JIS Z 8706:1980 光高温計による温度測定方法 | ページ 2

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部を観測するとき,空筒内壁及び空筒内の物体の実効放射率は,ほとんど1に等しいとみな
すことができる。そして,穴が小さいほど,壁及び内部の物体の放射率が大であるほど,ま
た壁及び内部の物体の表面における放射の反射が拡散的であるほど,実効放射率は1に接近
する。
(b) 測定対象がそれと同一温度の物体で,なるべくすきまなくとり囲まれている状況を選ぶか,
又はこのような状況をつくり小さいすきまから測定する。例えば炉内の温度を測定するとき,
炉の窓が小さくて炉内が一様に輝いているならば,この状況に近いと考えてよい。
(c) 測定対象表面のうち深くくぼんだ箇所を選ぶか,又は表面に深いくぼみを設けて,くぼみの
底を観測する。
なお,このような場合,くぼみの付近に向かって外部から強い放射が投射しない限り,く
ぼみの箇所は周りよりも輝いて見える。
(d) 放射率が大で拡散反射性の物体(以下,補助物体という)を用意し,(b)の場合にはそれを測
定対象に接触させ,また(c)の場合にはそれをくぼみの中に接触させて熱的つり合に達せさせ
たのち,補助物体の表面を観測すると一層よい。
また,この場合補助物体と測定対象又はくぼみの内壁とで輝度に差が認められないならば,
(b)又は(c)の方法が達成されているとしてよい。
(e) 測定対象が流体である場合には,耐熱性で煙を発しない物質で作った底つき管をその中に深
く差し込み,管の底部を観測する。この場合も,管の底に補助物体を接触させて行う方法〔(d)
参照〕をとると一層よい。
(f) 補助物体の材質としては,酸化鉄,酸化ニッケル,酸化コバルトなどがよく,また酸化しな
い場合には,黒鉛もよい(その他,参考1参照)。
(g) どの場合にも,観測する箇所の面を粗くすると一層よい。
注(5) 第2順位の条件が満足される状況を実現するには,次による。
(a) 一つの測定対象について,まず光高温計で輝度温度を測定すると同時に同じ箇所について真
温度を測定し(真温度の測定は,第1順位の測定又は熱電温度計法による。),これを繰り返
して輝度温度との間に再現的な関係があるかどうかを確かめる。両者の間に再現的な関係の
あるような状況が見出されたならば,以後その際と同一の測定状況を実現すればよい。
この場合の実効放射率の値としては,はじめに輝度温度と真温度との間の再現的関係を確
認した際の輝度温度と真温度との関係から,8.3の式(1)又は式(3)により算定すればよい。
(b) 輝度温度と真温度との間に再現的な関係がある状況を見出すには,実効放射率を変化させる
諸要因(7.3.1の備考のはじめを参照)を十分に考察し,測定対象のどの場所を,又は工程中
のどの時期に測定すればよいかなどを綿密に検討しておかなければならない。
(c) 文献に示されている放射率の値(例えば,この規格の参考1)を,そのまま実効放射率とみ
なすことは,ほとんどすべての場合に誤りである。文献に放射率測定の際の測定条件が詳細
に示され,かつ,いま測定しようとする状況が文献での状況と十分に合致する場合だけ,そ
れは誤りではない。
(d) 同質の材料に対して同処理や工程を加えるなど,同等又は類似の測定対象を取り扱う範囲で
は,第2順位の考え方を基にして関係者間で測定条件及び実効放射率を協定しておくと,実
用上大きな効果がある。
注(6) 一つの測定対象について,その実効放射率が測定のたびごとに等しいこと,及び互いに比較し

