JIS X 5094:2019 UTCトレーサビリティ保証のためのタイムアセスメント機関(TAA)の技術要件 | ページ 2

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X 5094 : 2019
NTP ネットワークタイムプロトコル(Network Time Protocol)
OID オブジェクト識別子(Object Identifier)
TTP 信頼できる第三者(Trusted Third Party)
URL 統一資源位置指定子(Uniform Resource Locator)

5 概要

  タイムスタンピングサービスにおいては,TSTを生成するために使用するTSA時計は,公表した精度以
内でUTCに同期していることが要求される。また,TSTに含まれる時刻情報の正確さが保証されるよう
に管理しなければならない。TAAは,時刻監査によってタイミングセンタによって与えられるUTC(k) の
時刻に対するTSAの時刻基準のトレーサビリティを証明し,また,オプションとしてTSAに時刻情報を
配信する。TAAの機能は,タイミングセンタ又はTTPによって実施される。
タイムスタンピングサービスに関しては,ISO/IEC 18014-1で規定しているサービスを参照しなければ
ならない。TAAの機能については,ITU-R TF.1876で決められた機能を参照しなければならない。
この規格は,正確かつトレーサブルな時刻をTSAに提供し,UTC(k) に対するTSAの時刻のトレーサビ
リティを証明するための全体構成を記載する。また,この規格は,次の二つのTAAの技術要件を規定する。
a) SAで使用される時刻が要求精度内にあることの証明を監査によってTSAに与える。
b) AAが時刻配信モードで機能する場合,時刻情報をTSAへ配信する。
我が国では,国立研究開発法人情報通信研究機構(National Institute of Information and Communications
Technology,NICT)がUTC(k) となるUTC(NICT) を決定している。この規格では,箇条7におけるUTC(k)
は,UTC(NICT) を意味する。

6 時刻トレーサビリティチェーン及びトレーサビリティの証明

6.1 時刻配信及びトレーサビリティチェーン

  タイミングセンタは,そのUTCの時刻を,無線放送,電話又はネットワーク路によってエンドユーザへ
サービスとして配信することができる。これらのサービスは,エンドユーザをタイミングセンタに結び付
け,時刻トレーサビリティチェーンを確立する[11]。TSAは,一つのエンドユーザであり,このチェーン
の上流に位置する時計の時刻信号を基準信号として使用する。これによって,このチェーンはUTC(k) に
対する時刻信号のトレーサビリティを可能にする。
TSA時計及びTAA時計は,このような時刻トレーサビリティチェーンにおいて,タイミングセンタか
ら下流に位置付けられる。また,TAAが6.2に記載した時刻配信モードで働くときには,TAA時計は,TSA
時計よりも上流に位置付けられる。
NMIがUTC時刻に対して時刻信号の監視及び比較を行っている場合は,時刻トレーサビリティチェー
ンは,タイミングセンタが制御していない時刻信号を用いても確立することができる[11]。この型の時刻
トレーサビリティチェーンは,例えば,認証を受けたGNSSタイミング受信機を使って実現できる。TSA
は,この受信機からのタイミング信号で制御されたローカル発振器をTSA時計のトレーサブルな基準時刻
源として使用することができる。この場合,図C.1のd) に示すように,TAAが参照するタイミングセン
タとGNSSに結合したNMIとは通常異なる。
どのような放送サービスの型を使用するかは,チェーンの下流にある時計の要求精度に依存する。
NTP[2]は,コンピュータネットワークを介して時計を同期させるために使用できる。

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6.2 TAAによるTSA時計の時刻監査

  TAAの役割は,UTC(k) に同期したTSA時計が要求精度以内でUTC(k) にトレーサブルであることを監
査し,トレーサビリティを証する時刻差証明書(7.3.5参照)をTSAに提供することである。この規格で
規定している構成方式では,TAAは,次のようにして時刻監査を提供する。
TAAは,6.1に示すように,タイミングセンタからの配信時刻を用いて,UTC(k) に対してTAA時計の
同期を維持するか,又はTAAがタイミングセンタによって運用されている場合は,TAA時計は,直接タ
イミングセンタによって制御できる。TAAは,UTC(k) とTAA時計との間及びTAA時計とTSA時計との
間の時刻差を定期的に測定することによって,トレ−サビリティチェーンの保証を与える。TAAは,測定
した時刻差を記録し,時刻差証明書をTSAに発行する。
TAAは,この同期したTAA時計を用いてTSAへ時刻情報を配信してもよい。6.1に示すように,これ
も時刻トレーサビリティチェーンの一つに分類できる。
時刻トレーサビリティチェーンの構成のブロック図をB.1に示す。
注記 ITU-R TF.1876に規定しているTAAを基礎にした信頼できる時刻源構成の例を,附属書Cに示
す。

