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C 62133-2 : 2020
A.4 温度及び充電電流の留意点
A.4.1 一般事項
充電は化学反応を起こし,温度の影響を受ける。同じ上限充電電圧及び充電電流の場合でも,副反応の
量又は充電生成物の状態は,温度に依存する。
したがって,低温度域及び高温度域では,上限充電電圧及び/又は最大充電電流を小さい値にしなけれ
ばならない。これらの温度域は,安全性の見地からすれば,標準温度域よりも,厳しい条件である。
典型的なリチウム二次単電池が安全に充電できる基本的な作動領域を,図A.1に示す。
A.4.2 標準温度範囲
A.4.2.1 一般事項
標準温度域内では,リチウム二次単電池は,安全性の見地から規定した上限充電電圧及び最大充電電流
で,充電が可能である。
上限試験温度及び下限試験温度は,それぞれ標準温度範囲の上限温度及び下限温度であって,表2によ
る。例えば,正極材にコバルト酸リチウム,負極材に黒鉛を使用しているリチウム二次単電池の標準温度
範囲は,10 ℃45 ℃である。典型的なリチウム二次単電池の標準温度範囲は,10 ℃45 ℃である。
A.4.2.2 異なる標準温度範囲を適用する場合の安全性留意点
リチウム二次単電池において,電解液及び他の因子の熱安定性の違いによって,10 ℃45 ℃と異なる
温度範囲を推奨している場合がある。新規の標準温度範囲を適用する場合,7.3.1,7.3.4,7.3.5及び7.3.9
に規定する試験は,異なる試験温度で充電された電池を使用して行われなければならない。ただし,新規
の上限試験温度より高い試験温度又は新規の下限試験温度より低い試験温度で,7.3.1,7.3.4,7.3.5及び
7.3.9に規定する単電池の試験結果がある場合には,これらの箇条と同じ上限充電電圧を使用した,新規の
上限試験温度又は新規の下限試験温度での7.3.1,7.3.4,7.3.5及び7.3.9に規定する単電池の試験を省略し
てもよい。さらに,異なる試験温度で試験できるように,試験温度の変更理由を説明する根拠資料を,保
管しなければならない。
試験温度の変更理由を説明する根拠資料の例を,次に示す。
a) 表2に規定する上限試験温度を超える場合の変更理由を説明する根拠資料は,次による。
1) 新規の上限試験温度(典型的なリチウム二次単電池の標準温度域の上限45 ℃を超える)で充電さ
れた電池の,正極活物質の結晶構造の構造安定性が,45 ℃で充電された電池と同等か,又はそれ以
上であることを証明する試験結果。
2) 新規の上限試験温度に5 ℃加えた温度で充電され,上限充電電圧で,7.3.1,7.3.4,7.3.5及び7.3.9
に規定する要求事項に適合することを証明する試験結果。
b) 表2に規定する下限試験温度より低い場合の変更理由を説明する根拠資料は,次による。
1) 新規の下限試験温度(10 ℃未満)で充電された電池の負極活物質のリチウム受入性が,10 ℃で充
電された電池と同等か,又はそれ以上であることを証明する試験結果。
2) 新規の下限試験温度から−5 ℃下げた温度で充電され,上限充電電圧で,7.3.1,7.3.4,7.3.5及び7.3.9
に規定する要求事項に適合することを証明する試験結果。
A.4.3 高温度域
A.4.3.1 一般事項
高温度域の温度は,標準温度域より高い。高温度域において,単電池の充電は,標準温度域で規定する
上限充電電圧値及び/又は最大充電電流値をより低い値にして適用してもよい。
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A.4.3.2 安全面の説明
リチウム二次単電池を標準温度域と同じ条件でより高い温度で充電する場合,より多くリチウム量が正
極活物質から移動する。移動するリチウム量が増すにつれ,正極の結晶構造の安定性の劣化につながるた
め,電池の安全性能が低下傾向となる。
同様に,高温度域と熱暴走が発生する温度域との間の温度差が相対的に小さくなる。その結果として,
内部短絡のような事象が発生した場合,電池が熱暴走しやすくなる。
結果的に,高温度域での充電条件は,次のとおり,リチウム二次単電池の表面温度で異なる。
− リチウム二次単電池の表面温度が上限試験温度(T3)より高い場合,高温度域向けに特別に指定した,
別の充電条件を使用する。
− リチウム二次単電池の表面温度が高温度域の上限(T4 : 上限充電温度)より高い場合,いかなる充電
電流でも充電してはならない。
A.4.3.3 高温度域の充電条件を指定する場合の安全性の考察
高温度域の充電条件は,電解液及び他の要因の熱安定性を基に指定する場合がある。高温度域の充電条
件を指定する場合,電池製造業者が指定したこれらの条件で充電し,7.3.1,7.3.4,7.3.5及び7.3.9に規定
する試験を行い,それぞれに規定する要求事項に適合しなければならない。
A.4.3.4 高温度域の上限温度を新規に指定する場合の安全性の考察
正極活物質及びその他の要因の熱安定性の違いによって,図A.1に示す高温度域と異なる上限を新規に
適用する場合がある。高温度域の上限を新規に指定する場合,7.3.1,7.3.4,7.3.5及び7.3.9に規定する試
