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図A.2−多接合太陽電池の等価回路
図A.3−多接合太陽電池の動作特性
A.2 多接合太陽電池の分光感度測定
多接合太陽電池の分光感度測定は,要素セルごとの分光感度特性の分離測定である。このとき,単色光
源及びカラーバイアス光を適切に組み合わせて測定しなければならない。
多接合太陽電池の出力端を短絡して電流を測定するとき,測定対象とする要素セルの短絡電流が他の要
素セルの短絡電流よりも小さい場合は,セル全体の短絡電流は,測定対象とする要素セルの短絡電流とほ
ぼ同じ値となる(図A.4)。カラーバイアス光の適切な選択によって,この状態を再現できる。
――――― [JIS C 8944 pdf 11] ―――――
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図A.4−多接合太陽電池における各要素セルの動作特性
適切なカラーバイアス光照射下では,測定対象とする要素セルの感度帯域に相当する波長の光を照射す
ると短絡電流が変化し,その変化量は,多接合太陽電池の短絡電流の変化量と等しい。測定対象外とする
要素セルの感度帯域に相当する波長の光を照射しても,測定対象外の要素セルの短絡電流は変化するが,
セル全体の短絡電流は,測定対象とする要素セルの短絡電流(最も小さい)と同等となるため,信号は観
測されない。
なお,測定対象とするセルの出力端には,測定対象外とする要素セルの開放電圧Vocに等しい逆バイア
ス電圧が印加される。測定対象とするセルの出力端を短絡状態とするためには,測定対象外とする要素セ
ルのVocに近い電圧を電気バイアスとしてセルに印加しなければならない。
A.3 多接合太陽電池の分光感度測定における誤差要因
要素セルの低い並列抵抗,大きな直列抵抗,不適切なバイアス光,又は電気バイアスによって,感度帯
域外に本来存在しない感度ピークの出現(図A.5グラフA部分),感度帯域内での測定値の低下(図A.5
グラフB部分)などの誤差が生じる。
図A.5−測定対象外の要素セルの影響
多接合太陽電池の分光感度測定は,出力電圧一定の条件で行う。ここで,全体の出力電圧は各要素セル
――――― [JIS C 8944 pdf 12] ―――――
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の出力電圧の合計であるので,ある要素セルの電圧が増加すると,他の要素セルの電圧は同じ量だけ減少
する。したがって,測定対象外とする要素セルの電圧変化をΔVとすると,測定対象とする要素セルの電
圧変化は,全体の出力電圧を一定に保つために−ΔVとなる。また,各要素セルの電流変化ΔIは,それぞ
れが直列に接続されているため,すべて同じ値となる。
測定対象外とする要素セルに,その感度帯域の波長の単色光を照射すると,特性は,図A.6の点線のよ
うに変化する。出力端を短絡し,電気バイアスを0 Vにした場合,その動作点は,図A.6の小さい四角形
部分にある。また,単色光がない場合の動作点は星印マークの位置となる。単色光が入射し,測定対象外
要素セルの特性が点線のように変化すると,動作点は,黒丸印の点に変化する。この場合,測定対象とす
る要素セルの電圧変化と,測定対象外とする要素セルの電圧変化とは,逆方向の同じ値となるが,電流変
化はどちらも同じ値となる。図A.6に示すように,測定対象とする要素セルの特性は単色光の存在によっ
て変化しないにもかかわらず,電流の変化が観測される。これが,感度帯域外の波長で信号が発生する理
由である。
図A.6−測定対象外の要素セルの影響A
――――― [JIS C 8944 pdf 13] ―――――
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図A.7−測定対象外の要素セルの影響B
測定対象とする要素セルに感度帯域の波長の単色光を照射すると,実際の電流変化は,図A.7のΔIphoto
となるが,測定される電流変化ΔIはそれよりも小さい値となる。これが,測定対象とする要素セルの分
光感度測定値が,真の値よりも小さい値として観測される理由である。
これらの現象は,要素セルの特性である低い並列抵抗及び高い直列抵抗に起因するため不可避であるが,
できるだけ弱い照度の単色光で測定すること,測定対象外とする要素セルへのバイアス光照度を高くする
こと,適切な電気バイアスを選択することなどによって誤差は低減できる。
以上の説明は,接合の数が増加しても同じである。多接合太陽電池の分光感度測定値は,各要素セルの
