JIS T 14971:2020 医療機器―リスクマネジメントの医療機器への適用 | ページ 4

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T 14971 : 2020 (ISO 14971 : 2019)
れに加えて,リスクマネジメントプロセスの要素を取り込んだ医療機器の規格(例えば,電磁
両立性,ユーザビリティ,生物学的評価など)もある。リスクマネジメントにおけるJIS及び
国際規格の役割についての情報は,TR T 24971[9]を参照。
選択したリスクコントロール手段は,リスクマネジメントファイルに記録する。
リスクコントロール手段を選択するときに,製造業者は,リスク低減が現実的でないと判断した場合は,
残留リスクについてベネフィット·リスク分析を実施する(7.4に進む。)。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

7.2 リスクコントロール手段の実施

  製造業者は,7.1で選択したリスクコントロール手段を実施する。
各リスクコントロール手段の実施を検証し,その検証をリスクマネジメントファイルに記録する。
注記1 リスクコントロール手段の実施の検証は,品質マネジメントシステムの設計·開発の検証又は
プロセスの適格性確認の一部として実施することが可能である。
リスクコントロール手段の有効性を検証する。この検証の結果をリスクマネジメントファイルに記録す
る。
注記2 有効性の検証は,品質マネジメントシステムの設計·開発のバリデーションの一部として実施
することが可能であり,ユーザーを伴う試験を含めることが可能である。A.2.7.2参照。
注記3 有効性の検証は,リスク低減の有効性と設計·開発の検証又はプロセスの適格性確認の結果と
の関係が分かっている場合には,設計·開発の検証又はプロセスの適格性確認の一部としても
実施可能である。
例1 薬剤注入器の投与量の精度などの,特定の性能特性の設計検証は,薬剤の安全な投与
を保証するリスクコントロール手段の有効性の検証に活用可能である。
例2 プロセスの適格性確認は,製造のアウトプットのばらつきに起因するリスクに関する
リスクコントロール手段の有効性の検証に活用可能である。
注記4 設計·開発の検証及びバリデーションに関する詳細情報は,JIS Q 13485[5]を参照。更なる指針
については,TR T 24971[9]も参照。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

7.3 残留リスクの評価

  製造業者は,リスクコントロール手段の実施後の残留リスクを,リスクマネジメント計画で定義したリ
スクの受容可能性についての判断基準を用いて評価する。この評価の結果は,リスクマネジメントファイ
ルに記録する。
残留リスクが,この判断基準を用いて受容可能と判断されない場合は,更にリスクコントロール手段を
検討する(7.1に戻る。)。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

――――― [JIS T 14971 pdf 16] ―――――

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7.4 ベネフィット・リスク分析

  リスクマネジメント計画で確立した判断基準に照らし残留リスクが受容できないと判断し,かつ,それ
以上のリスクコントロールも現実的ではない場合,製造業者は,意図する使用のベネフィットが残留リス
クを上回るか否かを判断するために,データ及び文献を収集しレビューしてもよい。
この証拠から,ベネフィットがこの残留リスクを上回るという結論が裏付けられない場合は,製造業者
は,医療機器又はその意図する使用を変更することを検討してもよい(5.2に戻る。)。そうでない場合は,
このリスクは受容できないものとして残る。
ベネフィットが残留リスクを上回る場合は,7.5に進む。
ベネフィット·リスク分析の結果は,リスクマネジメントファイルに記録する。
注記 ベネフィット·リスク分析を行うための指針については,TR T 24971[9]を参照。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

7.5 リスクコントロール手段によって発生したリスク

  製造業者は,リスクコントロール手段の影響を次の点に関してレビューする。
− 新たなハザード又は危険状態が発生しないかどうか
− 既に特定した危険状態について推定したリスクがリスクコントロール手段の導入によって変わらな
いかどうか
新たに発生,又は増加した全てのリスクには,5.57.4を適用する。
このレビューの結果は,リスクマネジメントファイルに記録する。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

7.6 リスクコントロールの完了

  製造業者は,特定した全ての危険状態から発生するリスクを検討しており,全てのリスクコントロール
活動が完了されることを確実にするために,リスクコントロール活動をレビューする。
このレビューの結果は,リスクマネジメントファイルに記録する。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

