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H 7301 : 2009 (IEC 61788-1 : 2006)
d) 液体ヘリウム貯蔵デュワーを不適切に使用した場合,加圧チューブ内の空気及び水が凍り,その結果,
デュワーが過圧状態となって,通常の安全機器であっても,壊れる可能性がある。液体水素はこのよ
うな測定には用いない。極低温液体を取り扱うための安全の心得は,遵守しなければならない。
6 装置
6.1 マンドレルの材質 マンドレルの材質は,次による。
a) 測定用マンドレルは,絶縁材料若しくは絶縁層で覆われたものか,又は覆われていない導電性の強磁
性でない材料とする。
b) 試料と測定用マンドレルとの熱収縮の差によって生じる測定温度での引張りひずみは,0.2 %を超え
てはならない。また,適用するマンドレル材料は,A.3.1に推奨する材料のうち,いずれかを用いても
よい。
なお,三層構造超電導線試料の場合には,C.2.3による。
c) 絶縁層で覆われていない電導性材料をマンドレルに用いる場合は,試料電流がIcと同等となったとき,
マンドレルを介しての漏れ電流が,外部から印加した電流の0.2 %未満でなければならない(9.5及び
A.3.1参照)。
なお,三層構造超電導線試料の場合には,C.2.4による。
6.2 マンドレルの構造 マンドレルの構造は,次による。
a) マンドレルは,直径が24 mmを超え,試料取り付け時に生じる曲げひずみが限度以内となる構造とす
る(7.2参照)。
b) マンドレルは,試料を巻き付けるらせん溝があるものを用いるのが望ましい。その場合は,溝のピッ
チ角は,7度未満とする。
c) 試料を巻き付けるらせん溝がないマンドレルを用いる場合は,巻線のピッチ角を7度未満とする。
なお,らせん溝がない場合は,試料の保持不良及びピッチ角の大きな変動を起こす可能性がある(7.2
参照)。
d) 試料軸(電圧端子間部分)と磁界とのなす角度は(90±7) 度の範囲とし,この角度の合成標準不確か
さは,1度を超えないようにする。
注記 合成標準不確かさとは,幾つかの他の量の値から求められる測定結果の標準不確かさをいう。
e) 測定用マンドレルと電流端子との移行域(わたり部分)における試料への応力集中を避けるため,電
流端子は,マンドレルに確実に固定できる構造とする。
7 試料の準備
7.1 試料
試験試料は,断面が円形又はく(矩)形で,断面積が2 mm2未満で,形状がコイル状のものとして液体
ヘリウム槽に浸し,試験中のヘリウム温度が把握されているものとする。
7.2 試料の固定
試料の固定は,次による。
a) 試料は,巻線張力及び/又は低温接着剤(シリコーン真空グリース,エポキシ樹脂など)を用いてマ
ンドレルにしっかり固定する。低温接着剤を用いる場合は,必要最少量を塗布するにとどめ,試料取
付け後,試料の外面から余分の接着剤を取り除く。
なお,三層構造超電導線試料の場合には,C.2.5による。
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b) c値の繰返し性を十分確保するために,試料はきちんと固定しなければならない。
c) はんだは,電流端子の内側で試料をマンドレルに固定するのに用いてはならない。
なお,三層構造超電導線試料の場合には,C.2.6による。
7.3 試料の取付け
試料の取付けは,次による。
a) 試料は,継ぎ目,添え継ぎなどがあってはならない。
b) 試料の断面積(S)は,試料軸に垂直な断面とし,2.5 %を超えない相対合成標準不確かさで決定する。
注記 相対合成標準不確かさとは,幾つかの他の相対値(%)で示す量の値から求められる測定結果
の標準不確かさをいう。
c) 線材は,小コイル形状に,一方向(誘導的)に巻き付け,試料に余分なねじれが加わるような巻き方
をしてはならない。
d) 長方形の断面形状をもつ線材は,加えられる磁界が,試料の幅の広い面に平行になるようにコイル状
に巻き付ける。
e) 試料を巻く過程では,試料をマンドレルの溝に確実に納めるため,張力を加えて巻く。この張力は,
試料に0.1 %を超える引張りひずみを与えるものであってはならない(附属書D参照)。
なお,三層構造超電導線試料の場合には,C.2.7による。
f) 試料取り付け時(巻き付け時)に引き起こされる最大曲げひずみは,3 %を超えてはならない。
注記 曲げひずみは線材の直径がd,曲げられた線材の曲率半径がRのとき100 d/ (2R) %として概
算で評価する。また,く(矩)形断面線材では厚さをt,幅をwとしたとき(w>t),試験条件
から曲げひずみは100 t/ (2R) %で評価する。
g) 試料線材の両端は,電流端子にはんだ付けする。電流端子のはんだ付け部分の最低長さは40 mm,線
