JIS H 7301:2009 超電導―第1部:臨界電流の試験方法―ニオブ・チタン合金複合超電導線 | ページ 3

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H 7301 : 2009 (IEC 61788-1 : 2006)
注記1 低電流域で直流領域として示されるカレント・トランスファー成分を伴うU-I特性曲線上で,Icを決定する場
合の電界基準と比抵抗基準との適用方法を示す。
注記2 縦軸の1は電界基準における基準電圧値(Uc),横軸の1は電界基準におけるIcにそれぞれ対応する。
図2−カレント・トランスファーを伴うU-I特性

11 報告事項

11.1 試料に関する報告

  試験に用いた試料について,可能な限り次の事項を報告する。
a) 試料の製造業者名
b) 種類及び/又は記号
c) ロット番号
d) 原材料及びその化学組成
e) 線材の形状,線材の断面積,超電導フィラメント数,超電導フィラメント直径,ツイストピッチ及び
銅と超電導体との体積比

11.2 Ic値に関する報告

  Ic値及びIc値を求めるために用いた基準値を報告する。

11.3 試験条件の報告

  次の試験条件を報告する。
a) 試験磁界及び磁界の均一度
b) 試験温度
c) 試験コイルの巻数
d) コイルの巻線方法
e) 電圧端子間距離及び試料の全長
f) 電流端子から電圧端子までの最短距離
g) 電流端子間の最短距離
h) 電流端子のはんだ付け部分の長さ
i) 試料固定法及び固定に用いた材料の名称

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H 7301 : 2009 (IEC 61788-1 : 2006)
j) マンドレルの材質
k) マンドレルの直径
l) 溝の深さ,形状,ピッチ及び角度

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H 7301 : 2009 (IEC 61788-1 : 2006)
附属書A
(参考)
注意すべき事項
A.1

序文

  この附属書は,Icの測定値に重大な影響を及ぼす変動因子及び規格利用に当たっての注意すべき事項の
幾つかについて参考として記載する。
銅/超電導体比(Cu対Nb-Tiの体積比)が1以下の線材の場合,低い磁界におけるU-I特性が安定しな
い場合があるため,適用しない。
この試験方法に規定した試験条件に従えば,実際に利用される長い導体の品質評価に対しても,必要と
される精度を得ることができる。
この規格は,試験現場の大気圧を操作して,通常の液体ヘリウム沸点温度に近付けた液体ヘリウムに試
料を浸して試験されることを要求している。通常の液体ヘリウム沸点温度以外の温度の液体ヘリウム中で
の試験,ガス中での試験又は真空中での試験は,この規格の範囲外である。
A.2 試験方法
試験方法は,次の項目を参考にする。
a) この試験方法で決定しようとするIcは,ある温度及び磁界において,それ以下では超電導体が抵抗ゼ
ロの状態にあると実用上みなされる最大の直流電流値である。
b) 例えば,試験磁界の上限(上部臨界磁界の0.7倍)は,温度4.2 K付近で8 Tとなる。
c) 試料の最小全長は210 mmで,これは次の要素の合計である。
− 電流端子のはんだ付け長さ(各々40 mm)
− 電流端子と電圧端子との間の距離(各々40 mm)
− 電圧端子間の最小距離 (50 mm)
d) このような試験条件を守ることができない簡略化した試験(簡略試験)では,その不確かさが増大す
ることは明らかであるが,この規格を一般的な試験手順の指針として用いることもできる。
e) 簡略試験では,やむを得ずこの規格に規定する範囲を外れた試験条件のもとで試験をすることがある
が,本来の相互比較及び性能検証では,試験の容易さと目標とする不確かさの兼ね合いを考えたうえ
で厳密な試験条件を設定することが必要である。
f) 試料の断面積が長さに対して十分小さいか,短い直線状試料の測定は,簡略試験では許容されるが,
厳密な試験条件を設定するのが難しいため,直線形状の試料はこの規格から除外する。
g) この試験方法において,マンドレルに無誘導的に巻き付け(電流の向きが対抗するような巻き方),エ
ポキシ樹脂で固定した試料では,目標に近い不確かさが得られるが,シリコーン真空グリースを用い
るか又は張力によってマンドレルに取り付けた場合には,試料の長さのある部分に,測定用マンドレ
ルから離れる方向にローレンツ力が働き,固定しておけるほど強くないため,目標とする不確かさに
近い測定値を得るのが困難になる場合があるので,無誘導巻き試料は除外する。
h) 非強磁性のステンレス鋼マンドレルに,はんだを接着剤として用いて測定する方法は,簡略試験では
許容できるが,マンドレルに分流する電流の量を推定するのは難しく,特に,超電導性はんだを接着
剤として用いて,低い磁界で測定する場合は,定量が更に困難になる。

