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Q 17025 : 2018 (ISO/IEC 17025 : 2017)
− 校正
− 後の試験又は校正に付随するサンプリング
注記 現在の規格の枠組みにおいて,“ラボラトリ活動”という用語は,上記三つの活動のことをいう。
3.7
判定ルール(decision rule)
特定の要求事項への適合性を表明する際に,測定不確かさをどのように考慮するかを記述した取決め。
3.8
検証(verification)
与えられたアイテムが規定された要求事項を満たしているという客観的証拠の提示。
例1 対象とする任意の標準物質が,当該の量の値及び測定手順に対して,質量10 mgの測定試料ま
で均質であることの確認。
例2 測定システムが性能特性又は法的要求事項を満たしていることの確認。
例3 目標測定不確かさを満たすことができることの確認。
注記1 適用可能な場合は,測定不確かさを考慮することが望ましい。
注記2 アイテムとは,例えば,プロセス,測定手順,材料,化合物又は測定システムのいずれであ
ってもよい。
注記3 規定された要求事項とは,例えば,製造業者の仕様を満たしていることである。
注記4 VIML及び一般に適合性評価で定義しているように,法定計量でいう検証は,評価及び表示,
及び/又は測定システムに対する検定証明書の発行を含む。
注記5 検証と校正とを混同しないようにすることが望ましい。全ての検証が妥当性確認であるとは
限らない。
注記6 化学の分野では,関連する実在物又は活性の同一性の検証には,その実在物若しくは活性の
構造又は性質の記述が必要となる。
(出典 : ISO/IEC Guide 99の2.44)
3.9
妥当性確認(validation)
規定された要求事項が意図した用途に十分であることの検証。
例 水中の窒素の質量濃度の測定に通常用いる測定手順は,ヒトの血清中の窒素の質量濃度の測定に
対しても妥当である場合がある。
(出典 : ISO/IEC Guide 99の2.45)
4 一般要求事項
4.1 公平性
4.1.1 ラボラトリ活動は,公平に実行され,公平性を確保するように編成及び運営されなければならない。
4.1.2 ラボラトリマネジメントは,公平性を確約しなければならない。
4.1.3 ラボラトリは,ラボラトリ活動の公平性に対して責任をもたなければならず,公平性を損なう商業
的,財務的,又はその他の圧力を容認してはならない。
4.1.4 ラボラトリは,公平性に対するリスクを継続的に特定しなければならない。ラボラトリの活動若し
くは他との関係,又はその要員の他との関係をもつことから生じるリスクもこれに含めなければならない。
ただし,そのような関係が,ラボラトリにとって必ずしも公平性に対するリスクになるとは限らない。
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Q 17025 : 2018 (ISO/IEC 17025 : 2017)
注記 ラボラトリの公平性に対する脅威となる関係としては,所有,統治,マネジメント,要員,共
有資源,財務,契約,マーケティング(ブランド設定を含む。),及び新規顧客の紹介に関わる
売上手数料の支払い又はその他の誘引条件に基づくものが挙げられる。
4.1.5 公平性に対するリスクが特定された場合,ラボラトリは,そのリスクをどのように排除又は最小化
するかを実証できなければならない。
4.2 機密保持
4.2.1 ラボラトリは,法的に強制力のあるコミットメントによって,ラボラトリ活動を実行する過程で得
られた又は作成された全ての情報の管理について責任をもたなければならない。ラボラトリは,公開対象
にしようとしている情報を,事前に顧客に通知しなければならない。顧客が公開している情報,又はラボ
ラトリと顧客とが合意している場合(例えば,苦情への対応の目的のため)を除き,その他全ての情報は
占有情報とみなし,機密としなければならない。
4.2.2 ラボラトリが機密情報を公開することを,法律で要求されるか又は契約上の取決めで認められた場
合,顧客又は関係する個人は,法律によって禁止されない限り,当該情報の提供について知らされなけれ
ばならない。