材直径の30倍,またく(矩)形断面線材においては線材厚さtの30倍の中で最大のものとする。
h) 試料のはんだ付け箇所の最大長さは,各電流端子で,3回巻きまでとする。
i) 電流端子から電圧端子までの試料に沿った最短距離は,40 mmを超えるものとする。
j) 電圧端子は,試料にはんだ付けする。試料電流と試料及び電圧端子引き出し線によって囲まれる面と
の相互インダクタンスを最小にするため,図A.1に示すように,電圧端子引き出し線をよ(撚)って
いない部分について,引き出し線を試料に沿って戻す。
k) 試料に沿った電圧端子間距離(L)は,2.5 %を超えない相対合成標準不確かさで測定する。電圧端子間
距離は,50 mmを超えるものとする。
l) 試験を行う場合,試料を取り付けたマンドレルは,液体ヘリウム容器,マグネット及びその支持具か
ら構成する試験用クライオスタットに装着する。
8 試験手順
試験手順は,次による。
a) データ収集段階では,試料を液体ヘリウム中に浸す。液体ヘリウム槽の温度は,Icを測定する前後に
必ず測定する。
b) クエンチ保護回路又はシャント抵抗を用いて試料を保護しない場合は,常電導状態になった試料が損
傷を受けないように,試料電流を流し過ぎないようにする。
c) 定速掃引法を用いる場合は,ゼロからIcまでの電流掃引時間は,10秒間を超えるようにする。また,
ステップ掃引法を用いる場合は,設定電流値間の掃引速度は,ゼロからIcまで3秒間で掃引するのと
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同等より低くする。
d) 直流磁界は,マンドレルの軸方向に加える。磁界の強さとマグネットの通電電流との関係は,あらか
じめ測定しておく。また,マグネット通電電流は,印加磁界ごとにIcを測定する前に測定する。長方
形の試料の場合は,加える磁界の方向を線材の広い面に平行,かつ,線材の軸に直角にする。
e) 電流及び印加磁界の方向は,電圧端子間で試料にローレンツ力が内向きに働くように設定する。
なお,三層構造超電導線試料の場合には,C.2.8による。
f) 試験条件下で単調に電流を増加させ,U-I特性を記録する。
g) 適正なU-I特性データに基づき,繰り返し測定したIc値の相対合成標準不確かさは0.5 %を超えない。
このU-I特性データは,Icを決める基準電圧値,又はそれ以下の電圧に対して,通電時間にかかわら
ず安定していなければならない。
h) -I特性データにおける基線は,ステップ掃引法を用いた場合には,ゼロ電流で記録した電圧とし,
定速掃引法を用いた場合には,Icの約0.1倍における電流での電圧とする。
9 試験方法の不確かさ
9.1 Ic
Icは,次による。
a) cは,4端子法を用いて測定したU-I特性データから求める。
b) 電源は,10 Hzから10 MHzまでの帯域幅で,最大の変動幅がIcの±2 %未満で直流電流が供給できる
ものとする。
c) 試料電流の測定には,0.25 %以下の相対合成標準不確かさをもつ4端子標準抵抗を用いる。
d) 記録計,プリアンプ,フィルタ,電圧計,直流電源又はそれらを一つに組み込んだ装置でU-I特性デ
ータを記録し,これによって得られる記録は,5 %以下の相対合成標準不確かさで基準電圧値(Uc)を,
0.5 %以下の相対合成標準不確かさでその電圧に相当する電流を決定できるものでなければならない。
9.2 温度
温度は,次による。
a) 試験用クライオスタットは,Ic測定に必要な環境を提供するもので,液体ヘリウムに試料を浸して測
定する。液体ヘリウム槽は,冷媒温度が試験現場の大気圧に対して,通常の沸点温度に近付くように
操作されなければならない。試料温度は,液体と同じ温度と仮定する。液体温度は,圧力センサ又は
適切な温度センサを用いて測定し,0.01 K以下の合成標準不確かさで記録する。
b) 試料温度と液体ヘリウム槽温度との差は,極力小さくする。
c) クライオスタット内で測定されるヘリウム圧力を温度に変換する場合は,ヘリウム温度と蒸気圧との
関係(注記1参照)から求める。温度測定で要求される不確かさを保つために,圧力は十分な精度で
測定する。1 mを超える液体ヘリウム深さについては,ヘリウム圧力に対する深さ補正(注記2参照)
が必要となる。
注記1 ヘリウム温度と蒸気圧との関係は,次の文献に示される。
1) .Preston−Thomas: “The International Temperature Scale of 1990 (ITS-90)”, Metrologia,27
(1990) .3; 27 (1990) .107 (Erratum)
2) 低温工学ハンドブック,低温工学協会編,(1993) .113
