JIS Q 9002:2018 品質マネジメントシステム―JIS Q 9001の適用に関する指針 | ページ 2

                                                                                              3
Q 9002 : 2018 (ISO/TS 9002 : 2016)
ISO及びIECは,次のURLにおいて,標準化に用いる用語データベースを維持する。
− ISOオンライン・ブラウジング・プラットフォーム : http://www.iso.org/obp
− IEC Electropedia : http://www.electropedia.org/

4 組織の状況

4.1 組織及びその状況の理解

  この細分箇条の意図は,組織の目的及び戦略的方向性に関係し,品質マネジメントシステムの意図した
結果を達成する組織の能力に対して好ましい影響又は好ましくない影響を及ぼし得る外部及び内部の課題
を理解することである。組織は,外部及び内部の課題が変化し得ること,このためこれらの課題を監視し,
レビューすべきことを認識することが望ましい。組織は,計画的な間隔で,マネジメントレビューなどの
活動を通じて,組織の状況のレビューを行ってもよいかもしれない。
外部及び内部の課題に関する情報は,内部の文書化した情報及び会議,国内及び海外の報道,ウェブサ
イト,国家統計局及びその他の政府省庁の発行物,専門的及び技術的な出版物,関係する機関との会議及
び会合,顧客及び密接に関連する利害関係者との会議,職能団体など,多くの情報源で見つけることがで
きる。
組織の状況に関連する外部及び内部の課題の例には,次の事項が含まれ得る。ただし,これらに限定さ
れるものではない。
a) 次の事項に関する外部の課題
1) 為替レート,経済情勢,インフレ予測,借入能力(credit availability)などの経済的な要因
2) 現地の失業率,安全に対する受止め方,教育水準,国民の祝日及び就業日などの社会的な要因
3) 政治的安定,公共投資,現地のインフラストラクチャ,国際貿易協定などの政治的な要因
4) 新しい分野の技術,素材及び機器,特許期限切れ,職業倫理規範などの技術的な要因
5) 組織の市場シェアを含む競争,類似の製品又はサービス,マーケットリーダーの動向,顧客の成長
動向,市場の安定性,サプライチェーンとの関係性などの市場要因
6) 労働組合規則,業界に関係する規則などの,作業環境(JIS Q 9001:2015の7.1.4参照)に影響を及
ぼす法令及び規制上の要因
b) 次の事項に関する内部の課題
1) 組織の全体的なパフォーマンス
2) インフラストラクチャ(JIS Q 9001:2015の7.1.3参照),プロセスの運用に関する環境(JIS Q
9001:2015の7.1.4参照),組織の知識(JIS Q 9001:2015の7.1.6参照)などの資源に関わる要因
3) 人々の力量,組織の行動及び文化,組合との関係などの人的側面
4) 工程能力,又は製造及びサービス提供能力,品質マネジメントシステムのパフォーマンス,監視し
ている顧客満足などの業務運用上の要因
5) 意思決定に関する規則及び手順,組織構造など組織のガバナンスに関する要因
戦略的なレベルでは,強み・弱み・機会・脅威分析(SWOT),政治動向・経済動向・社会動向・技術動
向・規制動向・環境動向分析(PESTLE)などのツールを用いることができる。組織の規模及び業務の複
雑さによっては,ブレインストーミング,“したらどうなるか”の問いかけなどの単純なアプローチが組
織にとって有益ということもあり得る。

