JIS Q 17025:2018 試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項 | ページ 3

8
Q 17025 : 2018 (ISO/IEC 17025 : 2017)
a) 能力のあるラボラトリから提供される校正。
注記1 この規格の要求事項を満たすラボラトリは,能力があるとみなされる。
b) 能力のある生産者から提供された,表明されたSIへの計量トレーサビリティを伴った認証標準物質の
認証値。
注記2 JIS Q 17034の要求事項を満たす標準物質生産者は,能力があるとみなされる。
c) 直接的に又は間接的に,国家標準又は国際標準との比較によって確認がなされたSI単位の直接的実現。
注記3 幾つかの重要な単位の定義の現実的な実現方法の詳細は,SI文書に記載されている。
6.5.3 SI単位に対する計量トレーサビリティが技術的に不可能である場合,ラボラトリは,例えば,次
のような適切な計量参照への計量トレーサビリティを実証しなければならない。
a) 能力のある生産者から提供された認証標準物質の認証値。
b) 明確に記述され,意図した用途に合致した測定結果を提供するものとして受け入れられており,適切
な比較によって確認がなされた参照測定手順,規定された方法又は合意標準の結果。

6.6 外部から提供される製品及びサービス

6.6.1  ラボラトリは,ラボラトリ活動に影響を及ぼす,外部から提供される製品及びサービスが次の事項
に該当する場合には,適切なものだけが使用されることを確実にしなければならない。
a) 製品及びサービスがラボラトリ自体の活動に組み込まれることを意図したものである場合。
b) 製品及びサービスの一部又は全てが,外部提供者から受領したままの状態でラボラトリから顧客に直
接提供される場合。
c) 製品及びサービスが,ラボラトリの業務を支援するために使用される場合。
注記 製品には,例えば,測定標準並びに設備,補助設備,消耗品及び標準物質が含まれ得る。サー
ビスには,例えば,校正サービス,サンプリングサービス,試験サービス,施設及び設備保守
サービス,技能試験サービス並びに評価及び監査サービスが含まれ得る。
6.6.2 ラボラトリは,次の事項に関する手順をもち記録を保持しなければならない。
a) 外部から提供される製品及びサービスに関するラボラトリの要求事項を,明確にし,レビューし,承
認する。
b) 外部提供者の評価,選定,パフォーマンスの監視及び再評価に関する基準を明確にする。
c) 外部から提供される製品及びサービスが,使用される前又は顧客に直接提供される前に,ラボラトリ
の設定した要求事項,又は適用可能な場合,この規格の関連する要求事項への適合を確実にする。
d) 外部提供者の評価,パフォーマンスの監視及び再評価から生じた処置をとる。
6.6.3 ラボラトリは,次の事項に関して,外部提供者に要求事項を伝達しなければならない。
a) 提供される製品及びサービス。
b) 受入基準。
c) 必要とされる要員資格を含む,力量。
d) ラボラトリ又はその顧客が外部提供者先での実施を意図している活動。

7 プロセスに関する要求事項

7.1 依頼,見積仕様書及び契約のレビュー

7.1.1  ラボラトリは,依頼,見積仕様書及び契約のレビューに関する手順をもたなければならない。この
手順は,次の事項を確実にしなければならない。
a) 要求事項が十分に明確化され,文書化され,理解されている。

