JIS T 14971:2020 医療機器―リスクマネジメントの医療機器への適用 | ページ 3

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T 14971 : 2020 (ISO 14971 : 2019)

4.2 経営者の責任

  トップマネジメントは,リスクマネジメントプロセスに対するコミットメントの証拠を次によって示す。
− 十分な資源の提供
− リスクマネジメントの力量がある要員(4.3参照)の割当て
トップマネジメントは,リスクの受容可能性についての判断基準を確立するための方針を定義し,文書
化する。この方針は,判断基準が適用される国又は地域の規制及び関連のあるJIS又は国際規格に基づく
ことを確実にするための枠組みを提供し,並びに一般に認められた最新の技術水準及び既知である利害関
係者の懸念などの利用可能な情報を考慮する。
注記1 リスクの受容可能性についての判断基準を確立する製造業者の方針によってリスクコントロ
ールのアプローチ(リスクを合理的に実施可能な範囲で低減する,リスクを合理的に達成可能
な限り低減する,リスクをベネフィット·リスク比に悪影響を与えることなしに可能な限り低
減する)は,定義可能である。そのような方針を定義するための指針は,TR T 24971[9]を参照。
トップマネジメントは,リスクマネジメントプロセスの継続的な有効性を保証するため,あらかじめ計
画した間隔で,リスクマネジメントプロセスの適切性をレビューし,あらゆる決定及び講じた処置を文書
化する。製造業者が品質マネジメントシステムを構築している場合には,このレビューを品質マネジメン
トシステムのレビューの一環としてもよい。
注記2 製造及び製造後の情報をレビューした結果は,リスクマネジメントプロセスの適切性のレビュ
ーのインプットとすることが可能である。
注記3 この細分箇条で規定する文書は,製造業者の品質マネジメントシステムによって作成した文書
の中に含めることが可能である。また,これらの文書は,リスクマネジメントファイルにおい
て参照可能である。
適合性は,適切な文書の調査によって確認する。

4.3 要員の力量

  リスクマネジメント作業を実施する人は,割り当てられた作業に対して適切な,教育,訓練,技能及び
経験に基づいた力量がなければならない。その要員は,適切な場合,特定の医療機器(又は類似の医療機
器)及びその使用,関連技術又は採用したリスクマネジメント技法についての知識及び経験をもたなけれ
ばならない。適切な記録を維持する。
注記 リスクマネジメント作業は,幾つかの部門の代表がそれぞれ専門知識を提供することによって実
施可能である。
適合性は,適切な記録の調査によって確認する。

4.4 リスクマネジメント計画

  リスクマネジメント活動を計画する。検討対象となる特定の医療機器について,製造業者は,リスクマ
ネジメントプロセスに従ってリスクマネジメント計画を確立し,文書化する。リスクマネジメント計画は,
リスクマネジメントファイルの一部とする。
この計画には,少なくとも次を含める。
a) 計画したリスクマネジメント活動の適用範囲,医療機器の特定及び説明,並びに計画の各要素が適用
されるライフサイクルの段階

――――― [JIS T 14971 pdf 11] ―――――

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b) 責任及び権限の割当て
c) リスクマネジメント活動のレビューについての要求事項
d) リスクの受容可能性についての判断基準(受容可能なリスクを決定するための製造業者の方針に基づ
くもので,危害の発生確率が推定不可能な場合にはリスクを受容するための判断基準も含む。)
注記1 リスクの受容可能性についての判断基準は,リスクマネジメントプロセスを本質的に有効
にするために極めて重要である。製造業者は,各々のリスクマネジメント計画に対して,
個々の医療機器に適切なリスクの受容可能性の判断基準を確立する必要がある。
e) 全体的な残留リスクを評価する方法,及びリスクが受容可能かどうかを判断するための製造業者の方
針に基づく全体的な残留リスクの受容可能性の判断基準
注記2 全体的な残留リスクを評価する方法には,対象とする医療機器及び既に市販されている類
似の医療機器についてのデータ及び文献を収集し,レビューすることが含まれる。また,
適用分野及び臨床の専門知識をもつ専門家の職域を横断したチームによる判断を伴う場合
がある。
f) リスクコントロール手段の実施及びその有効性についての検証の活動
g) 関連のある製造及び製造後情報の収集並びにレビューに関する活動
必ずしも全ての部分の計画を同時に作成する必要はない。計画又はその一部を継続して策定可能である。
注記3 リスクマネジメント計画の策定及びリスクの受容可能性の判断基準の確立の指針については,
TR T 24971[9]を参照。
注記4 対応国際規格のNOTE 4は許容事項のため,本文に移動した。
個別の医療機器のライフサイクルにおいて計画を変更した場合は,リスクマネジメントファイルにその
変更を記録する。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

