JIS C 8944:2009 多接合太陽電池分光感度特性測定方法 | ページ 4

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この方法は無意味となる。
回折格子分光器は非対称光学系であるため,単色光の放射照度の場所むらを小さくすることは困難であ
る。分光器内部で発生した放射照度の場所むらを照射光学系の反射鏡軸外しの組合せによって補償し小さ
くすることができるが,それを実施しても特定波長において±2.5 %程度が限界で,装置全体としては5 %
程度が実際に到達可能なレベルの上限である。
B.2.2 単色光の空間的波長均一度
分光器出射スリット上では,出射光の中心波長はスリット半値幅の範囲でスリット幅方向の位置に応じ
変化している。スリット像を太陽電池の上に直接結像すると,空間的に波長の差異が発生する。キセノン
ランプを光源として使用した場合,800 nm1 000 nmの間に輝線スペクトルが多く,出射スリット開口上
においては,位置による波長ずれと同時に,特定の位置に強い輝線スペクトルが存在することによる照度
の不均一が発生する。出射スリットが太陽電池の表面上に結像されると,大きな不均一が発生し,異常な
測定結果を与えることとなる。
単色光照射光学系は,分光器内部の回折格子表面が太陽電池の上に結像するようにし,太陽電池の表面
上に空間的な波長の差異を発生しない光学設計が必要である。
B.2.3 光源の時間的安定度
単色光用光源の照度は時間とともに変動するので,光をビームスプリッタによって取り出し,照度をモ
ニタして変動を補正すれば,0.5 %程度の安定度が得られる。
カラーバイアス光は,特定の要素セルの電流律束条件を実現させるために使用する。このカラーバイア
ス光によって測定信号中に直流成分を発生させる。そのため,カラーバイアス光照度信号の安定度が低く
時間的に変動すると,その変動分が分光感度測定のときに雑音として信号に混入し,測定結果のSN比を
低下させる。したがって,カラーバイアス光の光源には,できる限り安定度の高い光源を使用することが
望ましい。
B.2.4 単色光スペクトル波形
波長純度は,分光器の半値幅に依存して決定され,スリット関数と光源スペクトルとを乗じた波形のス
ペクトルとなる。キセノンランプのように輝線スペクトルが多数存在する光源の場合には,単色光の重心
波長が分光器の読み波長と異なる場合が発生する。
ハロゲンランプを使用した場合でも,光源のスペクトルの傾きと回折格子反射率特性とから,波長のず
れが生じることがある。
このような場合,単色光の分光放射照度を測定すれば,これらの困難は回避できる。
B.2.5 迷光
分光感度特性測定のときに発生する迷光は,光学素子表面上の散乱ではなく,主に分光器内部の多重回
折である。この迷光は,適切なカットフィルタの使用と内部遮光処理とによって,実用上問題がない程度
に回避できる。ダブルモノクロメータの使用でも迷光を低減させることができるが,光量の低減及び光学
素子の増加によって発生する単色光の放射照度の場所むらの増大が免れない。
また,照射及び集光光学系において窓板表面からの反射は,迷光の原因となることがあるので,光軸に
対し角度をもって配置するなどの配慮が必要である。特に光量を調整するNDフィルタ,セル表面の反射
光などには注意が必要である。
B.2.6 光量調整
単色光照度は,波長によって大きく変動する。これは光源スペクトル,分光器,その他の光学系に依存
する。太陽電池の分光感度特性を全波長領域において安定に測定するためには,単色光の照度を調整し,

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一定に保つ機能を搭載することが望ましく,透過率が連続的に変化する回転型透過率可変NDフィルタを
使用してこの機能を実現する場合が多い。このフィルタは,場所によって透過率が変わるので,フィルタ
が試料上に結像しないように設計する。光を低レベルに押さえるときは,透過光よりも反射光が多くなり
迷光となる可能性があるので,考慮して設計することが必要である。
B.2.7 チョッパ位相
チョッパによって光を断続的に遮断するが,そのチョッパ羽根形状が太陽電池表面に結像されると,太
陽電池表面の各部からの電流信号に位相差が生じる。これらの電流に対してロックインアンプは一つの位
相しか設定できないため,太陽電池表面で位相の合致しない部分からの電流信号は,小さい値として測定
される。このような状況では正確な電流値が測定できない。スリット結像位置にチョッパを配置し大きな
直径のチョッパを使用することによって,立ち上がり時間及び立ち下がり時間を小さくして,位相ずれを
小さくすることができる。この他に,太陽電池表面に対し,チョッパが結像しないで,無限大位置となる
ように設計することによって,太陽電池にすべて同じ位相の光が照射されるので,位相ずれを回避するこ
とができる。
B.3 測定誤差
分光感度測定における計測誤差の原因としては,次の項目が考えられる。測定データを使用するときに
は,これらの影響をよく吟味して誤差を評価しておく必要がある。
誤差要素は,測定ごとのばらつきを発生し,測定再現性を低下させるもの(A)と,固定的に分光感度波形
の偏りを発生させるもの(B)との二つの種類がある。前者については,繰り返し測定することによって低減
することができる。後者の誤差は,波形のひずみを生み,太陽電池の校正値に影響を及ぼす可能性がより
大きい。
a) 放射光源安定度(A) 単色光源の発光照度が変動すると,測定値が影響を受ける。光源照度をモニタし
変動を補正することによって,これは低減することができる。しかし,あまりに安定度が低いときは,
測定データの不確かさの値は大きくなる。
b) カラーバイアス安定度(A) カラーバイアス光照度が変動すると,チョッパと同じ周波数成分の変動は
ロックインアンプを通り,雑音として信号に重畳する。これが不確かさを増加させる。
c) 測定回路(A) ロックインアンプその他の信号処理回路のもつ雑音は,測定値の不確かさの原因となる。
d) 基準検知器(B) 基準検知器の校正の不確かさは,測定値の不確かさに伝ぱ(播)する。
e) カラーバイアス光照度及び要素セルの並列抵抗(B) カラーバイアス光照度が不足したり,要素セルの
並列抵抗が低い場合,測定された分光感度特性が他の要素セルの影響を受けるため,スペクトル波形
がひずむ。
f) モノクロメータの半値幅(B) 半値幅が拡大すると,測定する分光感度波形がひずみ,誤差を発生する。
また,波長特性が波長によって大きく変化する場合,半値幅が拡大すると更に誤差を大きくする。
g) 単色光の放射照度の場所むら(B) 単色光の放射照度の場所むらが大きく,基準検知器で全面積を測定
しない場合は,放射照度の場所むらが系統的な誤差となる。太陽電池内部での照射光照度が異なるた
め,単色光照度の測定精度が低下し,太陽電池分光感度の場所による違いもそのまま誤差となる。

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参考文献
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of Nonconcentrator Multijunction Photovoltaic Cells and Modules
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[3] Characterization of the Silicon-Based Thin Film Multi-Junction Solar Cells
Yoshihiro Hishikawa Symposium A
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[4] WCPEC-3 3rd World Conference on Photovoltaic Energy Conversion May 11−13
SPECTRAL MEASURING CONDITION FOR SOLAR CELL
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[5] CIE Publication 63, The Spectroradiometric Measurement of Light Sources,CIE 63-1984
[6] Optimization of measurement condition of photovoltaic devices by Fourier analysis (to be Published)
Tsutomu Okura , Sanekazu Igari, Mitsuru Imaizumi
[7] ISO Guide of the expression of uncertainty in measurement (1995)

JIS C 8944:2009の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 8944:2009の関連規格と引用規格一覧