この規格ページの目次
27
C 60068-2-80 : 2009
附属書B
(参考)
混合モード信号のランダム振動に関する指針
序文
この附属書は,製品規格作成者及び試験技術者のための情報として,本体に関連する事項を補足するも
のであって,規定の一部ではない。
B.1 概略
再現性を高めることは容易ではない。ランダム信号の統計的性質,供試品の複雑な応答及び解析過程で
発生する誤差のために,供試品に対するランダム入力の真の加速度スペクトル密度が,あらかじめ規定さ
れた許容差内で,表示加速度スペクトル密度に一致するかどうかを確実に予知することは不可能である。
試験の後で,複雑な時間のかかる解析が必要であり,オンラインでの確認は不可能である。
ランダム振動及び混合モード振動試験で採用される可能性のあるデジタル振動制御機器は,ほとんどが
同じ性能をもつと考えられる。振動制御機器の選択可能なパラメータを使用することで,表示加速度スペ
クトル密度と真の加速度スペクトル密度との差に対する不確かさを推定するために,予備計算を行うこと
ができる。この場合,GUM(計測における不確かさの表現ガイド)を参照しているJIS Q 17025で定義す
る他の不確かさの発生源は考慮に入れていない。したがって,これらのパラメータは相互に依存している
ために,二つの加速度スペクトル密度の最適な一致が得られるように選択することができる。
規定の加速度スペクトル密度を得るための等化には,制御ループを何回か繰り返すことが必要であり,
その時間は,ハードウェアの構成,系全体の伝達関数,規定の加速度スペクトル密度の形状,制御アルゴ
リズム,試験前に調節可能な試験パラメータなど幾つかの要因が影響する。その試験パラメータは,解析
最高振動数,振動数分解能及び駆動信号クリッピングである。
ランダム振動の制御アルゴリズムには,制御精度と制御ループタイムとの間には相反する関係があり,
それらは例えば,ループ当たりのレコード数が影響する。高い制御精度を必要とすれば,より多くの入力
データ,つまり,より長いループタイムが必要となり,実際の加速度スペクトル密度の変化に対する応答
が遅くなる。同様に,振動数分解能も誤差及びループタイムに重大な影響を与える。通常,振動数分解能
を狭めると高い制御精度が得られるが,長い制御ループタイムを必要とする。供試品の真の加速度スペク
トル密度と表示加速度スペクトル密度との偏差を最小限にするために,上記の試験パラメータの最適化が
必要である。
振動応答検査は,供試品と振動発生機の相互作用に関する基本的な情報を与える。例えば,この検査で
は,試験用取付具の極端な振動応答倍率又は取付具と供試品との重複した共振を明らかにする。
この附属書は,全体として,混合モード信号のランダム部分にかかわる問題点に焦点を当てる。混合モ
ード信号の正弦波部分にかかわる問題点については,JIS C 60068-2-6を参照する。掃引,掃引速度,トラ
ッキングフィルタなどの問題については,JIS C 60068-2-6の附属書Aを参照する。
B.2 試験に関する要求事項
B.2.1 1点制御及び多点制御
試験要求事項は,基準点で測定した混合モード信号から計算した信号値で確認する。
――――― [JIS C 60068-2-80 pdf 31] ―――――
28
C 60068-2-80 : 2009
例えば,部品の試験のように,剛性の高い供試品若しくは小形の供試品の場合,又は供試品の動的影響
が低く,かつ,試験取付具が試験振動数範囲内では剛体であることが分かっている場合は,監視点が一つ
あればよく,これが基準点になる。
例えば,かなり離れた固定点をもつ機器のように,大形又は複雑な供試品の場合,一つの監視点又は架
空の点を基準点として規定する。架空の基準点の場合,加速度スペクトル密度は,複数の監視点で測定し
た混合モード信号から計算する。大形及び/又は複雑な供試品の場合,架空の基準点を使用することを推
奨する(3.6.3参照)。
B.2.1.1 1点制御
測定は一つの基準点で行い,また,各振動数の制御値を各振動数の規定値と直接比較し制御する。
B.2.1.2 多点制御
多点制御が規定されているか又は必要である場合は,2種類の振動数領域の制御方法がある。