4.5 リスクマネジメントファイル

  対象とする特定の医療機器について,製造業者はリスクマネジメントファイルを作成し,維持する。こ
の規格に含む他の箇条の要求事項に加え,リスクマネジメントファイルは,特定した各ハザードについて,
次の活動に対してのトレーサビリティをもたなければならない。
− リスク分析
− リスク評価
− リスクコントロール手段の実施及び検証
− 残留リスクの評価結果
注記1 リスクマネジメントファイルを構成する記録及びその他の文書は,例えば,製造業者の品質マ
ネジメントシステムが要求する他の文書及びファイルの一部とすることが可能である。リスク
マネジメントファイルには,物理的に全ての記録及びその他の文書を含める必要はない。ただ
し,少なくとも,製造業者がリスクマネジメントファイルで参照した情報を適時集めて整理可
能なように,要求する全ての文書に対する参照又は指定先を含める必要がある。
注記2 リスクマネジメントファイルは,あらゆる形式又はあらゆる種類の媒体で作成することが可能
である。
注記3 この規格を用いずに設計した部品及び機器に対するリスクマネジメントファイルを作成する

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ための指針は,TR T 24971[9]を参照。

5 リスク分析

5.1 リスク分析プロセス

  製造業者は,5.25.5に規定したリスク分析を個別の医療機器に対し実施する。計画したリスク分析活
動の実施及びそのリスク分析結果は,リスクマネジメントファイルに記録する。
注記1 類似の医療機器についてのリスク分析又はその他の関連する情報を用いることが可能な場合は,
その分析又は情報を新規のリスク分析の出発点として使用可能である。関連の程度は,医療機
器間の差異及びそれらが新しいハザードを生じるか,又は出力,特性,性能若しくは結果に対
して大きな違いをもたらすかどうかに依存する。既存のリスク分析をどの程度使用するかは,
その違いが危険状態の発生に与え得る影響についての体系的な評価に基づく。
注記2 選択したリスク分析技法に対する指針,及び体外診断用医療機器に対するリスク分析技法につ
いての指針は,TR T 24971[9]を参照。
リスク分析の実施及びその結果の文書には,5.25.5で要求した記録に加え,少なくとも次を含めなけ
ればならない。
a) 分析を行った医療機器の特定及び説明
b) リスク分析を行った人及び組織の特定
c) リスク分析の適用範囲及び行った日付
注記3 リスク分析の適用範囲は,(例えば,製造業者が全く又はほとんど経験がない新しい医療機器の
開発においては)非常に広くなる。製造業者が,(製造業者のファイルに多くの情報をもってい
る既存の医療機器について,変更の影響の分析をする場合は,)適用範囲を限定することが可能
である。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

5.2 意図する使用及び合理的に予見可能な誤使用

  製造業者は,分析対象とする医療機器の意図する使用を文書化する。
意図する使用は,例えば,意図する医学的適応,患者集団,相互に作用し合う対象の体の部分又は生体
の組織,ユーザープロファイル,使用環境,動作原理などの情報を考慮することが望ましい。
製造業者は,合理的に予見可能な誤使用についても文書化する。
この文書は,リスクマネジメントファイルに維持する。
注記1 使用関連仕様(JIS T 62366-1:2019[13]の3.23参照)は,意図する使用を決定するためのインプ
ットにすることが可能である。
注記2 意図する使用を決定する際に検討する要因及び合理的に予見可能な誤使用の説明については,
TR T 24971[9]を参照。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

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5.3 安全に関する特質の明確化

  分析対象とする医療機器について,製造業者は,医療機器の安全に影響する定性的及び定量的特質を特
定し,文書化する。該当する場合,製造業者は,それらの特質の限度値を決定する。この文書は,リスク
マネジメントファイルに維持する。
注記1 医療機器の安全に影響する特質を特定するときの指針にできる質問事項の一覧については,TR
T 24971[9]を参照。
注記2 医療機器の臨床性能の喪失又は低下に関する特質で,受容できないリスクにつながるものは,
基本性能と呼ばれることがある(例は,JIS T 0601-1[12]を参照)。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

