JIS K 0132:1997 走査電子顕微鏡試験方法通則

JIS K 0132:1997 規格概要

この規格 K0132は、走査顕微鏡を用いて,二次電子による試料表画の微小部の形態観察と分析を行う場合の一般的事項について規定。

JISK0132 規格全文情報

規格番号
JIS K0132 
規格名称
走査電子顕微鏡試験方法通則
規格名称英語訳
General rules for scanning electron microscopy
制定年月日
1997年9月20日
最新改正日
2016年10月20日
JIS 閲覧
‐ 
対応国際規格

ISO

国際規格分類

ICS

37.020
主務大臣
経済産業
JISハンドブック
化学分析 2021
改訂:履歴
1997-09-20 制定日, 2002-09-20 確認日, 2006-11-20 確認日, 2011-10-20 確認日, 2016-10-20 確認
ページ
JIS K 0132:1997 PDF [14]
                                       日本工業規格(日本産業規格)                             JIS
K 0132-1997

走査電子顕微鏡試験方法通則

General rules for scanning electron microscopy

1. 適用範囲 この規格は,走査電子顕微鏡を用いて,主として二次電子による試料表面の微小部の形態
観察と分析を行う場合の一般的事項について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 0050 化学分析方法通則
2. 共通事項 共通事項は,JIS K 0050による。
3. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
なお,括弧内の対応英語は参考のために示す。
(1) 走査電子顕微鏡 (scanning electron microscope : SEM) 細く集束した電子プローブを試料上で二次
元的に走査することによって,試料から得られる二次電子等を用いて拡大像を形成することを基本機
能とする顕微鏡。
電子銃部から放出された一次電子をレンズで直径数
(2) 電子プローブ (electron probe)
下に集束させ,試料に照射する電子線。
(3) 試料 (specimen) 観察又は分析の対象となる物質。
電子を放出する物質。
(4) エミッタ (emitter)
(5) 一次電子 (primary electron) エミッタから放出され,試料に照射される電子。
(6) 散乱電子 (scattered electron)電子プローブの試料への照射によって,前方,又は後方に散乱される
電子。
(7) 線 (X-rays) 電子プローブの試料への照射によって,その試料から放出されるX線領域(0.01
100nm程度)の波長をもつ電磁波。
(8) 電子銃 (electron gun) 電子線を発生させるもの。
(9) レンズ (lens)電子線の径を縮小(又は拡大)するためのもの。磁界を用いたレンズと電界を用いた
レンズがある。
(10) 二次電子 (secondary electron) 電子プローブの試料への照射によって,試料から放出される電子の
うち運動エネルギーの低い電子。通常数10eV以下の運動エネルギーをもつ。
(11) 検出器 (detector) 電子プローブを試料に照射することによって発生する信号を捕そくするもの。
(12) アノード (anode) エミッタからの放出電子を加速,又はエミッタから電子を引き出すため,エミッ
タに対向して設置される電極。
(13) 反射電子 (backscattered electron)散乱電子のうち,後方に散乱されて試料から放出される運動エネ
ルギーの高い電子。電子プローブの電子と同程度の運動エネルギーをもつ。

