JIS K 0147-2:2017 表面化学分析―用語―第2部:走査型プローブ顕微鏡に関する用語 | ページ 7

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5.137 スキャナクリープ scanner creep
スキャナ(5.136)によって決められた位置のゆっくりとしたド
リフト。
注記1 この効果は,直前位置からのスキャナの変位量に依存す
る。閉ループ制御のないスキャナでは,クリープはトレ
ース方向であることが多く,大きな画像(5.69)ゆがみ
につながることもある。
注記2 閉ループ制御のないピエゾチューブスキャナのクリー
プ値は,位置の総変化量に対するドリフト量の比率によ
って与えられる。この比率は,通常は百分率として表さ
れる。指数関数の時定数t0については10秒100秒の
範囲内,Dについては1 %20 %までの範囲内におい
て,位置の変更によって発生するドリフト量Dは,漸
近値kDに達することができる。したがって,時刻tの
位置は,D[{1+k[1−exp(−t/t0) ]}]である。
5.138 スキャナヒステリ scanner hysteresis
ある所定の方向における,トレース(前方走査)とリトレース
シス (後方走査)との間のスキャナ(5.136)の位置の差異。
注記1 スキャナクリープ(5.137)参照。
注記2 この効果は,非線形スキャン,像(5.69)登録の再現性
の劣化,像のゆがみ,走査方向における位置制御の差異
につながり,直前位置からのスキャナ変位量に依存す
る。スキャナヒステリシスは,閉ループフィードバック
制御システムを用いてほとんど修整又は補償でき,適切
な電圧波形を用いることによって低減することができ
る。
注記3 閉ループ制御のないチューブピエゾスキャナのヒステ
リシス値は,全走査長に対する,前方と後方の走査にお
ける位置ずれの最大値との比で与えられる。通常,この
比率は百分率で表され,典型的なヒステリシス値は
20 %までの範囲に入る。非線形性の値は,一般に,こ
の比率の半分である。
注記4 スキャナのヒステリシス値は時間依存性があり,スキ
ャナクリープ(5.137)による誤差も含まれる。
5.139 走査速度 SPM探針を移動させるラスタ走査の速度。 scanning rate
注記 1秒間に走査された画像の走査線数又はライン走査の繰
返し周波数(単位Hz)で表される。
5.140 second harmonic
第二次高調波発生, 入射光の2倍の周波数をもつ散乱光が発生する非線形な光学効
SHG 果。 generation,
注記1 NSOM/SNOM(3.17)において,金属製探針先端が用 SHG
いられた場合,探針増強(5.160)によって第二次高調
波発生の生起,又は探針先端と近接した表面からの第二
次高調波発生の増大があり得る。
注記2 入射光にとって,表面又は埋め込み層界面の対称性の欠
如がSHGを起こしやすくする。

