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Z 9061 : 2016 (ISO 16336 : 2014)
最適条件におけるSN比の推定値 :
opt B2 D2 F2 T
2SN .370 .391 .409 2 .3265 .517
現行条件におけるSN比の推定値 :
cur B1 D2 F1 T
2SN .375 .391 .295 2 .3265 .408
SN比の利得 :
opt cur.109
b) 感度Sの利得の推定 感度の利得を予測するために,最適条件における感度Sopt及び現行条件におけ
る感度Scurの推定値の計算を行った。ステップ9で記載したように,感度に強い効果をもっている制
御因子A及び制御因子Bを選択し,表B.15のデータから感度の推定値の計算に用いた。
感度の総平均 :
S1 S2 18 11.339 11.732 10.444
T 10.271
18 18
最適条件における感度の推定値 :
SoptSA1 SB 2T 10.08 .944 (10.27) .925
現行条件における感度の推定値 :
ScurSA1 SB1 T 10.08 11.39 ( 10.27) 11.20
感度の利得 :
ΔS Sopt Scur.195
− (ステップ12)確認実験を行い,利得及び再現性を調べる。
実験データを基にした推定値から予測された改善効果を確かめるために,最適条件及び現行条件で
確認実験を行った。
確認実験の結果及び推定の結果を表B.16に示す。
表B.16−確認実験の結果
単位 db
SN比 感度
推定値 確認値 推定値 確認値
最適条件 5.17 5.72 −9.25 −8.93
現行条件 4.08 3.52 −11.20 −11.49
利得 1.09 2.20 1.95 2.56
利得の推定値と利得の確認値とは,SN比及び感度においてそれほど差がなく,利得は再現するといえ
る。ロバストネスにおける改善は,もやしの順調な成長及び成長曲線の制御性の改善につながる。すなわ
ち,成長率,出荷,又は過不足ない量の制御が可能となることを意味している。
感度において2.56(db)の利得が達成された。それは,最適条件下では,現行条件のときより早く,も
やしが成長することを意味する。実際,現行条件では成長するのに7日を要したのに対して,最適条件で
は4日で十分成長することを確認し,生産性において43 %の改善である。
――――― [JIS Z 9061 pdf 61] ―――――
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Z 9061 : 2016 (ISO 16336 : 2014)
パラメータ設計の実験によって,ロバストネス及び生産効率の両方で改善が見られた。
B.2 静的特性のSN比
B.2.1 事例1 : 望目特性のSN比(コンピュータシミュレーションによるカムシャフトの鋳造工程のロバ
ストネスの評価)
B.2及びB.3の目的は,静的特性及び計数特性のSN比の計算を示すことである。ここでの事例では,制
御因子の詳細は議論せず,外側配列のデータからのSN比の計算だけを示す。
自動車のエンジンの重要な部品の一つであるカムシャフトは,通常,鋳造によって製造される。しゅう
(摺)動表面上の鋳造欠陥は,エンジンの性能低下を引き起こす。鋳造条件を最適化するため,CAE
(Computer Aided Engineering) を用いたパラメータ設計を適用した。この箇条では,ロバストネスの評価の
ためのパラメータ設計において,外側配列でのデータセットだけを取り上げて,SN比の計算を示す。
カムシャフトは,金型の鋳型(骨組となる鋳型)に溶融金属(溶湯)を注ぐという鋳造によって生成さ
れる。鋳造欠陥は,溶融金属を注いでいる間にガスを取り除くことによって防ぐことができる。また,ゲ
ートを通過する溶融金属の中の乱流を抑制することは非常に重要である。レイノルズ数Reは乱流の程度
を示し,鋳造における理想レイノルズ数はよく知られている。カムシャフトの鋳造のロバストネスを評価
するために,望目特性のSN比を用いた。内側配列の各行の条件の下で,外側配列でのレイノルズ数のデ
ータを得るために,コンピュータシミュレーションを用いた。
内側直交表L18の第1行の条件下の外側配列でのデータセットの例を表B.17に示す。外側配列のノイズ
因子及びその水準を表B.18に示す。鋳型は,二つのランナー(湯道)をもっており,ノイズ因子の範囲は
生産工程の変動の要求範囲内に設定した。ここでは,制御因子及び最適化の詳細は議論しない。
表B.17−外側配列第1行でのレイノルズ数Reのデータセット
ノイズ因子 K1 K2 K3 K4 K5
I1 J1 5 749 5 900 4 722 4 552 4 070
J2 5 732 5 728 5 484 4 967 4 712
I2 J1 6 162 6 172 6 298 5 138 5 062
J2 6 069 5 278 4 392 3 104 3 879
