JIS T 0601-1-2:2018 医用電気機器―第1-2部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項―副通則:電磁妨害―要求事項及び試験 | ページ 12

                                                                                             53
T 0601-1-2 : 2018 (IEC 60601-1-2 : 2014)
− イミュニティ試験レベルの決定(E.7)
E.3 E.1 b),E.1 c)及びE.1 d)(緩和条件がある場合)に示した方法の概要
特別な条件[E.1 b)及びE.1 c)]並びにE.1 d)に記載した電磁現象の存在については,必要な場合は,各
現象に対して,新しいイミュニティ試験レベルを決定するために,次の手順に従うことが望ましい。
− 電磁妨害源の評価(E.5)
− 合理的に予見可能な最高電磁妨害レベルの決定(E.6)
− イミュニティ試験レベルの決定(E.7)
意図する使用によって,異なる二つの現象が生じた場合に対する緩和条件(特別な条件)の一例として
は,電子加速器を備えた腫瘍治療システムがある。これらの治療システムを備えた防護室(バンカ)のシ
ールド効果は,放射RFに対する緩和条件を与える。また,治療中の患者の動きの制限は,静電気放電に
対する意図した使用に際して考慮する事項である。
E.4 電磁妨害レベルを低減するかどうかの決定
ME機器又はMEシステムの製造業者が,箇条8で規定した電磁現象によって生じる電磁妨害への暴露
を緩和すると決定したならば,その現象の合理的に予見可能な最高電磁妨害レベルを調整するために,緩
和条件による電磁妨害レベルを低減するかどうかを決定する必要がある。新しい電磁妨害レベルを決定し
た場合は,その現象に対するイミュニティ試験レベルを決定するために,この新しいレベルを使うことが
できる。緩和条件を適用できる可能性がある現象及び製造業者が,イミュニティ試験レベルを調整したい
と考えているそれぞれの現象について,評価する必要がある。
E.5 電磁妨害源の評価
ME機器又はMEシステムの製造業者が,意図する使用環境において,特別な電磁妨害源[E.1 b)及び
E.1 c)]が存在する可能性があるか,又は箇条8で規定していない電磁現象が存在する可能性がある[E.1
d) 1)]と決定したならば,次の手順は,それぞれの発生源の評価を実行することである。その評価は,合
理的に予見可能な最高電磁妨害レベルを決定する。
注1) 対応国際規格では,[E.1 b)]と記載してあるが,誤記のため,修正した。
評価手法は,次を含んでもよいが,これに限定しない。
− 一般的に受け入れられている適用規格で,かつ,その時点で最高水準にある規格の使用
− 既に使用実績のある医療機器によって,根拠が明らかで,その時点で最高水準であるとみなせるレベ
ルとの比較
− 専門家の意見の活用
− 臨床データを含む科学的研究結果の利用
− 実地調査結果を含む測定データの利用
IET(The Institution of Engineering and Technology)が発行した指針である“機能安全に対するEMC(Guide
on EMC for Functional Safety)[36]”には,実地調査又は測定に当たって適用できる有益な情報を含んでい
る。
単一の発生源の場合,電磁妨害レベルは,直接測定によって,又は製造業者のデータ若しくは公表され
ている他の情報を得ることによって取得可能である。ほかにも,電磁妨害を評価するための方法を記載し
た文書は存在する。その一例が,IEC/TS 61000-1-2 [8]及びIEC/TR 61000-2-5 [9]の6.16.3であり,安全