B.2.1.2.1 平均値制御
この方法では,各監視点の信号から制御値を計算する。複合した信号値は,これら監視点における各振
動数の信号値の算術平均をとって求める。
次に,各振動数の算術平均値を,各振動数の既定値と比較する。
B.2.1.2.2 極値制御
この方法では,複合した信号値を,各監視点で測定した信号値の各振動数の最大値又は最小値から計算
する。
最大値を選択した場合,各監視点におけるすべての振動数の値の包絡線を表す値を生成するので,“最大
値制御方法”ともいう。
B.2.2 分布
B.2.2.1 瞬時値の分布
試験に用いるランダム波の駆動信号の瞬時値の分布は,正規分布又はガウス分布として知られており,
式 (B.1) で求める。
1 2)
p( ) /
e /1 (2 (B.1)
2
ここに, P(χ) : 確率密度
σ : 駆動信号のrms値=標準偏差
χ : ランダム波の駆動信号瞬時値
ランダム波駆動信号時刻歴の平均値は,ゼロと仮定している。
ランダム・オン・ランダム及び狭帯域ランダム・オン・ランダムの場合の正規確率密度関数を,図2に
示す。サイン・オン・ランダムの場合の正規確率密度関数は,図4に示す。
B.2.2.2 波高率
波高率は,rms値に対する最大の瞬時値の比率によって,励振(制御)信号の分布を特徴付ける(図2
参照)。
システム,すなわち,電力増幅器,振動発生機,試験用取付具及び供試品がもつ非線形性によって,監
視点におけるランダム波形が変形してしまうことがあるため,波高率は,デジタル振動制御システムの出
力,すなわち駆動信号にだけ適用する。これらの非線形性を広帯域にわたって制御することは,一般に不
可能である。
――――― [JIS C 60068-2-80 pdf 32] ―――――
29
C 60068-2-80 : 2009
この規格では,波高率を2.5以上と規定している(5.1.2参照)。正規分布のランダム波の場合,波高率
2.5は,駆動信号の全瞬時値の約99 %が電力増幅器へ入力されることを意味する。
B.2.3 初期傾斜及び最終傾斜
この規格では,f1とf2との間で平たん(坦)又は任意の形状の加速度スペクトル密度を規定する(図1
参照)。しかし,実際の試験では,初期傾斜及び最終傾斜が付く。加速度rms値を可能な限り既定値に近付
けるためには,傾斜を可能な限り急しゅん(峻)にすればよい。通常,初期傾斜は,6 dB/オクターブと
する。f1における加速度スペクトル密度が高く,また,変位振幅を振動試験装置の能力まで下げる必要が
ある場合は,初期傾斜を大きくしてもよい。ランダム波の変位振幅の計算は,B.2.4のc) を参照する。
一般に,デジタル振動制御機器では,隣接する二つの振動数ライン間で,加速度スペクトル密度に関し
て8 dB程度のダイナミックレンジをもっている。より急しゅんな傾斜を実現するためには,もともと定義
されているよりも狭い振動数分解能を使用することが必要になる。狭い振動数分解能を使用できない場合,
又は最大可能な傾斜にしても必要な変位低減ができない場合には,加速度スペクトル密度の負側の許容差
を下方の振動数範囲で修正することが必要になるときがある。
これらの問題は,f2を超える規定の加速度スペクトル密度の一部として定義されていない最終傾斜には
あてはまらない。この傾斜は,−24 dB/オクターブ,又はそれ以上の傾斜とすることが望ましい。
B.2.4 加速度,速度及び変位のrms値の計算
有効振動数範囲に対する加速度,速度及び変位のrms値は,加速度スペクトル密度,傾斜及び振動数範
囲から求める各部分の二乗平均値を合計した平方根である。
これら二乗平均値は,式 (B.2) 式 (B.8) によって求める(図B.1参照)。
a) 加速度の二乗平均値
M≠−3,かつ,M≠0の場合
M 3/
2 3Sn 1 fn
a fn 1 fn (B.2)
M 3 fn 1
M=−3の場合
fn
a2 ( fn 1 )
(Sn 1 ) ln (B.3)
fn 1
M=0の場合
a2 Sn ( fn 1fn ) (B.4)
ここに, a2 : 加速度の二乗平均値 [(m/s2)2]
S : 加速度スペクトル密度 [(m/s2)2/Hz]
M : 傾斜(dB/オクターブ)