4.2.3 当該顧客以外の情報源(例えば,苦情申立者,規制当局)から得られた顧客に関する情報は,顧客
とラボラトリとの間で機密としなければならない。この情報の提供者(情報源)は,ラボラトリの機密と
し,情報源が同意した場合を除き,顧客と共有してはならない。
4.2.4 委員会のメンバー,契約人,外部機関の要員又はラボラトリの代理人として活動する個人は,法律
で要求される場合を除き,ラボラトリ活動を遂行する間に得られた,又は生じた全ての情報について機密
保持しなければならない。
5 組織構成に関する要求事項
5.1 ラボラトリは,そのラボラトリ活動に法的責任をもつ法人であるか,又は法人の一部として明確に
位置付けられていなければならない。
注記 この規格の目的において,政府のラボラトリは,政府機関としての地位に基づき法人とみなす。
5.2 ラボラトリは,そのラボラトリについて総合的な責任をもつラボラトリマネジメントを特定しなけ
ればならない。
5.3 ラボラトリは,この規格に適合するラボラトリ活動の範囲を明確化し,文書化しなければならない。
ラボラトリは,継続的に外部から提供されるラボラトリ活動を除いた当該ラボラトリ活動の範囲に関して
だけ,この規格への適合を主張しなければならない。
5.4 ラボラトリ活動は,この規格,ラボラトリの顧客,規制当局及び認可を与える機関の要求事項を満
足するように実施されなければならない。このことには,その全ての恒久的施設で実施されるラボラトリ
活動,その恒久的施設から離れた場所で実施されるラボラトリ活動,関連する一時施設若しくは移動施設
で実施されるラボラトリ活動,又は顧客の施設で実施されるラボラトリ活動が含まれなければならない。
5.5 ラボラトリは,次の事項を行わなければならない。
a) ラボラトリの組織及び管理構造,親組織における位置付け,並びに管理,技術的業務及び支援サービ
スの間の関係を明確にする。
b) ラボラトリ活動の結果に影響する業務を管理,実施又は検証する全ての要員の責任,権限及び相互関
係を規定する。
c) ラボラトリ活動の一貫した適用及び結果の妥当性を確実にするために必要な程度まで手順を文書化す
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る。
5.6 ラボラトリは,他の責任のいかんにかかわらず,次の事項を含む責務を果たすために必要な権限及
び資源をもつ要員をもたなければならない。
a) マネジメントシステムの実施,維持及び改善
b) マネジメントシステムからの逸脱,又はラボラトリ活動の実施手順からの逸脱の特定
c) それらの逸脱を防止又は最小化する処置の開始
d) マネジメントシステムの実施状況及び改善の必要性に関するラボラトリマネジメントへの報告
e) ラボラトリ活動の有効性の確保
5.7 ラボラトリマネジメントは,次の事項を確実にしなければならない。
a) コミュニケーションが,マネジメントシステムの有効性,並びに顧客要求事項及びその他の要求事項
を満たすことの重要性に関して行われている。
b) マネジメントシステムに対する変更が計画され実施された場合,マネジメントシステムの“全体とし
て整っている状態”(integrity)が維持されている。
6 資源に関する要求事項
6.1 一般
ラボラトリは,ラボラトリ活動の管理及び実施に必要な要員,施設,設備,システム及び支援サービス
を利用できるようにしなければならない。
6.2 要員
6.2.1 ラボラトリ活動に影響を与え得る,ラボラトリの内部又は外部の全ての要員は,公平に行動し,力
量をもち,ラボラトリのマネジメントシステムに従って業務を行わなければならない。
6.2.2 ラボラトリは,学歴,資格,教育・訓練,技術的知識,技能及び経験に関する要求事項を含め,ラ
ボラトリ活動の結果に影響を与える各職務に関する力量要求事項を文書化しなければならない。
6.2.3 ラボラトリは,その要員が,責任をもつラボラトリ活動を実施し,かつ,逸脱の重大性を評価する
力量をもつことを確実にしなければならない。
6.2.4 ラボラトリの管理要員は,要員に責務,責任及び権限を伝達しなければならない。
6.2.5 ラボラトリは,次の事項に関する手順をもち,記録を保持しなければならない。
