JIS T 0063:2020 医療機器規格における安全側面の開発及び導入の指針 | ページ 5

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討しなければならない。定義によれば,ハザードは,一連の事象又はその他の状況(通常使用を含む)が
ハザードに暴露される,すなわち,危険状態に至るまで危害をもたらすことはない(図1のP1)。危険状
態が存在しても,必ずしも,危害をもたらすとは限らない(図1のP2)。
7.3.4.3 医療機器関連のハザード及び危険状態
考えられる医療機器関連のハザードは,大部分が製品の性質に依存する。製品が故障しないことを保証
することは不可能であるため,規格は,医療機器のハザードを,患者の状態,健康及び安全並びにユーザ
ー及び他の人の健康及び安全に関わるものとして認識することが望ましい。ハザード及び危険状態を特定
する場合,規格作成者は,主として次に関連する危険状態に影響する要因を考慮することが望ましい。
a) 医療機器の設計,構造又は化学的安定性
b) 患者の状態及び患者環境
c) ユーザーによる医療機器の適用
d) 人が感染物質,危険な化学物質又は放射線などのハザードに暴露される可能性がある場合の,医療機
器の使用,サービス又は修理
ハザード,予見可能な一連の事象,危険状態及び危害の間の関係を,幾つかの簡単な例について,表1
に示す。
表1−ハザード,予見可能な一連の事象,危険状態及び起こり得る危害の関係
ハザード 予見可能な一連の事象 危険状態 危害
電磁エネルギー (1) 電極ケーブルを意図せずに商用電源ソ
商用電圧が電極上に生じ 重篤な熱傷
(高電圧) ケットに接続する。 る。 心臓の細動
化学物質 (1) 製造中に使用した揮発性溶剤を完全に
透析中に梗塞(血流中で気ガス塞栓症
(揮発性溶剤,塞栓) 除去しきれていない。 泡が発生)が起こる。 脳障害
(2) 溶剤残留物が体温で気化する。
生物学的 (1) 再使用麻酔チューブの浄化に関する指
麻酔時に患者の気道内に細細菌感染
(微生物による汚染) 示が不適切である。 菌が付着する。
(2) 麻酔時に汚染したチューブを使用す
る。
機能性 (1) 静電気に帯電した患者が注入ポンプに
血糖値が上昇している患者軽微な臓器障害
(投与されない) 触れる。 にインスリンが投与され 意識低下
ず,警報も作動しない。
(2) 静電気放電(ESD)が原因となってポ
ンプ及びポンプアラームが故障する。
機能性 (1) 植込み型除細動器のバッテリーが寿命
不整脈の発生時に除細動器死亡
(出力停止) に達する。 が作動しない。
(2) 臨床的な経過観察受診間隔が不適切に
長い。
測定 (1) 測定エラー 医師に不正確な情報が報告疾病の進行
(不正確な情報) (2) 測定エラーがユーザーによって検出さ 重傷
され,誤診する,及び/又は
れない。 適切な治療が施されない。
7.3.5 リスク推定
特定された危険状態について,関連するリスクを,入手できる情報又はデータを用いて推定する必要が
ある。一般に,危害の発生確率の定量的推定と定性的推定とで,いずれかが優れているということはない。
危害の発生確率の定量的推定は,有効な統計的データによって裏付けることができるものに限定される。
系統的な原因に関連する危害の発生確率は,推定することが困難なことがある(6.2.2参照)。

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危害の発生確率を推定できない危険状態については,生じる可能性のある結果を考慮することが望まし
い。
この規格は,規格で取り扱う危険状態に関連するリスクを推定するために,規格作成者が特定のツール
又は方法を使用することは提言しない。
規格作成者が実施するリスク推定では,一連の信頼できる要求事項を得るために一般に認められた最新
の技術水準であるような入手可能なデータを考慮することが望ましい。情報源の参照及びそれらのデータ
を使用することの論理的根拠を,規格内に含めることが望ましい。
7.3.6 リスク評価
7.2.3で定めたリスク受容可能性の判断基準を使用し,規格作成者は,考慮対象のリスクのどれが規格の
要求事項を通じてコントロールされなければならないかを決定する。
7.3.7 リスクコントロールの特定
7.3.7.1 リスクコントロール手段の選択
選択したリスクコントロール手段は,製品の設計機能及びプロセスコントロールの両方を含むことが可
能である。分析した製品及び/又はプロセス,特定した結果としてのリスク,並びに,利用できるリスク
コントロール手段の有効性及び実現可能性に,その選択は依存する。規格の適用範囲には,これを反映す
ることが望ましい。選択したリスクコントロール手段は,安全の実用面に適切かつ一致するものである必
要がある(5.4参照)。
7.3.7.2 リスクコントロールに対する階層的アプローチ
リスクを受容可能なレベルまで低減することに適したリスクコントロール手段を決定する場合,次のリ
スクコントロールの選択肢を,記載の優先順位に従って適用しなければならない。
a) 設計による本質的安全
b) アラームを含む,医療機器自体の保護手段,又は製造若しくは保守に関連するプロセスのコントロー

