JIS H 7801:2005 金属のレーザフラッシュ法による熱拡散率の測定方法 | ページ 2

4
H 7801 : 2005
に規定するマイクロメータによって測定し,塗布前の厚さとの差から黒化膜の厚さを算出する。

6.2 試料温度の測定

 試料温度の測定は,次による。
a) 定常温度 試料の定常温度測定は,熱電対などによって行う。その際、熱電対の指示温度と試料温度
の差を考慮する。
b) 測定温度 測定温度は定常温度に最高温度上昇を加算したものとする。
ただし,最高温度上昇が常に3Kより小さいとみなせる場合には,定常温度を測定温度としてもよ
い。
/τc)
指数関数 ΔTextexp(-t
ΔText 冷却の時定数
外挿温度上昇
ΔTm
最高温度上昇
昇温領域 降温領域
温度上昇
ΔTm / 2
初期ノイズ
0
T0(定常温度) t1/2(ハーフタイム)
t=0(解析時間原点) 時間
図 2 レーザフラッシュ法によって観測される温度上昇曲線

6.3 温度上昇曲線の測定

 温度上昇曲線の測定は,設定された温度において雰囲気温度及び試料の温度
変動が1分当たり0.2 K以下であり,かつ,赤外線検出素子の出力が安定している状態で開始する。温度
上昇曲線測定のサンプリング時間は,少なくともハーフタイムの10倍まで温度上昇曲線を記録できるよう
に設定する。また,増幅された温度上昇曲線の信号がA/D変換のフルスケールに収まるように増幅器のゲ
インを調整する。その後にレーザをパルス発光させ,温度上昇曲線を記録する。
なお,光パルス加熱以前の定常温度の安定性などに関する情報が必要であるので,パルス加熱以前の温
度変化を全測定時間の10 %以上記録する。また,厚い試料などの測定で信号が小さくノイズの影響が無
視できない場合には,複数回測定した温度上昇曲線を同一時刻ごとに積算することによってS/N比の改善
を図ってもよい(重ね打ち法)。

7. 熱拡散率の算出

 温度上昇曲線から熱拡散率を算出する方法は次による。

7.1 熱拡散率算出における補正

 次の要因に起因する誤差に対して補正を行う。
a) レーザ発光時間 観測されたレーザパルスの時間軸上におけるエネルギーの重心を求め,トリガ信号
によって伝えられた計測の時間原点に補正を加えることで解析時間の原点を決定する。ハーフタイム
が短い試料の場合には,重心時刻を正確に求める必要がある。ただし,ハーフタイムが長く,データ
サンプリング時間がレーザパルス幅と同じ程度であれば時間原点の補正は必要ない。

――――― [JIS H 7801 pdf 6] ―――――

                                                                                              5
H 7801 : 2005
b) レーザビームによる不均一加熱 空間的に不均一なレーザビームや試料の被加熱面の吸収率の分布な
どによって試料表面が不均一にパルス加熱された場合には,試料内部で1次元熱拡散が実現されず,
誤差を生じる。この場合には,均一加熱を仮定したデータ解析法を適用して熱拡散率を算出するに際
k
して補正を行う。不均一加熱に対する補正係数nuh k
は,附属書3によって求める。ただし,nuhが0.98
より大きく1.02未満の場合並びに最小二乗法及び等面積法において不均一加熱を考慮したモデル関数
を採用する場合には,この補正は不要である。
c) 試料の熱損失 高温測定においては試料から外界への熱損失が生じるため,熱拡散率の算出に際して
kは,温度上昇曲線においてハーフタイムに対する冷却の時
補正を行う。熱損失に対する補正係数rhl
定数の比 rhl
数として附属書4によって求めることができる。ただし,
kが0.98より大きい場
rhl
合並びに最小二乗法及び等面積法において熱損失を考慮したモデル関数を採用する場合には,この補
正は不要である。
d) 熱放射の非線形性 温度上昇曲線を温度目盛のない放射計によって観測する場合には,分光放射輝度
変化が測定される。この場合には,パルス加熱用レーザの出力を変化させて見掛けの熱拡散率を測定
し,レーザ出力を0に外挿することによって非線形誤差を受けない熱拡散率を求める。また,この手
法によって得られる外挿値は,熱拡散率の温度依存性についても補正されるので,熱電対などで測定
した(パルス加熱前の)定常温度に対応する熱拡散率が求められる。熱放射の非線形性による補正の
大きさが2 %以内の場合には補正は不要である。
e) 表面処理(黒化処理) 試料に黒化膜などの表面処理を施して測定する場合,表面処理による影響が
生じる。その影響が無視できない場合には,試料と表面処理材の熱特性及び試料の厚さに応じた補正
を行う。黒化処理に対する補正係数 kbc は附属書5によって求める。ただし,常に kbc は1以上で,
kbc が1.02未満の場合には,補正は不要である。
f) 熱膨張 7.2によって算出される熱拡散率は,室温での試料厚さを基準とした見掛けの熱拡散率である。
測定温度での試料厚さを基準とした熱拡散率が必要な場合には,次の式(1)によって試料の熱膨張に対
する補正を行う。
2
lT
(T) 0 (T) (1)
l0
ここに, α(T) : 温度Tでの試料厚さを基準とした温度Tにおける熱
拡散率(m2s-1)
lT : 温度Tにおける試料の厚さ(m)
l0 : 室温における試料の厚さ(m)
α0(T) : 室温での試料厚さを基準とした温度Tにおける見
掛けの熱拡散率(m2s-1)
ただし, 0l
lT が0.98より大きく1.02未満の場合には補正は不要である。

