JIS X 20246:2021 ソフトウェア及びシステム技術―ソフトウェア及びシステム開発における作業生産物のレビューのプロセス | ページ 9

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X 20246 : 2021 (ISO/IEC 20246 : 2017)
表G.3−アジャイルライフサイクルにおけるライフサイクルフェーズとレビュー種別との関連付けの例
ライフ レビュー種別
サイクル 執筆者 相棒 非形式的 インスペ マイル ペア 同僚との テクニカル ウォーク
フェーズ 確認 確認 グループ クション ストーン レビュー 机上確認 レビュー スルー
レビュー レビュー
反復 X X
計画作業
開発 X X X X X X
テスト X X X X X X
デモ X X X X X X

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X 20246 : 2021 (ISO/IEC 20246 : 2017)
附属書H
(参考)
レビューの測定及び改善
H.1 概要
レビューの主な目的は,欠陥を検出することであると認識されることが多いが,長期的には,根本の目
的は開発及びテストの実践の改善,及びそれによる製品の品質改善である。両方の目的を支援するために,
レビューメトリクスを収集する必要があり,H.2H.5を最も一般的に使用する。
H.2 欠陥密度
欠陥密度は,レビュー中の作業生産物の品質の測定量である。欠陥密度は組織間で大きく異なるが,十
分な期間にわたり使用を継続すると,組織(又はプロジェクト)にとって受入可能な基準として認められ
る。欠陥密度の典型的な測定量は,1ページ当たり(又はファンクションポイントが用いられる場合は1フ
ァンクションポイント当たり)の欠陥数である。
注記 欠陥密度及び他の欠陥測定量は,また,欠陥の重要度が含まれることを定義する必要もある。そ
うでなければ,高い重要度の欠陥が表面的な欠陥と同じように扱われるからである。
H.3 欠陥混入率
欠陥混入率は,ライフサイクルの特定のフェーズにおける開発プロセスの品質の測定量である。欠陥混
入率の典型的な測定量は,特定のフェーズにおけるページ又はファンクションポイントごとに混入した欠
陥の数である。
H.4 欠陥検出率
欠陥検出率は,ライフサイクルの特定のフェーズの開発及びテスト作業プロセス(レビューを含む。)の
品質の測定量である。欠陥検出率の典型的な測定量は,レビュー時間当たりに検出した欠陥の数,又は特
定のフェーズでレビューによって検出した欠陥の割合(回避された欠陥測定量とも呼ばれる。)である。レ
ビュープロセスの結果として執筆者が間違いを少なくすることを学ぶと,レビューにおける欠陥検出率の
有効性は低下することに留意する。
H.5 レビュー速度
レビュー速度は,レビュー対象の特定の作業生産物におけるレビュープロセスの速度の測定量である。
レビュー速度の典型的な測定量は,1時間当たりのページ数又はファンクションポイント数である。欠陥
密度と同様に,これは組織及び使用するレビュープロセスによって大きく異なるが,十分な期間にわたり
使用を継続すると,組織(又はプロジェクト)にとって受入可能な基準として認められる。

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X 20246 : 2021 (ISO/IEC 20246 : 2017)
H.6 サンプリング
レビューは,費用が掛かる活動であり,ある状況下(例えば,目的が品質を測定することである場合)
においては,全て(例えば,要求文書の500ページ全て,又は1 000ページのテストスクリプト全て)を
レビューすることは,経済的に実行可能ではない。このような状況においては,サンプリングは唯一の費
用対効果の高いレビューの取組みであることが多く,欠陥密度などの上記の測定量の一部を使用して,レ
ビューされていない作業生産物の品質を予測することが可能である。要求仕様などの重要なプロジェクト
文書の初期見本をレビューして,最終生産物の品質を早期に把握することは,非常に有用である。
H.7 プロセス改善
プロセス改善はレビュープロセスに適用可能であるが,レビューは,ソフトウェアプロジェクト内で使
用される他のプロセスの潜在的な改善点の特定に使用することも可能である。
レビュアは,レビューされる作業生産物だけでなく,関連する文書及び関連するプロセスについて,要
検討事項を提起するよう求められることがある。取り組むべきプロセスには,関連する標準,テンプレー
ト及び方法を用いた作業生産物の作成,ソフトウェア開発又はテスト作業のような下流工程における作業
生産物の使用,及びレビュー標準,確認項目一覧などの関連するレビューツールを使用したレビュープロ
セス自体が含まれることがある。場合によっては,プロセスの要検討事項は,レビュー会議の直後又はそ
の一部として実施される特定の会議で対処されることがある。