――――― [JIS K 0132 pdf 1] ―――――

2
K 0132-1997
(14) カソードルミネッセンス (cathodoluminescence)電子プローブの試料への照射によって,試料から
放出される紫外,可視,赤外領域の波長をもつ電磁波。
(15) 吸収電子 (absorbed electron) 散乱電子のうち,試料中でエネルギー損失し吸収される電子。
(16) 透過電子 (transmitted electron)散乱電子のうち,試料を透過して放出される電子。
電子が試料の構成原子と衝突して散乱する際に電子及び原子のもつ全
(17) 弾性散乱 (elastic scattering)
運動エネルギーが衝突前後で変化しない散乱。
電子が試料の構成原子と衝突して散乱する際に電子及び原子のも
(18) 非弾性散乱 (inelastic scattering)
つ全運動エネルギーが衝突前後で変化する散乱。
試料に照射される電子の運動エネルギーの電圧換算値。
(19) 加速電圧 (accelerating voltage)
試料表面の法線と電子プローブとのなす角度。
(20) 試料傾斜角 (specimen tilting angle)
(21) 二次電子放出率 (secondary electron yield)一次電子を試料に照射することによって放出される二次
電子の割合を,一次電子1個当たりの二次電子の数で表したもの。
(22) 特性X線 (characteristic X-rays) 線のうち,試料中の元素に固有の波長をもつX線。
(23) 波長分散形X線分析 (wavelength dispersive X-ray spectroscopy)試料から発生するX線を分光結晶
を備えた波長分光器を用いて分光する方式。
(24) エネルギー分散形X線分析 (energy dispersive X-ray spectroscopy)試料から発生するX線をX線エ
ネルギーに比例した電気信号を発生する検出器を用いてエネルギー選別して分光する方式。
(25) プローブ電流 (probe current)電子プローブの電流。
(26) 倍率 (magnification)得られる像の実寸に対する拡大率。
対物レンズを通過する電子プローブの開き角を制御する絞り。
(27) 対物レンズ絞り (objective aperture)
(28) エミッション電流 (emission current)エミッタから放出される電子線による電流。
(29) 試料調製 (specimen preparation)試料を顕微鏡で観察・分析するための前処理。
試料表面を導電性物質で被覆する処理。
(30) 表面コーティング (coating)
試料の内部構造を保って試料を割る処理。
(31) 割断 (fracturing)
試料の形態・構造を化学的・物理的に保持する処理。
(32) 固定 (fixation)
(33) 脱水 (dehydration)試料中の水を他の液体で置換する処理。
(34) 非点収差補正 (astigmatism correction) 通常真円にはなっていない電子プローブを補正レンズを用
いて真円に近づける操作。
主に一次電子によって引き起こされる帯電現象。
(35) チャージアップ (charging effect)
対物レンズの磁極端面と試料表面との距離。作動距離
(36) ワーキングディスタンス (working distance)
ともいう。
(37) 走査時間 (scanning time)試料上を電子プローブで走査する一周期の時間。
4. 装置
4.1 装置の構成 走査電子顕微鏡は,電子銃部,レンズ部,偏向走査部,試料室・試料ステージ部,検
出器部,真空排気部,電源・制御部,信号処理・像表示部から構成される。図1に装置の基本構成を示す。
(1) 電子銃部 電子を発生させる系。エミッタ,アノード,電子銃の軸合わせ機構などから構成される。
通常,電子は50 kV以下で加速される。電子銃には熱電子放出形,電界放出形がある。
(2) レンズ部 電子プローブの径を縮小するための系。通常,2段以上の磁界又は電界レンズが用いられ,
試料に対面するレンズを対物レンズ,それ以外のレンズを集束レンズ(又はコンデンサーレンズ)と

――――― [JIS K 0132 pdf 2] ―――――

                                                                                              3
K 0132-1997
呼ぶ。
(3) 偏向走査部 電子プローブを偏向し,試料上で走査するための系。
(4) 試料室・試料ステージ部 試料を微動する試料ステージと,試料ステージを組み込む試料室から構成
される系。試料ステージには形態観察・分析のための試料が装てんされ,通常,試料は接地電位に保
持される。大口径の半導体ウェハを観察するための専用の大形試料ステージと大形試料室をもった装
置や試料室の真空度を中・低真空(12 700Pa程度)に調整可能な装置など,特化した装置もある。
試料室には二次電子検出器のほか,反射電子検出器,X線検出器,カソードルミネッセンス検出器な
どの附属装置を取り付けられる装置もある。
図1 走査電子顕微鏡の構成の一例
(5) 検出器部 電子プローブを試料に照射することによって発生する二次電子や反射電子などの信号を捕
そくする系。
(6) 真空排気部 主に電子銃部,レンズ部,試料室部を真空排気する系。電子銃部などを超高真空排気に
対応させた装置もある。
(7) 電源・制御部 高電圧電源・制御部,レンズ電源・制御部,走査電源・制御部に大別される。
(a) 高電圧電源・制御部 電子銃,二次電子検出器,像表示用陰極線管 (CRT) に高電圧を印加し,制
御する系。
(b) レンズ電源・制御部 レンズに電流又は電圧を印加し,制御する系。
(c) 走査電源・制御部 偏向走査部に偏向・走査信号を印加し,制御する系。
(8) 信号処理・像表示部 検出器部からの電気信号を増幅・信号処理し出力する回路部,及びその信号を
CRT等に画像表示する像表示部と記録部から構成される系。二次電子像,反射電子像やX線像を選択
し,表示する機能や画像記憶機能をもつものもある。
4.2 装置の設置条件 装置の設置に当たっては,設置空間,電源・接地,給排水(水温,水圧,流量な
ど),高圧ガス(種類,圧力,流量など),温度・湿度,じんあい(塵埃),有害・腐食性物質,直射日光,
床強度,床振動,浮遊磁場(直流,交流),騒音などについて考慮すること。
5. 形態観察・分析法の原理 試料面上を電子プローブで二次元的に走査し,試料と電子線の相互作用に
よって発生する二次電子や反射電子を検出して拡大像を形成し,試料の形態観察を行う。通常,この観察
結果をもとに試料面上の分析位置を決定する。すなわち,電子プローブを照射する試料面上の二次元位置
に対応して発生する二次電子,反射電子,X線,カソードルミネッセンス,吸収電子,透過電子などを検
出・分光することによって試料の形態観察,寸法測定,元素分析,欠陥解析などを行う。