4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解

  この細分箇条の意図は,組織が,直接的な顧客だけにとどまらず,密接に関連する利害関係者の,関連

――――― [JIS Q 9002 pdf 6] ―――――

4
Q 9002 : 2018 (ISO/TS 9002 : 2016)
する要求事項を考慮することを確実にすることである。意図するところは,要求事項を満たす製品及びサ
ービスを提供する組織の能力に影響を及ぼし得る,密接に関連する利害関係者だけに焦点を当てることで
ある。JIS Q 9001に直接的に記載されているわけではないが,組織は,密接に関連する利害関係者を明確
にする前に,また明確にすることを支援するために,外部及び内部の課題(JIS Q 9001:2015の4.1参照)
を考慮することもできる。
密接に関連する利害関係者のリストは,その組織に固有のものであり得る。組織は,密接に関連する利
害関係者がもつ次の条件を考慮することで,密接に関連する利害関係者を明確にするための基準を開発す
ることができる。
a) 組織のパフォーマンス又は決定に対して与え得る影響
b) リスク及び機会を創出する能力
c) 市場に与え得る影響
d) 決定又は活動を通じて組織に影響を与える能力
例1 密接に関連すると組織がみなすことができる,利害関係者の例には,次の者が含まれるが,
これらの者に限定されるものではない。
− 顧客
− エンドユーザ又は受益者
− 合弁事業のパートナ
− フランチャイザー
− 知的財産の所有者
− 親組織及び子組織
− 所有者,株主
− 銀行
− 組合
− 外部提供者
− 従業員,及び組織のために労働するその他の者
− 法的機関及び規制機関(地方,地域,国又は国際)
− 事業者団体及び職能団体
− 地域団体
− 非政府組織
− 近隣住民組織
− 競合組織
密接に関連する利害関係者のニーズ及び期待を理解するために,幾つかの活動及び方法を行うことがで
きる。それらには,当該プロセスに責任をもつ人々と一緒に仕事を行うこと,又は当該情報を収集できる
方法を活用することが含まれる。これらの方法には次の事項が含まれるが,これらに限定されるものでは
ない。
− 受け取った注文のレビュー
− コンプライアンス部門又は法務部も加わった法令・規制要求事項のレビュー
− ロビー活動及び人脈を作る活動
− 関連する協会への参加
− ベンチマーキング

――――― [JIS Q 9002 pdf 7] ―――――

                                                                                              5
Q 9002 : 2018 (ISO/TS 9002 : 2016)
− 市場調査
− サプライチェーンとの関係性のレビュー
− 顧客又はユーザサーベイの実施
− 顧客のニーズ,期待及び満足度の監視
例2 密接に関連する利害関係者の要求事項の例には次の事項が含まれるが,これらに限定されるも
のではない。
− 適合,価格,利用可能性又は納期に関する顧客要求事項
− 顧客又は外部提供者との間で交わされた契約
− 業界の規約及び標準
− 地域団体又は非政府組織との合意
− 提供する製品又はサービスに関する法令・規制要求事項,及び組織がその製品又はサービ
スを提供する能力に対して影響を与える法令・規制要求事項
− 覚書
− 認可,免許又はその他の形態の許可
− 規制機関が発する命令
− 条約,協定及び議定書
− 公的機関及び顧客との合意
− 任意の原則又は規範(codes of practice)
− 任意のラベリング又は環境コミットメント
− 組織との契約上の取決めに基づいて生じた義務
− 従業員に関する方針
品質マネジメントシステムの計画(JIS Q 9001:2015の箇条6参照)において,これらの活動によって得
られた情報を考慮することが望ましい。
組織は,密接に関連する利害関係者及びその関連する要求事項が提供する製品及びサービスによって異
なり得ること,並びに予期せぬ状況又は市場への意図的反応によって変化し得ることを認識するのが望ま
しい。
組織は,利害関係者の関連する要求事項の監視及びレビューを行うための頑健なシステムをもつことが
望ましい。監視及びレビューは,顧客要求事項,製品及びサービスの設計・開発に関係する組織のプロセ
スを用いて,並びに(より戦略的なレベルでは)マネジメントレビューにおいて,実施することができる。

4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定

  この細分箇条の意図は,組織が要求事項を満たし,品質マネジメントシステムが意図した結果を達成す
るのに役立つ形で定められるように,システムの境界を決定することである。
JIS Q 9001:2015の4.3のa) c)に関しては,次の事項に基づいて適用範囲を定めることが望ましい。
a) IS Q 9001:2015の4.1の要求事項に基づいて明確にした外部及び内部の課題
b) IS Q 9001:2015の4.2の要求事項に沿って明確にした,密接に関連する利害関係者(規制当局,顧客
など)の関連する要求事項
c) 組織が提供する製品及びサービス
組織は,適用範囲を決定するときに,次の事項を考慮することで,品質マネジメントシステムの境界も
同時に確立することが望ましい。
− 組織のインフラストラクチャ