a) 力量要求事項の決定
b) 要員の選定
c) 要員の教育・訓練
d) 要員の監督
e) 要員への権限付与
f) 要員の力量の監視
6.2.6 ラボラトリは,特定のラボラトリ活動(次を含むが,これらに限定されない)を実施する権限を,
要員に与えなければならない。
a) 方法の開発,変更,検証及び妥当性確認
b) 適合性の表明又は意見及び解釈を含めた結果の分析
c) 結果の報告,レビュー及び承認
6.3 施設及び環境条件
6.3.1 施設及び環境条件は,ラボラトリ活動に適するものでなければならない。また,結果の妥当性に悪
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影響を及ぼしてはならない。
注記 結果の妥当性に悪影響を及ぼし得る影響には,微生物学的汚染,ほこり,電磁障害,放射線,
湿度,電力供給,温度,騒音及び振動が含まれるが,これらに限定されない。
6.3.2 ラボラトリ活動の実施に必要な施設及び環境条件に関する要求事項を文書化しなければならない。
6.3.3 ラボラトリは,該当する仕様書,方法若しくは手順書に従い,又は環境条件が結果の妥当性に影響
を及ぼす場合には,環境条件を監視し,制御し記録しなければならない。
6.3.4 施設を管理するための手段を実施し,監視し,定期的に見直さなければならない。これらの手段に
は,次の事項が含まれなければならないが,これらに限定されない。
a) ラボラトリ活動に影響を及ぼす区域への立入り及びこれらの区域の使用
b) 汚染,干渉又はラボラトリ活動への悪影響の防止
c) 両立不可能なラボラトリ活動が行われる区域間の効果的な分離
6.3.5 ラボラトリが自身の恒久的な管理下にない場所又は施設でラボラトリ活動を実施する場合は,この
規格の施設及び環境条件に関する要求事項が満たされることを確実にしなければならない。
6.4 設備
6.4.1 ラボラトリは,ラボラトリ活動の適正な実施に必要で,かつ,結果に影響を与え得る設備(これに
は測定装置,ソフトウェア,測定標準,標準物質,参照データ,試薬及び消耗品又は補助的器具を含むが,
これらに限定されない)が利用可能でなければならない。
注記1 標準物質及び認証標準物質(CRM)には,参照標準,校正用標準物質,参照標準物質(SRM),
品質管理用物質を含め,多数の名称が存在する。JIS Q 17034は,標準物質生産者(RMP)
に関する追加情報を含んでいる。JIS Q 17034の要求事項を満たすRMPは,能力があるとみ
なされる。JIS Q 17034の要求事項を満たす生産者から入手した標準物質には,製品情報シー
ト/認証書が添えられている。そこには,その他の特性とともに,規定特性の均質性及び安
定性が記載されており,認証標準物質については,更に認証値及び付随する測定不確かさ並
びに計量トレーサビリティをもつ規定特性が記載されている。
注記2 JIS Q 0033は,標準物質の選択及び使用に関する手引を提供する。ISO Guide 80は,内部で
品質管理用物質を生産するための手引を提供する。
6.4.2 ラボラトリが自身の恒久的な管理下にない設備を使用する場合は,この規格の設備に関する要求事
項が満たされることを確実にしなければならない。
6.4.3 ラボラトリは,設備が適正に機能することを確実にするため及び汚染又は劣化を防止するために,
設備の取扱い,輸送,保管,使用及び計画的保守の手順をもたなければならない。
6.4.4 ラボラトリは,設備を業務使用に導入する前又は業務使用に復帰させる前に,規定された要求事項
への適合を検証しなければならない。
6.4.5 測定に使用される設備は,妥当な結果を得るために必要な測定の精確さ及び/又は測定不確かさを
達成する能力をもたなければならない。
6.4.6 測定設備は,次の場合に校正されなければならない。
− 測定の精確さ又は測定不確かさが,報告された結果の妥当性に影響を与える。
− その設備の校正が,報告された結果の計量トレーサビリティを確立するために要求される。
注記 報告された結果の妥当性に影響を及ぼす設備には,次が含まれ得る。
− 測定対象量の直接測定に使用される設備。例えば,質量の測定を行うために,はかりを使
用する場合。
