JIS X 0170:2020 システムライフサイクルプロセス | ページ 7

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X 0170 : 2020 (ISO/IEC/IEEE 15288 : 2015)

6.2 組織のプロジェクトイネーブリングプロセス(Organizational project-enabling processes)

  組織のプロジェクトイネーブリングプロセスは,プロジェクトの立上げ,支援及び制御を通じて,製品
又はサービスを取得又は供給するための組織の能力を,確実なものにするよう援助する。このプロセスは,
プロジェクトを支援するために必要な資源及びインフラストラクチャを提供し,組織の目標及び確立され
た合意を確実に満たすよう援助する。この組織のプロジェクトイネーブリングプロセスは,組織のビジネ
スを戦略的に管理できるようにする広範なビジネスプロセスの集合を意図したものではない。
組織のプロジェクトイネーブリングプロセスは,次によって構成される。
a) ライフサイクルモデル管理プロセス(Life Cycle Model Management process)
b) インフラストラクチャ管理プロセス(Infrastructure Management process)
c) ポートフォリオ管理プロセス(Portfolio Management process)
d) 人的資源管理プロセス(Human Resource Management process)
e) 品質管理プロセス(Quality Management process)
f) 知識管理プロセス(Knowledge Management process)
6.2.1 ライフサイクルモデル管理プロセス(Life Cycle Model Management process)
6.2.1.1 目的
ライフサイクルモデル管理プロセスは,この規格の適用範囲に関して,組織によって使われる方針,ラ
イフサイクルプロセス,ライフサイクルモデル及び手順を定義し,維持し,アベイラビリティを保証する
ことを目的とする。
このプロセスは,次の内容をもつライフサイクルの方針,プロセス及び手順を提供する。
− 組織の目標との一貫性をもっている。
− 組織内でプロジェクトを行う状況で,個々のプロジェクトのニーズに応えるために,定義,適用,改
善及び保守がなされている。
− 効果的で,証明済みの方法及びツールを使用して適用できる。
6.2.1.2 成果
ライフサイクルモデル管理プロセスの実施に成功すると次の状態になる。
a) ライフサイクルモデル及びプロセスの,管理及び展開のための組織的な方針及び手順が確立されてい
る。
b) ライフサイクルの方針,プロセス,モデル及び手順の中で,責任,説明責任及び権限が定義されてい
る。
c) 組織が使用するライフサイクルモデル及びプロセスがアセスメントされている。
d) プロセス,モデル及び手順の改善が順位付けられて行われている。
6.2.1.3 アクティビティ及びタスク
組織は,ライフサイクルモデル管理プロセスに関する,適用可能な組織の方針及び手順に従って,次に
示すアクティビティ及びタスクを実施しなければならない。
a) プロセスを確立する。このアクティビティは,次のタスクからなる。
注記 プロジェクト内のライフサイクル実施の細部は,作業の複雑さ,用いられる手法,作業遂行
に参加する要員のスキル(技能)及び教育訓練に依存する。プロジェクトは,規制及び組織
の方針との一貫性を維持しながら,プロジェクトへの要求事項及びニーズに応じて方針,プ
ロセス,モデル及び手順を修整する。修整に関する情報は附属書Aに含まれる。
1) 組織の戦略との一貫性をもったプロセス管理及び展開のための方針及び手順を確立する。