c) 安全に関する情報
規格作成者は,より低いレベルに移行する前に,この階層の各レベルにおける実施可能なリスクコント
ロールの選択肢を考慮しなければならない。
設計による本質的安全が,リスクコントロールプロセスにおける第一かつ最重要のステップである。経
験からは,十分に設計されたガード又は保護手段も故障する又は侵害され,安全に関する情報は必ずしも
守られてはいないことが知られているので,製品の特質に固有の設計ソリューションは引き続き有効な可
能性が高いためである。
設計による本質的安全の手段で,ハザードを排除することもリスクを十分にコントロールすることもで
きない場合は,ガード及び保護手段を考慮しなければならない。追加機器(例えば,非常停止機器)を含
む,補足的保護手段を実施することが必要なこともある。
最終ユーザーは,製造業者が提供する安全に関する情報又はトレーニングへの適合によって,リスクコ
ントロールを果たす役割をもつ。ただし,設計手段による本質的安全,ガード又は補足的保護手段を正し
く適用しないで,安全に関する情報又はトレーニングをその代替手段としてはならない。

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7.3.7.3 適切なリスクコントロールとしての製品又はプロセス規格の要求事項
リスクをコントロールする必要がある場合,規格作成者は,製品又はプロセス規格における要求事項が
適切なリスクコントロールであるかを決定する。
製品規格は,可能な場合,規格作成者がリスクを受容可能なレベルまで低減する際に有効と考える検証
可能な技術的要求事項及び仕様を含んでいることが望ましい。
リスクコントロール手段は,危害の重大さを低減する若しくは危害の発生確率を低減する,又はその両
方を低減することが可能である。7.3.6で特定する受容できないリスクを取り扱うためにどのコントロール
手段を規格に含めることができるかを決定する場合,リスクをコントロールするために使用できる一般的
アプローチをまず考慮することが望ましい。7.3.7.2参照。
7.3.7.4 製品又はプロセス規格内のリスクコントロール手段としてのラベリング
7.3.7.4.1 情報の種類
規格は,製品に関与する人々(例えば,購入者,据付け業者,試験技術者,最終ユーザー及びサービス
要員)に提供する,意図する使用に必要な全ての情報について規定することが望ましい。
ラベリングの情報は,認知できる理解可能なもので,意図する使用環境における製品の正しい使用を支
援するものであることが望ましい。
規格作成者は,ラベリングによって提供される情報が,安全に関する情報又は残留リスクの開示である
かどうかを明確に特定することが望ましい。残留リスクの開示は,リスクコントロール手段ではない。
プロセス規格の場合,それらの規格は安全に関する情報の検証又はバリデーション活動を要求すること
があり得る。
製品規格の場合,それらの規格はどのような安全関連情報が必要かを,次のように明確に示すことが望
ましい。
− 製品自体及び/又は包装上に表示する。
− 販売時点で明確に視認できるようにする。
− 例えば,据付け,使用,保守及び廃棄について,説明資料を提供する。これにはトレーニング又は個
人用保護具の必要性に関する情報を含むことが望ましい。
関与する人が作業慣行に従うことでリスクが大幅に低減される場合は,適切な作業慣行についての情報
を記載することが望ましい。製品安全がかなりの程度で適切な作業慣行に依存する場合,また,これらの
慣行が自明のものでない場合,最低限,説明資料を参照するための表示を規定することが望ましい。
製品の使用に不可欠な安全に関する情報の価値を低下させる傾向があるため,不必要な情報は,避ける
ことが望ましい。
表示,記号及び安全標識(適切な記号又は安全標識が存在する場合)は,国際規格(例えば,ISO 3864
規格群,ISO 7000,ISO 7001,ISO 7010,ISO 15223-1及びIEC 60417)に従って規定することが望ましい。
7.3.7.4.2 説明書
規格は,提供される説明書及び情報が,製品又はシステムを作動するための必要な条件を対象とするこ

