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K 7641 : 2008
附属書F
(参考)
温度と相対湿度との関係
序文
この附属書は,温度と相対湿度との関係について記載するものであって,規定の一部ではない。
低温度及び低湿度の環境では,化学反応による写真フィルムの劣化の進行を遅らせることができる。つ
まり,保存中の温度又は湿度を下げることによって,写真フィルムの寿命を延ばすことができる。
さらに,低温保存においては,湿度が上がっても写真フィルムの寿命を縮めずにすむ。
この関係が,図F.1に,三酢酸セルロースベースの,劣化による酸性度の増加として示される(参考文
献[29]参照)。
同様の関係が,ポリエステルベースの劣化及びカラー発色画像の退色においても認識されている。この
図から,7.1.2の表1に規定されるような,長期保存目的に使用できる温度及び相対湿度の組合せが得られ
る。保存施設の設計者は,この表から幾つかの選択肢を見つけることができる。
低温及び/又は低湿度保存設備の効果は,保存施設からの頻繁な取出し又は長時間の取出しによって相
殺されてしまうことがある。保存設備外に出されていた時間の影響に関しては,カラー発色画像及びフィ
ルムベースの安定性に対する促進試験のデータを数学的に処理して(参考文献[30]参照),表F.1に示さ
れるようなデータが得られている。
注記 現像直後の写真フィルムを始点とした促進試験による。
図F.1−三酢酸セルロースフィルムが,ある酸性度に達するまでの
年数に対応する,温度/相対湿度の組合せ
――――― [JIS K 7641 pdf 21] ―――――
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K 7641 : 2008
表F.1−保存条件及び室温に置かれた,年間当たりの日数からの寿命の推定
保存条件 室温に置かれた,年間当たりの日数a)
0 5 10 30 60
温度 相対湿度 相対寿命b)
℃ %
20 50 1 1 1 1 1
30 2 2 2 2 2
10 50 5 4 4 4 3
30 9 8 7 5 4
0 50 18 14 12 7 5
30 33 23 18 9 5
−10 50 71 36 24 11 6
30 132 47 29 11 6
−20 50 288 58 32 12 6
30 538 64 34 12 6
注a) この表は定性的なものである。写真フィルムの実際の退色速さ又は期待される寿命は,これとは異なる。
b) 使用室の環境を温度24 ℃,及び相対湿度40 %と想定している。
この表の中の数値は,温度24 ℃,及び相対湿度40 %におけるカラープリントの暗退色速さの平均値の逆数
である。写真フィルムが保存されずに使用された状態での退色速さを,相対的に1として表している。言い換
えると,この表の中の数値は,左側に示される条件で保存された写真フィルの寿命が, 上の欄に示される年間日
数の室温放置によって短縮されていく状況を示すものである。
――――― [JIS K 7641 pdf 22] ―――――
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K 7641 : 2008
附属書G
(参考)
歴史的価値のある写真フィルム画像
序文
この附属書は,歴史的価値のある写真フィルム画像の保存について,技術的な観点から記載するもので
あって,規定の一部ではない。
歴史的価値のある写真画像が保存されている施設では,相対湿度レベルの選択に当たっては,既にある
程度の劣化(画像層のき裂,ひだ又ははがれ)が生じている写真フィルムが,更に20 %から30 %という
低湿度による収縮力の影響を受けないように,十分な注意を払うべきである。高湿度の場所と低湿度の場
所とを繰り返し往復させると,既に生じている欠陥を悪化させることがある。
低温及び/又は低湿度での保存は,画像層又はフィルムベースをぜい化させて,取扱い中の損傷の危険
を増すことになる。したがって,歴史的価値のある,特に既に損傷を受けている写真フィルムを低温及び
/又は低湿度で保存する場合は,不必要に曲げたりしないように,その取扱いを慎重にするのがよい。折
り曲げ又は粗雑な取扱いは,画像層のひび割れ又ははがれなどの物理的損傷だけでなく,もろくなってい
るフィルムベースを損傷することがある。
たびたび使用される写真フィルム及び長期間使用される写真フィルムは,コピーを作っておくべきであ
る。低温保存又は低湿度保存によって確保されていた写真素材の化学的安定性が,高温又は高湿度の使用
場所に繰り返し取り出されたり,又は長時間置かれることによって急速に失われるので,コピーの作成は
特に重要である(附属書F参照)。
大部分の古いタイプ(例えば,1980年以前に製造された内形カプラタイプ)のカラーフィルムにおける
画像は,最近のカラーフィルム画像より本質的に安定度が低く,また長い保存年数の間に既に変化が生じ
ているので,寿命を延ばすためには,7.1.2の表1に規定される上限値より十分低い温度での保存が望まし
い。既に劣化が始まっている可能性がある,酢酸セルロースベースの古い黒白フィルムについても同様で
ある。
――――― [JIS K 7641 pdf 23] ―――――
22
K 7641 : 2008
附属書H
(参考)
ミクロ環境
序文
この附属書は,写真フィルム画像の保存におけるミクロ環境の管理について,技術的な観点から記載す
るものであって,規定の一部ではない。
この規格の作成は,まず保存施設全体,すなわちマクロ環境の管理の規定を目的に始められた。
