JIS K 3610:1992 生体工学用語(生体化学部門)

JIS K 3610:1992 規格概要

この規格 K3610は、生体工学分野で用いる用語のうち,生体化学部門で用いる用語について規定。

JISK3610 規格全文情報

規格番号
JIS K3610 
規格名称
生体工学用語(生体化学部門)
規格名称英語訳
Technical terms for biological engineering (biochemistry)
制定年月日
1992年11月1日
最新改正日
2016年10月20日
JIS 閲覧
‐ 
対応国際規格

ISO

国際規格分類

ICS

01.040.07, 07.080
主務大臣
経済産業
JISハンドブック
‐ 
改訂:履歴
1992-11-01 制定日, 2002-05-20 確認日, 2006-10-20 確認日, 2011-10-20 確認日, 2016-10-20 確認
ページ
JIS K 3610:1992 PDF [35]
                                       日本工業規格(日本産業規格)                             JIS
K 3610-1992

生体工学用語(生体化学部門)

Technical terms for biological engineering (biochemistry)

1. 適用範囲 この規格は,生体工学分野で用いる用語のうち,生体化学部門で用いる主な用語について
規定する。
2. 分類 用語は,次のとおり分類する。
(1) 細胞工学
(1.1) 基礎・共通事項
(1.2) 遺伝情報
(1.3) 動物細胞
(1.4) 植物細胞
(1.5) 微生物
(1.6) 操作,手法及び技術
(2) たん白質工学
(2.1) 基礎事項
(2.2) たん白質の合成,修飾及び分解
(2.3) たん白質の構造,状態及び物性
(2.4) たん白質及びその集合体の機能
(2.5) 実験技術及び実験装置など(たん白質工学)
(3) 生体反応工学
(3.1) 基礎・共通事項
(3.2) 微生物工学
(3.3) 酵素工学
(3.4) 培養工学
(3.5) バイオリアクター
(3.6) 環境保全
(3.7) 操作,手法及び技術

――――― [JIS K 3610 pdf 1] ―――――

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K 3610-1992
3. 用語及び定義 用語及び定義は,次のとおりとする。
なお,参考のために対応英語を示す。
(1) 細胞工学
(1.1) 基礎・共通事項
番号 用語 定義 対応英語(参考)
1101 アイソシゾマー isoschizomer
異なる菌株から単離され,認識塩基配列が互いに同じ制限酵素。
備考 イン制限酵素ともいう。
1102 悪性転換 malignant transformation
細胞が本来の組織内の制御を離れて無限増殖をし,動物にしゅよ
う(腫瘍)形成性を示すようになる遺伝子と細胞質の変化。
1103 アロ抗原, 同種間の個体の間で遺伝的に異なる多型性抗原。 alloantigen
同種(異系)抗原
1104 異質3倍体(4倍体)異種ゲノムが組み合わさって生じた倍数体。 allotriploid (allotetraploid)
1105 遺伝形質 genetic character
遺伝子によって規定されている生物各個体に固有の性質。
1106 遺伝子 gene
DNA(一部のウィルスではRNA)分子内の塩基配列で規定され,
生物の形質を決定している遺伝の基本単位。
1107 遺伝子地図 genetic map
染色体にある遺伝子の種類,配列順序及び相対的位置関係を示し
た地図。
1108 遺伝子治療 人体に遺伝子を導入して行う治療法。 gene therapy
1109 遺伝的不活化(精子の) genetical inactivation of
精子の染色体だけを破壊し,遺伝情報の伝達を不能にさせる操
作。 sperm
1110 遺伝子病 genetic disease,
DNAの塩基配列の変化による遺伝子の欠陥又は異常に起因する
遺伝性疾患。 genopathy
1111 温度感受性突然変異 temperature sensitive
ある温度範囲でだけ野生型と異なる表現型を示す突然変異。
mutation
1112 温度感受性突然変異体 temperature sensitive mutant
一定温度(許容温度)以下ではほぼ正常な形質を示すが,それ以
上では変異形質を発現する突然変異体。
1113 核小体 nucleolus
真核細胞の核内にあり,リボソームRNAの合成とリボソームの
組立てを行う小器官。
1114 完全ホモ2倍体 すべての遺伝子が同型接合体となった生物個体。 complete homozygous
diploid
1115 キメラ chimera
二対以上の異なった両親に由来する,2種類以上の異なった遺伝
子型の細胞から構成される個体。
1116 共生 symbiosis
異なる種類の生物個体が位置的・生理的に密接な関係を保って生
活している現象。
1117 極体 polar body
卵母細胞の成熟過程での不等分裂で生じる少量の細胞質を含む
娘細胞。
1118 形態形成 morphogenesis
生物の発生の過程で新しい形態的特徴が形成される現象。
1119 系統樹 生物の進化による種の相互の系統関係図。 genealogical tree,
evolutionary tree
1120 ゴースト, ghost
ファージ,細菌又は細胞に処理を施し,内容物を除去した外被膜
細胞形がい(骸) 又は細胞膜。
1121 サイトプラスト, 生細胞から核を除去した細胞膜で包まれた細胞質体。cytoplast
細胞質体
1122 サイブリッド, cybrid
無核の細胞質体(サイトプラスト)と性質の異なる細胞との融合
細胞質雑種 による細胞質雑種。
1123 細胞周期 細胞の分裂と成長の周期。 cell cycle
1124 細胞内輸送 intracellular transport
広義には細胞器官を含めて,細胞内で起こるあらゆる輸送現象。
狭義には(粗面)小胞体で合成された分泌たん白質が,ゴルジ体
を経由して細胞膜に輸送される過程。