注記2 液体ヘリウム深さをh,比重量をμHe(T)とすれば,液体ヘリウム圧力の変化は,Δp=μHe(T) h
で与えられる。
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9.3 磁界
磁界は,次による。
a) マグネットシステムの設定磁界は,0.5 %の相対合成標準不確かさ又は0.01 Tのいずれか大きい値以
下の不確かさで磁界を印加できるものとする。
b) 設定磁界の均一性は,電圧端子間の試料部分で,0.5 %の相対合成標準不確かさ又は0.02 Tのいずれ
か大きい値以下とする。
c) 設定磁界の最大変動は,±1 %又は±0.02 Tのいずれか大きい値以下とする。
9.4 試料及びマンドレルの支持構造
試料及びマンドレルの支持構造は,次による。
a) 試料及びマンドレルの支持構造は,外部磁界の方向に対して試料の方向を適切に保持するものとする。
試料支持具は,箇条8に規定するように繰り返し測定をして,Icの他の決定方法にも対応できるよう
な適切な構造とする。
b) 試験試料の形状は,一方向らせん状の誘導コイルとする。
9.5 試料の保護
試料と並列にシャント又はクエンチ保護回路を用いる場合,シャント又はクエンチ保護回路を通る電流
が,Icとみなせる測定回路全体に流れる全電流の0.2 %未満とする。
10 試験結果の計算方法
10.1 Ic基準
Icは,電界基準又は比抵抗基準を用いて,次のように決定する。ここで,比抵抗は,複合超電導線の全
横断面を用いて算出する(図1及び図2参照)。
a) 電界基準を用いる場合 電界基準値(Ec)を10 μV/m及び100 μV/mとして,Ic値を決定する。
100 μV/mの電界基準値でのIc値を正しく測定するのが困難な場合は,100 μV/m未満の電界基準で
代用するか又は比抵抗基準を用いた測定を行う。
Icは,基線に対する電圧が基準電圧値(Uc)に相当するU-I特性曲線上の点に対応する電流として決定
する(図1参照)。
cLE
U= c (1)
ここに, Uc : 基準電圧値 (μV)
L : 電圧端子間距離 (m)
Ec : 電界基準値 (μV/m)
b) 比抵抗基準を用いた場合 比抵抗基準値(ρc)を10−14 Ω・m及び10−13 Ω・mとして,Ic値を決定する。
Icは,式(2)による。
Icは,基線に対する電圧が比抵抗基準値に対応する基準電圧値(Uc)に相当するU-I特性曲線上の点に
対応する電流として決定する(図1参照)。
Uc=Ic ρcL/ S (2)
ここに, Uc : 図1に示すU-I特性曲線と基準線との交点での電圧 (μV)
Ic : 図1に示すU-I特性曲線と基準線との交点での電流 (A)
ρc : 比抵抗基準値 (Ω・m)
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L : 子間距離 (m)
S : 試料の断面積 (m2)
注記1 基線とは,電圧ゼロの線
注記2 基準線とは,電界基準又は比抵抗基準に対応する線
c) カレント・トランスファーのある場合 カレント・トランスファー線は,基線からIcの0.7倍の電流
に相当するU-I特性曲線上の平均電圧に対して直線を引く(図2参照)。この直線にこう(勾)配があ
る場合,それはカレント・トランスファーしたものと考えられる。Icが有効であるためには,そのこ
う配は,0.3 Uc /Ic未満とする。
ここで,Uc及びIcは,10 μV/m又は10−14 Ω・mの基準で決定した値とする。
10.2 n値(参考値)
n値は,Icが決定される領域近傍でlog U 対log I をプロットしたこう配とするか,又は10.1で決定した
二つの異なる基準値から求めた2個のIc値を用いて計算する。
n値を決定するために用いた領域の範囲は,報告事項とする。
注記 A.7.2参照。
注記1 Icを決定する電界基準と比抵抗基準との適用方法を示す。
注記2 縦軸の1は電界基準における基準電圧値(Uc),横軸の1は電界基準におけるIcにそれぞれ対応する。
図1−正常なU-I特性
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JIS H 7301:2009の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 61788-1:2006(IDT)
JIS H 7301:2009の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.220 : 電気学.磁気学.電気的及び磁気的測定
JIS H 7301:2009の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISH7005:2005
- 超電導関連用語