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2) この規格の要求事項を実施し,組織の戦略との一貫性をもったプロセスを確立する。
3) ライフサイクルのプロセスの実施及びライフサイクルの戦略的な管理を可能にする役割,責任,説
明責任及び権限を定義する。
4) ライフサイクルを通して進捗を制御するビジネス上の基準を定義する。
注記 各ライフサイクル段階及び主要なマイルストーンの開始及び終了に関する意思決定基準が
確立される。これらはビジネスの達成という観点で表現されることがある。
5) 複数の段階で構成される標準のライフサイクルモデルを組織のために確立し,各段階の目的及び成
果を定義する。
注記 ライフサイクルモデルは,必要に応じて,一つ以上の段階に分けたモデルから構成する。
ライフサイクルモデルは,対象システムの範囲,規模,複雑さ,変化するニーズ及び機会
に対して適切なものとなるように,同時並行又は反復する一連の段階として組み立てる。
ISO/IEC/IEEE 24748-1:2018で,ライフサイクル段階の通常見られる例を用いて,段階を説
明している。システムに対する特定の例は,ISO/IEC/IEEE 24748-2:2018に掲載されている。
その段階の目的及び成果を満たすように,ライフサイクルプロセス及びアクティビティを
選択し,適切に修整して,その段階で用いる。
b) プロセスのアセスメントを行う。このアクティビティは,次のタスクからなる。
注記 JIS X 0145規格群及びJIS X 33000規格類は,プロセスアセスメントの一連のより詳細なア
クティビティ及びタスクを記載しており,それらは次に示されるタスクに沿っている。
1) 組織全体にわたってプロセスの実行を監視する。
注記 これには,プロセス測定量を分析しビジネス上の基準に照らして傾向をレビューすること,
プロセスの有効性及び効率に関してプロジェクトからフィードバックすること,並びに規
制及び組織の方針に従った実行を監視することを含む。
2) プロジェクトで使用されるライフサイクルモデルの定期的なレビューを実施する。
注記 これには,各プロジェクトで使用されているライフサイクルモデルが合目的性,必要十分
性及び有効性を持続していることを確認し,適切に改善することを含む。これは,ライフ
サイクルを通じて進捗を制御する,段階,プロセス及び達成の基準の確認も含む。
3) アセスメントの結果から改善の機会を識別する。
c) プロセスを改善する。このアクティビティは,次のタスクからなる。
1) 改善の機会を優先順位付け,計画する。
2) 改善の機会について改善を実施し,直接関係する利害関係者に伝達する。
注記 プロセスの改善には,組織内のどのようなプロセスでの改善も含む。学んだ教訓を記録に
残る形にして集め,利用可能にする。
6.2.2 インフラストラクチャ管理プロセス(Infrastructure Management process)
6.2.2.1 目的
インフラストラクチャ管理プロセスは,ライフサイクルを通して組織及びプロジェクトの目標を支援す
るために,インフラストラクチャ及びサービスをプロジェクトに提供することを目的とする。
このプロセスは,この規格の適用範囲に関して,組織の業務に必要な施設,ツール及び情報通信技術の
資産を定義し,提供し,維持する。
6.2.2.2 成果
インフラストラクチャ管理プロセスの実施に成功すると次の状態になる。