験を行い,それぞれに規定する要求事項に適合しなければならない。さらに,新規の高温度域で使用可能
であることを示すため,変更理由を説明する根拠資料を,保管しなければならない。
注記 この規格では,既定の上限試験温度(T3)を表2で規定しているのと違い,既定の高温度域の
上限(T4 : 上限充電温度)を規定していない。したがって,既定の上限充電温度T4は,標準温
度範囲の上限である上限試験温度T3と同じ温度である。
高温度域の変更理由を説明する根拠資料の例を,次に示す。
a) 高温度域の新規の上限(T4 : 上限充電温度)で充電した単電池の,正極活物質の結晶構造の安定性が,
現行の高温度域の上限で充電した単電池と同等か,又はそれ以上であることを証明する試験結果。
b) 高温度域の新規の上限(T4 : 上限充電温度)に+5 加えた温度で充電し,7.3.1,7.3.4,7.3.5及び7.3.9
に規定する方法で試験した単電池は,それぞれに規定する要求事項に適合することを証明する試験結
果。
なお,このときの試験充電電圧及び試験充電電流は,電池製造業者が指定する。
A.4.4 低温度域
A.4.4.1 一般事項
低温度域の温度は,標準温度域より低い。低温度域において,単電池の充電は,標準温度域で規定する
上限充電電圧値及び/又は最大充電電流値をより低い値にして適用してもよい。
A.4.4.2 安全面の説明
リチウム二次単電池を低温度域で充電する場合,物質移動速度が減少し,負極活物質(炭素材料)のリ
チウムイオン受入性が悪くなる。その結果,金属リチウムが負極活物質表面に生成されやすくなる。この
条件において,単電池は熱安定性が低くなり,過熱及び熱暴走を起こす可能性がある。
同様に,低温度域において,リチウムイオンの受入性は温度に大きく依存する。直列接続した複数の単
電池で構成するリチウム二次組電池において,温度の違いによってそれら複数の単電池のリチウムイオン
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の受入性は異なることがある。この場合,十分な安全性が確保できない可能性がある。
結果的に,低温度域での充電条件は,次のとおり,リチウム二次単電池の表面温度で異なる。
− リチウム二次単電池の表面温度が下限試験温度(T2)より低い場合,低温度域向けに特別に指定した,
別の充電条件を使用する。
− リチウム二次単電池の表面温度が低温度域の下限(T1 : 下限充電温度)より低い場合,いかなる充電
電流でも充電してはならない。
A.4.4.3 低温度域の充電条件を指定する場合の安全性の考察
低温度域の充電条件は,負極活物質のリチウム受入性などの設計要因を基に指定する場合がある。低温
度域の充電条件を指定する場合,電池製造業者が指定したこれらの条件で充電したリチウム二次単電池を
7.3.1,7.3.4,7.3.5及び7.3.9に規定する方法で試験を行い,それぞれに規定する要求事項に適合しなけれ
ばならない。
A.4.4.4 低温度域の下限温度を新規に指定する場合の安全性の考察
負極活物質及びその他の要因のリチウム受入性の違いによって,図A.1に示す低温度域と異なる下限を
新規に適用する場合がある。低温度域に新規の下限を指定する場合,7.3.1,7.3.4,7.3.5及び7.3.9に規定
する試験を行い,それぞれに規定する要求事項に適合しなければならない。さらに,新規の低温度域で使
用可能であることを示すため,変更理由を説明する根拠資料を,保管しなければならない。
注記 この規格では,既定の下限試験温度(T2)を表2で規定しているのと違い,既定の低温度域の
下限(T1 : 下限充電温度)を規定していない。したがって,既定の下限充電温度T1は標準温度
範囲の下限である下限試験温度T2と同じ温度である。
低温度域の変更理由を説明する根拠資料の例を,次に示す。
a) 低温度域の新規の下限(T1 : 下限充電温度)で充電した単電池の,負極活物質へのリチウム受入性が,
現行の低温度域の下限で充電した単電池と同等か,又はそれ以上であることを証明する試験結果。
b) 低温度域の新規の下限(T1 : 下限充電温度)から−5 ℃下げた温度で充電し,7.3.1,7.3.4,7.3.5及び
7.3.9に規定する方法で試験した単電池は,それぞれに規定する要求事項に適合することを証明する試
験結果。
なお,このときの試験充電電圧及び試験充電電流は,電池製造業者が指定する。
A.4.5 充電電流の適用範囲
A.4.2A.4.4に指定する充電電流は,50 kHzを超える交流電流(リプル電流などを想定)については,
リチウムイオンの移動がそれに応答しないため,対象としない(50 kHzを超えるリプル電流は,許容可能
である。)。
A.4.5A モデル採用の決定
a) モデル採用の決定の考え方を,次に示す。
− 表2の上限充電電圧,上限試験温度及び下限試験温度は,現在主流である正極材料にコバルト酸リ
チウム及び負極材料に炭素を使用したモデルに基づき規定したものである。
− 単電池の性能特性の変更のため,表2に規定する上限充電電圧,上限試験温度及び下限試験温度の
ままで,電池の材料構成を変更したモデルを採用する場合がある。
− 変更したモデルに対する根拠資料は,次の資料を取得し,保管する。ただし,材料構成が同じモデ
ルは,根拠資料を共通に使用することが可能である。