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H 7301 : 2009 (IEC 61788-1 : 2006)
i) く(矩)形断面の試料について,磁界方向依存性の試験が必要な場合に,二つの試験方法がある。一
つは,マグネットの中でそのコイル軸に直角になるような直線形状の試料を測定する方法で,すべて
の磁界角度で測定が可能である。もう一つには,ソレノイドマグネットの軸方向に挿入したヘアピン
形状の試料及びコイル形状の試料を測定することで,二つの磁界角度(0度及び90度)での測定が可
能となる。しかし,これらの中でコイル形状の試料以外は,この規格では適用しない。
j) この規格の目標とする不確かさは,試験機関相互の共通試験結果に基づいて設定したもので,過去の
共通試験結果を用いて,Ic測定の不確かさに影響を及ぼす多くの変数の公差を定式化し,試験機関相
互の比較のための目標とする不確かさを決めるに当たり,変動係数(標準偏差をIc測定値の平均値で
除した値の100倍)を3 %未満とした。
k) 多くの測定値から得られる結果がどのように分布するかについても変動係数によって分かる。しかし,
重大な系統誤差がある場合には,二つの試験機関での測定値は,変動係数が2倍以上も異なる場合も
ある。
l) 上部臨界磁界の0.8倍付近の磁界(4.2 Kで約9 T)におけるIc測定が可能であっても,許容される不
確かさについては,磁界,温度,ひずみ及び要求される電圧感度に対してIcが敏感に変化するので,
変動係数が高くなるものと予想される。
m) この試験方法によるIc測定を総合的な不確かさに寄与している唯一,かつ,最大の要因は,磁界の不
確かさであるが,このパラメータを校正するのは困難であり,公差を更に厳しくするのは,現実的で
ない。
n) 今回,この規格で規定しなかった事項及び適用しなかった事項については,今後,検討することとし
た。
A.3 装置
A.3.1 マンドレルの材質 測定用マンドレルは, 6.1を満足する材料とするが,次の材料が望ましい。
a) 絶縁材料 :
− ガラス繊維織物面が試料に沿うような配置のガラス繊維エポキシ樹脂複合材料
− 織物の面が管の軸に垂直となるように板状の材料から作ったガラス繊維エポキシ樹脂複合管
− 繊維の面を管の軸にらせん状に巻き付けた構造の薄肉ガラス繊維エポキシ樹脂複合管
b) 絶縁層で覆われた導電性の非強磁性材料 :
− 非強磁性銅合金,例えば,黄銅
− 非強磁性ステンレス鋼
c) 絶縁層で覆われていない導電性の非強磁性材料 :
− 非強磁性ステンレス鋼
− Ti-5 質量 % Al-2.5 質量 % Sn合金(ゼロ磁界で臨界温度は,約3.7 Kである。)
− 銅合金,例えば,黄銅(Cu-Zn),銅ニッケル(Cu-Ni)
d) 絶縁層で覆われていない導電性マンドレルを用いたときの漏れ電流は,適正な試験条件の下でマンド
レルに試料を付けたときと,付けないときとの電圧測定から推定することができる。試料を付けない
ときの電流端子間の電圧降下を測定することによって,端子抵抗を含む漏れ電流の流れる経路抵抗が
求められる。次に,試料を取り付けたときの電流端子間の電圧降下を,先に求めた経路抵抗で除する
ことによって漏れ電流を求めることができる。