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5.141 設定値, set point
探針先端(5.120)と試料間との距離を調節することによって,
セットポイント フィードバックの操作モードにおいて,装置が一定値に保持し
ようとするパラメータの値。
注記 力一定の接触モード(5.35)でAFM(3.2)を操作する場
合,セットポイントのパラメータは力の大きさである(セ
ットフォースということもある)。ダイナミックモードで
は,振動振幅,周波数,位相などがセットポイントにな
る。
5.142 シンクイン sink-in
押し込んでいる探針(5.109)の周縁で起こる物質の流れ。押し
込みの周縁では物質の減少が見られる。
5.143 表皮深さ 〈NSOM,SNOM〉光ファイバを用いたNSOM/SNOM探針にお skin depth
いて,金属被膜中へ伝ぱする電場の侵入深さ。
5.144 スナップイン, snap-in,
表面引力から生じる力勾配がカンチレバー(5.18)の復元性力勾
スナップオン, snap-on,
配を超えるほど十分に表面近傍に探針先端(5.120)を近接させ
たときに起こる探針先端が突然に表面に接触する事象。
jump to contact(非 jump to contact
推奨) (deprecated)
5.145 ソフトリソグラフ soft lithography
エラストマのスタンプ(刻印),モールド(鋳型),又は適合可
ィ 能なフォトマスクを用いて構造体の転写をする製造又は複製。
5.146 スティクション stiction
結合はしていないが接触している固体間において,表面の凝着
力が,固体同士を分離するために設計された機械的な力を超え
たり,又は分離のふるまいに強く影響を及ぼす現象。
注記1 MEMSデバイスの製造において,構成部品が水溶液か
ら取り除かれるときにスティクションが起こる。この問
題は,単層の吸着で覆うなど,表面エネルギー(5.150)
を適切に低くすることで解決される。
注記2 この問題はAFM(3.2)を用いて研究ができる。
5.147 剛性 stiffness
印加された力によるたわみに対する弾性材料の変形のしづらさ
の度合い。
注記 印加された力とたわみの方向は同じでない場合がある。
その二つのベクトルの関係は,剛性行列によって特徴付
けることができる。
5.148 ストークス散乱 Stokes scattering
入射光子よりも放出される光子の方がエネルギーがより低くな
るラマン効果(5.128)。
注記 反ストークス散乱(5.4)参照。
5.149 伸長長さ stretching length
結合が切れる直前の分子ひずみの強度に対応する分子の長さ又
は探針−試料間の距離。
5.150 表面エネルギー surface energy
熱力学的平衡状態において,表面積を増加するために必要なエ
ネルギーを増加した面積で除した商。
注記1 この用語は,単位面積当たりのエネルギーの次元をもつ
ため,より正確には,単位面積当たりの表面エネルギー
とすることが望ましい。しかし,文献の中では,省略し
た記載である表面エネルギーが一般的である。
注記2 この用語は,エネルギーイオン分析(EIA)及びラザフ
ォード後方散乱分光法(RBS)で用いられる表面近似エ
ネルギーとは関係ない。

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番号 用語 定義 対応英語(参考)
5.151 表面増強ラマン散 surface-enhanced
適切に調製された金属表面近傍の特定の分子について観測され
乱, Raman scattering,
る増強ラマン効果(5.128)。ラマン散乱断面積は,適切に調製さ
SERS SERS
れた金属表面がない場合の同一分子に対する場合に比べて,数
桁大きな強度である。
注記1 SERSという略語は,表面増強ラマン散乱と表面増強ラ
マン分光法との両方に使われる。
注記2 正しい波長のレーザーによって励起される場合,適切な
形状の金及び銀の表面において特に増強効果が強い。
注記3 表面増強ラマン散乱は,TERS(3.42)で利用される。
5.152 表面増強ラマン分 表面増強ラマン散乱(5.151)を利用した分光法。 surface-enhanced
光法, 注記 SERSという略語は,表面増強ラマン散乱と表面増強ラマRaman
SERS ン分光法との両方に使われる。 spectroscopy,
SERS
5.153 表面増強共鳴ラマ surface-enhanced
入射光又は散乱放射のエネルギーが分子の光学遷移と共鳴状態
ン散乱, にある場合の表面増強ラマン効果(5.128)。 resonant Raman
SERRS 注記 SERRSという略語は,表面増強共鳴ラマン散乱と表面増 scattering,
強共鳴ラマン分光法との両方に使われる。 SERRS
5.154 表面増強共鳴ラマ 表面増強共鳴ラマン散乱(5.153)を利用した分光法。 surface-enhanced
ン分光法, 注記 SERRSという略語は,表面増強共鳴ラマン散乱と表面増 resonant Raman
SERRS 強共鳴ラマン分光法との両方に使われる。 spectroscopy,
SERRS
5.155 表面パッチ電荷 固体表面の局所的な仕事関数の変化から生じる局在電荷。 surface patch charge
注記 表面パッチ電荷は,表面の双極子層とそれが作る表面の
電界の強度変化(表面パッチ効果)の結果として起こる。
ガウスの法則は,そのような電界が表面に局在電荷を出
現させることを予言している。これらの電界強度変化は,
様々な結晶方位をもつ多結晶の表面,様々な局所的形態
をもつ吸着層,様々な局所的吸収層又は吸着層をもつ領
域で起こり得る。
5.156 標的群 定められた官能基と特定の結合をする分子群。 target group
5.157 熱ドリフト thermal drift
熱又は温度変化の影響の結果として起こるパラメータ値の変
動。
5.158 傾き補正探針 tilt-compensated
〈AFM〉カンチレバー(5.18)の取付け時に探針(5.109)が測
probe
定試料表面に対して垂直に位置するように,カンチレバー面に
対して探針を傾けたカンチレバー。
5.159 探針バイアス 探針先端に印加された試料基準の電圧。 tip bias
5.160 探針増強 tip enhancement
〈NSOM,SNOM〉通常は近接場(5.88)領域において,探針先
端(5.120)の電子と照射光との相互作用によって得られる光学
的信号の増強。
注記1 散乱型NSOM/SNOM(3.36)及び表面増強ラマン散乱
(5.151)参照。
注記2 増強は,通常,金属製又は金属被覆のAFM(3.2)探針
先端を用いて得られる。
注記3 探針増強は,近接場ラマン顕微鏡(5.89)のような顕微
鏡技術にとって重要な現象であり,探針先端の材料と構
造によっては,一般に予想されるものより桁違いで大き
な表面増強ラマンの信号を起こすことがある。

