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をマンドレルに巻き付け,線材の一端を固定し,巻付け張力を試料に加え,もう一端を固定した後,
電流端子をはんだ付けする。
c) 電流端子に巻線が何重にも巻かれてはんだ付けされていると,ゆっくりと変化する磁界が誘導される。
これは,外部磁界を次の設定値に変化させるため,電流を増減するとき誘導される磁界である。
d) 試料は,液体ヘリウム容器中のマグネットの中央に保持し,電流及び電圧リード線を室温から液体ヘ
リウム温度の部分まで配線するため,試料を支持するジグを用いる。
e) 試料の電圧リードは,発生する熱起電力を減らすために,液体ヘリウム槽から室温まで継ぎ目がない
銅線を用いる。また,室温部分のすべての接続箇所は,等温環境に保つ。液体ヘリウムに浸されてい
る接続箇所は,一定温度になっているか注意を要する。
A.5 測定手順
測定手順は,次を推奨する。
a) 試料が常電導状態に転移するとき試料電流によって生じる損傷を避けるために,クエンチ保護回路又
はシャント抵抗を用いるとよい。
b) 定速掃引法と呼ばれるU-I特性データ収集法は,電流をゼロからIcをわずかに超える電流まで一定速
度で掃引する方法で,箇条8に規定する電流掃引速度の制限は,誘導電圧の発生及び試料の加熱を考
慮したものである。
c) 電流掃引時の誘導電圧は,電流ではなく,掃引速度,電圧感度,試料のクエンチ履歴及び経験磁界に
依存する[3]。これらの可変誘導電圧が生じると,マンドレルへのカレント・トランスファーによる電
圧のように現れ,9.1に規定するIc測定の有効性の制約を受けることになる。また,この効果は外部
磁界を変化させた後,又は試料をクエンチさせた後,最初に電流をIcまで増加させ,ゼロに戻すサイ
クル中で測定することで減少させられる。
d) ステップ掃引法と呼ばれる第二のU-I特性データ収集法は,予想されるU-I特性曲線に沿って,任意
にプログラムされた多数の点に沿って電流を立ち上げ,各点で電流を一定に保ち電圧及び電流値を収
集する方法で,各電流設定点間で最初急速に電流を立ち上げた後,ある一定の静置時間をもつことが
望ましい。
e) 誘導電圧が掃引速度,電圧感度,試料のクエンチ履歴及び経験磁界に依存するため,3秒間程度の静
置時間が必要である[3]。また,誘導電圧は,外部磁界を変化させた後,又は試料をクエンチさせた後,
最初に電流をIcまで増加させ,ゼロに戻すサイクル中で測定することで減少させられる。
f) 予想される基準電圧に比較してシステムノイズが大きい場合は,データが平均化するように電流をゼ
ロからIcまで掃引する時間を,150秒間以上とすることが望ましい。この場合,電流端子の熱容量及
び/又は冷却面積を増やし,長時間の測定による熱の発生を抑えるような配慮が必要となる。ステッ
プ掃引法では,U-I特性データについては離散的であるが,各電流値に平均化されたデータであると
いう特徴がある。
g) 試料電流が時間とともに変化すると電圧端子に正又は負の電圧が誘導される。この望ましくない電圧
の発生原因は,電流掃引速度にその電圧が比例することから確認できる。この電圧がUcと比較して顕
著であれば,電流掃引速度を低くするか,電圧端子と試料とによって形成されるループ面積を減らす
ようにするか,又はステップ掃引法を利用する。
h) 電流が増加中は,時間とともにローレンツ力が増加するので間欠的な滑り,又は連続した試料の動き
が生じることに注意する。これを原因として発生する電圧がUcと比較して顕著であれば,ローレンツ
――――― [JIS H 7301 pdf 16] ―――――
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力の方向が内向きであるかを確認するか,試料支持方法を改善するか,又はステップ掃引法を利用す
る。
i) 有効なU-I特性データが得られない場合は,試料のクエンチ保護の方法を改善することによって正し
くIc値の繰返し性が得られるようにする。改善方法は,試料支持方法又は熱的安定性(電流端子を長
くするか,試料表面の接着剤を少なくするなどによって)を改善することが望ましい。
j) 試料電圧ゼロに対応する基線電圧には,熱起電力電圧,オフセット電圧,接地ループ電圧,コモンモ
ード電圧などが寄与している。これらの電圧は,個々のU-I特性データを記録している間,比較的安
定している。熱起電力電圧及びオフセット電圧のわずかの変化は,U-I特性データの測定の前後に基
