JIS T 0601-1-2:2018 医用電気機器―第1-2部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項―副通則:電磁妨害―要求事項及び試験 | ページ 13

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T 0601-1-2 : 2018 (IEC 60601-1-2 : 2014)
F.2 リスクマネジメントに対する一般要求事項として規定されている内容
JIS T 14971:2012の3.1及び図1は,リスクマネジメントプロセスの主な手順を要約している。JIS T
14971:2012の他の細分箇条では,次についても規定している。
− 経営者の責任
− 要員の資格認定
− リスクマネジメント計画
− リスクマネジメントファイル3)
注3) 対応国際規格では,“リスクマネジメント”となっているが,誤記と思われる。JIS T 14971:2012
の該当部分に合わせて,“リスクマネジメントファイル”に修正した。
これらの要求事項の全てを,ME機器及びMEシステムの基礎安全及び基本性能の両方について,電磁
妨害の影響に関わる事項に対して,完全に適用する。
追加の情報が必要な場合は,IET 2008のガイダンス文書である“Guide on EMC for Functional Safety [36]”
の0.80.10,3.2及び5.2,並びにIEC/TS 61000-1-2:2008 [8]の5.4,5.5及び附属書Fを参照してもよい。
F.3 リスク分析
JIS T 14971:2012の4.1では,リスク分析のプロセスを記載しており,リスク分析の具体的な手法を示し
た附属書Gを参照している。
どのリスク分析の技法においても,単独で適用することが,適切であるとは限らない。リスク分析は,
少なくとも一つの演えき(繹)的又はトップダウン方式[例えば,故障の木解析(フォルトツリー)]を含
み,かつ,少なくとも一つの帰納的又はボトムアップ方式[例えば,FMEA(故障モード及びその影響の
分析)]を含むことが望ましい。さらに,実績のある多くの方法(例えば,デルファイ法)の一つを使って,
フィールドサービスエンジニア,想定する操作者などを含む広範囲にわたる人々(設計者だけではなく)
を巻き込んで行うブレーンストーミング法を含めることが望ましい。操作者の相互作用が懸念される場合
は,ヒューマンタスク分析法及び同様の手法を使うことが望ましい。
リスク分析手法を機械的に,又は型にはまったやり方で適用することは,避けることが望ましい。リス
クの専門家によれば,リスク分析を上手く実施する場合は,常に,経験及び想像を働かせる必要があると
いわれている。
適用するリスク分析手法の中で,電磁妨害の潜在的な影響を含めて書かれているものはないので,この
附属書の目的のために,リスク分析手法を適用する場合は,EMCの経験を常に必要としている。
IET 2008の第3章及び第4章では,追加の指針及び多くの有益なリスク分析技法に対する参照先を与え
ている。
この副通則に適合させるために,あらゆるリスク分析手法を適用する場合に,ME機器又はMEシステ
ムが,その予測耐用期間にさらされる可能性がある,合理的に予見可能な電磁環境の潜在的な影響を考慮
することが望ましい。この副通則が,電磁妨害に対するイミュニティ試験を規定している一方で,リスク
分析では,意図する使用の電磁環境の中で,ME機器又はMEシステムの予測耐用期間に,基礎安全及び
基本性能に適用できる追加の電磁現象,試験及び規格を考慮することが望ましい。表F.1に記載した,追
加の現象の例を考慮することが望ましい。
次に,考慮することが望ましい追加の規格及び試験を示す。
− IEC 61000-3-11 [10]
− IEC 61000-3-12 [11]

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− IEC 61000-4-13 [12]
− MIL-STD-461G [38]
− EUROCAE ED-14G [39]又はRTCA DO-160G [40]
− 附属書Hに記載した,患者結合ケーブルエミッション
− 低周波磁界エミッション
− 近接磁界イミュニティ。例えば,ISO 11452-8 [21]。
− 近接電磁界イミュニティ。例えば,ISO 11452-9.2 [22]。
− 表9に記載していない,新しいRF通信機器技術の周波数帯域
IEC/TS 61000-1-2:2008 [8]の箇条6,IET 2008の第1章及び第2章,並びにTGN 47 [33]に,追加の情報
がある。
表F.1−リスク分析で考慮することが望ましい電磁現象の例
電磁現象 リスク分析で考慮することが望ましい事項
伝導性低周波現象 ・ 高調波及び次数間高調波
・ 信号電圧
・ 電圧変動
・ 電圧ディップ及び停電
・ 電圧非平衡
・ 電源周波数変動
・ 誘導低周波電圧
・ 交流電源網中の直流
放射低周波電磁界現象 ・ 磁界a)
・ 電界
伝導性高周波現象 ・ 直接結合又は誘導性の,連続電圧又は電流
・ 単向性過渡現象b)
・ 振動性過渡現象b)
放射高周波電磁界現象 ・ 磁界
・ 電界
・ 電磁界
− 連続波
− 過渡現象c)
静電気放電現象(ESD) ・ 人間と機械との間のインタフェース
意図的な電磁放射d)
注a) 連続又は過渡現象
b) 単一又は繰返し(バースト)
c) 単一又は繰返し
d) 特別な条件の場合に考慮する。
動作中の電気手術器の近くで使うことを意図したME機器及びMEシステムは,電気手術器からの伝導
性及び放射エミッション(具体的には,次に示す全て)を考慮することが,特に重要である。
a) 患者を介して伝導するエネルギー
b) 電気手術器の附属品ケーブルから放射するエミッション
一般的に,これらのエミッションは,高い強度で,かつ,広い周波数帯域にわたって存在する。その結
果,JIS C 61000-4-3に従った試験方法は,これらのエミッションに対するイミュニティを保証するための
試験方法として,十分であるとはいえない。
上記の細別a)は,電気手術器を使って処置を行う患者に,直接接続することを意図したME機器及び