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H 7301 : 2009 (IEC 61788-1 : 2006)
e) 熱的に不安定な超電導体を導電性マンドレルで測定した場合,大きな漏れ電流が流れる可能性がある
[2]。電圧端子の外側で常電導転移が起きると大きな漏れ電流が発生し,試料に流れる正味の電流が減
少して誤った結果を導いてしまう。このような現象は,電流端子間の電圧を診断用の電圧端子で監視,
記録することによって容易に検出できる。
A.3.2 マンドレルの構造
マンドレルの構造は,次のものを推奨する。
a) らせん溝のあるマンドレルの場合,溝深さは,丸線では線径の半分以上,角線では厚さの半分以上で
あることが望ましい。
b) 溝の形状は,丸線では,V字形で,角線では,角形が望ましい。
c) 限界となるピッチ角7度は,マンドレル直径24 mmでは9 mmのピッチに相当する。
d) 図A.1に示すように,電流端子は,円筒形の銅リングから作ることが望ましく,このリングの外径は,
試料のコイル内径とほぼ同じにして,曲げひずみを最小に抑える。
e) また,電流端子へ電流を供給する電流リード線は,試料両端部付近の熱発生を抑えるため,電流容量
の更に大きい超電導リード線を用いてもよい。
f) 超電導リード線は,銅リングに一部巻き付け,有効接触抵抗を小さくする。超電導リードのIcが試料
のIcを大幅に上回っている場合は,リード線を銅リング円周の90 %を超えて巻き付けてはならない。
A.4 試料
A.4.1 試料の固定
試料の固定は,次を推奨する。
a) 試料が動くと,早期のクエンチ(不可逆熱暴走)及び,電圧ノイズを引き起こし,ついにはIcの繰返
し性を悪くする。
b) 巻付け張力は,試料と測定用マンドレルとの間の熱収縮の差に依存するが,試料をマンドレルに保持
するのに効果的である。
c) 低温接着剤は,クエンチの可能性を減らすが,接着剤の量が多過ぎると,試料から液体ヘリウム槽へ
の熱の流れが妨げられ,クエンチを起こす場合がある。
d) 試料をしっかりと固定するためには,測定用マンドレルの表面は粗面仕上げし,清浄にし,試料表面
をきれいにしておく。
e) 試料及び測定用マンドレルにはいろいろな種類があるので,ある決まった試料固定法だけを指定する
ことは実際的でなく,状況に応じて工夫する。
f) 測定用マンドレルの電流端子の内側で試料をはんだ付けすることは,漏れ電流の推定を困難にし,か
つ,クエンチのような不安定性が見掛け上抑えられ,試料にかかる熱収縮の効果を増大させるなどの
理由から,適用しない。
g) どのような固定方法を用いる場合でも,試料の過度の温度上昇には注意する。
A.4.2 試料の取付け
試料の取付けは,次を推奨する。
a) 比抵抗基準を用いる場合は,試料を取り付ける前に,試料の断面積を測定し,その値を使ってIcを決
定する。Icとρcとの決定には,断面積測定の合成標準不確かさは2.5 %で十分であるが,臨界電流密
度(Jc)の決定が必要な場合には,0.5 %の合成標準不確かさが望ましい。
b) 供給時にコイル状に巻き付けられていたため生じた曲がりに逆らわないように,同じ方向に線材試料

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JIS H 7301:2009の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 61788-1:2006(IDT)

JIS H 7301:2009の国際規格 ICS 分類一覧

JIS H 7301:2009の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISH7005:2005
超電導関連用語