――――― [JIS T 0601-1-2 pdf 56] ―――――

54
T 0601-1-2 : 2018 (IEC 60601-1-2 : 2014)
性レベルを評価できることから,適合性レベルを理解するための根拠として利用できる。
単一の発生源(例えば,放射体)は,複数の電磁現象又は複数の周波数で,複数の電磁妨害レベルから
なる単一の現象を発生させる可能性がある。例えば,RF送信機がこれに該当する。同じ電磁妨害源に対
して決定されるが,異なる特性に基づいているような要因が組み合わされる可能性もある。
E.6 合理的に予見可能な最高電磁妨害レベル
“合理的に予見可能”という用語は,分別のある人が,その行動から予想できる結果であるという意味
として,一般的に受け入れられている。ME機器及びMEシステムに対して,これを適用する場合は,次
による。つまり,“高い確率で安全を達成することを目標とし,かつ,装置を特定の電磁環境(そこでは,
十分なイミュニティを備えていない。)にもち込む場合,その装置が安全に作動すると予想することは,
合理的ではない。”という考え方に従うことが望ましい。分別のある人から見れば,上記のような場合は,
予見可能であるとみなす可能性が高い。
“合理的に予見可能な最高”という用語は,日々(典型的に)さらされることが想定されるような値で
はない。誰かが,想像できるようなレベルも意味していない。日々想定されるレベルは,性能に対する基
準を考慮する場合に,適切であるとみなす。したがって,より高いレベルの電磁妨害強度が,安全性を確
立する基準として期待されている。その理由は,想定可能な範囲で広い範囲を扱っているが,合理的に予
見可能なものよりは高くはないからである。現在考えていることは,合理的に予見可能な最高レベルより
も高いレベルでの試験は,ME機器又はMEシステムの安全性を向上させることに寄与しそうにないとい
うことである。
これらのレベルを決定するに当たって,不確かさを考慮する必要がある。例えば,評価データの品質及
び同時に存在する可能性がある他の電磁現象の影響である。これを決定する必要がある各電磁現象に対し
て,イミュニティ試験レベルの決定プロセスを実行することが望ましい。
E.7 イミュニティ試験レベルの決定
基礎安全及び基本性能に対するイミュニティ試験レベルは,基礎安全及び基本性能を,高い確率で維持
できるように選択することが望ましい。リスクアセスメントと混同しないことが望ましい。イミュニティ
試験レベルは,さらされる可能性がある合理的に予見可能な最高電磁妨害レベルを示すポイントで選択す
ることが望ましい。これは,リスクアセスメントに従ったリスクの緩和から独立している。危害の発生確
率又は危害の重大さが小さいからといって,イミュニティ試験レベルを低減させることは,適切ではない。
E.1 d)については,特別な試験方法を考慮する必要がある。
最終的なイミュニティ試験レベルの有効桁数の丸め方については,8.9 c) 2)を参照。
注2) 読解の容易のために,該当する細別番号を追記した。
E.8 特殊環境におけるRF放射器
意図的なRF放射器の一例としてよく知られているものに,RF無線通信サービス機器がある。この機器
の普及によって,この副通則では,この種の機器から放出されるエミッションに対するイミュニティの要
求事項を,8.10で明確に規定している。さらに,意図しないで放射するRFエミッション源もある。特殊
環境となる可能性があるRF放射器は,例えば,ME機器又はMEシステムの意図する使用の間の最小分
離距離に依存するが,該当する例としては,近距離無線通信(NFC),電子商品監視システム(EAS),電
気手術器及び超短波療法機器が含まれる。