表B.18−ノイズ因子及びそれらの水準
水準 1 2 3 4 5
ノイズ因子
I : 注入時の溶融金属温度 低 標準 − − −
J : ランナー 左 右 − − −
K : 溶融金属の充率 % 35 40 45 50 55
第1行のSN比及び感度は,表B.17のデータセットから次のように計算される。
全変動 :
ST 5 7492 5 9002 3 1042 3 8792 545 915 058 ( fT20)
平均の変動 :
2
5 749 5 900 3 104 3 879
Sm 531 736 028 ( fm )1
20
――――― [JIS Z 9061 pdf 62] ―――――
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Z 9061 : 2016 (ISO 16336 : 2014)
誤差の変動 :
Se ST Sm 545 915 058 531 736 02814 179 030 ( fe 19)
誤差分散 :
14 179 030
e
Ve 736 265
e 19
望目特性のSN比 :
1 1
Sm Ve 531 736 028 736 265
n
10 log 10 log20 15.51
Ve 736 265
望目特性の感度 :
1 1
S 10 log Sm Ve 10 log 531 736 028736 265 74.24
n 20
この場合,望目特性のSN比は,出力の安定性,すなわち,(レイノルズ数の平均の二乗)/(誤差分散)
の推定値を表している。感度は,出力の平均の大きさの推定値を示している。感度は,SN比によってロ
バストネスの最適化を行った後,2段階設計法の第2段階である出力の平均を目標値に合わせる調整を行
うために用いられる。
B.2.2 事例2 : 望小特性のSN比(プリンタの使いやすさにおけるロバストネスの評価)
この事例の目的は,製品開発又は製品企画段階において,顧客が容易に操作できるプリンタカートリッ
ジの最適設計を行うことである。プリンタカートリッジの使いやすさを評価するために,プリンタカート
リッジのイメージスケッチを提示して,10人の顧客による採点を行った。
採点は,次のような3段階で行った。
− 操作が簡単かつ容易 : 0点
− 操作があまり容易でない : 1点
− 操作が困難又は不可能 : 2点
使いやすさの採点は,点数が低いほど操作が容易なので,望小特性のSN比によって評価することがで
きる。
パラメータ設計のために,制御因子をプリンタカートリッジの操作手順から選択し,内側配列L18に割
り付けた。制御因子及び最適化の詳細についてはここでは議論しない。
外側配列及び採点データを表B.19に示す。顧客の操作方法及び使用環境から,三つのノイズ因子を選択
した。ノイズ因子はいずれも2水準であり,それらを直交表L4に割り付けた。表の合計点のデータは,内
側配列L18の列番号1の設計カートリッジについての10人の顧客による採点の総計である。
表B.19−プリンタカートリッジ設計における外側配列及びデータ
ノイズ因子 水準の組合せ
使用する腕 片手 片手 両手 両手
部屋の明るさ 明るい 暗い 明るい 暗い
プリンタ設置高さ 正面 足元 足元 正面
合計点 3 5 4 5
――――― [JIS Z 9061 pdf 63] ―――――
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Z 9061 : 2016 (ISO 16336 : 2014)
第1行のSN比は,表B.19のデータから次のように計算する。
平均二乗偏差 :
2 2 2
y1 y2 yr 32 52 42 52
2 18.75
r 4
望小特性のSN比 :
1 1
10 log 210 log 10 log 12.73
2 18.75
望小特性のSN比は,0の値からの偏差の二乗平均値,すなわち,目標値からの距離を示す。偏差の二
乗平均は,出力の全分散に相当する。望小特性において,感度は計算しない。
B.2.3 事例3 : 望大特性のSN比[BRN(酵素)生産菌の培地の改良]
BRNは,微生物が生み出す酵素の一種であり,ある種の成分を分解する能力(力価)をもっている。BRN
生産菌(生産菌である微生物)は,BRN製造用タンク(培地)において培養される。BRNの分解能力(力
価)は生産菌の能力に強く依存しており,高力価の酵素を生み出す菌類を見つけることが重要である。こ
のため,BRN生産菌を培養するための培地を改良するために,パラメータ設計を適用した。制御因子は,
培地組成条件から選択され,内側配列L18に割り付けた。制御因子の詳細は,ここでは議論しない。外側
配列の測定値からのSN比の計算についてだけ示す。
出力は総力価(U/mL)であり,これは1 mL中の規定成分を分解する能力の尺度である。総力価は大き
い程よい,望大特性である。性能及びロバストネスの評価のために,望大特性のSN比を適用した。ノイ