5.4 ハザード及び危険状態の特定

  製造業者は,医療機器についての既知及び予見可能なハザードを,意図する使用,合理的に予見可能な
誤使用及び安全に関する特質に基づいて,正常状態及び故障状態の両方において特定し,文書化する。
特定した各ハザードに対して,製造業者は,危険状態を起こすような合理的に予見可能な一連の事象又
は事象の組合せを検討し,その結果起こる危険状態を特定し,文書化する。
注記1 一連の事象は,例えば,輸送,保管,据付け,保守,日常点検,使用停止及び廃棄のライフサ
イクルの全ての段階で発生する可能性がある。
注記2 ハザード,危険状態及び危害の関係の説明並びに例を,附属書Cに示す。
注記3 リスク分析には,様々な危険状態につながる可能性のある一つのハザードに関して,様々な一
連の事象又は様々な事象の組合せを検討することを含める。その各々の危険状態は,異なるタ
イプの危害につながることがある。
注記4 過去に認識されなかった危険状態を特定する際,その状況を扱うリスク分析の体系的な技法を
用いることが可能である。利用可能な技法の幾つかについての指針をTR T 24971[9]に示す。
この文書は,リスクマネジメントファイルに維持する。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

5.5 リスク推定

  特定した各危険状態に対して,製造業者は,利用可能な情報又はデータを用いて関連するリスクを推定
する。危害の発生確率が推定できない危険状態に対しては,リスク評価及びリスクコントロールに用いる
ために,起こり得る結果をリストする。これらの活動の結果は,リスクマネジメントファイルに記録する。
危害の発生確率及び危害の重大さの定性的又は定量的な分類に用いた方法は,リスクマネジメントファ
イルに記録する。
注記1 リスク推定には,危害の発生確率及び危害の重大さの分析を含んでいる。適用分野によっては,
リスク推定のプロセスのある特定の要素だけを詳細に検討する必要があるかもしれない。例え
ば,危害が極めて小さい場合には,初期のハザード及びその結果(危害)の分析だけで十分か
もしれない。十分な情報又はデータが利用できない場合には,発生確率の慎重な推定(例えば,
発生確率=1)によってリスクの度合いが示されるかもしれない。TR T 24971[9]も参照。
注記2 リスク推定は,定性的又は定量的に行うことが可能である。系統的な故障の結果生じるリスク
も含め,リスク推定の方法は,体外診断用医療機器のためのリスク推定に有益な情報とともに,

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TR T 24971[9]に示している。
注記3 リスク推定のための情報又はデータは,例えば,次によって得ることが可能である。
− 発行済み規格
− 科学的又は技術的調査
− 一般に利用可能な事故報告を含め,既に使用している類似の医療機器の市場データ
− 標準的なユーザーによるユーザビリティの評価
− 臨床エビデンス
− 関連する調査又はシミュレーションの結果
− 専門家の意見
− 体外診断用医療機器の外部品質評価スキーム
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

6 リスク評価

  製造業者は,特定した各危険状態について,リスクマネジメント計画で定義したリスクの受容可能性の
判断基準を用いて,推定したリスクを評価し,リスクが受容可能かどうかを決定する。
リスクが受容可能な場合は,この危険状態には,7.17.5の要求事項を適用する必要はなく(すなわち,
7.6に進み),その推定したリスクを残留リスクとして扱う。
リスクが受容可能でない場合は,製造業者は7.17.6に規定するリスクコントロール活動を実施する。
このリスク評価の結果は,リスクマネジメントファイルに記録する。
適合性は,リスクマネジメントファイルの調査によって確認する。

7 リスクコントロール

7.1 リスクコントロール手段の選択

  製造業者は,リスクを受容可能なレベルまで低減するための適切なリスクコントロール手段を決定する。
製造業者は,次の優先順位に従って,一つ以上のリスクコントロール手段を用いる。
a) 本質的に安全な設計及び製造
b) 医療機器自体又は製造プロセスにおける保護手段
c) 安全に関する情報,及び適切な場合,ユーザートレーニング
注記1 リスクコントロール手段を選択する際の優先順位の根拠は,A.2.7.1に示している。
注記2 リスクコントロール手段は,危害の重大さ若しくは危害の発生確率又はその両者を減少させる
ことが可能である。
注記3 安全に関する情報を提示するための指針については,TR T 24971[9]を参照。
リスクコントロール手段の選択の一部として,関連する規格を適用することが望ましい。
注記4 多くの規格で,医療機器の本質的な安全,保護手段及び安全に関する情報を規定している。そ

――――― [JIS T 14971 pdf 15] ―――――

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