JIS S 0023-2:2007 高齢者配慮設計指針―衣料品―ボタンの形状及び使用法 | ページ 2

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附属書1(参考)男子高齢者の実験方法とその結果

序文

 この附属書は,本体に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。
この規格を作成するに当たって,男子高齢者(以下,男子という。)について実施した実験方法とその結
果について記載する。
なお,この附属書では,人体計測値,衣服寸法及びボタンサイズについては,センチメートル(cm)単
位を採用した。
1. 実験方法
1.1 器具及び材料
a) ペグボード 附属書1図1に示す。両端に青及び黄色が着色されている直径0.450 cm,長さ5 cmの木
製の円柱棒(ペグ)20本,及び直径0.505 cmの穴が縦4列,横5列,計20個の穴があいた方形台座
(ボード)が1セットになった器具である。
ペグボードに20本のペグを差し込む及び抜くの時間計測で,個人の手指の運動機能についての評価
を行う。
附属書1図 1 ペグボード
b) 実験用シャツ 附属書1図2に示す。サイズは,出来上がり身幅124 cmの1サイズとした。ボタンホ
ールは,縦穴を4着とし,その他は横穴とした。
使用素材は,綿100 %,平織,厚さ0.29 mm,糸密度縦19本/cm及び横19本/cmである。
c) ボタン ボタンは,0.9 cm,1.15 cm,1.5 cm,1.8 cm及び2.0 cmの5種類とした。ボタンの形状は,
すべて表穴ボタンとした。実験に使用したボタン及びボタンホールの大きさを,附属書1図3に示す。
附属書1図 2 実験服(シャツ)

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単位 cm
外径 0.90 1.15 1.50 1.80 2.00
厚さ 0.29 0.22 0.27 0.31 0.32
ボタンホールの 1.20 1.40 1.80 2.10 2.30
大きさ
形状
附属書1図 3 実験服のボタンの種類
1.2 実験方法
1.2.1 実施項目・実施方法 実施項目・実施方法は,次のとおりである。
a) フェースシート記入(附属書1付表1参照)
b) 人体計測は,テープメジャーによるチェスト,ウエスト,ヒップ及びでん(臀)囲並びに身長及び体
重を計測
c) ボタン及び留め具についてのアンケート調査
d) ペグボードテスト及びビデオ撮影
e) シャツの着用官能検査(5段階評価法)及びビデオ撮影
f) 写真撮影
1.2.2 実験水準 実験の要因及び水準は,ボタンの外径5水準,ボタンの形状1水準(表穴だけ),ボタ
ン付けの糸足2水準(糸足あり,糸足なし)及びボタンホールの方向2水準(縦,横)として,附属書1
表1に示すように各実験服に組み合わせた。被験者の疲労を考えて,着用回数は18回にとどめることを目
標に計画した(着用順序は,附属書1付表2参照)。
附属書1表 1 実験服No.と要因・水準との組合せ(男子)
要因 ボタンの外径 ボタンの ボタンの糸足の ボタンホールの シャツの
形状 有無 方向 サイズ
実験服No. 水準 5 水準 1 水準 2 水準 2 水準 1
J 1 1 0.90 cm 1 表穴 1 なし 1 横 身幅 124 cm
J 2 2 1.15 cm 1 表穴 1 なし 1 横 身幅 124 cm
J 3 3 1.50 cm 1 表穴 1 なし 1 横 身幅 124 cm
J 4 4 1.80 cm 1 表穴 1 なし 1 横 身幅 124 cm
J 5 1 0.90 cm 1 表穴 2 あり 1 横 身幅 124 cm
J 6 2 1.15 cm 1 表穴 2 あり 1 横 身幅 124 cm
J 7 3 1.50 cm 1 表穴 2 あり 1 横 身幅 124 cm
J 8 4 1.80 cm 1 表穴 2 あり 1 横 身幅 124 cm
J 9 2 1.15 cm 1 表穴 1 なし 2 縦 身幅 124 cm
J 10 3 1.50 cm 1 表穴 1 なし 2 縦 身幅 124 cm
J 11 4 1.80 cm 1 表穴 1 なし 2 縦 身幅 124 cm
J 12 5 2.00 cm 1 表穴 1 なし 2 縦 身幅 124 cm
J 13 5 2.00 cm 1 表穴 1 なし 1 横 身幅 124 cm
1.2.3 手指の運動機能検査 ぺグボードテスト法を採用して,手指の運動機能の能力指標とする。ぺグボ