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番号 用語 定義 対応英語(参考)
5.161 探針先端半径 〈散乱NSOM,SNOM以外〉触針又は探針(5.120)の先端の領tip radius
域における表面曲率を表す半径。
注記1 異なる方位角の曲率半径を用いて探針先端を表す必要
がある場合がある。
注記2 実際には,探針先端の非常に極微小な領域だけが,その
形状を球に近似できる。
5.162 探針先端半径 〈散乱NSOM,SNOM〉有意な強度のエバネセント光を放射す tip radius
る探針先端(5.120)の円状領域を表す半径。
5.163 探針−試料間接触 tip-sample contact
最大押し込み深さにおける探針(5.120)と表面とが接触する領
半径 域の最大半径。 radius
5.164 tip side (of a
(カンチレバーの) 探針先端(5.120)が固定されているカンチレバー(5.18)の面。
探針側 cantilever)
注記 (カンチレバーの)検出側(5.38)及びカンチレバー背面
(5.21)参照。
5.165 形状コントラスト topographic contrast
試料表面の形状から生じる,画像(5.69)におけるコントラスト。
注記 形状効果は,探針(5.109)と試料との間の相互作用を修
正する可能性をもっており,データの解釈を複雑にする
場合がある。
5.166 ねじればね定数, torsional spring
〈AFM〉探針先端(5.120)位置におけるカンチレバー(5.18)
kθ constant,
軸に関する印加トルクを当該軸に関する探針先端位置における
ねじれ回転によって除した商。 kθ
注記 水平ばね定数(5.78)及び垂直ばね定数(5.92)参照。
5.167 透過率 試料を透過する入射光の割合。 transmittance
注記 通常,透過率は指定された波長において定義される。
5.168 チューニングフォ tuning fork
チューニングフォーク(水晶音さ)によって駆動された振幅の
ーク検出 振動を用いた探針先端−試料間距離の検出。 detection
5.169 トンネル効果, tunnelling
電子エネルギーより高いポテンシャル・エネルギーをもつ領域
トンネル を横切る電子の量子力学的輸送。
5.170 トンネル確率 電子がトンネル障壁(5.12)を横断する確率。 tunnelling
注記 この量子力学的な現象において,トンネル確率は,電子probability
エネルギー,局所的障壁高さ(5.10),及びトンネル障壁
幅(5.13)と関連している。
5.171 ファンデルワール van der Waals force
化学結合形成による力,中性分子又はイオン・イオン基との静
ス力 電相互作用による力以外の,分子性実体(又は同一分子性実体
内の基)の間の引力的又は斥力的な力(参考文献[16]参照)。
注記 この用語は,双極子−双極子,双極子誘起双極子,及び
ロンドン(瞬時に誘起された双極子誘起双極子)力を含
む。この用語は,非特異的な引力又は斥力の分子間力全
体を表現するために緩く用いられることがある。
5.172 ベクタ走査 vector scanning
画像(5.69)平面において,定義されたベクトル軌跡上で探針先
端(5.120)を移動させる走査法。
5.173 ワープ warp
基準面に対して直角に測定された,試料表面の上端部と下端部
との間の距離。基準面は,定義された表面をカバーするために
適切な半径をもつ,試料表面の中心の周りの円内の表面上の3
等距離点によって定義されるか,又は表面に適合させた最小二
乗平面フィッティングによって定義される。
注記1 ボウ(5.16)及び平面度(5.50)参照。
注記2 基準面を定義する方法を記載することが望ましい。
注記3 この用語は,平面度は,ずれが凹面又は凸面より複雑な
表面,すなわち,周辺部ではない基準平面から複数の端
部をもつ表面に適用される。