注記1 式 (B.3) において,lnは自然対数である。
b) 速度の二乗平均値
M≠3の場合
2 M/3
2 1 3Sn 1 1 1 fn
v (B.5)
2 M 3 fn 1 fn fn 1
――――― [JIS C 60068-2-80 pdf 33] ―――――
30
C 60068-2-80 : 2009
M=3の場合
2
2 1 Sn 1 fn 1
v ln (B.6)
2 fn 1 fn
ここに, v2 : 速度の二乗平均値 [(m/s)2]
S : 加速度スペクトル密度 [(m/s2)2/Hz]
M : 傾斜(dB/オクターブ)
注記2 式 (B.6) において,lnは自然対数である。
c) 変位の二乗平均値
M≠9の場合
2 M 3/
2 10 3 3Sn 1 1 1 fn
d 2 3 3
(B.7)
4 M 9 fn 1 fn fn 1
M=9の場合
2
103 Sn 1 fn 1
d2 2 3 ln (B.8)
4 fn 1 fn
ここに, d 2 : 変位の二乗平均値 (mm2)
S : 加速度スペクトル密度 [(m/s2)2/Hz]
M : 傾斜(dB/オクターブ)
注記3 式 (B.8) において,lnは自然対数である。
これらの式は,両対数プロットの直線に基づいている。この適用での傾斜は,式 (B.9) によって求める。
Sn 1
log
Sn
M 3 (B.9)
fn 1
log
fn
ここに, S : 加速度スペクトル密度 [(m/s2)2/Hz]
M : 傾斜(dB/オクターブ)
混合モード信号の場合の加速度のrms値は,式 (B.10) によって求める。
2 2
rmsMM rmsR rmsS (B.10)
ここに, rms : 加速度のrms値
MM : 混合モード
R : ランダム
S : 正弦波
――――― [JIS C 60068-2-80 pdf 34] ―――――
31
C 60068-2-80 : 2009
混合モード信号の場合の加速度の振幅値は,式 (B.11) によって求める。
AmpMM CF rmsR AmpS (B.11)
ここに, Amp : 加速度の振幅値
CF : 波高率。通常,3(これは通常,試験仕様
書でランダム波形のクリッピングレベル
について規定する値である。)
MM : 混合モード
R : ランダム
S : 正弦波
図B.1−加速度スペクトル密度及び振動数の関係
B.3 試験手順
試験の目的が適切な加振レベルで供試品が耐える能力及び作動する能力を単に実証するためである場合,
試験は,規定振動数範囲で,この要求事項を実証するのに十分な試験時間を実施すればよい。例えば,疲
労及び機械的変形のような,振動の累積効果に供試品が耐える能力を実証する場合,試験時間は,必要な
応力サイクルを累積するために十分長くすることが望ましいが,これによって試験時間が6.1.4に規定す
る値を超えることがある。
通常,防振装置に取り付けられる機器の耐久性試験では,常に防振装置を取り付けて試験する。適切な
防振装置を使用して試験を実施できない場合,例えば,機器が他の機器と共通の取付装置に組み込まれる
ような場合,機器を防振装置なしで,規定された別の厳しさで試験をしてもよい。試験の厳しさは,試験
に使用する防振装置の各軸方向の伝達率を考慮して決定することが望ましい。防振装置の特性が未知の場
合,B.4.1を参照することが望ましい。
製品規格で,供試品が最低限許容できる構造的強度を実証するために,外付きの防振装置を取り外した
試験又は働かないように固定した試験を追加することがある。この場合,製品規格で適用する厳しさを規
定することが望ましい。
――――― [JIS C 60068-2-80 pdf 35] ―――――
次のページ PDF 36
JIS C 60068-2-80:2009の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 60068-2-80:2005(MOD)
JIS C 60068-2-80:2009の国際規格 ICS 分類一覧
JIS C 60068-2-80:2009の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称