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ようとする二つ以上の測定対象の間で実効放射率が等しいこと。
(7) 第3順位の条件を実現するには,次による。
(a) 実効放射率を変化させる諸要因のそれぞれが,再現可能であるように測定対象の状況を選ぶ
か,又はそのような状況をつくり出す。
例えば,表面が酸化しやすい測定対象の場合,酸化物の放射率は酸化の程度によって異な
ることがあるので,酸化した表面を観測したのでは実効放射率の再現性は確保しにくい。酸
化していない表面を選ぶこと,又は酸化物をとり除いた直後に表面を観測することによって,
実効放射率の再現性は良くなる。
また,例えば測定対象の付近に強い放射源がある場合,実効放射率は放射源の影響を受け
るので,放射源の放射輝度が時間的に変化するときには実効放射率は再現的でない。そこで,
放射源の放射輝度が一定値にあるときだけを選んで測定するか,放射源からの放射が直接に
は投射しないような奥まった箇所を選ぶか,又は放射源からの放射をさえぎって測定するな
どの手段によって,実効放射率の再現性を確保する。
(b) いうまでもなく,実効放射率の再現性を確認するための最も確実な方法は,輝度温度と真温
度との間に再現的な関係のあることを確かめることである。しかし,このことが確かめられ
るならば第2順位の測定が可能なのであって,第3順位の測定は,輝度温度と真温度との間
の関係を直接に知り得ないときに,やむを得ず他の方面の知識から実効放射率が再現的であ
る状況を見出して測定するものである。
(c) なお,同等又は類似の測定対象を取り扱う範囲では,第3順位の考え方を基にして関係者間
で測定条件を協定しておくと,実用上ある程度の便宜が得られる。
7.3.2 煙,炎,蒸気及びほこり 煙(8),炎,蒸気及びほこり(9)のない場所,又は時期を選んで測定する。
やむを得ない場合には,測定対象からの光にむらが認められないほどのわずかな煙,炎又は蒸気しか存
在しない時期を見はからって手早く測定する(8)。又は,光高温計の先に耐火物製の長い管(10)を取り付け,
その先端を測定対象の中に差し込んで測定する方法や,送風で煙,炎又は蒸気を吹き散らして測定する方
法もよい。ただし,どの場合にも測定対象の状況を変える(一般には,その温度を下げる)ことが多いか
ら,注意が必要である。
注(8) 例えば,平炉工場で1 450℃程度の輝度温度を測定しようとする場合,煙のための誤差は60℃に
も及ぶが,場所又は時期を注意して選べば,この誤差を10℃程度にとどめることができる。し
かし,それにはかなりの熟練を必要とする。
(9) 大気中のほこりの影響で輝度温度が見掛け上低く測定され,その誤差は表4に示す程度である。
表4 大気中のほこりの影響(例)
波長0.65 輝度温度1 400℃のとき
場所 光路10m当たりの誤差 ℃
研究所 3以下
鋳物工場 6程度
平炉工場 625
(10) このために用いる管が,それ自身測定温度で煙を発するようなものであっては無意味である。
7.3.3 測定対象表層の異質物 測定対象の表層にそれと異なる物質があるときは,表層物質を取り除いて
測定する。ただし,そのため測定対象の温度を変えることがないように手早く測定する必要がある。
備考 表層に異質物があると,表層と測定対象とでは温度も放射率も異なるので,大きな誤差を生じ
ることがある。