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MEシステムに対する事項である。上記の細別b)は,電気手術器の附属品ケーブルが,他のME機器又は
MEシステムの近くにあるときの事項である。電気手術器の附属品ケーブルは,3 m又は4.6 mのいずれか
の長さであり,多いのは3 mである。これらのケーブルは,滅菌されていて,かつ,電気手術器と無菌状
態にある術野との間で,距離を離す必要がある。このケーブルが,他のME機器又はMEシステムと相互
作用する可能性がある場合,電気手術器の附属品ケーブルは,無菌状態の術野に約1 m2 mを残して,
残りの部分を無菌状態の術野から1 m2 mの距離をとって離す。
電気手術器からのエミッションによる影響は,試験によって緩和することを許容している。JIS T
0601-2-2の附属書BB及びIEC 60601-2-27 [3]に,試験方法を記載している。
リスク分析手法を用いる際には,ME機器又はMEシステムが,その予測耐用期間の間にさらされるこ
とが,合理的に予見可能な物理的,気候的及び使用環境についても考慮することが望ましい。
この理由は,電磁妨害が存在する環境で,意図したとおりに機能するための,ME機器又はMEシステ
ムの能力が,物理的及び気象環境にさらされることによって,並びに操作者及び第三者の行動によって,
低下する可能性があるためである。
極端な温度,供給電圧,衝撃,振動,負荷,物理的な力などは,フィルタ,シールド及び他の電磁放射
を緩和させる手段の能力を低下させることで,イミュニティを低下させる可能性がある。例えば,Beckら
の論文[35]では,合理的に予見可能な,実際の生活条件における周囲温度及び部品の定格範囲内での負荷
電流という条件下で,EMIフィルタ減衰量が,20 dBまで低下する可能性があるという試験結果について,
報告している。
イミュニティの能力は,経年的にも低下する。経年劣化の原因として,結露,生体の体液を含む液体の
こぼれ及び噴霧,かびの生育,粒子状物質,ほこり,洗浄(例えば,ワイヤブラシ,溶剤)並びに保守が
ある。さらに,制御器,扉及びアクセスパネルの開閉,温度サイクルなどの複数の操作による損傷も,経
年劣化の原因として考慮の対象となる。例えば,通常の経年劣化に関わる問題として,金属接合部での腐
食があり,これは,EMIフィルタの効果及びシールド効果を低下させると同時に,接地接続を劣化させて,
広い範囲にわたって問題を生じさせる可能性がある4)。
注4) 参考文献[32]を参照
通則の11.6では,液体及び粒子状物質への暴露について,多くの要求事項を規定している。
予測耐用期間を通じて,合理的に予見可能な物理的,気候及び使用環境を特定する際には,IEC/TS
61000-1-2:2008 [8]の箇条5及び附属書B,並びに機能安全に対するEMC指針(Guide on EMC for Functional
Safety)[36]の第1章及び第2章も参照。
予測耐用期間を通じて安全性を維持するために,適切な設計をしていることの検証を促進させるために,
ME機器又はMEシステムの合理的に予見可能な稼動年数を模擬する試験(例えば,加速試験)を推奨す
る。そのような試験を実施する場合は,さらに,試験の前後で,ME機器又はMEシステムのEMC特性
を評価していることが望ましい。これは,試験の結果として,リスクが,受容できないレベルまで上昇す
る程度まで,EMC特性が,低下していないことを検証するためである。試験の間に,EMC特性を評価す
ることが適切な場合もある。
一つ以上の故障が,使用及び/又は誤使用と同時に起こる可能性があるという事実を考慮して,ME機
器又はMEシステムのエミッション及びイミュニティに関わる,合理的に予見可能な故障及び使用及び/
又は誤使用の影響を,リスク分析で考慮することが望ましい。
リスク分析では,電磁妨害,物理的現象及び気象現象,故障,並びに操作者の行動を含む,合理的に予
見可能な同時に発生する事象及び現象を考慮することが望ましい。