――――― [JIS K 0132 pdf 3] ―――――

4
K 0132-1997
5.1 電子線との相互作用と発生する信号 試料に入射した一次電子は試料を構成する原子との相互作用
によって,弾性散乱や非弾性散乱される。この相互作用を経て,二次電子,反射電子などの電子やX線,
カソードルミネッセンスなどの電磁波が試料表面から放出される。これらの信号は,試料の固有の情報と
して利用できる。電子プローブを試料に照射したとき試料から発生する信号とその発生領域の関係を図2
に示す。試料に一次電子を入射したとき試料から放出される電子のエネルギー分布を図3に示す。縦軸に
発生した電子数 (N),横軸に発生した電子のエネルギー (E) と一次電子のエネルギー (E0) の比を示して
いる。領域Aの数十eVまでの低いエネルギー領域の電子を二次電子,領域Bの入射電子のエネルギーに
近いエネルギーをもつ電子を反射電子と呼ぶ。主な信号の性質と発生過程は次のとおりである。また,吸
収電流や薄膜試料における透過電子を信号として利用することができる。
図2 電子プローブと固体試料の相互作用による検出信号と発生領域の模式図
図3 入射一次電子のエネルギー (EO) に対する試料から放出される電子のエネルギー分布
(1) 二次電子 試料内に入射した一次電子が試料を構成する原子との相互作用によりエネルギーを失う過
程で二次電子が発生する。このうち,試料表面から数nm以内の領域で発生した二次電子だけが試料
外へ放出される。二次電子の発生量は,電子プローブの加速電圧・電流,電子プローブ照射位置の凹
凸構造,組成・密度・仕事関数,試料傾斜角,などに依存する。二次電子像のコントラストは,主と
して試料の凹凸構造・組成・密度が反映される。そのため,二次電子像は主として試料表面の形態観
察,寸法測定などに用いられる。半導体素子の表面電位・磁性材料の磁区観察などに用いられる場合

――――― [JIS K 0132 pdf 4] ―――――

                                                                                              5
K 0132-1997
もある。
電子プローブを平たんで清浄な試料表面に垂直に照射した場合の,原子番号Zに対する二次電子放
出率 湧Y 準
4に示す。Au, Al, Cにおける ローブの加速電圧V0 (V) に対する依存
性を図5に示す。
また,試料傾斜角とVOに対する 6に示す。二次電子の検出には,シンチレータと光
電子増倍管を組み合わせた二次電子検出器が一般的に用いられる。
図4 原子番号Zに対する二次電子放出率の最大値 1)
注(1) 歛 する加速電圧は元素によって異なる。
図5 電子プローブの加速電圧VOに対する二次電子放出率
図6 試料傾斜角0°(水平),30°,45°における二次電子放出率 化

――――― [JIS K 0132 pdf 5] ―――――

次のページ PDF 6

JIS K 0132:1997の国際規格 ICS 分類一覧

JIS K 0132:1997の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISK0050:2019
化学分析方法通則