7 TAAの技術要件

7.1 TAAの要件における方針

  この規格は,TSAによって発行されるTSTに含まれる時刻の値がUTC(k) の±1 sで正確であることを
TAAが証明できるようにするために最低限必要な要件を規定する。±1 sの許容誤差は,うるう秒の導入
によって生じる可能性がある問題を考慮したものである。
箇条7では,TSAに時刻配信も行うTAAに対する要件を規定している。7.4に示す時刻配信に関する要
件は,時刻監査モードだけを運用するTAAには適用しない。
UTC(k) に対するTAA時計及びTSA時計に要求される精度,並びにTSA時計の時刻差測定に要求する
精度を,この規格で定義し,定量化している。TAA時計は,基準時計,時刻監査機器及び時刻配信機器(オ
プション)によって構成する。時刻監査機器及び時刻配信機器の時刻源が基準時計である。TAA時計の精
度は,時刻監査機器及び時刻配信機器のインタフェース点に出力する時刻値の精度であり,この出力時刻
をTAA時計の配信時刻として参照する。同様に,TSA時計の精度は,そのインタフェース点に出力する
時刻値の精度である(図B.2参照)。
TAA時計の配信時刻の要求精度は,UTC(k) に対する時刻差が無視できるように決定する。±1 sの許容
誤差のために,TAA時計の配信時刻に対する要求精度は,TSA時計の平均精度誤差±500 msの10分の1
とする。時刻差測定に対する要求精度及び基準時計に対する要求精度は,同じようにして決定する。
TSA時計の時刻差測定間隔において基準時計のクロックの周波数不安定さによって生じるTAA時計の
時刻誤差は,基準時計の精度に比べて無視できるものでなければならない。TAAのクロックによる時刻誤
差は,基準時計の精度の10分の1以下でなければならない。
注記1 原子時計又は恒温槽付き水晶時計が,TSA時計の要求精度を満たすものとして,実際のサー
ビスで使用されている。
注記2 TAA時計及びTSA時計に対する要求精度,並びに時刻差測定に対する要求精度をB.2に示す。

7.2 TAA時計の要件

7.2.1  概要
次の7.2.27.2.6の要件は,時刻監査及び時刻配信に共通して適用する。

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7.2.2 TAA時計の構成
TAA時計の構成に関する要件は,次による。
a) AA時計は,基準時計,時刻監査機器及び時刻配信機器(オプション)によって構成しなければなら
ない。時刻監査機器及び時刻配信機器の時刻源には,基準時計を使用しなければならない。
b) AA内の基準時計は,二つ以上の時計による冗長構成としなければならない。
7.2.3 UTC(k) との時刻の同期
時刻の同期に関する要件は,次による。
a) 基準時計は,7.2.4で規定している要件を満たす十分な精度でUTC(k) と同期していなければならない。
b) AAは,UTC(k) との時刻同期ポリシーを定め,そのOID又はURLを開示しなければならない。
c) 特に時刻配信モードでの運用を行う場合,TAAは,異常事態に備えUTC(k) に加えてほかの時刻源(例
えば,GPS)も参照することが望ましい。
注記 時刻監査モードだけで動作しているTAAは,その時刻源を喪失した場合には監査の運用を中断
できる。
7.2.4 TAA時計の精度
TAA時計の精度に関する要件は,次による。
a) SA時計の時刻差測定間隔(典型的には数時間)における基準時計の周波数不安定さによって生じる
時刻誤差は,b) から得られる±5 msとなる基準時計の精度の10分の1以下でなければならない。詳
細については,附属書D参照。
b) 基準時計の精度は,7.3.4 c) 及び7.4.4 c) で±50 msと規定している時刻配信精度及び時刻差測定精度
よりも10倍以上高くなければならない。
7.2.5 時刻差の測定及び測定データの保存
時刻差の測定及び測定データ保存に関する要件は,次による。
a) AAは,GPSコモンビュー法[12]又は相当の方式によって,UTC(k) と基準時計との時刻差を測定し,
測定データを保存しなければならない。
注記 相当の方式として,GPSを用いた全視(all-in-view)法[13],通信衛星を利用した双方向比較
法[14]などがある。
b) AAは,利用者及び利用者の関係者に対して,必要に応じて当該データを開示しなければならない。
7.2.6 機器操作の記録及び記録の保存
TAAは,時刻差測定に関連する機器(GPS受信機器など)の操作を記録し,かつ,保存しなければなら
ない。