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a) インフラストラクチャに対する要求事項が定義されている。
b) インフラストラクチャ要素は識別され,仕様が規定されている。
c) インフラストラクチャ要素が開発されているか又は取得されている。
d) インフラストラクチャが利用可能になっている。
6.2.2.3 アクティビティ及びタスク
組織は,インフラストラクチャ管理プロセスに関する,適用可能な組織の方針及び手順に従って,次に
示すアクティビティ及びタスクを実施しなければならない。
a) インフラストラクチャを確立する。このアクティビティは,次のタスクからなる。
1) プロジェクトのインフラストラクチャの要求事項を定義する。
注記1 インフラストラクチャ要素の例は,設備,ツール,ハードウェア,ソフトウェア,サー
ビス,標準である。
注記2 組織の方針及び戦略的計画と同様に,プロジェクトに対するインフラストラクチャの資
源のニーズを組織内の他のプロジェクト及び資源との関連で考慮する。プロジェクトへ
のインフラストラクチャの資源及びサービスの提供に影響を及ぼし,かつ,制御するよ
うな,ビジネス上の制約及び適時性をも評価する。プロジェクト計画及び将来のビジネ
スに関するニーズは,要求される資源のインフラストラクチャの理解に寄与する。施設
などの物理的要因,ロジスティクスのニーズ,並びに健康及び安全面を含む人的要因も
また考慮する。
注記3 供給者に対する情報セキュリティに関するISO/IEC 27036シリーズは,外部へ委託した
インフラストラクチャのセキュリティに対処するための手引を提供する。
2) プロジェクトを実施し,支援するために必要なインフラストラクチャの資源及びサービスを識別し,
獲得し,提供する。
注記 インフラストラクチャ要素の追跡及び再利用の援助のため,所有資産を一覧した登記保管
が確立されることがよくある。
b) インフラストラクチャを維持する。このアクティビティは,次のタスクからなる。
1) 納入されたインフラストラクチャ資源がプロジェクトのニーズを満たす度合いを評価する。
2) プロジェクトの要求事項が変化するに従って,インフラストラクチャの資源への改善又は変更を識
別し,提供する。
6.2.3 ポートフォリオ管理プロセス(Portfolio Management process)
6.2.3.1 目的
ポートフォリオ管理プロセスは,組織の戦略的な目標を満たすために必要十分かつ適切なプロジェクト
を開始し,維持することを目的とする。
このプロセスは,組織の資金及び資源の適切な投入を確約し,選ばれたプロジェクトを立ち上げて確立
するために必要な権限を認可する。これは,投入を継続することに値することを確認するため,又は値す
るように軌道修正できることを確認するために,継続してアセスメントを実施する。
6.2.3.2 成果
ポートフォリオ管理プロセスの実施に成功すると次の状態になる。
a) ビジネスベンチャーの機会,投資又は必要性が適格であると認められ,優先順位付けされている。
b) 複数のプロジェクトが識別されている。
c) 各プロジェクトに対して資源及び予算が割り当てられている。

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d) プロジェクト管理の責任,説明責任及び権限が定義されている。
e) 合意及び利害関係者要求事項を満たすプロジェクトは維持されている。
f) 合意に合致しない又は利害関係者要求事項を満足しないプロジェクトは,軌道修正又は中止されてい
る。
g) 合意を完遂し,利害関係者要求事項を満たしたプロジェクトは,終了されている。
6.2.3.3 アクティビティ及びタスク
組織は,ポートフォリオ管理プロセスに関する,適用可能な組織の方針及び手順に従って,次に示すア
クティビティ及びタスクを実施しなければならない。
a) 複数のプロジェクトからなるプロジェクト群を定義し認可する。このアクティビティは,次のタスク
からなる。
1) 潜在的な,新規の又は修正された,能力又はミッションを識別する。
注記 組織のビジネス戦略,組織レベルの運用概念,又はギャップ分析若しくは機会分析が,現
状におけるギャップ,問題又は機会に対してレビューされ見直される。新規の能力又は事
業に求められるニーズは,ビジネス及びミッション分析プロセスの中で通常は決定され,
さらに,利害関係者ニーズ及び利害関係者要求事項の定義プロセスの中で定義され,この
プロセスを通じて管理される。
2) 新規ビジネスの機会,ビジネスベンチャーの機会,又は取組み中のビジネスを優先順位付けし,選
択し,立ち上げて確立する。
注記 これらはビジネス戦略及び組織の行動計画と通常は一貫性をもっている。実施する可能性
のある候補である,潜在的な複数のプロジェクトは,どのプロジェクトを実行に移すかを
決定するため,優先順位付けされ,しきい(閾)値が確立される。成功に対する利害関係
者の価値,成功を妨げるリスク及び障害,依存関係及び内部関係,制約,資源のニーズ,
並びに資源間の相互の競合を含む特性を,識別されたプロジェクトの特性として調査し決
定することがよくある。各々の潜在的なプロジェクトは成功の可能性及び費用対利益・便
益に関して評価される。意思決定管理プロセス及びシステム分析プロセスで,代替案の分
析を遂行する上での詳細を記載している。
3) 複数のプロジェクトからなるプロジェクト群,説明責任及び権限を定義する。
4) 各プロジェクトに期待される最終目標となるゴール,目標及び成果を識別する。
5) プロジェクトのゴール及び目標を達成するための資源を識別し,割り当てる。
6) プロジェクトによって管理又は支援されるべき,複数プロジェクト間のインタフェース及び依存関
係の全てを識別する。
注記1 これは,複数のプロジェクトによって使われるイネーブリングシステムの利用又は再利
用,及び複数のプロジェクトによって使われる共通のシステム要素の利用又は再利用を
含む。
注記2 事業アーキテクチャの中に位置付けて個々のプロジェクトを理解することで,インタフ
ェース及び制約を識別することを確実にする。
7) 各プロジェクトの実行を統制する,プロジェクト報告の要求事項,及び節目となるレビューによる
マイルストーンを規定する。
8) 各プロジェクトに対し,プロジェクト計画の実行を開始する権限を与える。
注記 プロジェクト計画の策定に関する更なる情報についてはプロジェクト計画プロセスを参照