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例えば,鋼材表層にスケールがあるとき,スケールの熱伝導率が小さいためスケール表面と
スケールを除いた直下とではかなり温度差があり,表5に示す程度である。
表5 スケールを伴った鋼材のスケール表面とスケール直下との温度(例)
スケール表面の温度 ℃ 600 800 1 000
スケール直下の温度 ℃ 610 820 1 080
7.3.4 移動する測定対象 移動する物体の温度を光高温計で測定する場合(11)には,輝度合わせの操作に
手間がかかること,及び高温計電球に時間的遅れがあることに注意し,測定対象の移動速度が小さくなる
時期に,光高温計で物体の特定箇所をねらって追跡して行き(12),輝度合わせを行う。
また,測定対象の移動方向になるべく近い方向から測定するとよい(13)。
注(11) 移動する物体の表面温度を測定するには,電気式温度計のような接触方式の温度計によるより
も,光高温計などのような放射を利用する温度計の方が適している。
(12) 特定箇所を追跡せずに,測定対象の像が視野内で激しく動くままの状況で測定することは一般
に極めてむずかしく,むりに読み取っても輝度温度1000℃付近で20℃以上の誤差を生じること
が多い。
(13) これにより,視野内の像の移動速度を小さくすることができる。
7.3.5 その他の状況 次の各項に注意する。
(1) 小さい物体及び遠方の物体の温度 物体が小さい(14)か又は遠方にあるため,光高温計視野内に見える
物体像の幅が高温計電球線条の直径の3倍以下しかないとき(15)には,測定を行わない方がよい。
注(14) 細い線条の場合については7.5.1参照。
(15) このような場合,輝度合わせの精度が著しく低くなる。
(2) 光路における介在物 光の損失を生ずるおそれのあるものを光路に介在させることは避けるのを原則
とする。
やむを得ない介在物(例えば,炉の窓など)があるときには,それにより生じる光の損失(又は見
掛けの輝度温度の低下)をあらかじめ確かめておき,補正を行う〔8.3.1の式(2)による〕。
なお,介在物としては,なるべく無色でうすいものを用いることが望ましい。
7.4 測定操作 測定は,次の各項に注意して行う。
なお,必要に応じ測定の前後に光高温計を検査する(9.参照)。
(1) 測定に先立ち,光高温計を正常読み取り姿勢に保ち,その指針をゼロ点に合わせておく。
(2) 光高温計の回路にその最大目盛に相当する電流を通じ,指度が安定していることを確かめておく。
備考 この操作は,主に電池の著しい放電又は回路の接触不良がないことを確かめるために行う。
(3) 光高温計の対物レンズを清浄にする(16)。ただし,内部の光学系には手を触れないことが望ましい。
注(16) 例えば,対物レンズの中央に指あとをつけただけで指度が10℃も低くなることがある。
(4) 接眼系の調整は,高温計電球線条の像を明視の距離以内に結びがちであるから,できるだけ遠くに明
確に,また容易に観察できるようにする。
(5) 対物系を調整して測定対象の像が正しく結ばれるようにする。
(6) 特に(4)及び(5)の操作は,手荒く行ってはならない。赤色フィルタを光路から外すことのできる光高温
計では,(4)及び(5)の操作を,赤色フィルタを光路から外した状態で行ってもよい。ただし,測定のと
きはこれを確実に光路に入れる。
(7) 予想される測定値の近くに指度をあらかじめ合わせておき,測定の際の調整量を少なくするように準
備する。