――――― [JIS Q 9002 pdf 8] ―――――

6
Q 9002 : 2018 (ISO/TS 9002 : 2016)
− 組織の様々な事業所及び活動
− 事業の方針及び戦略
− 自前の,又は外部から提供される機能,活動,プロセス,製品及びサービス
JIS Q 9001の全ての要求事項は,要求事項を満たす製品若しくはサービスを提供する組織の能力,又は
顧客満足の向上に影響を及ぼさないということでない限り,適用可能と考える。
組織は,JIS Q 9001の要求事項の適用を決定するに当たって,ある箇条全体が適用不可能であることを
単に決定するだけでなく,個々の要求事項を考慮することが望ましい。ある箇条の要求事項の一部が適用
可能である場合,又はある箇条の要求事項が全て適用可能若しくは適用不可能である場合もある。
品質マネジメントシステムの適用範囲は,文書化した情報として維持することが望ましい。適用範囲に
は,対象とする製品及びサービスの詳細を含めることが望ましい。また,適用不可能と決定した要求事項
についてはその正当性を含めることが望ましい。この文書化した情報は,マニュアル,ウェブサイトなど,
組織がそのニーズを満たすように決めたどのような方法でも維持することができる。

4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス

4.4.1  この細分箇条の意図は,組織がJIS Q 9001に基づいて品質マネジメントシステムに必要なプロセ
スを決定することを確実にすることである。これには,生産及びサービス提供のプロセスだけでなく,内
部監査,マネジメントレビューなど,システムの効果的な実施のために必要なプロセスも含まれる(外部
提供者が実行するプロセスを含む。)。例えば,組織が監視及び測定のための資源に関するプロセスの必要
性を決定した場合,そのプロセスはJIS Q 9001:2015の7.1.5の要求事項に適合する必要がある。プロセス
をどの程度まで決定し,詳細化する必要があるかは,組織の状況,及びリスクに基づく考え方の適用によ
って異なり得る(プロセスが,意図した結果を達成する組織の能力にどの程度影響を与えるか,そのプロ
セスで問題が発生する可能性及びそれらの問題の考えられる結果を考慮する。)。
プロセスとは,インプットを使用して意図した結果を生み出す,相互に関連する又は相互に作用する一
連の活動である。JIS Q 9001:2015の4.4.1のa) h)に関しては,次のとおりである。
a) 組織は,プロセスに必要なインプット及びプロセスから期待されるアウトプットを明確にすることが
望ましい。プロセスに必要なインプットは,計画どおりにプロセスを実施するために何が必要かとい
う観点から検討することが望ましい。期待されるアウトプットは,顧客又は以降のプロセスのいずれ
かから何が期待されているかという観点で検討することが望ましい。インプット及びアウトプットは,
有形の場合(材料,部品,設備など)と無形の場合(データ,情報,知識など)とがあり得る。
b) これらのプロセスの順序及び相互作用を明確にするときには,前後のプロセスのインプット及びアウ
トプットとのつながりを考慮することが望ましい。プロセスの順序及び相互作用の詳細を定める方法
は,組織の性質によって異なる。文書化した情報(例えば,プロセスマップ,フローチャート)の保
持又は維持,プロセスの順序及び相互作用についての口頭での説明のような単純な方法など,様々な
方法を用いることができる。
c) 組織は,プロセスが有効である(すなわち,計画した結果を実現する)ことを確実にするために,プ
ロセス管理の基準及び方法を決定し,適用することが望ましい。監視及び測定の基準には,プロセス
パラメータ,又は製品及びサービスの仕様書があり得る。パフォーマンス指標は,監視及び測定と関
連付けることが望ましいが,組織の品質目標(基準)と関連付けることもできる。パフォーマンス指
標のためのその他の方法には,報告書,図表又はその他の監査結果が含まれるが,これらに限定され
るものではない。
d) 組織は,人々,インフラストラクチャ,プロセスの運用に必要な環境,組織の知識,監視及び測定の