――――― [JIS Q 17025 pdf 11] ―――――

                                                                                              9
Q 17025 : 2018 (ISO/IEC 17025 : 2017)
b) ラボラトリが,要求事項を満たすための業務能力及び資源を備えている。
c) 外部提供者を利用する場合は,6.6の要求事項が適用され,ラボラトリが顧客に対して,外部提供者に
よって実施される特定のラボラトリ活動に関して通知し,顧客の承認を得る。
注記1 外部から提供されるラボラトリ活動は,次の場合に起こり得ることが認識されている。
− ラボラトリが,そのラボラトリ活動を実施する資源及び能力をもっているが,予期し
なかった理由によって,その一部又は全てを実行できない場合。
− ラボラトリが,そのラボラトリ活動を実施する資源又は能力をもっていない場合。
d) 適切な方法又は手順が選択され,顧客の要求事項を満たすことができる。
注記2 内部の顧客又は定期の顧客に対しては,依頼,見積仕様書及び契約のレビューは簡素化され
た方法で実施することができる。
7.1.2 ラボラトリは,顧客の依頼した方法が不適切又は旧式であると考えられる場合,顧客にその旨を通
知しなければならない。
7.1.3 顧客が,試験又は校正に関して,仕様又は規格への適合性の表明(例えば,合格/不合格,許容の
範囲内/範囲外)を要請する場合は,その仕様又は規格及び判定ルールを明確にしなければならない。要
請された仕様又は規格に当該取決めが内在する場合を除き,選択した判定ルールを顧客に伝達し合意を得
なければならない。
注記 適合性の表明に関する更なる手引について,ISO/IEC Guide 98-4を参照。
7.1.4 依頼又は見積仕様書と契約との間での何らかの相違は,ラボラトリ活動が開始される前に解決しな
ければならない。個々の契約は,ラボラトリ及び顧客の双方にとって受入れ可能でなければならない。顧
客から要請された逸脱が,ラボラトリの誠実さ(integrity)又は結果の妥当性に影響を及ぼしてはならない。
7.1.5 契約からのいかなる逸脱をも,顧客に知らせなければならない。
7.1.6 業務開始後に契約が変更される場合は,契約のレビューを繰り返さなければならない。また,全て
の変更を,影響を受ける全ての要員に伝達しなければならない。
7.1.7 ラボラトリは,顧客の依頼の明確化,及び実施される業務に関連したラボラトリのパフォーマンス
の監視に関して,顧客又は顧客の代理人と協力しなければならない。
注記 このような協力には,次の事項が含まれ得る。
a) 顧客固有のラボラトリ活動に立ち会うために,ラボラトリの関連する区域に正当に立ち入
れるようにする。
b) 検証の目的で顧客が必要とする品目の,準備,こん(梱)包及び発送。
7.1.8 重要な変更を含め,レビューの記録を保持しなければならない。顧客の要求事項,又はラボラトリ
活動の結果に関して顧客と交わした,関連する議論の記録も保持しなければならない。

7.2 方法の選定,検証及び妥当性確認

7.2.1  方法の選定及び検証
7.2.1.1 ラボラトリは,全てのラボラトリ活動に関して適切な方法及び手順を用いなければならず,また,
適切な場合,測定不確かさの評価及びデータ分析のための統計的手法に関しても同様である。
注記 この規格で使用される“方法”は,ISO/IEC Guide 99において定義される“測定手順”と同義
と考えられる。
7.2.1.2 全ての方法,手順,並びにラボラトリ活動に関連する指示書,規格,マニュアル及び参照データ
などの支援文書は,最新の状態で維持し,要員がいつでも利用できるようにしなければならない(8.3参照)。
7.2.1.3 ラボラトリは,有効な最新版の方法を用いることが不適切又は不可能でない限り,それを確実に