7.2 熱拡散率の算出方法

 熱拡散率は,次のいずれかの方法によって算出する。
なお,いずれの式においてもlは黒化膜がない状態での試料の厚さである。
a) ハーフタイム法 温度上昇曲線において解析時間原点から最高温度上昇の半分まで上昇するのに要す
る時間(ハーフタイム)を求め、ハーフタイム(t1/2)から熱拡散率を式(2)によって算出する。

――――― [JIS H 7801 pdf 7] ―――――

6
H 7801 : 2005
l2
.01388 kbckm (2)
t/1 2
ここに, α : 熱拡散率(m2s-1)
kbc : 黒化処理に対する補正係数[7.1 e) ]
km : 測定条件に伴う補正係数
l : 試料の厚さ(m)
t1/2 : ハーフタイム(s)
室温測定及び熱損失が無視できる測定条件下においては, kmknuh [7.1 b) ]とし,
加熱レーザビームが均一化された装置においては, km krhl [7.1 c) ]とすることができる。
b) 最小二乗法 熱拡散率を式(3)によって算出する。
kbc lsf (3)
ここに, α : 熱拡散率(m2s-1)
kbc : 黒化処理に対する補正係数[7.1 e) ]
αlsf : 温度上昇曲線と理論式とを用いて2乗偏差を構成し
たとき,この2乗偏差を最小とする熱拡散率(m2s-1)
高温測定では,2乗偏差は熱拡散率と放射損失を表すビオ数の関数となるので,2乗偏差を最小とす
る熱拡散率とビオ数を決定する。
原理的には,不均一加熱と熱損失に対する補正とを同時に行うことも可能である。
c) 等面積法 熱拡散率を式(4)によって算出する。
kbc areal (4)
ここに, α : 熱拡散率(m2s-1)
kbc : 黒化処理に対する補正係数[7.1 e) ]
αareal : 温度上昇曲線及びその測定において実現されてい
る初期条件,境界条件下の理論曲線を固定された時
間範囲(t1 <t < t2)で積分したとき,両者の値が同
一になるように決定した熱拡散率(m2s-1)(附属書
2参照)
室温において真空中に試料ホルダとの熱接触が極小の状態に保持された平板の表面をδ関数的に均
一加熱した状態で測定を行った場合には、断熱条件下で熱が一次元に拡散する理論式を用いて解析を
行う。室温より高い温度での測定においては放射熱損失を考慮した理論式に対して解析を行い,熱拡
散率及びビオ数を決定する。等面積法によれば,データの質を実験的なデータとモデル関数の偏差と
から判定できる。
d) 対数法 熱拡散率を式(5)によって算出する。
l2
kbc4 (5)
h
ここに, α : 熱拡散率(m2s-1)
kbc : 黒化処理に対する補正係数[7.1 e) ]
l : 試料の厚さ(m)
h : 温度上昇曲線の立ち上がり領域(0.3<ΔT/ΔTm<0.6)

――――― [JIS H 7801 pdf 8] ―――――

                                                                                              7
H 7801 : 2005
において,
ln t T を1/tに対してプロットしたと
きに得られる直線の傾き(s)(図3参照)
)
12
/・ΔT
l(t
n 傾きh
1/t
図3 対数法によって熱拡散率を算出するための傾き h の定義

8. 報告

 試験結果報告書には,次の項目を記載する。
なお,受渡当事者間で記載不要との合意が得られれた項目については,報告書への記載を省略すること
ができる。
a) 試料
1) 試料の種類及びその試料に関するデータ(物理特性,化学特性など)
2) 試料形状(円形、正方形、長方形、凸多角形など)及び代表寸法(直径、一辺の長さ、二辺の長さ、
最大長さなど)
3) 試料厚さ
4) 黒化処理の有無及びその条件
b) 測定条件
1) 測定年月日及び測定機関
2) 測定装置の製造業者及び形式
3) 試料定常温度測定(熱電対の種類,熱電対と試料との位置関係など)
4) 試料裏面温度変化測定(赤外線検出素子の種類,温度目盛の有無など)
5) 表面処理(処理の有無,処理方法,膜の種類,膜厚など)
6) 加熱レーザ(レーザの種類・強度・パルス幅,レーザパルスの重心とその求め方など)
7) 測定雰囲気(減圧した場合は真空度、不活性ガス雰囲気の場合はガスの種類など)
8) 測定回数
c) データ処理法
1) 熱拡散率算出方法名及び算出時の条件
2) 熱拡散率算出時の補正7.1によって行った補正とその補正係数(m k, k,
bc knuh ,krhlなど)]
d) 測定結果
1) 測定値の表示
1.1) 熱拡散率

――――― [JIS H 7801 pdf 9] ―――――

8
H 7801 : 2005
1.2) 定常温度
1.3) 測定温度
2) 測定データ
2.1) 温度上昇曲線(必要な場合に又は代表データについて示す。)
2.2) ハーフタイム
e) 特記事項 その他特記する必要のある事項
1) 重ね打ち法における回数
2) この規格の規定に合致しない事項又は受渡当事者間で協定した事項
3) その他必要とする事項

――――― [JIS H 7801 pdf 10] ―――――

次のページ PDF 11

JIS H 7801:2005の国際規格 ICS 分類一覧

JIS H 7801:2005の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISB7502:2016
マイクロメータ
JISB7506:2004
ブロックゲージ
JISC1602:2015
熱電対