マクロ環境の管理が,写真フィルムの保存方法としては基本的なものだからである。しかし,マクロ環
境の管理には高額の初期投資を要し,使用に当たっての温度及び湿度の維持の費用も大きなものとなる。
経験的にマクロ環境の管理は,写真フィルムの修復及び複製より低コストであることが知られているが,
空気調節設備の断熱工事の費用が高すぎたり,適切な設備がそろわなかったり,又は必要とする電力が得
られなかったりの理由から,実施不可能であった例も少なくないことに注目すべきである。このような状
況下では,ミクロ環境の管理が現実的な代替手段となる。ミクロ環境とは,密閉された収納箱又は保存袋
の内部をいう。
写真フィルムの寿命には,直接接している環境の影響が大きいので,ミクロ環境の管理は技術的な観点
からも合理的である。ただし,ミクロ環境の管理は,写真フィルムが水分若しくは有害気体の透過性のな
い容器又は袋に収納されている場合だけに有効である。
ミクロ環境の管理では,写真フィルムをあらかじめ低湿度において十分に湿度調節し,それを密閉容器
に収納するという手順が望ましい。50年以上前には,シリカゲルを使って写真フィルムの含水率を下げる
方法(参考文献[31]参照)が推奨されたが,Swedish Film Instituteが1981年に,映画用フィルムのミク
ロ環境の管理を目的とした,FICAという名前の装置を開発した(参考文献[10]参照)。この装置にはま
だ実験室的な部分も残されていたが,間もなくアメリカのNational Bureau of Standardによって,温度,湿
度及び汚染物質の管理を重点的にミクロ環境の管理技術が追求され,完成されるに至った(参考文献[32]
参照)。
近年,ゼオライト(通称モレキュラシーブ)による映画用フィルムのミクロ環境の管理が,再び注目さ
れている(参考文献[33]参照)。多くの種類のゼオライトが存在するが,その中に次の二つの機能を兼ね
備えたものがあり,写真フィルムの保存に有効である。すなわち水分吸収機能(参考文献[34]参照)及
び三酢酸セルロースベースの劣化によって生じる酢酸の吸収機能である。
酢酸は,触媒作用によって三酢酸セルロースベースの劣化を促進するので,それを吸収すれば写真フィ
ルムの寿命を延ばすことができる。さらにモレキュラシーブは,銀画像に有害なある種の気体状汚染物質
をも取り除くことができる(附属書I参照)。
ミクロ環境の管理における問題点は,実行に手間がかかること,収納箱又は保存袋への写真フィルムの
出し入れが面倒なことである。写真フィルムの出し入れのたびに再シールが必要であり,また,モレキュ
ラシーブ又はシリカゲルの定期的な交換も必要である。
マクロ環境の管理が困難の場合は,ミクロ環境の管理を推奨する。
――――― [JIS K 7641 pdf 24] ―――――
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K 7641 : 2008
附属書I
(参考)
銀画像の劣化
序文
この附属書は,写真フィルムにおける銀画像の劣化について記載するものであって,規定の一部ではな
い。
現像処理済み黒白画像は,好ましくない保存条件下又は不適切な包材中では,常に変色(微小なスポッ
ト,鏡面化又は黄変)の危険にさらされている。画像の劣化は,画像を形成している銀が局部的に酸化し
て,移動性の銀イオンとなることによって発生する。この移動性の銀イオンは,元々存在した位置から移
動し,還元されて金属銀となって,移動後の位置に定着する。この定着が画像層表面に起これば銀鏡とな
り,浅い角度から反射で観察すると金属光沢に見える。また,移動性の銀イオンの抜けが集中的に起きる
と,その部分は,マイクロフィルムにおいてよく知られている微小の赤色のスポット又はブレミッシュと
なる。黄変は,全面又は部分的な変色となる。これらの現象は通常,フィルムロール先端のリーダ部分に
発生するが,フィルムロール内部の画像部分に発生することもある(参考文献[17],[35],[36]参照)。
このような画像の劣化を引き起こす酸化物質は,空気中の酸素又は過酸化物のような不純物,オゾン,
二酸化硫黄,硫化水素又は工場地域の大気中に存在する種々の酸化物質である。空気中の水分には,酸素
による劣化を促進する作用がある。過酸化物は多くの木材中に存在し,はさみ紙,紙製収納箱の経年によ
っても発生することがある。密閉された保存容器では,汚染物質を除去するためにモレキュラシーブ,化
学的吸収剤及びさび止め剤を使用するなど,種々の方法が採用される。
写真フィルムの現像処理及び保存条件が,変色又はブレミッシュの発生に大きな影響を与える。
低温で酸化性の気体を含まない乾燥空気の環境に保存すれば,変色又はブレミッシュを防ぎ,又は遅ら
せることができる(参考文献[25],[37],[38]参照)。銀画像の化学的処理は,酸化性気体に対する耐性
を増すことができる(ISO 18915参照)。
――――― [JIS K 7641 pdf 25] ―――――
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JIS K 7641:2008の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 18911:2000(MOD)
JIS K 7641:2008の国際規格 ICS 分類一覧
- 37 : 映像技術 > 37.040 : 写真術 > 37.040.20 : 写真印画紙,フィルム及びプレート.カートリッジ
JIS K 7641:2008の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称