――――― [JIS T 0601-1-2 pdf 57] ―――――

                                                                                             55
T 0601-1-2 : 2018 (IEC 60601-1-2 : 2014)
E.9 緩和条件及び特別な条件の例
緩和条件及び特別な条件の例を,表E.1に示す。緩和条件及び特別な条件,並びに結果として得られた
イミュニティ試験レベルは,それぞれのME機器及び状況に固有のものである。これらは例示であり,推
奨又は要求であると誤解しないことが望ましい。
表E.1−特定の緩和条件及び環境条件の例
現象/基本規格 緩和条件又は特別な条件の例 調整したイミュニティ 注記
試験レベルの例
静電気放電(ESD) ±6 kV接触放電
実際(指定していない)の相対湿度が JIS C 61000-4-2の表A.1
JIS C 61000-4-2 ±2 kV,±4 kV,±8 kV
50 %を超え,かつ,導電性の床面での 及びIEC 61340規格群を
使用である。 気中放電 参照
静電気放電(ESD) X線画像診断機器の意図する使用 : X ±6 kV接触放電 患者の動きは,狭い範囲
JIS C 61000-4-2 ±2 kV,±4 kV,±8 kV
線照射中に,誰も(ただし,患者を除 に制限されていて,高圧
気中放電
く)ME機器に近寄ることはできない。 の静電荷を発生させるこ
とはない。
放射RF電磁界 最小シールド効果及び少なくとも20 1 V/m VG-95376-4
JIS C 61000-4-3 dBのフィルタ減衰量を備えた,RFシ MIL Std 285D
ールドされている環境で,シールド(例 JIS C 6011-3
えば,部屋,ハウジング,バンカ)を 例 電子加速器のバンカ
介して配置する全てのケーブルのフィ
ルタリングも含む。
無線及びテレビ送 MRI用MEシステムのRFシールドさ 3 V/m
信機からの電磁界 れた部屋
JIS C 61000-4-3
電気的ファストト 設置指示で,最小30 cmの分離距離で500 V JIS C 61000-4-4の附属書
ランジェント/バ 分離することを要求した信号線で,受 B
ースト 入れ検査で検証されている。
JIS C 61000-4-4
サージ 500 V
予測耐用期間を通じて,回路図及び重 JIS C 61000-4-5のB.3
JIS C 61000-4-5 要部品の一覧に記載したとおりに,内
部又は外部の雷防護手段を定期的に保
守管理している。
RF電磁界によって 1V
最小シールド効果及びフィルタ減衰量
誘発する伝導妨害 が,少なくとも20 dBのRFシールド
JIS C 61000-4-6 環境で,シールド環境に通じている全
てのケーブルのフィルタリングも含
む。
電源周波数磁界 試験は不要
制御された位置に配置した永久設置形
JIS C 61000-4-8 機器で,外部機器及び定格電源周波数
で大電流を流すケーブルを,近接した
場所で使わないこと,受容試験で検証
されていること,及び予測耐用期間を
通じて,定期検査を行うことを保証し
ている。
電圧ディップ及び 無停電電源装置(UPS)が,必要なエ試験は不要 UPSだけに試験を適用す
停電 ネルギーを供給するために十分に高速 る。
JIS C 61000-4-11 で動作し,かつ,十分な容量を備えて
いる。

――――― [JIS T 0601-1-2 pdf 58] ―――――

56
T 0601-1-2 : 2018 (IEC 60601-1-2 : 2014)
附属書F
(参考)
電磁妨害に関する基礎安全及び基本性能に対するリスクマネジメント
F.1 一般
JIS T 14971:2012には,次の要求事項を含む。
− リスクマネジメントの一般要求事項(箇条3)
− リスク分析(箇条4)
− リスク評価(箇条5)
− リスクコントロール(箇条6)
− 残留リスクの全体的な受容可能性の評価(箇条7)
− リスクマネジメント報告書(箇条8)
− 製造及び製造後情報(箇条9)
これ以下では,ME機器又はMEシステムの電磁妨害の影響に関わる事項について,JIS T 14971:2012
で規定した上記の内容ごとに,順番に議論する。読みやすくするために,参照先も併せて記載する。図F.1
は,リスクマネジメントプロセスにおける,この副通則の機能を要約している。
注記 この附属書の中に限って,“安全”という用語は,JIS T 14971で定義しているとおり,受容で
きないリスクがないという意味で使う。基礎安全及び基本性能は,ここでいう安全の定義に含
まれる。
JIS T 0601-1-2 JIS T 14971 JIS T 0601-1-2
リスクマネジメント
電磁妨害に関わるリスク分析(F.3)
電磁妨害に関わるリスク評価(F.4)
電撃に関わるリスク
電磁環境(箇条8) 電磁妨害に関わるリスク
コントロール(F.5)
火事に関わるリスク 例えば,次に示す検証及び妥当性確認
EMC試験方法(箇条8)
方法を使う。
リ − 実証
EMC設計技法 機械的なリスク − チェックリスト