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番号 用語 定義 対応英語(参考)
1125 雑種細胞 hybrid cell
異なった種又は由来の細胞が融合し,核も融合して形成され,部
分的にでも両者の遺伝子が機能している細胞。
1126 サルベージ合成経路 salvage synthetic pathway
生体物質を完全に分解しないで分解途中の物質を回収して再利
用する反応経路。
1127 真核細胞 核膜に包まれた核をもった細胞。 eukaryotic cell
1128 浸透圧調節剤 細胞内浸透圧又は体液浸透圧を調節する薬剤。 osmoregulating chemical
1129 スフェロプラスト spheroplast
細菌又は植物細胞の細胞壁を酵素処理によって部分的に取り除
いた球形の原形質体。
1130 制限, restriction,
外来性のDNAが,宿主の酵素によって分解される現象。
宿主支配性 host controlled
1131 性転換 sex reversal
個体の性が発生の途中で,遺伝的に決められた性とは逆の性に転
換する現象。
1132 性判別 sexing
動物個体の発生初期段階,特に着床前期卵の,組織学的・分子生
物学的手法による雌雄の判別。
1133 生物応答調節剤 BRM(biological response
免疫系などの生物機能を増強・調節する機能をもつ物質。
modifiers)
1134 世代時間 generation time
細胞レベルでは,細胞が分裂してから次に分裂するまでの時間。
個体レベルでは,個体の誕生から次の世代を生むまでの時間。
1135 前核 pronucleus
受精直後の卵にみられる卵細胞の核(雌性前核)と,卵子に侵入
した精子が形成する核(雄性前核)。
1136 染色体異常 染色体の数,組合せ又は構造についての異常。 chromosomal aberration
(abnormality)
1137 選択マーカー selectable markers
保有細胞を適切な条件下で特異的に選択できるような遺伝子。
1138 セントロメア centromere
染色体の動原体系の結合部で,対をなす娘染色体が互いに付着し
ている部位。
1139 全能性 totipotency
一つの細胞が種々の組織器官に分化して,完全な個体を再生させ
ることができる潜在的な能力。
1140 走化性 chemotaxis
細胞又は個体が化学物質のある方へ移動したり,化学物質から遠
ざかる性質。
1141 組織特異的発現 生物個体の特定の組織に限定された遺伝子発現。 tissue specific expression
1142 体細胞変異 体細胞に生じた突然変異。 somatic mutation
1143 TCA回路 クエン酸を介して有機物の完全酸化を行う代謝回路。TCA cycle
1144 脱分化 dedifferentiation
(1) 器官,組織などの機能分化・形態分化している細胞が分裂を
開始して,カルス化する現象及び分化組織の反復培養によっ
て分化のレベルが低下する現象。(植物細胞のとき)
(2) 一度分化した細胞が特徴を失って未分化な状態に戻る過程。
(動物細胞のとき)
1145 多分化能 pluripotency
適切な環境に応じて,あらゆる種類の細胞に分化する未分化細胞
のもつ潜在能力。
1146 単為発生 parthenogenesis
卵が精子なしに物理的刺激などで新個体を発生する生殖法。
1147 致死突然変異 生物個体が成長の途中で死ぬような突然変異。 lethal mutation
1148 DNA再構成 DNA rearrangement
リンパ球の分化のために,複数のエキソンが組換えを起こし発現
型遺伝子をつくる再配列過程。
1149 テロメア telomere
真核細胞での,染色体の複製や安定化に必要な特殊な構造をもつ
染色体の末端部分。
1150 転写 transcription
遺伝情報の発現される過程で,ゲノム上の塩基配列がRNAの塩
基配列に写しとられる核酸合成反応。
1151 転写調節 遺伝情報の発現過程において,転写段階に働く調節。transcriptional control
1152 パイロジェン 体内に投与すると微量で発熱を引き起こす物質。 pyrogen
1153 発現 expression
DNAの塩基配列情報に基づく遺伝子の転写による機能発現。

