JIS K 0132:1997 走査電子顕微鏡試験方法通則 | ページ 2

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(2) 反射電子 試料内に入射した一次電子が試料を構成する原子によって後方に散乱され試料から再放出
されて反射電子となる。その発生領域とエネルギーは電子プローブの加速電圧に依存する。反射電子
の発生量は,電子プローブの加速電圧・電流,試料傾斜角,電子プローブ照射位置の凹凸構造,構成
元素の原子番号・密度などに依存する。反射電子像のコントラストは,主として試料の構成元素の原
子番号と凹凸構造が反映される。そのため,反射電子像は,主として,試料の組成や形態の観察など
に用いられる。結晶性試料の結晶粒の方位解析や,磁性材料の磁区観察などに用いられる場合もある。
電子プローブを試料表面に垂直に照射した場合の,原子番号Zに対する反射電子の放出率を図7に
示す。反射電子の検出には,半導体検出器,シンチレータ形検出器などが用いられる。
図7 原子番号Zに対する反射電子の放出率
(3) 線 試料内に入射した一次電子が試料を構成する原子の内核電子を励起させた場合,その緩和過程
で励起状態と基底状態のエネルギー差に相当する特性X線が放出される。特性X線は元素分析に用い
られる。構成元素の化学結合状態の識別に用いられる場合もある。特性X線の発生領域は,電子プロ
ーブの照射位置の周辺の数 内である。特性X線の発生量は,電子プローブの加速電圧・電流,
試料傾斜角,電子プローブ照射位置の組成・密度などに依存する。特性X線の検出には,エネルギー
分散形又は波長分散形の検出器が用いられる。
(4) カソードルミネッセンス 試料内に入射した一次電子が試料を構成する原子の外核電子を励起し,基
底状態へ遷移したときに,励起状態と基底状態のエネルギー差に相当する,物質に固有の紫外,可視,
赤外領域の電磁波が放出される場合がある。カソードルミネッセンスは構成原子の化学結合状態の局
所的な違いの検出などに用いられる。カソードルミネッセンスの発生領域は,電子プローブの照射位
置の周辺の数 内である。カソードルミネッセンスの発生量は,電子プローブの加速電圧・電流,
電子プローブ照射位置の結晶構造,不純物,結晶欠陥などに依存する。カソードルミネッセンスの検
出には分光器などが用いられる。
5.2 分解能 電子線をプローブとした走査電子顕微鏡の観察像の分解能は,(1)電子プローブの直径(電
子プローブ径),(2)電子プローブ径に対する検出信号発生領域,(3)プローブ電流と信号検出器から観察像
形成,又は分析までの系の信号と雑音の比 (S/N) に依存する。
また,外部じょう乱などの装置設置環境によって分解能が低下する場合がある。

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(1) 電子プローブ径d0 装置の性能に依存する電子プローブの直径d0は,電子源の大きさと全レンズ系に
よる倍率で決まる電子源の縮小径と電子の放出エネルギーのばらつき,レンズの収差によるボケから
Smith(2)の式で近似的に予測することができる。
2 2 2 2 2
d0 (dm df ds dc da ) /1 2 ,
電子源の縮小径 : dm=Mv・dg
回折収差によるボケ : df=0.61 愀