分光感度(SRi)に対して,各要素セルのI-V特性曲線動作点における電圧電流微分係数(dVi/dIi)の値の重み付
けをすることによって表現する。各要素セルの電圧電流微分係数は,カラーバイアス光照度によって変化
する。カラーバイアス光照度を調整して測定対象外とする要素セルの微分係数をゼロとすれば,式(A.1)に
よって測定された値は,特定の要素セルの分光感度となる(参考文献 [1])。
n
dVi
SRi
i 1 dIi
SRmeas n dV
(A.1)
i
i 1 dIi
ここに, SRmeas : 多接合太陽電池全体の分光感度測定値
SRi i番目要素セルの分光感度
dVi/dIi : i番目要素セルの電気出力特性の電流対電圧微分係数
(カラーバイアス光照度の影響を受ける。)
測定対象外の要素セルの電圧電流微分係数を推定できる場合は,他のセルからの影響を除去できる。
――――― [JIS C 8944 pdf 14] ―――――
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附属書B
(参考)
計測についての諸事項
序文
この附属書は,多接合太陽電池分光感度の測定条件及び測定装置に起因して問題となる諸事項を記載す
るものであって,規定の一部ではない。
B.1 測定条件の設定
B.1.1 半値幅
半値幅をあまりに大きな値とすると,スペクトルがひずみ,誤差が大きくなる。この誤差の大きさは,
分光感度スペクトルの波形の波長依存性にも大きく影響を受ける。これは,実際のスペクトルに対して波
長を変数としてフーリエ展開を行い,数値的に解析することで算出できる。
この誤差は,半値幅が小さいほど小さくなるが,それに応じて測定信号が小さくなるため,SN比の低
下が起きる。この規格では,実用的に必要な精度を勘案し,分光感度測定のときの半値幅(波長分解能)
を通常10 nm,最大値は20 nmとしている。このような選択においては,半値幅が大きいことによる誤差
は,最大でも0.2 %を超えることはない。
B.1.2 分光装置波長特性及び半値幅
分光感度特性の絶対値は,試料太陽電池と基準検知器との比較によって求められるが,各々の波長特性
の違いによって,比較の過程で誤差が発生する。試料太陽電池と基準検知器とが同一の波長特性をもつ場
合には,この誤差は発生しない。そのため,シリコンホトダイオードを基準検知器として使用することも
規定した。また,この誤差はB.1.1と同様に半値幅が小さいほど小さくなるが,20 nmの半値幅の場合に
0.03 %程度となる。
B.1.3 波長間隔及び半値幅
スペクトルを測定する場合は,各波長のスペクトル要素は均等に評価される必要があるが,そのために
は,式(B.1)に示すように測定波長間隔は,半値幅の整数分の1とする。
泰 (B.1)
n
ここに, 測定波長間隔
半値幅
n : 正整数 1,2,3 ···
B.2 装置使用上の注意点
B.2.1 単色光の放射照度の場所むら
分光感度測定装置において単色光の放射照度の場所むらは重要である。基準検知器は,校正精度を維持
するため受光面積は小さく,一般的に,分光応答度標準として供給されるシリコンホトダイオードの受光
面積は50 mm2程度である。単色光ビームの寸法は通常,数センチ程度なので,このような基準検知器を
使用して照射単色光照度を測定すると,単色光の放射照度の場所むらが誤差の原因となる。
基準検知器の位置を移動して単色光ビーム全面積の照度を測定することで,このような誤差を回避する
ことも可能であるが,測定に長時間が必要となる。また,太陽電池の分光感度の面内均一性が低い場合は,
――――― [JIS C 8944 pdf 15] ―――――
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JIS C 8944:2009の国際規格 ICS 分類一覧
- 27 : エネルギー及び熱伝達工学 > 27.160 : 太陽エネルギー工学
JIS C 8944:2009の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC8915:1998
- 結晶系太陽電池分光感度特性測定方法
- JISC8934:1995
- アモルファス太陽電池セル出力測定方法
- JISC8936:1995
- アモルファス太陽電池分光感度特性測定方法
- JISZ8103:2019
- 計測用語
- JISZ8113:1998
- 照明用語
- JISZ8120:2001
- 光学用語