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番号 用語 定義 対応英語(参考)
1154 発生時期特異的発現生物個体の特定の発生時期に限定された遺伝子発現。stage speciffc expression
1155 微小核 ゲノムの一部だけを含む核。 micronucleus
1156 ヒストン 核内DNAと複合体を形成している塩基性たん白質。 histone
1157 封入体 inclusion body
細胞内で増殖したウイルス粒子などの集合体,又はウイルスなど
の感染,先天性代謝異常若しくは外部からの人為的な遺伝子の導
入の結果によって細胞内に蓄積した反応生成物。
1158 不和合性 incompatibility
2種類のプラスミドが同一細胞に導入されたとき,細胞増殖の過
程で同一細胞内に安定に共存できない現象。
1159 分化 differentiation
受精卵が分裂を重ねてはい(胚)を形成し,発生が進行する過程
で等価の細胞から形態学的・機能的に特殊化した細胞になり,組
織・器官を形成する現象。
1160 ヘテロクロマチン heterochromatin
細胞分裂間期から次の分裂前期に持続する転写不活性な染色体
又は染色体部分。異質染色質。
1161 変異原物質 mutagen
化学的メカニズムによって,生物に自然に起こる変異よりも高い
割合で変異を誘発する物質。突然変異誘発物質。
1162 ホメオスタシス, 生体内の組成・物理的状態を一定に維持する機能。 homeostasis
恒常性
1163 ポリソーム polysome
mRNA上にリボソームが一定の間隔をもって結合したmRNA−
リボソーム複合体。
1164 マイトジェン 細胞の分裂を誘起させる物質。 mitogen
1165 ワクチン vaccine
感染症予防の目的で,ヒトや動物を能動免疫するための抗原。
(1.2) 遺伝情報
番号 用語 定義 対応英語(参考)
1201 Alu(ありゅ)配列 Alu sequence
ヒトゲノム中に散在し制限酵素Alu Iで切断される部位 (AGCT)
をもつ約300bpの高頻度反復塩基配列。
1202 アンチセンスDNA mRNAと相補的で遺伝子発現の抑制機能をもつDNA。 antisense DNA
1203 遺伝子座活性化部位 locus activating region
染色体上の特定遺伝子座を活性化するシス作用性のDNAの構
造。 dominant control region
1204 遺伝的相補(細胞レベ genetic complementation at
異なった機能に遺伝的欠陥のある細胞間で細胞融合させると,雑
ルでの) 種細胞では機能が相補ってその欠陥が消失する現象。 cellular level
1205 SOS遺伝子群 大腸菌のDNA損傷の際に生存のためにLexAたん白質によって −
発現が制御されている15種類の遺伝子。
1206 エピソーム episome
宿主染色体と独立に増殖する状態及び宿主染色体に組み込まれ,
宿主染色体とともに複製が行われる状態をとり得る遺伝物質。プ
ラスミドと同概念。
1207 open reading frame
mRNA上の開始コドンで始まり終結コドンで終わる部分で,たん
オープンリーディング
フレーム 白質のアミノ酸配列を決定する情報をもっている領域,又はたん
白質合成の情報をもっているDNA上の領域。
1208 オペレーター operator
DNA上にコードされた遺伝情報の発現を調節する遺伝子の一つ
で,負の制御因子であるレプレッサーの結合部位。
1209 CAAT(かーと)ボッ CAAT box
真核細胞での,転写を調節しているであろうと推定されている,
クス 転写開始点から上流約80100塩基離れた領域に存在するCAAT
という共通の塩基配列。
1210 がん(癌)遺伝子 oncogene
細胞のがん(癌)化に不可欠の遺伝子又は細胞のがん化を誘導す
る活性をもつ遺伝子。
1211 偽遺伝子 pseudogene
塩基配列において,機能する遺伝子と極めて相同であるが,点変
異や小さな欠失,挿入などの変異を受けているために発現の認め
られない不活性の遺伝子。
1212 逆位 inversion
染色体のDNAの配列が部分的に逆になっている構造変異現象。

