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C 60664-1 : 2009 (IEC 60664-1 : 2007)
4.6 汚損
4.6.1 一般事項
ミクロ環境が絶縁への汚損の影響を決定する。しかし,マクロ環境もミクロ環境を考えるときに考慮し
なければならない。
外郭,カプセル内収納又はハーメチックシールを効果的に使用することによって,その絶縁部の汚損を
減らす手段を講じることができる。汚損を減らすためのこのような手段は,機器が結露を受けるとき又は
通常の動作で機器自身が汚損因子を発生する場合は効果的とはいえない。
小さな空間距離は,固体粒子,じんあい(塵埃)及び水によって完全にブリッジすることがある。した
がって,ミクロ環境での汚損では最小空間距離を定める。
注記1 汚損は,湿気があると導電性を帯びるようになる。汚染水,すす(煤),金属又は炭素ぼこり
で引き起こされる汚損は,本質的に導電性である。
注記2 電離気体及び金属のたい(堆)積による導電性の汚損は,例えば,スイッチギヤ又は制御装
置のアークチェンバといった特殊な場合でだけ起きるので,この規格では取り扱っていない。
4.6.2 ミクロ環境における汚損の等級
沿面距離及び空間距離を評価するために,ミクロ環境における次の四つの汚損度を規定する。
− 汚損度1
どのような汚損も発生しないか又は乾燥状態で非導電牲の汚損だけを発生する。この汚損は,どの
ような影響も及ぼさない。
− 汚損度2
非導電性の汚損は発生するが,時には結露によって一時的に導電性が引き起こされることが予想さ
れる。
− 汚損度3
導電性の汚損が発生する,又は乾燥した非導電性の汚損だが予想される結露のために導電性となる
汚損が発生する。
− 汚損度4
導電性のほこり,又は雨若しくはその他の湿潤状態によって連続的な導電性を発生させる。
4.6.3 導電性汚損に対する対応
沿面距離は,永続的な導電性の汚損(汚損度4)が存在する場合は規定できない。短時間の導電性の汚
損(汚損度3)に対しては,リブ(ひだ)及び溝によって導電性の汚損の経路を連続的にしないように絶
縁物表面を設計してもよい(5.2.2.5及び5.2.5参照)。
4.7 機器とともに提供される情報
製品規格には,機器とともに提供する関連情報及びこれを提供する方法について規定しなければならな
い。
4.8 絶縁材料
4.8.1 比較トラッキング指数 (CTI)
4.8.1.1 シンチレーションがある場合の絶縁材料で起こる反応
トラッキングに関し,絶縁材料は,表面漏れ電流が汚損表面の乾燥によって遮断される場合,その絶縁
材料がシンチレーションの間エネルギーの集中放出から被る損傷に従って大まかに特性を分類できる。シ
ンチレーションがあると絶縁材料は,次の反応を起こす。
− 絶縁材料の分解を生じないが,
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− 電気放電の働きによって絶縁材が消耗(電気侵食)し,
− 固体絶縁物の表面に電気的ストレス及び表面上の電解質汚損の合併効果による導電性経路を形成する
(トラッキング)。
注記 トラッキング又は侵食は,次の状況で起きる。
− 表面漏れ電流のある液体の膜が破壊され,かつ,
− 導電膜が破壊されるときに発生する小さな空げきを放電破壊するのに十分な印加電圧があ
り,かつ,
− 導電膜下の絶縁材料を熱で分解するのに十分な局部的なエネルギーをもたらすために必要
な電流があるとき。
劣化は,電流が流れる時間に従って大きくなる。
4.8.1.2 絶縁材料を分類するためのCTI値
4.8.1.1に従って絶縁材料を分類する方法は存在しない。種々の汚損物質及び電圧の下での絶縁材料の反
応は極めて複雑である。これらの状態の下では,多くの材料は二つ又は三つの特性で表してもよい。CTI
値と4.8.1.3の材料グループとの直接の相関関係は現実的ではない。しかし,絶縁材料の性能は,比較トラ
ッキング指数 (CTI) によるランク付けと比較的高い相対関係をもつことが経験及び試験によって分かっ
てきたため,この規格では,絶縁材料を分類するためにCTI値を用いる。
4.8.1.3 材料グループ
この規格の目的からみて,材料を,CTI値によって4種類のグループに分類する。これらの数値はJIS C
2134の溶液Aによって規定する値である。
グループ分けは,次による。
− 材料グループI : 600≦CTI
− 材料グループII : 400≦CTI<600
− 材料グループIIIa : 175≦CTI<400
− 材料グループIIIb : 100≦CTI<175
保証トラッキング指数 (PTI) は材料のトラッキング特性を検証するために用いる。材料は溶液Aを用い
てJIS C 2134の方法で求め,そのPTIがグループに対して規定する下限値以上の場合には,上記に示した
4種類のグループの一つに含めることができる。
4.8.1.4 比較トラッキング指数 (CTI) の試験