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Q 17025 : 2018 (ISO/IEC 17025 : 2017)
− 測定値の補正に使用される設備。例えば,温度測定。
− 複数の量から計算された測定結果を得るために使用される設備。
6.4.7 ラボラトリは,校正プログラムを確立しなければならない。その校正プログラムは,校正状態につ
いての信頼を維持するため,見直され,必要に応じて調整されなければならない。
6.4.8 校正が必要な全ての設備又は有効期間が定められた全ての設備は,設備の使用者が校正状態又は有
効期間を容易に識別できるように,ラベル付けを行うか,コード化するか,又はその他の方法で識別しな
ければならない。
6.4.9 過負荷又は誤った取扱いを受けた設備,疑わしい結果を生じる設備,又は欠陥をもつ若しくは規定
の要求事項を満たさないことが認められた設備は,業務使用を停止しなければならない。その設備は,そ
れが正常に機能することが検証されるまで,使用を防止するため隔離するか,又は業務使用停止中である
ことを示す明瞭なラベル付け若しくはマーク付けを行わなければならない。ラボラトリは,不具合又は規
定された要求事項からの逸脱の影響を調査し,不適合業務の管理の手順を開始しなければならない(7.10
参照)。
6.4.10 設備の機能についての信頼を維持するために中間チェックが必要な場合には,これらのチェック
は,手順に従って実施しなければならない。
6.4.11 校正及び標準物質データに参照値又は補正因子が含まれる場合,ラボラトリは,規定された要求事
項を満たすために,必要に応じて,参照値及び補正因子が更新され,有効に使用されることを確実にしな
ければならない。
6.4.12 ラボラトリは,意図しない設備の調整によって結果が無効となることを防ぐために,実行可能な手
段を講じなければならない。
6.4.13 ラボラトリ活動に影響を与え得る設備の記録を保持しなければならない。記録には,適用可能な場
合,次の事項を含めなければならない。
a) ソフトウェア及びファームウェアのバージョンを含む,設備の識別。
b) 製造業者の名称,型式の識別及びシリアル番号又はその他の固有の識別。
c) 設備が規定された要求事項に適合していることの検証の証拠。
d) 現在の所在場所。
e) 校正の日付,校正結果,調整,受入基準及び次回校正の期日又は校正周期。
f) 標準物質の文書,結果,受入基準,関連する日付及び有効期間。
g) 設備の機能に関連する場合は,保守計画及びこれまでに実施された保守。
h) 設備の損傷,機能不良,改造又は修理の詳細。
6.5 計量トレーサビリティ
6.5.1 ラボラトリは,測定結果を適切な計量参照に結び付けるよう,それぞれの校正が測定不確かさに寄
与している,文書化された切れ目のない校正の連鎖によって,測定結果の計量トレーサビリティを確立し,
維持しなければならない。
注記1 ISO/IEC Guide 99には,計量トレーサビリティは,“それぞれが測定不確かさに寄与してい
る,文書化された切れ目のない校正の連鎖によって計量参照に測定結果を関係付けることが
できるという測定結果の性質”として定義されている。
注記2 計量トレーサビリティに関する追加の情報については,附属書Aを参照。
6.5.2 ラボラトリは,次のいずれかを通じて,測定結果が国際単位系(SI)にトレーサブルであることを
確実にしなければならない。
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JIS Q 17025:2018の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO/IEC 17025:2017(IDT)
JIS Q 17025:2018の国際規格 ICS 分類一覧
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.20 : 生産品及び生産者証明.適合性評価
JIS Q 17025:2018の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISQ17000:2005
- 適合性評価―用語及び一般原則