b) モデル採用を決定する根拠資料の例を,次に示す。
1) 材料に関する根拠 正極材料の構造安定性,負極材料のリチウム受入性,電解液の構造安定性の一
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つ又は組合せの材料特性が,正極材料にコバルト酸リチウムを使用した単電池を表2に規定する上
限充電電圧で充電した状態の材料特性と比較し,同等以上の安全性をもつことを証明する試験結果。
2) 単電池に関する根拠 上限試験温度を5 ℃上げた温度及び下限試験温度を5 ℃下げた温度におい
て,上限充電電圧を7.1.2の第2手順に適用し,上限試験温度を5 ℃上げた試験温度,及び下限試
験温度を5 ℃下げた試験温度で,7.3.1,7.3.4,7.3.5及び7.3.9に規定する単電池の試験結果が,そ
れぞれに規定する要求事項に適合することを確認する。
なお,上限試験温度より高い試験温度又は下限試験温度より低い試験温度で,7.3.1,7.3.4,7.3.5
及び7.3.9に規定する単電池の試験結果がある場合には,同じ上限充電電圧を使用した,上限試験温
度又は下限試験温度での7.3.1,7.3.4,7.3.5及び7.3.9に規定する単電池の試験を省略することが可
能である。
A.4.6 放電に関する留意点
A.4.6.1 一般事項
リチウム二次単電池の放電時の一般作動域を図A.2に示す。
図A.2−放電時のリチウム二次単電池作動域
A.4.6.2 放電終止電圧及び安全面の説明
リチウム二次単電池は,製造業者が指定する放電終止電圧より低い電圧まで放電しないことが望ましい。
放電終止電圧より低く放電した場合,集電体は負極電極から溶出し,充電時に局所的に析出することがあ
る。この析出は正極側に向かって成長し,内部短絡又は液漏れの原因となる。
リチウム二次単電池の電圧が規定された放電下限電圧より低くなった場合,リチウム二次単電池の再充
電は避けることが望ましい。
A.4.6.3 放電電流及び温度範囲
放電の間,リチウム二次単電池表面温度は,上限放電温度を超えないことが望ましい。リチウム二次単
電池表面温度が放電前に放電開始上限温度を超えた場合,放電を開始しないことが望ましい。放電の間,
最大放電電流を超えないことが望ましい。
A.4.6.4 放電電流の適用範囲
A.4.6.3で規定した最大放電電流は,リチウムが単電池内で応答できない50 kHzを超える交流電流(リ
プル電流など)には適用しない。
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A.5 試料の準備
A.5.1 一般事項
7.3.9に規定する試験の試料の準備について,次に補足する。
A.5.2 内部短絡用ニッケル小片の配置作業
内部短絡用ニッケル小片の配置作業は,周囲温度20 ℃±5 ℃,露点−25 ℃以下で行う。
A.5.3 充電済み単電池の解体
充電済み単電池を解体し,電極体(電極及びセパレータで構成した巻取体)を取り出す(図A.6及び図
A.9参照)。
A.5.4 ニッケル小片の形状及び材質
ニッケル小片の形状を,図A.3に示す。
0.05mm
寸法 : 高さ0.2 mm +
−0.03mm ,幅0.1 mm(ばりを含んで±0.02 mm),一辺1.1 mm(±0.25 mm)のL字形
(角は90°±10°)
材質 : 純度99 %(質量分率)以上
単位 mm
図A.3−ニッケル小片の形状
A.5.5 円筒形リチウム二次単電池へのニッケル小片の配置
A.5.5.1 電極体へのニッケル小片の配置
電極体へのニッケル小片の配置は,次による。
a) 円筒形リチウム二次単電池の正極活物質部と負極活物質部との間に,ニッケル小片を配置する(図A.4
参照)。
1) 最外周に正極アルミニウムはく部がある場合は,正極活物質部と負極活物質部との間で短絡させる
ため,アルミニウムはく部を正極活物質とアルミニウムはく部との境界部でカットする。
2) 正極活物質部とセパレータとの間に,ニッケル小片を配置する。ニッケル小片の配置は,図A.4に
示す。ニッケル小片の位置はアルミニウムはく部のカット端から20 mmとし,ニッケル小片の向き
はL字の角が巻込み方向とする。
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JIS C 62133-2:2020の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 62133-2:2017(MOD)
JIS C 62133-2:2020の国際規格 ICS 分類一覧
- 29 : 電気工学 > 29.220 : 電池及び蓄電池 > 29.220.30 : アルカリ二次電池(アルカリ蓄電池)
JIS C 62133-2:2020の関連規格と引用規格一覧
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- 規格名称
- JISC60068-2-27:2011
- 環境試験方法―電気・電子―第2-27部:衝撃試験方法(試験記号:Ea)
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- JISZ8051:2015
- 安全側面―規格への導入指針