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備考 光高温計で900℃程度の温度を測定しようとする場合,電流を通じない状態から出発して指度
が所要値に安定するまでには数十秒の時間を要することがある。この所要時間は,測ろうとす
る温度が高いほど短くなり,また測ろうとする温度に近い指度にあらかじめ合わせておいて測
定の際の調整量を少なくすれば,はるかに短くなる。
(8) 灰色フィルタを用いる必要があるときは,これを確実に光路に入れる。
備考 灰色フィルタを角度20度ほど傾けると,指示が10℃程度も低すぎになることがある。
(9) 輝度合わせには高温計電球の線条の中央を用いる。
(10) 輝度合わせは指度が測定量よりも高すぎる側から,及びその反対側から別々に行い,両者による読み
を平均する方法,又は測定量をはさんで指度を増減しながら,その中位を見出す方法によることが望
ましい。
備考 指度が測定量よりも高すぎる側から輝度合わせを行って得た読みと,その反対側から輝度合わ
せを行って得た読みは一般に等しくない。前者が後者よりも高いのが普通であって,両者の差
は1000℃で数℃に及ぶことがある。
(11) 指度を読み取るとき,光高温計の姿勢に注意する。
備考 例えば,一体形光高温計で,その姿勢が正常読み取り姿勢から前後左右に90度傾いているとき,
指度が10℃程度狂うことがある。
7.5 特殊条件における測定
7.5.1 細い線条の温度〔7.3.5(1)参照〕 線条の温度を測定する場合で,その直径又は幅(以下,線条の
大きさという。)が小さいときは,普通の光高温計で直接に測定すると,経験のあるなしにかかわらず誤差
が大きくなる。
正しく測定するには,次の方法によることが望ましい。
(1) 拡大レンズを用いる方法 被測定線条の大きさが30.5mm程度のときは,普通の光高温計に焦点距
離約6.5cmのとつレンズを対物レンズの直前に付けて測定する。拡大レンズとしては,無色の上質ガ
ラス製で,光高温計の対物レンズと同等以上の直径のものを用いる。
この場合,拡大レンズによる光の損失について補正しなければならない。補正の方法は,8.3.1の式
(2)によるか,又は拡大レンズを付けた光高温計について校正を行って得た補正値による。
備考 拡大レンズに単レンズを用いたとき,光の損失は910%(8.3.1の 程度である
被測定線条の大きさが0.50.06mm程度のときは,普通の光高温計の利用は避けて特別な光
高温計による。
備考 この場合,マイクロパイロメータと呼ばれる特別な光高温計を用いることが望ましい。マイク
ロパイロメータの高温計電球としては,被測定線条の大きさが0.1mm以上のときは直径0.05mm
程度の線条の高温計電球を用い,被測定線条の大きさが0.1mm以下のときは直径0.025mm程
度の線条の高温計電球を用いる。
(2) 高温計電球の位置に被測定線条を置く方法 被測定線条の大きさが0.060.02mm程度のときは図2
のように配置して標準電球の電流を調節し,標準電球線条の像と被測定線条との輝度合わせを行う方
法によることが望ましい。光学系は普通の光高温計のものでよいが,図に示すように接眼側に直径
1mm程度の絞りを用いる。この配置で輝度合わせがなされたとき,対物レンズなどによる光の損失が
あるので,標準電球の電流から与えられる輝度温度は被測定線条の輝度輝度よりも高く,その差を補
正する必要がある。補正は,対物レンズによる光の損失及び被測定線条をガラス球に封入した場合は,
対物レンズ側のガラス球壁による光の損失につき8.3.1の式(2)をあてはめる。

――――― [JIS Z 8706 pdf 9] ―――――

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図2 細い線条の温度測定
備考 この方法で測定される値は,被測定線条の断面が円形の場合には光路の方向から見た平均の輝
度温度であって,法線方向の輝度温度とは一般に異なる。例えば,タングステンの円形線条で
輝度温度が1 500℃及び2 000℃の場合,この方法で求められた輝度温度は,法線方向に対する
輝度温度に比べ,それぞれ約4℃及び7℃だけ高すぎである。
(3) 置換方法 被測定線条の大きさが0.5mm程度のときは,この方法によることもできる。図3に示すよ
うに被測定線条の後ろになるべく接近して,均一な輝きをもつ光源(例えば,標準電球又は白色塗装
電球)を置き,光高温計用フィルタと同一の赤色フィルタを通して観察し,光源の輝きを変えて(電
球の場合は点燈電流により)線条と光源との輝度合わせを行う。次に,光高温計と光源との輝度合わ
せを行えば,被測定線条の輝度温度を測定することができる。この方法で測定できる輝度温度の上限
は,後ろに置く光源に白色塗装電球を用いた場合には1 200℃,標準電球を用いた場合には,その使用
最高温度(ガス入ならば約2 000℃)の程度である。
図3 細い線条の温度測定
(4) コイル状の線条の場合の注意 コイル状の線条では,コイル間の相互反射のため線の両縁で輝度が大
であるが有効放射率が不明確なので,線の中央の暗く見える箇所について測定し,放射率で補正する
のがよい。この場合,均等に見える中央部の像の幅が,高温計電球線条の直径の少なくとも3倍の大
きさをもつことが望ましい。

――――― [JIS Z 8706 pdf 10] ―――――

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JIS Z 8706:1980の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 8706:1980の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISZ8710:1993
温度測定方法通則