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ードに20本のぺグを差し込む及び抜くの時間計測はビデオで行い,最初に両手を机に置いておき,開始の
合図でその手が動き始めた時点から,終了して机の上に手を置いた時点までを計測する。
1.2.4 官能検査 ボタンの評価は,附属書1表2に示すように,5段階評価法を用いて行い,“留めやす
い”及び“はずしやすい”を5点とした。
検査前に,被験者各人に試験内容を説明する。検査時には,被験者の正面に評価用語及びその5段階の
評価値を大きく掲示しておき,それを見ながら回答してもらい,質問者が記録するという方法をとる。附
属書1付表2は,官能検査順序及びその質問内容と回答記録用紙である。
附属書1表 2 5段階評価用語及び評点
評点 ボタンを留める 評点 ボタンをはずす
5 留めやすい 5 はずしやすい
4 やや留めやすい 4 ややはずしやすい
3 どちらともいえない 3 どちらともいえない
2 やや留めにくい 2 ややはずしにくい
1 留めにくい 1 はずしにくい
1.2.5 実験服の着脱実験 衣服の着脱は,い(椅)座位姿勢で実施する。実験状況をビデオ撮影し,所要
時間の計測はビデオで行い,留め及びはずし共に最初のボタンに手がかかった時点から,留め終わって手
が離れる時点,又は,はずし終わって手が離れた時点までとした。留め直前,留め終了直後,はずし直前
及びはずし終了直後は,手をひざ(膝)に置く。また,着脱実験直後に,ボタンについてのヒアリングに
よるアンケート調査を行う。
2. 実験結果
2.1 被験者 被験者の年齢層分布を,附属書1図4に示す。被験者は,いずれも日常生活行動に支障が
ない健康な男子54人である。
16
14
被験者人数(人)
12
10
8
6
4
2
0
6064 6569 7074 7579 80
年齢層(歳)
附属書1図 4 被験者の年齢層分布(男子)
2.2 人体計測結果 人体計測の統計結果を,附属書1表3に示す。各表の右の図は,19921994年に実
施された日本人全国調査の同年代の平均値を基準(M)としたモリソン関係偏差折線である。

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今回の被験者の平均値は全国値と比較して,全体的に大きく,データのばらつきを示す標準偏差はほぼ
同程度であることから,被験者の平均値は19921994年の同年代の全国平均値より優位に大きいことが分
かる。特に,65歳代前半及び80歳代においては1偏差に近い差が認められる。ただし,80歳以上の年齢
層は,被験者数が少ないので個人のデータが大きく影響している。
附属書1表 3 人体計測結果(男子)
全体
全国値7079歳 被験者 6085歳(人数 : 54名) 偏差折線 検定
平均 標準偏差平均 最小値
標準偏差 -1σ
最大値 M +1σ
身長 (cm) 158.6 5.7 163.3 5.9 151.4 178.8 **
チェスト(cm)89.1 5.7 93.5 5.7 80.0 108.0 **
ウエスト(cm)80.9 9.5 85.0 7.9 64.4 103.0 **
(cm)
ヒップ 91.5 5.8 96.4 5.3 84.5 115.4 **
体重 (kg) 56.7 8.6 62.2 7.6 47.0 79.2 **
M : 全国値7079歳
平均値の差の検定 **P<0.01,*P<0.05
6064歳
全国値6064歳 被験者 6064歳(人数 : 10名) 偏差折線 検定
平均 標準偏差平均 標準偏差
最小値 最大値-1σ M +1σ
身長 (cm) 161.1 6.5 164.6 3.0 159.2 168.8 **
チェスト(cm)92.2 5.4 95.2 6.0 87.9 108.0
ウエスト(cm)83.5 7.9 83.4 8.6 74.1 99.4
(cm)
ヒップ 92.8 5.6 97.6 5.5 89.6 107.2 **
体重 (kg) 61.6 8.5 63.6 7.4 53.5 79.2
M : 全国値6064歳
平均値の差の検定 **P<0.01,*P<0.05
6569歳
全国値6569歳 被験者 6569歳(人数 : 15名) 偏差折線 検定
平均 標準偏差平均 標準偏差
最小値 最大値-1σ M +1σ
身長 (cm) 160.9 5.3 165.9 6.4 157.0 178.8 **
チェスト(cm)90.6 5.4 95.5 4.6 84.3 101.0 **
ウエスト(cm)81.9 8.7 86.4 7.3 68.8 94.8 *
(cm)
ヒップ 92.6 6.0 97.6 3.8 88.7 103.7 **
体重 (kg) 59.1 8.9 65.7 6.3 52.5 73.0 **
M : 全国値6569歳
平均値の差の検定 **P<0.01,*P<0.05
7074歳
全国値7074歳 被験者 7074歳(人数 : 11名) 偏差折線 検定
平均 標準偏差平均 標準偏差
最小値 最大値-1σ M +1σ
身長 (cm) 159.0 5.6 162.5 4.7 156.5 170.5 *
チェスト(cm)89.6 5.5 92.4 5.5 83.5 101.7
ウエスト(cm)81.4 9.3 84.7 7.6 75.2 96.8
(cm)
ヒップ 91.6 5.6 94.7 4.2 89.0 100.8 *
体重 (kg) 57.5 8.4 60.2 7.2 51.0 70.0
M : 全国値7074歳
平均値の差の検定 **P<0.01,*P<0.05
7579歳
全国値7579歳 被験者 7579歳(人数 : 11名) 偏差折線 検定
平均 標準偏差平均 標準偏差
最小値最大値-1σ M +1σ
身長 (cm) 157.5 5.8 160.0 5.8 151.4 171.5
チェスト(cm)88.1 6.0 90.5 5.3 80.0 95.9
ウエスト(cm)79.6 9.5 84.0 5.6 72.8 91.3 *
(cm)
ヒップ 90.8 6.1 95.1 4.0 86.3 100.3 **
体重 (kg) 54.8 8.8 58.4 6.3 50.0 68.0
M : 全国値7579歳
平均値の差の検定 **P<0.01,*P<0.05
80歳代
全国値8099歳 被験者 8085歳(人数 : 7名) 偏差折線 検定
平均 標準偏差平均 標準偏差
最小値 最大値
-1σ M +1σ
身長 (cm) 157.1 6.9 162.1 7.7 154.7 177.5
チェスト(cm)
87.9 5.4 93.5 7.5 82.0 104.6
ウエスト(cm)
79.6 8.7 86.5 12.4 64.4 103.0
(cm)
ヒップ 90.8 5.4 96.8 10.1 84.5 115.4
体重 (kg) 54.7 7.9 62.0 11.1 47.0 79.0 *
全国値 : 人間生活工学研究センター1992年94年計測 M : 全国値8099歳
平均値の差の検定 **P<0.01,*P<0.05
備考 全国値の6080歳代の平均値は公表されていないので,“全体”では中間の70
79歳のデータと比較した。