――――― [JIS Q 17025 pdf 12] ―――――

10
Q 17025 : 2018 (ISO/IEC 17025 : 2017)
しなければならない。必要な場合には,矛盾のない適用を確実にするため,詳細事項の追加によって方法
の適用を補足しなければならない。
注記 ラボラトリ活動の実施方法について,国際規格,地域規格若しくは国家規格又は十分で簡潔な
情報を含むその他の広く認められている仕様書が,そのままラボラトリの実施要員が使用でき
るように書かれている場合には,内部手順書として補足したり,書き直したりする必要はない。
その方法の中での操作の選択又は詳細な補足のために,追加の文書を用意する必要があり得る。
7.2.1.4 顧客が,使用する方法を指定しない場合,ラボラトリは適切な方法を選定し,選定した方法を顧
客に通知しなければならない。国際規格,地域規格若しくは国家規格のいずれかにおいて公表された方法,
定評ある技術機関が公表した方法,関連する科学文献若しくは定期刊行物において公表された方法,又は
設備の製造業者が指定する方法が推奨される。ラボラトリが開発又は修正した方法も用いることができる。
7.2.1.5 ラボラトリは,必要なパフォーマンスを達成できることを確実にすることによって,選定した方
法を導入する前にその方法を適切に実施できることを検証しなければならない。検証の記録を保持しなけ
ればならない。その方法がそれを発行する機関によって改訂される場合,ラボラトリは,必要な程度まで
検証を繰り返さなければならない。
7.2.1.6 方法の開発が必要な場合,これは計画的な活動でなければならず,十分な資質を備えた,力量を
もつ要員に割り当てなければならない。方法の開発の進行につれて,顧客のニーズが依然として満たされ
ていることを確認するため,定期的な見直しを行わなければならない。開発計画の変更は,承認され,許
可されなければならない。
7.2.1.7 全てのラボラトリ活動に関する方法からの逸脱は,その逸脱があらかじめ文書化され,技術的に
正しいと証明され,正式に許可され,かつ,顧客によって受け入れられている場合に限らなければならな
い。
注記 逸脱に対する顧客の受入れは,契約書において事前に合意されていることもあり得る。
7.2.2 方法の妥当性確認
7.2.2.1 ラボラトリは,規格外の方法,ラボラトリが開発した方法,及び規格に規定された方法であって
意図された適用範囲外で使用するもの又はその他の変更がなされたものについて,妥当性確認を行わなけ
ればならない。妥当性確認は,特定の適用対象又は適用分野のニーズを満たすために必要な程度まで幅広
く行わなければならない。
注記1 妥当性確認には,試験又は校正品目のサンプリング,取扱い及び輸送の手順が含まれ得る。
注記2 方法の妥当性確認に用いる手法は,次の事項のうちの一つ又はそれらの組合せであり得る。
a) 参照標準又は標準物質を用いた,校正又は偏り及び精度の評価。
b) 結果に影響する要因の系統的な評価。
c) 培養器の温度,分注量などの管理されたパラメータの変化を通じた,方法の頑健性の試
験。
d) 妥当性が確認された他の方法で得られた結果との比較。
e) 試験所間比較。
f) 方法の原理の理解及びサンプリング又は試験方法のパフォーマンスの実際の経験に基づ
いた,結果の測定不確かさの評価。
7.2.2.2 妥当性が確認された方法を変更する場合は,そのような変更の影響を確定しなければならず,そ
れらが元の妥当性確認に影響を与えることが判明した場合,新たに方法の妥当性確認を行わなければなら
ない。

――――― [JIS Q 17025 pdf 13] ―――――

                                                                                             11
Q 17025 : 2018 (ISO/IEC 17025 : 2017)
7.2.2.3 妥当性が確認された方法のパフォーマンス特性は,意図する用途に対する評価において顧客のニ
ーズに適し,規定された要求事項に整合していなければならない。
注記 パフォーマンス特性の例には,測定範囲,精確さ,結果の測定不確かさ,検出限界,定量限界,
方法の選択性,直線性,繰返し性又は再現性,外部影響に対する頑健性,又は試料若しくは試
験対象のマトリックスからの干渉に対する共相関感度,及び偏りが含まれ得るが,これらに限
定されない。
7.2.2.4 ラボラトリは,次の妥当性確認の記録を保持しなければならない。
a) 使用した妥当性確認の手順。
b) 要求事項の詳述。
c) 方法のパフォーマンス特性の確定。
d) 得られた結果。
e) 意図した用途に対する方法の適切性を詳述した,方法の妥当性に関する表明。

7.3 サンプリング

7.3.1  ラボラトリは,後の試験又は校正のための物質,材料又は製品のサンプリングを実施する場合,サ
ンプリングの計画及び方法をもたなければならない。サンプリング方法は,後の試験又は校正結果の妥当
性を確実にするために管理すべき要因を考慮しなければならない。サンプリングの計画及び方法は,サン
プリングが行われる場所で利用できなければならない。サンプリング計画は,合理的である限り,適切な
統計的方法に基づかなければならない。
7.3.2 サンプリング方法は,次の事項を記述しなければならない。
a) サンプル又はサンプリング場所の選択
b) サンプリング計画
c) 後の試験又は校正のために必要な品目を得るための,物質,材料又は製品からのサンプルの準備及び
処理
注記 ラボラトリに受領された際に,7.4に規定された更なる取扱いが必要とされる場合がある。
7.3.3 ラボラトリは,請け負った試験・校正の一部を構成する該当サンプリングデータの記録を保持しな
ければならない。これらの記録には,該当する場合,次の事項を含めなければならない。
a) 用いたサンプリング手順の参照。
b) サンプリングの日付及び時刻。
c) 試料を特定し記述するためのデータ(例えば,数,量,名称)。
d) サンプリングを実施した要員の識別。
e) 使用された設備の識別。
f) 環境条件又は輸送条件。
g) 適切な場合,サンプリング場所を特定するための図面又はその他の同等な手段。
h) サンプリング方法及びサンプリング計画からの逸脱,追加又は除外。