(ハードウェア及びソフ ク − 検査
マ − レビュー及び評価
トウェア)(附属書F) − 個別レビュー及び評価
電磁妨害に起因する ネ
ジ − 監査
リスク − 標準化されていない確認及び試験

緩和方法(附属書F) ン − 個々及び/又は統合したハードウ
ト ェア試験
気象条件に起因する フ − コンピュータシミュレーション
− ボンディング − 電磁妨害試験
リスク ァ
− フィルタリング イ
− シールド ル 電磁妨害に関わるリスクの
− ガルバニック絶縁 受容可能性(F.6)
誤使用に起因するリスク
− 過電圧保護 電磁妨害に関わるリスク
− その他 マネジメント報告書(F.7)
それ以外の原因による
リスク 電磁妨害に関わる製造及び
製造後情報(F.8)
図F.1−リスクマネジメントプロセスにおけるこの副通則の機能

――――― [JIS T 0601-1-2 pdf 59] ―――――

                                                                                             57
T 0601-1-2 : 2018 (IEC 60601-1-2 : 2014)
リスクの受容性判断 特に考慮するまでも JIS T 14971に従って評価が 広く受容可能な
基準の例 なく,受容できない 必要な領域 領域
領域
一年間に,一人が死亡する 10-1 10-2 10-3 10-4 10-5 10-6 10-7
確率a)
他の検証及び妥当性確認方法で,次を含むが,これらに限定
はしない。
− 実証
− チェックリスト
受容できるリスクレベル
− 検査
を達成するために用いる EMC規格を適用して
− レビュー及び評価
方法の例 試験する。
− 個別レビュー及び評価
− 監査
− 標準化されていない確認及び試験
− 個々又は統合したハードウェア試験
− 妥当性が確認されているコンピュータシミュレーション
− その他の方法
注記 “リスクの受容性判断基準の例”の中央部分(“JIS T 14971に従って評価が必要な領域”という記載)は,対応
国際規格に合わせて記載したが,“合理的に実施可能なできるだけ低い領域にする手法(ALARP)”に置き換え
て読むと理解しやすい。
注a) 対応国際規格では,“リスク”と記載しているが,文脈を考慮して修正した。
図F.2−リスクレベルの信頼性を改善させるための検証方法の例
リスクマネジメントファイルには,次を含めるか,又は参照してもよい。
− 技術的な根拠,計算及びシミュレーション
− 試験計画を含む検証計画及び妥当性確認計画
− 試験結果を含む検証結果及び妥当性確認結果
安全を達成するために,より高いイミュニティ試験レベルで試験すればよいと,単純に考えてはならな
いことに注意する。
図F.1は,リスクマネジメントプロセスの中で,この副通則をどのように当てはめればよいかを示して
いる。
図F.2は,リスクレベルの信頼性を改善することが可能な,追加の検証方法をどのように使うかを示し
ている。図F.2中の数字は,根拠に基づく数値ではないが,受容できるリスクが,実施できるあらゆるEMC
試験だけで実証できるわけではないという事実を示すために,ここで用いた。
設計及び製造に関わる検証及び妥当性確認方法(EMC試験以外)を考慮する必要がある。ただし,特
別な考慮によって,非常に高いリスクレベルを受容できると判断する場合を除く。
リスクマネジメントプロセスを正しく適用しても,著しい経済的又は試験の負担を生じさせることには
ならないと考える。事実,市場で発生した問題の是正に必要な費用は,安全な製品を設計及び製造する上
で必要な費用と比べて,著しく高くなる可能性がある。

――――― [JIS T 0601-1-2 pdf 60] ―――――

次のページ PDF 61

JIS T 0601-1-2:2018の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 60601-1-2:2014(IDT)

JIS T 0601-1-2:2018の国際規格 ICS 分類一覧

JIS T 0601-1-2:2018の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称