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する。プロジェクト計画は,プロジェクトライフサイクルの早い段階で策定され,かつ,
承認される場合,最も有用である。
b) プロジェクトのポートフォリオを評価する。このアクティビティは,次のタスクからなる。
1) 現在進行中のプロジェクトの存続可能性を確認するため,プロジェクトを評価する。
注記 存続可能性には次が含まれる。
− プロジェクトは,設定されたゴール及び目標の達成に向かって進行している。
− プロジェクトは,プロジェクト指示書を遵守している。
− プロジェクトは,システムライフサイクルの方針,プロセス及び手順に従って実行さ
れている。
− プロジェクトは,存続可能であり続けている。それは,例えば,サービスの継続的ニ
ーズ,実用的な製品の実装,及び受入れ可能な投資利益で示されている。
2) 満足できるように進行しているプロジェクトを継続する,又は適切な軌道修正があれば満足できる
ように進行すると期待できるプロジェクトに対して軌道修正するために行動する。
c) プロジェクトを終了させる。このアクティビティは,次のタスクからなる。
1) 合意によって認められている場合には,組織に対する不利益又はリスクが継続的な投資で得られる
利益・便益を上回るプロジェクトを,取り消すか又は中断するために行動する。
2) 製品及びサービスの合意が完遂された後,プロジェクトを終了するために行動する。
注記 プロジェクトの終了は,組織の方針及び手順,並びに合意に従って成し遂げられる。
6.2.4 人的資源管理プロセス(Human Resource Management process)
6.2.4.1 目的
人的資源管理プロセスは,組織に必要な人的資源を提供し,ビジネスニーズに見合った能力を要員が維
持することを目的とする。
このプロセスは,組織,プロジェクト及び利害関係者の目標を達成するために,ライフサイクルプロセ
スを実行する資格のある,スキル(技能)及び経験のある要員の供給を行う。
6.2.4.2 成果
人的資源管理プロセスの実施に成功すると次の状態になる。
a) プロジェクトで要求されるスキルが識別されている。
b) プロジェクトに必要な人的資源が供給されている。
c) 要員のスキルが,開発され,維持され,又は強化されている。
d) 複数プロジェクト間の人的資源要求の重複又は競合が解決されている。
6.2.4.3 アクティビティ及びタスク
組織は,人的資源管理プロセスに関する,適用可能な組織の方針及び手順に従って,次に示すアクティ
ビティ及びタスクを実施しなければならない。
a) スキルを識別する。このアクティビティは,次のタスクからなる。
1) 現在及び予期されるプロジェクトに基づくスキルのニーズを識別する。
2) 要員のスキルを識別し,記録する。
b) スキルを開発する。このアクティビティは,次のタスクからなる。
1) スキルの開発戦略を確立する。
注記 この計画は,教育訓練の種類及びレベル,要員の区分,スケジュール,要員の人的資源へ
の要求事項,及び教育訓練のニーズを含む。

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