ズ因子は二つの菌株の種類を選択した。最適な培地とは,それぞれの種類の菌株に対して,大きい能力,
しかも,同じ能力をもっていることが望ましい。内側配列L18の第1行における外側配列の測定値を表B.20
に示す。
表B.20−外側配列の値
単位 U/mL
菌株の種類
R1 R2
5 030 5 340
望大特性のSN比は,表B.20の測定値から次のように計算する。
平均二乗偏差 :
1 1 1 1 1 1 1
2 2 2 .373 108
ry2
r y1 y2 2 5 0302 5 3402
望大特性のSN比η :
1 1
10 log 210 log 10 log 74.28
2 .373 10
8
B.3 デジタル特性のSN比(自動化された,単語による分類システムの改良)
顧客の声を幾つかのカテゴリに分類するための自動化システムは,多くの製品で音声認識システムの一
つとして使用されている。単語による分類は,そのような分類方法の一つである。例えば,サービス,販
売,競争,ソフトウェアなどの複数のカテゴリについて,分類するか分類しないかの二つの選択肢がある
――――― [JIS Z 9061 pdf 64] ―――――
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Z 9061 : 2016 (ISO 16336 : 2014)
と仮定する。初めに,一つのカテゴリでよく現れる単語を集め,各カテゴリの単語表に載せる。次に,あ
る顧客の声の中にそのカテゴリの単語表に載せられた単語が発見されたとき,その顧客の声はそのカテゴ
リに分類する。発見されないときには,そのカテゴリには分類しない。
単語が単語表の中に正しく選ばなかった場合,単語による分類には多くの誤りが生じる。ここで,誤り
には次の2種類がある。
− 誤り1(未分類) : 正しい状態では分類されるものが,単語システムでは分類されない。
− 誤り2(過分類) : 正しい状態では分類されないものが,単語システムでは分類される。
正しい分類すなわち正解には,次の2種類がある。
a) 正解1(分類する) : 分類されなければならないものが分類される。
b) 正解2(分類しない) : 分類されてはならないものが分類されない。
判断の四つのケースを表B.21に示す。単語システムによる分類の性能を評価するために,正しい判断が
必要である。ここでは,人による分類を正しい判断であると仮定した。
表B.21−二つの誤差の分類
単語システムによる分類
分類の方法 分類の結果
分類した 分類しない
人による分類 分類した 正解1 誤り1
(分類する) (未分類)
1−p p
分類しない 誤り2 正解2
(過分類) (分類しない)
q 1−q
2水準直交表を,単語表の中の各単語の分類に対する寄与率を評価するために使用する。各単語は,制
御因子として選択され,内側配列に割り付けられる。その水準については,水準1は単語を使用する場合
とし,水準2は単語を使用しない場合とした。単語の寄与率の大きさは,標準化SN比によって評価する。
SN比は,内側配列の各行について計算する。外側配列は表B.21と同様であり,表B.22の中にも示す。制
御因子の詳細は,ここでは議論しない。ロバストネスの指標であるSN比の計算だけを示す。
表B.22−データ表
単語 単語 単語 単語 単語 正解1 誤り1 正解2 誤り2
No. ···
1 2 3 4 N (分類する) (未分類) (分類しない) (過分類)
1 1 1 1 1 ··· 1 0.611 0.389 0.796 0.204
2 0 1 0 1 ··· 0 0.443 0.557 0.875 0.125
・ ・ ・ ・ ・ ··· ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ··· ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ··· ・ ・ ・ ・ ・
デジタル特性の標準化SN比は,外側配列のデータから次のように計算する。
標準化誤り率 :
1 1
P0 .0287
1 1 1 1
1 1 1 1 1 1
p q .0389 .0204
――――― [JIS Z 9061 pdf 65] ―――――
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JIS Z 9061:2016の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 16336:2014(IDT)
JIS Z 9061:2016の国際規格 ICS 分類一覧
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.30 : 統計的方法の応用
JIS Z 9061:2016の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ8101-1:2015
- 統計―用語及び記号―第1部:一般統計用語及び確率で用いられる用語