球面収差によるボケ : ds= (Cs/4) ・
色収差によるボケ 愀
: dc= (Cc・E/E0)・
非点収差によるボケ : da=Ca・愀
ここで,Mvは全レンズ系の縮小倍率。dgは電子源直径。 潛 椰 ンズ絞りによって規制される電
子プローブの試料入射ビーム半角 (rad),E0は一次電子線の加速エネルギー(eV : エレクトロンボル
ト), 準 偽 の波長 (m),Eはエミッタから放出される電子のエネルギー幅 (eV),Csは対
物レンズの球面収差係数 (m),Ccは対物レンズの色収差係数 (m),Caは対物レンズの非点収差係数 (m)。
市販装置の最小電子プローブ径は,加速電圧25 kVの熱電子放出形電子銃でほぼ10 nm以下,電界
放出形電子銃でほぼ2 nm以下が得られる。
注(2) . C. A. Smith, Ph. D. Dissertation, Cambridge University (1956)
(2) 電子プローブ径に対する検出信号の発生領域 二次電子像の分解能は,図2に示したように試料の表
面層から放出された二次電子を検出するため,主たる発生領域は電子プローブ径に依存する。一方,
反射電子,X線やカソードルミネッセンス像は,試料に入射した一次電子の試料内での散乱によって,
電子プローブ径に比べて信号発生領域が広がるため,それらの分解能は信号発生領域に依存する。
(3) プローブ電流ipと信号検出 試料に照射する電子プローブのプローブ電流ipは次の式で与えられる。
ip=0.25 拿攀 愀
d0) 2・
ここで,戰 溏 度 (A・m-2・sr-1)
プローブ電流は,集束レンズの励起条件,対物レンズ絞り孔径の可変,電子銃のエミッション電流
などによって変化する。プローブ電流の増加は,エミッション電流の増加,集束レンズの弱励起,対
物絞り孔径の増加で得られる。
二次電子,反射電子,X線やカソードルミネッセンスなどの検出信号はプローブ電流量に比例する
が,各信号の発生率や試料に依存する発生率,検出器の検出効率などから測定可能範囲が制限される。
図8は各信号検出に適したプローブ電流の範囲を示す。
観察像の分解能を向上させるために,電子プローブ直径を細くし,プローブ電流が減少した場合,
観察像を得るのに必要とする信号のS/Nが得られず,分解能が制限されることがある。人間の目で識
別できる限界は,経験的にS/Nが5以上とされている。図9に雑音ノイズを含む信号とコントラスト
を示す。画像の信号は (Sa+B) で,Saを画像のコントラスト,Bを画像のブライトネスと呼ぶ。信号
のS/Nは,S= S+B,
a N= (Sa B2/1) と定義される。ここで,a
Sは画像コントラストSaの平均値で示
される実効信号幅である。
S/Nが5以下で得た二次電子像では,電子プローブ直径と同程度以下の試料の微細構造の観察は電
子プローブ径で決まる分解能が画像信号のS/Nから制限されることがある。

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図8 各信号検出に対するプローブ電流の使用範囲の例
図9 雑音信号を含む信号とコントラスト
(4) 像分解能
(a) 二次電子像の分解能 二次電子信号として大きなコントラストが得られ,そして分解能値に見合っ
た微細構造をもった試料を用いる。例えば,カーボン基板や磁気テープなどに金や白金などを薄く
蒸着した試料がある。この試料で得られた二次電子像の蒸着粒子の直交する異なった二方向の最小
粒子間隔を測定し,これをSEMの分解能と定義することが一般的である。
(b) 反射電子像の分解能 二次電子像の分解能確認試料と同様のものを用いている。
5.3 観察像の倍率及び校正 観察像の倍率は,電子プローブが試料上を二次元走査した寸法とCRTなど
の画像拡大表示の寸法の比である。これを図10に示す。試料を傾斜しない場合においてのみ,X軸とY
軸方向の倍率が同一となる。多くの走査電子顕微鏡は,CRTなどの拡大された画像にその倍率を示すため
に,試料傾斜によって倍率が変わらない軸方向の倍率やスケールバーなどを表示する機能を備えている。
電子プローブの偏向走査寸法とCRTなどの画像表示の寸法と直線性の確認のために倍率校正が行われる。