7.4 試験・校正品目の取扱い

7.4.1  ラボラトリは,試験・校正品目の完全性並びにラボラトリ及び顧客の利益を保護するために必要な
全ての規定を含め,試験・校正品目の輸送,受領,取扱い,保護,保管,保留及び処分又は返却のための
手順をもたなければならない。ラボラトリは,試験又は校正のための取扱い,輸送,保管/待機及び準備
の間に品目が劣化,汚染,損失又は損傷を受けることを防止するための予防策をとらなければならない。
試験・校正品目に添えられた取扱いの指示に従わなければならない。

――――― [JIS Q 17025 pdf 14] ―――――

12
Q 17025 : 2018 (ISO/IEC 17025 : 2017)
7.4.2 ラボラトリは,試験・校正品目の明確な識別のためのシステムをもたなければならない。この識別
は,当該品目がラボラトリの責任下にある間,保持されなければならない。識別システムは,品目の物理
的な混同又は記録若しくはその他の文書で引用する際の混同が起こらないことを確実にしなければならな
い。識別システムは,適切ならば品目又は品目のグループの小分け及び品目の移送に対応しなければなら
ない。
7.4.3 試験・校正品目を受領した際,規定された状態からの逸脱を記録しなければならない。品目の試験・
校正に対する適性に何らかの疑義がある場合,又は品目が添えられた記述に適合しない場合,ラボラトリ
は,業務を進める前に更なる指示を求めて顧客に相談し,この相談の結果を記録しなければならない。顧
客が,規定された状態からの逸脱を認めながらその品目の試験又は校正を要求する場合,ラボラトリは,
その逸脱によってどの結果が影響を受けるおそれがあるのかを示した免責条項を報告書に含めなければな
らない。
7.4.4 規定された環境条件下で品目を保管又は調整する必要がある場合は,これらの条件を維持し,監視
し,記録しなければならない。

7.5 技術的記録

7.5.1  ラボラトリは,個々のラボラトリ活動の技術的記録には,結果,報告並びに可能であれば測定結果
及び付随する測定不確かさに影響を与える要因の特定を容易にし,元の条件にできるだけ近い条件でラボ
ラトリ活動の反復を可能とする十分な情報が含まれることを確実にしなければならない。その技術的記録
には,日付並びに個々のラボラトリ活動及びデータ・結果の確認に責任をもつ要員の識別を含めなければ
ならない。観測原本,データ及び計算は,それらが作成される時点において記録され,特定の業務におい
て識別可能でなければならない。
7.5.2 ラボラトリは,技術的記録の変更について,以前の版又は観測原本に遡って追跡できることを確実
にしなければならない。変更の日付,変更点の表示及び変更に責任をもつ要員を含め,元のデータ及び変
更されたデータ並びにそれらのファイルの両方を保持しなければならない。

7.6 測定不確かさの評価

7.6.1  ラボラトリは,測定不確かさへの寄与成分を特定しなければならない。測定不確かさを評価する際,
サンプリングから生じるものを含み,重大な全ての寄与成分を,適切な分析方法を用いて考慮しなければ
ならない。
7.6.2 校正を実施するラボラトリは,所有する設備を含め,全ての校正に関する測定不確かさを評価しな
ければならない。
7.6.3 試験を実施するラボラトリは,測定不確かさを評価しなければならない。試験方法によって,厳密
な測定不確かさの評価ができない場合,原理の理解又は試験方法の実施に関する実際の経験に基づいて推
定しなければならない。
注記1 広く認められた試験方法が,測定不確かさの主な要因の値に限界を定め,計算結果の表現形
式を規定している場合には,ラボラトリは,試験方法及び報告方法の指示に従うことによっ
て,7.6.3を満足しているとみなされる。
注記2 結果の測定不確かさが確立され,検証されている特定の方法に関して特定された重大な影響
因子が制御されていることをラボラトリが実証できる場合,個々の結果について測定不確か
さを評価する必要はない。
注記3 さらに詳しい情報については,ISO/IEC Guide 98-3,JIS Z 8404-1及びJIS Z 8402規格群を参
照。

――――― [JIS Q 17025 pdf 15] ―――――

次のページ PDF 16

JIS Q 17025:2018の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO/IEC 17025:2017(IDT)

JIS Q 17025:2018の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Q 17025:2018の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISQ17000:2005
適合性評価―用語及び一般原則