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X 20246 : 2021 (ISO/IEC 20246 : 2017)
附属書I
(参考)
ツールによる支援
I.1 レビューに対するツールの支援
レビューは労働集約的であるが,ツールで効果的に支援することが可能である。この箇条では,作業生
産物のレビューに使用可能なツールによる支援の形態を紹介する。具体的なツール(商用又はオープンソ
ース)には言及していないが,レビュープロセスに利用可能な汎用的な支援の形態について説明している。
レビュー支援ツールによって提供される機能には,次のものを含むが,これらに限定されない。
− レビュア間の協力及び情報共有の支援
− 作業生産物の変更管理,レビュープロセスの一部として行われた変更の強調
− 作業生産物に対して付与されたコメントの記録及び強調
− コメント,修正及び作業生産物間の追跡可能性の管理
− レビュアによるコメント照会の支援
− レビューメトリクスの自動収集
− レビュー報告書及びインシデント報告書の生成支援
− レビュープロセス改善の支援(例えば,レビュー有効性分析)
− 欠陥管理ツール,テスト管理ツール,IDE(統合開発環境)及び版管理ツールとの統合

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X 20246 : 2021 (ISO/IEC 20246 : 2017)
参考文献
[1] ISO/IEC 12207,Systems and software engineering−Software life cycle processes
注記 JIS X 0160 ソフトウェアライフサイクルプロセスが,この国際規格に対応している。
[2] ISO/IEC/IEEE 15288,Systems and software engineering−System life cycle processes
注記 JIS X 0170 システムライフサイクルプロセスが,この国際規格に対応している。
[3] ISO/IEC/TR 19759,Software Engineering−Guide to the software engineering body of knowledge
(SWEBOK)
[4] ISO/IEC/TS 24748-1,Systems and software engineering−Life cycle management−Part 1: Guidelines for
life cycle management
[5] ISO/IEC 25010,Systems and software engineering−Systems and software Quality Requirements and
Evaluation (SQuaRE)−System and software quality models
注記 JIS X 25010 システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)−システム
及びソフトウェア品質モデルが,この国際規格に対応している。
[6] ISO/IEC 25030,Software engineering−Software product Quality Requirements and Evaluation (SQuaRE)
−Quality requirements
注記 JIS X 25030 システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)−品質要求
の枠組みが,この国際規格に対応している。
[7] Fagan M. Design and Code Inspections to Reduce Errors in Program Development. IBM Syst. J. 1976, 15 (3)
[8] Gawande A. The Checklist Manifesto. Metropolitan Books, 2009
[9] Gilb T., & Graham D. Software Inspection. Addison-Wesley, 1993
[10] Hass A.M.J. Guide to Advanced Software Testing. Artech House, 2008
[11] IEEE Std 1028-2008,IEEE Standard for Software Reviews and Audits
[12] IEEE Std 15288.2-2014,IEEE Standard for Technical Reviews and Audits on Defense Programs
[13] Kaner C. Testing Computer Software. TAB Books Inc, 1998
[14] Kit E. Software Testing in the Real World: Improving the Process. ACM Press, 1995
[15] Laitenberger O., & DeBaud J. 1998. An Encompassing Life-Cycle Centric Survey of Software Inspection. Tech.
Report No. ISERN-98-32, Fraunhofer Institute for Experimental Software Engineering, Kaiserslautern,
Germany
[16] Myers G. The Art of Software Testing. John Wiley and Sons Inc, 1979
[17] Sauer C. The Effectiveness of Software Development Technical Reviews: A Behaviourally Motivated Program
of Research. IEEE Trans. Softw. Eng. 2000 January, 26 (1)
[18] Shull F., Rus I., Basili V July 2000. How Perspective-Based Reading can improve Requirement Inspections.
IEEE Computer
[19] Wiegers K. Peer Reviews in Software−A Practical Guide. Addison-Wesley, 2001

JIS X 20246:2021の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO/IEC 20246:2017(IDT)

JIS X 20246:2021の国際規格 ICS 分類一覧