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番号 用語 定義 対応英語(参考)
1213 逆位反復配列 inverted repeat sequence
逆向きで相補的な反復塩基配列で,遺伝子内を動くことのできる
遺伝因子がもつ一般的特徴。
1214 キャップ形成 cap formation
細胞表層のたん白質と脂質が抗体などで架橋して会合し,パッチ
を形成し,この会合体が細胞表面に移動して一極に集中する再分
布現象。
1215 キャップ構造 cap structure
ほとんどの真核細胞及びそのウイルスmRNAにおいてみられる
5'末端構造。5'末端への7-メチルグアノシンの付加及び5'末端の
最大2塩基までのリボースの2'OHのメチル化によって生じる構
造。
1216 組換え修復 recombination repair
複製後に起きるDNA間の組換えによるDNA損傷回復機構。
1217 欠失 deletion
突然変異の一つで染色体又はDNAの一部が欠け失なわれる現
象。
1218 校正機構 proof reading function
DNAの複製時に誤って取り込まれた塩基を,DNAポリメラーゼ
の5'→3'エキソヌクレアーゼ活性によって取り除いたり,リボゾ
ーム上で翻訳時に結合するアミノ酸の誤りを修正したりする機
能。
1219 サイトエフェクト, site effect,
染色体上の位置によって遺伝子の発現が阻害されたり,その発現
位置効果 特異性が変化する現象。 position effect
1220 再配列 rearrangement
リンパ細胞の分化に伴う抗体の多様性発現の機構で,免疫グロブ
リン遺伝子の組換えが起こる現象。
1221 サテライトDNA satellite DNA
真核細胞のDNAを塩化セシウム中で平衡密度こう(勾)配遠心
を行うと,主要な核DNAバンドと分かれて小さなバンドを形成
するDNA。
1222 サテライトRNA RNAウイルス粒子中に存在するRNA断片。 satellite RNA
1223 サプレッサー 抑制,抑圧などの負の調節を受け持つ生理活性物質。suppressor
1224 サプレッサー遺伝子 suppressor gene
他の遺伝子に起きた突然変異を抑制(サプレス)する遺伝子。
1225 シス作用性DNA因子 cis acting DNA element
ある遺伝子と同一DNA分子上に位置して作用する遺伝子発現制
御因子。
1226 修復過程 resealing process
高電圧パルスの印加によって一時的膜破壊を起こした細胞膜が
最配列し,修復する過程。
1227 人工染色体 artificial chromosme
複製開始領域 (ARS),セントロメア及びテロメアを配して構築さ
れた酵母染色体。
1228 相同組換え homologous recombination
同じような塩基配列をもった二組のDNA間の交さ(叉)や遺伝
子組換え。
1229 挿入 insertion
DNAの塩基配列上の一点を切断し,他のDNA断片を割り込ませ
た後に再び結合して新たな配列のDNAを生成させる遺伝子操
作。
1230 挿入配列 insertion sequence,
染色体,プラスミド又はファージDNA上を移動する最も小さく
簡単な構造をもつ塩基配列。(移動性DNA) insertion element
1231 相補性 complementation
二つの突然変異が同じ細胞内にあるとき,各突然変異の作用以上
に機能の促進又は形質の発現がみられる現象。
1232 ターゲティング targeting
染色体上の遺伝子と外来DNAとの間で相同的遺伝子組換えによ
って目的の遺伝子だけを任意に改変する方法。
1233 タンデム 同一DNA分子中に含まれる縦列反復配列。 tandem
1234 電気ブロッティング electro-blotting
電気泳動によって分画したDNA,たん白質などをゲルから膜構
造に電気的に転移する方法。
1235 同時形質転換 二つ以上の遺伝子(形質)による同時的形質転換。 co-transformation
1236 二つ以上の遺伝子(形質)による同時的形質導入。
同時トランスフェクシ co-transfection
ョン
1237 導入遺伝子 染色体の一部に組み込まれた外来遺伝子。 transgene

――――― [JIS K 3610 pdf 5] ―――――

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