JIS C 2134による比較トラッキング指数 (CTI) の試験は,試験条件下における種々の絶縁物の特性を比
較するように設計されている。これは,定性比較を示すが,導電路 (tracks) を形成する傾向をもつ絶縁材
料の場合は,定量比較も示す。
4.8.1.5 導電路を形成しない材料
導電路を形成しないガラス,セラミック又はその他の無機物の場合には,沿面距離は絶縁協調のために
関連空間距離の値よりも大きくする必要はない。表F.2の不平等電界に対する規定値が適している。
4.8.2 耐電圧特性
絶縁物の耐電圧特性は,5.3.1,5.3.2.2.1及び5.3.2.3.1で規定するストレスを考慮して製品規格に反映さ
せる。
4.8.3 温度特性
絶縁物の温度特性は,5.3.2.2.2,5.3.2.3.2及び5.3.3.5で規定するストレスを考慮して製品規格に反映させ
る。
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注記 IEC 60216も参照する。
4.8.4 機械的及び化学的特性
絶縁物の機械的及び化学的特性は,5.3.2.2.3,5.3.2.3.3及び5.3.2.4で規定するストレスを考慮して製品規
格に反映させる。
5 要求事項及び規定値の決定ルール
5.1 空間距離の規定値の決定
5.1.1 一般事項
空間距離は,要求されるインパルス耐電圧に耐えるように規定しなければならない。低圧系統電源に直
接接続する機器の場合,要求されるインパルス耐電圧は,4.3.3.3を基に規定する定格インパルス電圧とす
る。定常状態の実効値電圧,短時間過電圧又は反復ピーク電圧が,インパルス耐電圧のために要求される
ものより大きな空間距離を必要とする場合は,表F.7aの該当値を使用しなければならない。インパルス耐
電圧,定常状態の実効値電圧,短時間過電圧及び反復ピーク電圧を考慮した結果から最大の空間距離を選
択しなければならない。
注記 定常状態の実効値電圧又は反復ピーク電圧に対する規定値を決めると,これらの電圧を連続的
に印加したとき絶縁破壊にマージンがない状況になる。製品規格では,このことを考慮するの
が望ましい。
5.1.2 規定値の決定の基準
5.1.2.1 一般事項
空間距離の規定値は,次の影響因子を考慮して選択しなければならない。
− 機能絶縁のためには5.1.5,基礎,付加及び強化絶縁では5.1.6によるインパルス耐電圧
− 定常状態耐電圧及び短時間過電圧(5.1.2.3参照)
− 反復ピーク電圧(5.1.2.3参照)
− 電界の状態(5.1.3参照)
− 標高 : 表F.2及び表F.7aに規定する空間距離は,2 000 mまでの標高で使用する機器に対する耐電圧
性能を示している。より高い標高で使用する機器の場合は,5.1.4を適用する。
− ミクロ環境における汚損の等級(4.6.2参照)
振動又は外力などの機械的な影響は,より大きな空間距離を必要とすることがある。
5.1.2.2 過渡過電圧に耐える規定値の決定
表F.2に従って,要求されるインパルス耐電圧に耐えるように空間距離を規定しなければならない。低
圧系統電源に直接接続される機器の場合,要求されるインパルス耐電圧は,4.3.3.3を基に規定された定格
インパルス電圧とする。
注記 JIS C 60664-5は,2 mm以下の空間距離の規定値をより正確に決定するための代替手段を提供
している。
5.1.2.3 定常電圧,短時間過電圧又は反復ピーク電圧に耐える規定値の決定
定常電圧(直流又は50/60 Hz),短時間過電圧又は反復ピーク電圧のピーク値に耐えるように,空間距離
は,表F.7aに基づいて規定しなければならない。
空間距離は,表F.7aに従った規定値を,汚損度を考慮して,表F.2と比較し,大きいほうの値を選択す
る。
注記 30 kHzを超える周波数に対する要求事項は,JIS C 60664-4で規定している。
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5.1.3 電界の状態
5.1.3.1 一般事項
導電性部分(電極)の形状及び配置は,電界の平等性に影響を及ぼすので,定められた電圧に耐える空
間距離が必要である(表F.2,表F.7a及び表A.1を参照)。
5.1.3.2 不平等電界の状態(表F.2のケースA)
不平等電界の状態では表F.2の値以上の空間距離は,導電性部分の形状及び配置に関係なく,また,耐
電圧試験の検証なしで用いることができる。
絶縁物の外郭にある開口部を通しての空間距離は,電極の形状がコントロールできないため電界の平等
性に悪影響を及ぼすおそれがあるので不平等電界の規定値を下回ってはならない。
5.1.3.3 平等電界の状態(表F.2のケースB)
ケースBのための表F.2の空間距離の値は,平等電界の状態だけに適用する。その値は,導電性部分の
形状及び配置が通常一定の電界が得られるよう設計されている場合だけに使用できる。
不平等電界における規定値より小さい空間距離は,耐電圧試験の検証を必要とする(6.1.2参照)。
注記 空間距離が小さい値の場合には,汚損があると電界の平等性が低下することがあるので,ケー