8 全体的な残留リスクの評価

  全てのリスクコントロール手段が実施及び検証された後,製造業者は,全ての残留リスクの寄与を考慮
し,意図する使用のベネフィットとの関連において,リスクマネジメント計画で確立した全体的な残留リ
スクの受容可能性についての評価方法及び判断基準を用いて,医療機器の全体的な残留リスクを評価する
[4.4 e)参照]。
全体的な残留リスクを受容可能と判断した場合,製造業者は,重大な残留リスクをユーザーに通知し,
残留リスクを開示するために必要な情報を附属資料に記載する。
注記1 重大な残留リスクを開示する根拠をA.2.8に示す。

――――― [JIS T 14971 pdf 17] ―――――

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注記2 全体的な残留リスクの評価及び残留リスクの開示についての指針は,TR T 24971[9]を参照。
意図する使用のベネフィットに関連して,全体的な残留リスクを受容できないと判断した場合は,製造
業者は,追加のリスクコントロール手段を実施すること(7.1に戻る。),又は医療機器若しくはその意図す
る使用を変更すること(5.2に戻る。)を検討してもよい。そうでない場合は,全体的な残留リスクは受容
できないものとして残る。
全体的な残留リスクの評価結果は,リスクマネジメントファイルに記録する。
適合性は,リスクマネジメントファイル及び附属資料の調査によって確認する。

9 リスクマネジメントのレビュー

  製造業者は,医療機器の市場出荷に先立ってリスクマネジメント計画の実行についてレビューする。こ
のレビューでは,少なくとも次を確認する。
− リスクマネジメント計画が適切に実施されている。
− 全体的な残留リスクが受容可能である。
− 製造及び製造後の段階において,情報を収集しレビューする適切な方法が定められている。
このレビューの結果はリスクマネジメント報告書に記録して維持し,リスクマネジメントファイルに含
める。
そのレビューの責任者には,リスクマネジメント計画で指定した適切な権限をもつ者を選ばなければな
らない[4.4 b)参照]。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

10 製造及び製造後の活動

10.1 一般

  製造業者は,製造及び製造後の段階において,その医療機器に関連する情報を積極的に収集及びレビュ
ーするシステムを確立し,文書化し,維持する。このシステムを確立する場合には,製造業者は,情報を
収集し処理する適切な方法を検討する。
注記1 JIS Q 13485:2018[5]の7.3.3,8.2.1,8.4及び8.5も参照。
注記2 製造及び製造後の活動についての指針は,TR T 24971[9]参照。
適合性は,適切な文書の調査によって確認する。

10.2 情報の収集

  製造業者は,該当する場合,次の情報を収集する。
a) 製造中及び製造プロセスの監視から得られる情報
b) ユーザーからの情報
c) 医療機器の据付け,使用及び保守の責任者からの情報
d) サプライチェーンからの情報

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e) 一般的に入手可能な情報
f) 一般に認められた最新の技術水準に関する情報
注記 一般に認められた最新の技術水準に関する情報には,新規又は改正された規格,対象とする医療
機器の適用に特有な公表データ,代替えの医療機器及び/又は治療方法の利用可能性その他の情
報が含まれる場合がある(TR T 24971[9]も参照)。
製造業者は,市販されている類似の医療機器及びその他の類似の製品についての一般に利用可能な情報
についても,積極的に収集し,レビューする必要があるかを検討する。
適合性は,適切な文書の調査によって確認する。

10.3 情報のレビュー

  製造業者は,収集した情報を,安全との関連の有無に対して,特に次についてレビューする。
− 以前に認識されていなかったハザード又は危険状態が存在するかどうか
− 危険状態によって発生したリスクが,もはや受容できないかどうか
− 全体的な残留リスクが,意図する使用のベネフィットに関連して,もはや受容できないかどうか
− 一般に認められた最新の技術水準に変更があるかどうか
レビューの結果は,リスクマネジメントファイルに記録する。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