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EMC指針(Guide on EMC for Functional Safety)[36]の4.3.7には,より多くの情報がある。
電磁妨害が存在する場所で,ME機器又はMEシステムが,要求どおりに機能するための能力に影響を
与える可能性がある故障及び使用及び/又は誤使用の例は,次のとおりである。
− 乾燥した接合部又は短絡回路
− 接続部分での断続的な接触
− 欠陥がある及び/又は許容誤差範囲を超える電子部品
− シールド又はRF結合部分に関連する,不適切な緩み又は留め具の欠損
− 導電性ガスケットの損傷又は欠損
− サージ保護装置の故障。例えば,磨耗による。
− シールド扉又はカバーが開いたままになっている。
− 不適切なケーブルを使用した設置又は改造
用いたリスク分析手法では,電磁妨害が,基礎安全又は基本性能に影響を与えるような信号の劣化,信
号のひずみ又は信号の故障(次を含む。)を発生させる可能性があるという事実を考慮することが望ましい。
− ME機器又はMEシステムの一つのサブシステムの防護が不十分な各ポートに生じる,信号の劣化,
ひずみ又は故障
− 一つの部品のポートの二つ以上又は全てのポートに,同時に生じる,類似又は異なる信号の劣化,ひ
ずみ又は故障
− ME機器又はMEシステムの二つ以上の異なる部品の防護が不十分な複数のポートに,同時に生じる,
類似又は異なる信号の劣化,ひずみ又は故障
他の例を適用してもよい。複数のポートに同時に現れる上記のような信号は,安全関連電子技術の信頼
性を改善させるために,冗長的な手段を使った場合に,重要な検討対象となる。断続的な接触状態及び断
続的な回路の短絡並びに開放が,信号の劣化,ひずみ又は故障を生じさせる場合もあり,予測耐用期間を
通じて,物理的環境によって重大な影響を受ける場合もある。
リスク分析は,次を含む,リセット,ラッチアップ及びループ化を考慮することが望ましい。
− プログラム可能な素子のリセット
− 半導体素子(例えば,トランジスタ,IC)のラッチアップ
− プログラム可能な素子のソフトウェア及びハードウェアのループ化又は機能停止
次は,同時に起こる可能性があるという現象の例である。
− 高い周囲温度
− 振動
− 交流電源からのひずんだ電圧波形
− RF電磁界
− シールド用ガスケットの腐食
− 不適切なケーブルの使用
− 静電気放電事象
EMC指針(Guide on EMC for Functional Safety)[36]の第3章及び第4章では,追加の情報を与えている。
通常,これらの事項は,同時に発生する現象の模擬試験よりは,むしろ設計によって扱うことを期待して
いる。
JIS T 14971:2012の箇条4で規定した次の細分箇条の要求事項に従って,電磁妨害を十分に考慮するこ
とが望ましい。

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− 意図する使用及び医療機器の安全に関する特質の明確化(4.2)
− ハザードの特定(4.3)
− 個々の危険状態に対するリスクの推定(4.4)
EMC指針(Guide on EMC for Functional Safety)[36]の第3章,4.1及び4.2には,追加の情報がある。
F.4 リスク評価
JIS T 14971:2012の箇条5では,リスク評価のプロセスを記載している。
F.3で議論したME機器又はMEシステムの予測耐用期間にわたって,電磁妨害が,安全対策に干渉し
ないことを保証することに関連した特別な事項について,このプロセスで考慮することが望ましい。
EMC指針(Guide on EMC for Functional Safety)[36]の3.43.8及び4.2には,より多くの情報がある。
F.5 リスクコントロール
F.5.1 リスクコントロール手段の分析
JIS T 14971:2012の6.2では,リスクを低減させる必要があるときに用いる,リスクコントロール手段の
分析プロセスを記載している。
電磁妨害によって生じる可能性があるリスクを低減させる方法は,多数ある。EMC指針(Guide on EMC
for Functional Safety)[36]の4.34.8及び第6章,並びにIEC/TS 61000-1-2:2008 [8]の附属書Bでは,リス
クコントロール手段について,より多くの情報を与えている。
注記1 例えば,シールド及びフィルタによって電磁干渉を緩和させることに加えて,電磁妨害によ
るリスクを低減させるために,しばしば使われているハードウェア又はソフトウェアを用い
た多くのエラー回復及びフェールセーフ技法がある。これらの技法は,電磁環境において,
最高電磁妨害レベルを予想することが困難な場合,又は電磁イミュニティにおける故障の影
響若しくはME機器又はMEシステムの予測耐用期間にわたっての緩和の影響を予想するこ
とが困難な場合に,非常に強力となる。
注記2 リスク低減を適切に適用することが,ME機器又はMEシステムの全体的なコストに重大な
影響を与えることはないと考える。
F.5.2 リスクコントロール手段の実施
JIS T 14971:2012の6.3では,リスクを低減させる必要があるときに用いる,リスクコントロール手段の
実施に関わるプロセスを記載している。
F.5.1に記載したリスクコントロール手段を,検証又は妥当性確認するための手法は,多くある。これら
の手法は,次を含むが,限定しない。
− 実証
− チェックリスト
− 調査
− レビュー及び評価
− 独立したレビュー
− 監査(品質管理の一部として)
− 標準化されていない確認及び試験
− 個々の,及び/又は統合したハードウェア試験
− 妥当性が確認されているコンピュータモデリング

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JIS T 0601-1-2:2018の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 60601-1-2:2014(IDT)

JIS T 0601-1-2:2018の国際規格 ICS 分類一覧

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