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K 0147-2 : 2017 (ISO 18115-2 : 2013)
番号 用語 定義 対応英語(参考)
5.174 ウォラストン線 Wollaston wire
顕微熱分析を実施するために,電気抵抗を用いて探針先端温度
を測定する,電気的に熱せられた白金の探針先端(5.120)から
成るワイヤ探針(5.109)。
5.175 付着仕事 work of adhesion
単位面積の界面を形成する二つの凝縮相が,単位面積の二相の
自由表面を形成するために可逆的に分離されるときに必要とさ
れるエネルギー。
注記 この用語は,時折,分離の仕事又はデュプレの付着仕事
としても知られている。
5.176 みみず鎖 worm-like chain
〈高分子〉連続的で,規則性のない湾曲をもつポリマー骨格の
モデル。

6 走査型プローブ顕微鏡に関する補助的な用語

  番号        用語                               定義                          対応英語(参考)
6.1 振幅変調原子間力 amplitude
探針アセンブリが一定の周波数で励振されているダイナミック
顕微鏡, モードAFM(3.6)。 modulation
AM-AFM 注記1 FM-AFM(3.10)参照。 atomic-force
microscopy,
注記2 探針−試料の相互作用力は,カンチレバー振動振幅の減
AM-AFM
少として検出される。フィードバックループは,カンチ
レバー振動振幅を一定に維持しようとするために,探針
先端−試料間距離を変える。
6.2 振幅変調ケルビン amplitude
探針アセンブリが一定の周波数で励振されているダイナミック
プローブ力顕微 モードKPFM。 modulation
鏡, 注記1 FM-KPFM(6.6)及びAM-AFM(6.1)参照。 Kelvin-probe
AM-KPFM force microscopy,
注記2 探針−試料間の相互作用力は,カンチレバー振動振幅の
AM-KPFM
減少として検出される。フィードバックループは,カン
チレバー振動振幅を一定に維持しようとするために,探
針−試料間距離を変える。
6.3 弾道電子放出顕微 ballistic electron
ショットキーダイオードの接地された金属基部に電子が探針先
鏡, 端から注入されるSTM(3.34)モード。金属−半導体界面までemission
BEEM microscopy,
金属中を弾道的に通過する電子のうち,ショットキー隔壁を越
BEEM
えるのに十分なエネルギーをもつものがBEEM電流として検出
される。
6.4 contact resonance
コンタクトモードAFMにおいて,探針アセンブリが大気中の共
接触共振力顕微鏡,
CRFM, force microscopy,
振周波数又はその高調波を含む広帯域の周波数で励振され,コ
接触共振原子間力 CRFM,
ンタクト状態の共振周波数又はその高調波が測定されるもの。
顕微鏡, contact resonance
注記 測定データは試料表面の局所剛性を与える。基板材料物
CRAFM 性ばかりでなく,粘弾性材料の貯蔵弾性率及び損失弾性atomic-force
率を推定するのにも使われる。正確な局所剛性を与えるmicroscopy,
CRAFM
ためには,探針及びカンチレバーの特性は,公称値を用
いるのではなく,注意深く計測される必要がある。
6.5 電気化学走査型プ 表面の電気化学活性の計測を含むSPM(3.30)モード。 electrochemical
ローブ顕微鏡, scanning-probe
注記 EC-SPMにはEC-AFM(3.8),EC-STM(3.9),SECM(3.22)
EC-SPM 及びSECM-AFMが含まれる。 microscopy,
EC-SPM
6.6 周波数変調ケルビ frequency
探針アセンブリの共振周波数シフトがモニタされ,フィードバ
ンプローブ力顕 ック回路の設定値に合わせるダイナミックモードKPFM。 modulation
微鏡, 注記 FM-AFM(3.10)参照。 Kelvin-probe
FM-KPFM force microscopy,
FM-KPFM

――――― [JIS K 0147-2 pdf 35] ―――――

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