10.4 処置

  収集した情報が安全に関連すると判断した場合には,次による。
1) 個別の医療機器に関して
− 製造業者は,リスクマネジメントファイルをレビューして,リスクの再アセスメント及び/又は新し
いリスクのアセスメントが必要かどうかを決定する。
− 残留リスクがもはや受容可能でなくなった場合には,既に実施したリスクコントロール手段への影響
を評価する。さらに,医療機器の変更のためのインプットとして検討することが望ましい。
− 製造業者は,市場にある医療機器に関する処置の必要性を検討することが望ましい。
− 全ての決定及び処置をリスクマネジメントファイルに記録する。
2) リスクマネジメントプロセスに関して
− 製造業者は,既に実施したリスクマネジメント活動への影響を評価する。
− この評価の結果は,トップマネジメントによるリスクマネジメントプロセスの適切性のレビューへの
インプットとして検討する(4.2参照)。
注記 製造後監視の幾つかの側面は,一部の国の規制対象となっている。そのような場合,追加対策が
要求されることがある(例えば,前向き製造後評価)。
適合性は,リスクマネジメントファイル及び他の適切な文書の調査によって確認する。

――――― [JIS T 14971 pdf 19] ―――――

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附属書A
(参考)
要求事項の根拠
A.1 一般
このJIS T 14971の基となったISO 14971の作成では,次のような経緯があった。
ISO/TC 210-IEC/SC 62A合同作業グループ1(JWG1)(リスクマネジメントの医療機器への適用)は,
この規格に盛り込んだ要求事項を解説するために,この附属書を作成した。この規格の使用経験を基に今
後改正するに当たって,製造業者,規制当局及び医療従事者にとってより有用な規格とするためにこの附
属書を使用することが可能である。
ISO/TC 210及びIEC/SC 62Aは,リスクマネジメントについての取組を統合し,リスクマネジメントを
医療機器へ適用するための規格を開発するためにJWG1を編成した。リスクマネジメントの国際規格の作
成開始に当たって,医療機器のリスクとベネフィットとのバランスをとることはもちろん,リスク評価の
プロセスなどをリスクマネジメントの不可欠な特徴と位置付けることにした。製造業者,規制当局及び医
療従事者は,医療機器の“絶対安全”の達成は不可能であるということを認識してきた。さらに製品の安
全規格において,医療機器の多様性の増加及びその適用に起因するリスクを全て明らかにすることは不可
能である。これら事実の認識,及び医療機器のライフサイクルにおけるリスクをマネジメントする必要か
ら,医療機器の安全を積極的に改善するためのツールとしてISO 14971を作成するに至った。この規格の
第1版は,2000年に発行された。
ISO 14971の第2版は,リスクマネジメントの適用及びハザードと危険状態との関係についての指針を
追加する必要性も考慮して,2007年に作成し発行された。本文での変更は,製造後の監視をリスクマネジ
メント計画に含める要求事項の追加,トレーサビリティの要求事項をリスクマネジメント報告書から削除
するなど,軽微なものであった。
2010年の定期見直しによって,幾つかのトピックスについて追加の指針が必要であることが明らかにな
った。指針に対する軽微な変更であっても,規格の改訂が必要になるので,国際標準報告書ISO/TR 24971[9]
を開発することが決定された。この国際標準報告書の第1版は,2013年に発行された。
ISO 14971の第3版は,規定要求事項を明確にして,特に全体的な残留リスクの評価,リスクマネジメ
ントのレビュー及び報告書並びに製造及び製造後の情報に関する箇条について,更に細かく規定するため
に開発された。この明確化は,ISO 14971の2016年の定期見直しにおいて説明が要求されたこと,規制当
局からより厳密な要求事項を求められていることから,必要があると考えられた。医療機器を使用するこ
とによって期待されるベネフィット及び(全体的な)残留リスクとそれらのベネフィットとのバランスに
さらに力点が置かれてた。ISO 14971に規定するプロセスは,例えば,生体適合性,データ及びシステム
のセキュリティ,電気,動く部分,放射線,ユーザビリティなどの,医療機器に関連する全てのタイプの
ハザード及びリスクに適用可能であると説明された。参考情報を記載した附属書の幾つかは,この規格か
ら,同時に改訂している指針文書のISO/TR 24971[9]に移動された。これによって,指針文書を,規格の改
訂とは独立して,より頻繁に改正することが可能となる。

――――― [JIS T 14971 pdf 20] ―――――

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JIS T 14971:2020の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 14971:2019(IDT)

JIS T 14971:2020の国際規格 ICS 分類一覧