スBの値より大きな空間距離を必要とする。
5.1.4 標高
表F.2及び表F.7の規定値は,海抜2 000 mまでの標高に対して有効であるので,2 000 mを超える標高
の場合の空間距離では,表A.2で規定する標高補正係数を適用する。
注記 平等電界の場合の空気中における空間距離の破壊電圧(表A.1のケースB)は,パッシェンの
法則に従って電極間の距離と気圧との積に比例する。そのため,ほぼ海面で記録された実験デ
ータは,海抜2 000 mと海面との間の気圧差に従って修正する。同様の補正を,不平等電界に
対しても行う。
5.1.5 機能絶縁の空間距離の決定
機能絶縁の空間距離の場合,要求される耐電圧は,機器の定格[特に定格電圧及び定格インパルス電圧
(表F.2参照)]の下で空間距離の両端に発生すると予想される最大インパルス電圧,定常電圧(表F.7参
照)又は反復ピーク電圧(表F.7参照)とする。
5.1.6 基礎,付加及び強化絶縁の空間距離の決定
基礎及び付加絶縁の空間距離は,それぞれ次を考慮して,表F.2に規定するように決定しなければなら
ない。
− 4.3.3.3又は4.3.3.4.1による定格インパルス電圧
− 4.3.3.4.2によるインパルス耐電圧要求事項
また,次を考慮して,表F.7aに規定するように決定しなければならない。
− 4.3.2.2による定常電圧
− 4.3.4による反復ピーク電圧
− 4.3.5による短時間過電圧
インパルス電圧に対する強化絶縁の空間距離は,表F.2に規定するように定格インパルス電圧に対応し
て決定しなければならないが,4.2.3に規定する推奨値のうち基礎絶縁に対する規定値の1段階上の値とし
なければならない。4.3.3.4.2に従って基礎絶縁に対して要求されるインパルス耐電圧が,推奨値以外の場
合には,強化絶縁は,基礎絶縁に対して要求されるインパルス耐電圧の160 %に耐えるように規定値を決
定する。
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注記1 協調が得られている系統において,要求されるインパルス耐電圧には,要求される最小値を
超える空間距離は不必要である。ただし,絶縁協調以外の理由で,空間距離を大きくするこ
とが必要である場合もある(例えば,機械的影響によって)。このような場合であっても,
6.1.2.2の試験電圧は,機器の定格インパルス電圧に基づいた値にとどめる。なぜなら,関連
固体絶縁物に過度のストレスが加わることがあるからである。
定常電圧,反復ピーク電圧及び短時間過電圧に対する強化絶縁の空間距離の規定値は,基礎絶縁に対し
て要求される耐電圧の160 %に耐えるように,表F.7aの規定値から決定しなければならない。
基礎絶縁及び付加絶縁を別々に試験することができない二重絶縁を施した機器の場合,この絶縁システ
ムは,強化絶縁とみなす。
注記2 絶縁材料の接触可能な表面に対する空間距離の規定値を決定する場合には,このような表面
は,金属はく(箔)で覆われていると仮定する。詳細については,製品規格で規定すること
ができる。
5.1.7 絶縁距離
JIS C 0365の8.3.2を参照。
5.2 沿面距離の規定値の決定
5.2.1 一般事項
表F.4の値は,大半の場合に適用できる。2 mm以下のより正確な沿面距離の規定値の決定が必要な場
合,JIS C 60664-5を参照する。
5.2.2 影響因子
5.2.2.1 一般事項
沿面距離は,次の影響因子を考慮して表F.4から選択しなければならない。
− 4.3.2による電圧(5.2.2.2参照)
− ミクロ環境(5.2.2.3参照)
− 沿面距離の配置及び場所(5.2.2.4参照)
− 絶縁物表面の形状(4.6.3及び5.2.2.5参照)
− 絶縁材料(4.8.1参照)
− 電圧ストレスの加わる時間(4.5参照)
注記 表F.4の値は,既存の経験的なデータに基づいており,多くの場合に適用できる。ただし,機
能絶縁に関しては,表F.4の沿面距離以外の沿面距離値を適用することが適切な場合がある。
5.2.2.2 電圧
沿面距離を決定するために基準となる電圧は,該当箇所に長時間加わる電圧の実効値とする。この電圧
は,該当する箇所の動作電圧(5.2.3参照),定格絶縁電圧(5.2.4参照)又は定格電圧(5.2.4参照)とする。
過渡過電圧は,通常トラッキング現象に影響が少ないため無視する。ただし,短時間又は機能的過電圧
は,その持続時間及び発生頻度がトラッキングに影響を及ぼすので考慮しなければならない。
5.2.2.3 汚損
沿面距離の規定値の決定に関して4.6.2で規定のミクロ環境における汚損の等級の影響は,表F.4で考慮
する。
注記 ある種の機器の内部においては,異なるミクロ環境の状態が存在し得る。
5.2.2.4 沿面距離の配置及び場所
必要に応じて,製造業者は,機器又は構成部品について,沿面距離が,設計の対象にない汚損のたい積
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