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2.3 ペグボードテスト結果 附属書1図5は,ペグボードテスト時間計測結果の年齢層ごとの平均値を
示す。“差し込む”では各年齢層間の時間差はごく少なく,したがって,加齢に伴う変化は60歳代前半か
ら70歳代後半まで微量の漸増傾向はみられるものの必ずしも明らかではない。また,80歳代はむしろ所
要時間は少ない結果であったが,人数が少ないため個人のデータに大きく左右されているものと考えられ
る。手指の運動機能には,年齢だけで判断しきれない個人差のあることが分かる結果といえる。
“抜く”でも同様に年齢層間の時間差は少なく,ほぼ一定の傾向である。また“差し込む”と“抜く”
との時間差は,各年齢層共に20数秒と多い。
平均値そのものを女子と比較すると,80歳代以外では男子の方がやや多く時間を要していることが分か
る。
60
50
40 差し込む
時間〈秒)
30
抜く
はずす
20
10
0
6064 6569 7074 7579 80
年齢層(歳)
附属書1図 5 ペグボードテスト結果(男子)
2.4 ボタンの留め・はずしの時間計測結果及び考察 附属書1図6は,年齢を一括したボタンの大きさ
別各要因の“留める”及び“はずす”の所要時間の平均値を示している。附属書1図7は,ボタンの大き
さ別に各要因の年齢層による変化を表したものである。附属書1図8は,年齢層別及び要因別にボタンの
大きさによる所要時間の変化を表したものである。
これらからボタンの外径,糸足の有無,ボタンホールの方向,年齢層などの各要因と時間との関係につ
いて,次のようなことが分かる。以下,ボタンは,0.9 cmのボタンを0.9ボタン,1.15 cmのボタンを1.15
ボタン,1.5 cmのボタンを 1.5ボタン,1.8 cmのボタンを 1.8ボタン及び2.0 cmのボタンを2.0ボタンと
略す。
50 50
40 40
秒)
時間(秒)
30 糸足なし・横
30 糸足なし・横
時間(
糸足あり・横 糸足あり・横
20 20
糸足なし・縦 糸足なし・縦
10 10
0 0
0.9 1.15 1.5 1.8 2.0 0.9 1.15 1.5 1.8 2.0
ボタンの外径(cm) ボタンの外径(cm)
留める(平均値) はずす(平均値)
附属書1図 6 ボタンの留め・はずしの年齢一括時間計測結果(男子)

――――― [JIS S 0023-2 pdf 10] ―――――

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