7.3 時刻監査の要件

7.3.1  概要
次の7.3.27.3.7の要件は,TAAによるTSA時計の時刻監査に適用する。
7.3.2 時刻監査ポリシー
TAAは,TSA時計に対する時刻監査ポリシーを規定し,そのOID又はURLを開示しなければならない。
7.3.3 TSA時計の認証
TAAは,時刻監査対象となるTSA時計の識別及び認証が可能な通信プロトコルを用いなければならな
い。
7.3.4 時刻差の測定
時刻差の測定に関する要件は,次による。

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a) AAは,時刻差測定のために採用した方法が有効であることを確認し,それを文書化しておかなけれ
ばならない。
注記 公的な規格,定評ある技術機関の出版物,又は査読付き学術雑誌に公表されている一般に受
け入れられている時刻差測定の方法を使用することが望ましい。
b) AAは,TAA時計とTSA時計との時刻差を測定する間隔,及び測定の精度を開示しておかなければ
ならない。
c) 時刻差測定の精度は,通信伝送路の遅延のゆらぎを含めて±50 msでなければならない。
7.3.5 時刻差証明書
時刻差証明書の発行に関する要件は,次による。
a) 時刻差証明書は,次のフィールドを含んでいなければならない。ただし,うるう秒のための調整情報
は,必ずしもこの限りではない。
1) AA識別子 : 時刻差証明書を発行するTAAの名前,識別名又はそれらの両方
2) SA識別子 : TAAが時刻差証明書を発行するTSAの名前,識別名又はそれらの両方
3) 測定時刻(ntpTime) : 時刻差を測定した時刻
4) AA時計との時刻差(offset) : TSA時計の測定時点の時刻差
5) 測定時の通信遅延(delay) : 伝搬遅延時間
6) うるう秒への対応(leapSecondInfo) : うるう秒のための調整情報
注記 上記と既存の国家標準との関係を附属書Aに示す。
b) AAは,TSAに対して,時刻差証明書を適切な間隔で発行しなければならない。
c) 時刻差証明書の発行間隔は,時刻監査ポリシーに含んでいなければならない。
注記 TAAは,24時間以内の間隔で証明書を発行することが望ましい。
7.3.6 記録の保存
TAAは,時刻差証明書及び時刻差証明書の発行記録を保存しなければならない。
7.3.7 TSA時計の時刻異常への対応
TAAは,公表精度を外れたTSA時計の時刻の進み又は遅れを検知したときには,精度の喪失を関連TSA
に通知しなければならない。

7.4 時刻配信の要件

7.4.1  概要
次の7.4.27.4.5の要件は,TAAからTSAへの時刻配信に適用する。
7.4.2 時刻配信ポリシー
TAAは,TSA時計に対する時刻配信ポリシーを定義し,そのOID又はURLを開示しなければならない。
7.4.3 TSA時計の認証
TAAは,時刻配信対象となるTSA時計の識別及び認証が可能な通信プロトコルを用いなければならな
い。
7.4.4 時刻配信制御
時刻配信制御に関する要件は,次による。
a) AAは,採用した時刻配信制御の方法が有効であることの説明責任を果たし,その方法を文書化しな
ければならない。
注記 公的な規格,定評ある技術機関の出版物,又は査読付き学術雑誌に出版されている,一般に
受け入れられている時刻配信制御の方法を使用することが望ましい。

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b) AAは,TAA時計とTSA時計との間の時刻配信の精度を公表しなければならない。
c) AA時計の時刻配信精度は,±50 msに維持しなければならない。
7.4.5 配信時刻の改ざん対策
TAAは,TAAとTSAとの間での時刻配信に使用される通信路の完全性を確保しなければならない。

7.5 その他の要件

  TAAは,適切な機関による通知に従って,うるう秒が発生したときにUTC(k) との時刻同期を維持する
適正な措置を講じなければならない。

――――― [JIS X 5094 pdf 10] ―――――

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JIS X 5094:2019の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO/IEC 18014-4:2015(MOD)

JIS X 5094:2019の国際規格 ICS 分類一覧