線電圧を測り,また,直線的経時変化を仮定することによって,大体取り除くことができる。基線電
圧の変化がUcに比べて顕著であれば,試験装置の構成を変更する。
k) 接地ループ電圧及びコモンモード電圧の変化は,試料電流とは明確な相関関係はもたず,この電圧が
大きければ,変化を抑える手立てを行う。これらの電圧が大きく,かつ,重畳した場合,カレント・
トランスファーによる電圧との区別がつきにくくなるため,分流の程度によっては測定の有効性が制
限される。コモンモード電圧の問題の有無をチェックするには,試料電流の関数としてゼロ電圧用端
子対(図A.1参照)による電圧を測定する。この対で測定される電圧は,試料電流には依存せず,電
流掃引速度の関数となるもので,試料電流の関数として測定されれば,別の要因があると考えられる。
注記 コモンモード電圧とは,接地に起因するコモンモード電流が回路インピーダンスを通ること
によって発生するノーマル雑音電圧をいう。
A.6 試験方法の不確かさ
試験機関でのIc測定システムの総合的な不確かさを評価する任意試験方法として,標準試料(SRM-1457)
を入手し検討する方法がある。
標準試料(SRM-1457)の検定書の注意事項を考慮して,この試験方法で標準試料を測定すればよい。
自己磁界効果の大きさと試料電流,コイル直径,ピッチなどに対する複雑な依存性は,検出可能な系統
的効果を及ぼしているが,ほぼ同一の試料に関する試験機関同士間で定めた目標不確かさに自己磁界効果
はそれほど影響するとは考えられない。必要であれば,試験報告に記載されたデータをもとにIcに対する
自己磁界効果を見積もることは可能である。自己磁界効果に関するこれ以上の検討は,附属書Bを参照す
るとよい。
試料の溶断などを避けるため,試料電圧があらかじめ設定された値を超えたときに,試料電流をゼロに
リセットするクエンチ保護回路が,Ic測定には必要になることがある。
A.7 試験結果の計算方法
A.7.1 Ic基準
用途によっては,Nb-Ti断面積が比抵抗基準に用いられる。この面積は,通常,重量法を用いてCu対
Nb-Tiの体積比を測定して決定する。対応する標準試験方法としては,JIS H 7304がある。
JIS H 7304 超電導−超電導体のマトリックス比試験方法−銅安定化ニオブ・チタン複合超電導導体
の銅比
注記 対応国際規格 : IEC 61788-5,Superconductivity−Part 5: Matrix to superconductor volume ratio
measurement−Copper to superconductor volume ratio of Cu/Nb-Ti composite superconductors
(IDT)
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10−14 Ω・mの比抵抗基準を採用する場合は,信号対雑音比を大きくするため,電圧端子間の距離をよ
り長くし,例えば,500 mm以上にする必要性が生じる場合もある。
もし,判定基準に比べて大きな分流による電圧が発生する場合は,電流端子と電圧端子との間の距離を
大きくする。
A.7.2 n値(参考値)
n値は,次による。
a) c近傍の超電導体のU-I特性データは,通常,経験的にべき乗則で近似できる。
U=U0 (I I0 )
(A.1)
ここに, U : 試料電圧 (μV)
U0 : 基準電圧 (μV)
I : 試料電流 (A)
I0 : 基準電流 (A)
n値 : 曲線の一般的形状を示す。
b) og U対log Iの関係は,Ic決定のための電界基準E=10 μV/m近くの電流領域においても必ずしも直線
的でなく,従ってn値を決定するための判定基準範囲を報告する必要がある。この範囲は,10 μV/m
から100 μV/m又は10−14 Ω・mから10−13 Ω・mとする。
c) 決定されたn値の変動係数は,20 %という大きな値になる場合があるので,n値を決める試験方法は,
任意事項とする。
d) 値の変動に影響する因子として,次のものがある。
− 電圧ノイズ
− 電流リップル
− 試料の冷却(使用する接着剤の量又は絶縁されていない導電マンドレルへのカレント・トランスフ
ァー効果などによる見掛けの安定性)
− 磁界のリップル及び均一度
− 試料電流の自己磁界
− 試料に対する熱こう配
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注記 ゼロ電圧用端子対は,接地ループ又はコモンモード電圧の検出に使用される。電圧測定用端子対(ここでは,