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とを規定することが望ましい。
製品の場合,説明書は,組立,使用,洗浄,消毒,保守,解体,分解及び廃棄を適宜対象とする。
説明書の内容は,排除できない製品ハザードによって引き起こされる危害を防止するための手段を製品
のユーザーに示し,製品のユーザーが製品の使用に関する適切な決定をできるようにし,製品の誤使用を
避けるための指示を示すものであることが望ましい。
説明書には,製品が誤使用された場合(例えば,漂白剤を摂取した場合)の治療措置を指示することも
可能である。製品ハザードに関する説明書及び警告は,製品使用に関する指示と混同しないように個別に
書いて提示することが望ましい。
注記1 これに関連しては,ISO/IEC Guide 14,ISO/IEC Guide 37及びIEC Guide 109を参照。
注記2 取扱説明書の作成の原則は,IEC 82079-1に示されている。
7.3.7.4.3 警告
規格は,警告を次のように規定することが望ましい。
− 明白で,読みやすく,容易に消えず,かつ,理解しやすい。
− 特定の技術分野で別の言語で表すことが適している場合でない限り,製品又はシステムの使用を意図
されている国又は国々の公用語で表す。
− 簡潔かつ明確な分かりやすい文章とする。
警告には,一般的な又は特定の警告文を含めることが可能である。
警告は,使用が意図された全ての国の最終ユーザーに理解できるものであることが望ましい。
警告の内容は,製品ハザード,ハザードに起因する危害,及び警告を無視した場合に起こる結果につい
て記載することが望ましい。効果的な警告は,シグナル用語(“危険”,“警告”,“注意”という用語),安
全警告の図記号,製品のハザードに適した書体の大きさ及び色を使用し,注意を喚起する。適切な場合,
規格には,例えば,製品上,製品マニュアル内,安全データシート内といった警告の場所及び耐久性に関
する要求事項を含めることが望ましい。
さらに,試験方法を規定する規格には,手順及び/又は,例えば,試験所のスタッフにリスクをもたら
すことのある物質又は機器の使用を規定することが可能である。該当する場合,規格には,次のような警
告文を含めることが望ましい。
− 規格の最初に表す一般的警告文
例1 “注意−この規格に規定する試験の幾つかは,危険状態を招くことがあるプロセスの使用と
関わる。”
− 関連する規格の文章の前に適宜記載する特定の警告文
例2 “危険−非常に強い毒性をもつフルオロ酢酸ナトリウムの使用に起因する危険状態に注意す
る。”
7.3.7.5 包装
該当する場合,規格は,次のために,製品の包装に関する要求事項を規定することが望ましい。
− こん(梱)包された製品及び包装自体の適切な取扱い,輸送及び保管を確実なものにする。

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− 製品の完全性を維持する。
− 傷害又は汚染に関連するようなハザードを除去し,又はそれらのリスクを最小限にする。
− 製品の適切な開こん(梱)を可能にする。
注記 これに関連しては,ISO/IEC Guide 41を参照。
7.3.8 有効性の検証
この規格に規定するリスクコントロール手段及び関連する試験方法は,規格を発行する前に,その有効
性を検証することが望ましい。この検証の一部は,科学文献から得ることができ,そうでなければ,規格
作成者が,試験所間調査の実施を決定することが可能である。
7.3.9 残留リスクの評価
一連のリスクコントロール手段を確立したら,実施した手段がリスクを受容可能にすることが期待でき
るかどうか決定することが望ましい。そうでない場合は,追加の又は代替のリスクコントロール手段を考
慮することが望ましい。この繰返し手順は,残留リスクが受容可能なレベルに低減されるまで継続するか,
又は規格のユーザーに残留リスクを通知して,ユーザーがリスクを更にコントロールするためにJIS T
14971を使用可能にすることが望ましい。
7.3.10 導入したリスクコントロール手段の影響
可能であれば,規格作成者は,導入したリスクコントロール手段の,この規格内の他のリスクコントロ
ール手段に対する影響,及びこれらの手段によって新しいリスクが発生するか又はそれらが他のリスクコ
ントロール手段の有効性に影響するかを検討することが望ましい。例えば,規格作成者は,リスクコント
ロール手段の医療機器のユーザビリティに対する影響を評価することが望ましい。
7.3.11 特定した全てのハザード及び危険状態に対する検討
規格作成者は,規格の作成中に特定されたハザード及び危険状態からの全てのリスクが検討されたこと
をレビューすることが望ましい。

7.4 規格のバリデーション

  バリデーションは,規格を全ての利害関係者に回付して投票又はコメント募集を何度か繰り返し行う,
合意形成プロセスを通じて行う。

7.5 結論

  上記のステップに従うことで,リスクに基づく体系的な製品規格又はプロセス規格の開発が促進される。
さらに,このアプローチは,JIS T 14971に適合するリスクマネジメントシステムの実施を促進する。

8 リスクマネジメントの枠組みにおける安全側面を導入した医療機器規格の適用の概要

  安全側面を導入したプロセス規格及び製品規格がどのようにリスクマネジメントの枠組みの実施を促進
するかの一般的指針については,表2を参照することが望ましい。プロセス規格又は製品安全規格が測定
可能なパラメーター及び受容可能な限度値を規定しない場合,製造業者が受容可能な限度値を開発するた
めの方法を規定する必要があり,又は適切なリスク受容可能性の判断基準を確立するためのリスクマネジ
メントの使用を実施することが望ましい。

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JIS T 0063:2020の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO/IEC Guide 63:2019(IDT)

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