――――― [JIS Q 9002 pdf 9] ―――――

                                                                                              7
Q 9002 : 2018 (ISO/TS 9002 : 2016)
ための資源など,プロセスに必要な資源を明確にすることが望ましい(JIS Q 9001:2015の7.1参照)。
資源の利用可能性の検討には,既存の内部資源,並びに外部提供者から入手可能な資源の実現能力及
び制約を含めることが望ましい。
e) 組織は,まずプロセスの活動を決定し,次に活動を実行する者を決定することで,プロセスの責任及
び権限を割り当てることが望ましい。責任及び権限は,組織図,手順書,業務方針,職務記述書など
の文書化した情報において,又は口頭での指示という単純な方法を用いて確立することができる。
f) 組織は,プロセスに付随するリスク及び機会への取組みのために必要なあらゆる処置が実施されるこ
とを確実にするのが望ましい(JIS Q 9001:2015の6.1参照)。
g) 組織は,監視及び測定のために確立された基準のレビューを通じて入手したパフォーマンスデータを
考慮し,このデータを分析・評価し,これらのプロセスが意図した結果を一貫して達成することを確
実にするために必要な変更を実施することが望ましい。
h) 組織は,分析及び評価の結果を用いて改善のための必要な処置を決定することができる。改善は,(例
えば,活動を実行する方法のばらつきを減らすことによって)プロセスレベルで行うこと,又は(例
えば,システムに関連する事務作業を減らし,担当者がプロセスのマネジメントに集中できるように
することによって)品質マネジメントシステムレベルで行うことができる。
4.4.2 この細分箇条の意図は,組織が,どの程度文書化した情報が必要かを決定することを確実にするこ
とである。
文書化した情報とは,組織が管理・維持しなければならない情報,及びその情報が含まれる媒体である。
プロセスが意図したアウトプットを一貫して実現するためにどの情報を使用するかを,適切な人々(例
えば,プロセスのオーナー,プロセスアウトプットのオーナー,プロセス管理者)がレビューすることが
望ましい。使用する情報[例えば,手順書,作業指示書,視覚資料,情報及び通信システム,図,仕様書,
メトリクス,報告書,主要パフォーマンス指標(KPI),会議の議事録,代表サンプル,口頭での会話]に
関して,プロセスを支援するための価値を分析・レビューする必要がある。その結果が,どの情報を文書
化した情報として扱うかに関する決定となる。例えば,トップマネジメントが戦略的計画を立案する場合
には,政府機関及びその他の関連団体が作成した,組織が属する産業分野の現状及び将来的な状況に関す
る報告書などの関連する情報をインターネット上で調べ,レビューすることができる。この情報は,一般
に入手できるものであるから文書化した情報とみなさないほうがよい。これに対し,関連する要素(例え
ば,組織の使命,ビジョン,価値観,プロセスマップ)の中で特に品質目標,リスク及び機会,戦略を含
む事業計画は,文書化した情報とみなす必要がある。
組織のプロセスの運用及び組織の品質マネジメントシステムを助けるために必要な,各種の文書化した
情報を規定することは,組織の判断に委ねられる。組織は,必要な文書化した情報の種類及び程度を決定
するに当たって,組織自体のニーズを評価し,リスクに基づく考え方を適用することが望ましい。また,
潜在的な不適合の結果同様,組織の規模,活動,製品又はサービスの種類,プロセスの複雑さ,資源など
も考慮することが望ましい。
JIS Q 9001は,多数の要求事項において文書化した情報の使用を規定しているが,組織が,プロセスの
運用を管理するために,追加的な文書化した情報(例えば,文書化した手順,ウェブサイト,作業指示書,
マニュアル,規則,基準,様式,ガイド,コンピュータソフトウェア,電話“アプリ”など)をもつ必要
があることはあり得る。
組織の文書化した情報の中には,最新の状態を維持するために定期的にレビューを行い,改訂する必要
があるものもある。JIS Q 9001は,この種の文書化した情報に言及するとき,“文書化した情報を維持する”

――――― [JIS Q 9002 pdf 10] ―――――

次のページ PDF 11

JIS Q 8901:2012の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Q 9002:2018の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称