説明を明確にするため,端子間距離は短く示してある。)とは別に,一組の端子対が図に示すように試料に取り
付けられ,その一方が試料に,他方がゼロ電圧用端子対に接続されている。ゼロ電圧用端子対は,電圧測定用
端子対の寄生誘導電圧をシミュレートするために,小さな線材ループで構成されている。この対で測定される
電圧は,試料電流には依存せず,電流掃引速度の関数となるもので,もし,試料電流の関数として測定された
場合は,別の要因があると考えられる。
図A.1−ゼロ電圧用端子対を付けた試料マンドレルの構成
――――― [JIS H 7301 pdf 19] ―――――
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附属書B
(参考)
自己磁界効果
a) コイル形状の試料において通電電流が大きいときは,試料自身が発生する磁界のためIcの測定値に自
己磁界の効果が含まれるようになる。この自己磁界は,印加された磁界とは別に発生するため,試料
が経験する合計の磁界は,導体の断面部位によっては,印加磁界よりも大きくなる。試験機関によっ
ては,この付加された自己磁界に対して,近似的に補正を行っている。
b) 試験機関間でIc測定値を比較する場合は,それぞれの試験機関で試料が同程度の自己磁界を受けるの
で,Icデータに対する自己磁界補正は,実際上不必要である。自己磁界効果の違いは,測定用マンド
レルの直径及びピッチ(これは,試験機関間の比較では管理されている。)と印加磁界の均一度の違い
とによって生じる。試験機関間の比較では,この試料はほとんど同一形状であるので,自己磁界効果
の補正をする必要はない。自己磁界効果の補正を行った機関のIcデータと行わない機関のデータとは
比較不能である。したがって,試験機関間の比較においては,Icの自己磁界補正はしない方がよい。
c) このことは,異なる直径をもつ線材の臨界電流密度(Jc)を比較する場合の自己磁界の補正の必要性及び
有用性を否定するものではない。異なる直径の線材のJcを比較する場合には,導体によって経験する
自己磁界が異なるため補正すべきである。自己磁界補正によって,異なる直径をもつ線材のJcが比較
可能なデータとなる。近似的な補正は,長い直線状の線材の発生磁界を基準として次の式(B.1)で表さ
れる。
BSF=μ0I 2(πr) (B.1)
ここに, BSF : 近似的な自己磁界 (T)
μ0 : 真空の透磁率 (4π×10−7 H/m)
I : 電流 (A)
r : 線材の半径 (m)
この式は,次の式(B.2)のようにも表すことができる。
BSF=4( 10−4 )
Id (B.2)
ここに, BSF : 近似的な自己磁界 (T)
I : 電流 (A)
d : 線材の直径 (mm)
d) 通電電流から決めたJcの測定値と直流磁化測定から計算によって求めたJcとの差異を説明したり,ま
た,Jcの最適化の研究において,直径の異なる線材のJc測定値を補正したりするため,上記の近似的
な補正を用いる。さらに,この補正方法は簡単で,応用範囲が広く,また,有効性が実証されている
ことから,線材及び線材を複数本集合したケーブルのIc測定値と磁気特性との相関を立証する目的に
も用いられる。式(B.1)による近似式は,銅/超電導体体積比,マトリックスの比抵抗,フィラメント
のツイストピッチ,フィラメントの配列,フィラメント間の電流再配分,測定用マンドレルの直径,
らせんピッチなどの影響は考慮していない。
e) この近似的な補正は,測定パラメータが自己磁界効果を強めない限り,それが意図している目的のた
めには十分正確である。しかしながら,試験機関間の比較では,正確であるとはいえない。試験機関
間で異なる幾つかのパラメータについて補正しようとしても,その補正は極めて複雑で,その複雑な
――――― [JIS H 7301 pdf 20] ―――――
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JIS H 7301:2009の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 61788-1:2006(IDT)
JIS H 7301:2009の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.220 : 電気学.磁気学.電気的及び磁気的測定
JIS H 7301:2009の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISH7005:2005
- 超電導関連用語