータ,自動追尾装置,マイクロアクチュエータ
などが開発課題である。
2.8.17
細胞融合(cell fusion)
隣接する細胞の隔壁が消失し,二つの細胞同士が一つの細胞として融合すること。
注記 人為的に細胞融合を起こすことで,同種,異種細胞にかかわらず両方の遺伝情報をもつ融合細
胞を形成することができる。遺伝子操作と並ぶバイオテクノロジーの基幹技術である。ウイル
ス,ポリエチレングリコールなどを用いる方法のほかに,電気パルスを加える方法でも細胞融
合を起こすことができる。一例として,液中に浮遊する細胞を交流電場によって整列させた後,
直流パルスを与えて互いに接した部分で細胞膜を融合させる細胞融合装置がある。マイクロマ
シン技術を用いれば,この装置を多数個並列に設置し多量の細胞を一度に処理するシステムを
製作することができる。
2.8.18
ポリメラーゼ連鎖反応,PCR(微小電気機械デバイス)(polymerase chain reaction)
あるDNA断片と全く同一の複製を,多量に合成するための増幅方法。
――――― [JIS C 5630-1 pdf 25] ―――――
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JIS C 5630-1:2017の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 62047-1:2016(MOD)