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図10 走査電子顕微鏡の倍率
(1) 倍率校正用試料 倍率を校正するための試料としては,市販の寸法校正されたAu, Cu, Ni製の100メ
ッシュ(ピッチ254
,1 000メッシュ(ピッチ25.4 ,や高分子製の1.09 び0.230
のラテックス,0.240 椰 イクロスケールなどが用いられている。
(2) 倍率精度 一般的に,市販装置(小形・廉価装置を除く)における記録された像の倍率及びスケール
バー表示の精度は,試料の帯電,外部じょう乱などがない場合は,装置の表示倍率の範囲において±
10%以下の精度が保証されている。
5.4 X線分析 走査電子顕微鏡の試料室に特性X線の検出器を装着すると,試料の局所的な組成を分析
することができる。検出器にはエネルギー分散形と波長分散形がある。両検出器の元素分析範囲,分析検
出限界,定量分析精度などの比較を表1に示す。
エネルギー分散形は波長分散形に比べて測定時間が短く,多元素の同時測定に優れていることから走査
電子顕微鏡に多用されている。複数の波長分散形検出器を備えたX線分析を中心に行う専用装置は電子線
マイクロアナライザ(3)と呼ばれる。X線分析には定性分析と定量分析があり,それぞれ,二次電子像や反
射電子像によって形態・組成像の観察を行い,電子プローブによる点,線,面の分析モードを指定するこ
とによって,試料表面上の測定部位の分析を行う。
また,分析の際には,注目する元素からの特性X線の発生効率,特性X線の発生領域の大きさ,試料の
電子線照射によるダメージ,などを考慮して電子プローブの加速電圧・電流などの分析条件を設定する。
注(3) 線マイクロアナライザとも呼ばれていたが,走査電子顕微鏡,透過電子顕微鏡と同様に労働
安全衛生法施行令別表第2項第1号のX線装置に該当しないとの立場から電子線マイクロアナラ

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イザに統一して呼ばれている。
表1 エネルギー分散形と波長分散形のX線分析の主な機能比較
エネルギー分散形 波長分散形
5B92U 4Be92U
元素分析範囲
検出方法 Si (Li) 半導体検出器によって
分光結晶によって波長分散し,
エネルギー分散する方式 比例計数管で検出する方式
分解能 エネルギー分解能(4) 波長分解能
E=138155 eV 約7×10-4 nm
( 約5×10-3 nm) (E=約20eV)
分析検出限界 1 5002 000ppm 50100ppm
定量分析精度 23% (11Na92U) 1%以下 (4Be92U)
X線像の分解能 数
注(4) n試料から得られたMnK ペクトル又は放射線同位元素55Feのスペ
クトルの半値幅で定義された場合の値である。
5.5 観察像・測定データの記録
(1) 写真撮影法 二次電子像,反射電子像,X線像などの記録は,観察用CRT像を直接写真撮影する方式
と撮影用CRT像を写真撮影する方式がある。撮影用CRTには,走査線本数が1 000本/画面のものか
ら2 000本/画面以上のものまである。撮影用CRTの画像とスケールバーの寸法表示は,倍率に連動
して校正されている。写真撮影にはロールフィルムやインスタントフィルムなどが選択できる。
(2) 電子式記録法 画像記憶機能が組み込まれた走査電子顕微鏡では暫定的に記憶された画像を,電子式
のビデオプリンタ,又は外部接続された画像記憶装置に転送して,記録することができる。
X線分析などの測定機器に構成されているコンピュータに収集した測定データは各種方式のプリン
タで記録することができる。
6. 試料及びその調製方法
6.1 試料 観察・分析用の試料は,一般的に導体,半導体及び絶縁体の固体が対象となるが,液体や水
分などを含む試料の観察・分析も可能である。
試料の観察・分析に際して,次の事項を行う。
(1) 試料は観察・分析条件に適するように試料調製を行う。
(2) 塊状,板状,粉状などの試料は試料ステージ又はステージに固定する試料ホルダーに導電性ペースト,
導電性両面テープなどによって固定し,電気的な導通をとる。
(3) 試料汚染の原因となる真空試料室内でのガス放出などを防止するためには,導電性ペーストに含まれ
る溶媒などを十分に乾燥させる。
6.2 試料調製 試料調製には,次の方法がある。
(1) 試料の導電性の確保,電子線損傷からの保護及び二次電子放出率の向上などのための表面コーティン
グ処理
(2) 試料の観察・分析したい部位を露出・顕在化などするための破断・割断,表面研磨処理
(3) 粉体試料の観察・分析に適した分散処理
(4) 生物試料,水や油などの液体を含んだ試料などの観察・分析時に生じる変形を防ぐための固定・脱水・
乾燥処理,凍結処理

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JIS K 0132:1997の国際規格 ICS 分類一覧

JIS K 0132:1997の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISK0050:2019
化学分析方法通則