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Z 9061 : 2016 (ISO 16336 : 2014)
ISO 3534-3,Statistics−Vocabulary and symbols−Part 3: Design of experiments
3 用語及び定義並びに記号
3.1 用語及び定義
この規格で用いる用語及び定義は,JIS Z 8101-1及びISO 3534-3によるほか,次による。
注記 ISO 3534-3:2013に対応するJISはないが,ISO 3534-3:1999に対応するJIS Z 8101-3:2006があ
る。ただし,対応国際規格で引用している用語が定義されていないものがあるため,ISO 3534-3
を引用した。
3.1.1
機能(function)
システムが,その目的を達成するために行う働き。
注記 機能は,数学的な入出力関係で表現できる。
3.1.2
ロバストネス(robustness)
様々なノイズ条件の下で,システムの機能のばらつきの小ささの程度。
注記 システムの性能,すなわち機能のばらつきは,ロバストネスによって評価できる。SN比は,ロ
バストネスの定量的指標である。
3.1.3
信号対ノイズ比,SN比(signal-to-noise ratio)
出力の変動のうち,有害な効果に対する有用な効果の比。
注記1 SN比は,一般にデシベル値で表す。ロバストネスの指標としてのSN比の単位記号は,“dB”
ではなく“db”を用いる。
注記2 SN比の真数は,分散又は変動係数のようなばらつきの尺度の逆数であり,経済損失に反比例
する。
注記3 意図的な信号の変化による出力の変化は有用な効果である。理想機能がゼロ点比例式の場合,
ゼロ点を通る直線成分は有用な項である。
注記4 ノイズ条件などによる出力の変化は有害な効果である。例として,ノイズ因子の効果による,
理想機能からのかい(乖)離がある。
注記5 SN比には,ノイズ因子の下でのばらつき及び平均的な使用条件の下での理想機能からのかい
離を含んでいる。
3.1.4
感度(sensitivity)
入力の単位変化に対する出力の変化の大きさ。
注記1 感度は,一般にデシベル(db)値で表す。
注記2 動的特性の場合,線形係数を“β”で表したときに,感度は単位信号に関わる効果の大きさβ2
で表している。
注記3 望目特性の場合,出力の平均を“m”で表したときに,感度は平均値の大きさm2で表してい
る。
3.1.5
ノイズ(noise)
――――― [JIS Z 9061 pdf 6] ―――――
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Z 9061 : 2016 (ISO 16336 : 2014)
システムの機能を乱す変数。
注記1 システムの運用及び作動に関する使用者の条件は,信号又はノイズに分類される。
注記2 ノイズは,内乱と外乱とがある。内乱の例として,劣化,疲労などのシステム又はその部品
の時間経過による内部定数の変化,及び製造上のばらつきによる内部定数の違いがある。外
乱の例として,製品の使用条件及び環境条件の変化がある。
注記3 この規格では,実験においてノイズレベルを設定するための因子をノイズ因子(noise factor)
という。ノイズ因子は,誤差因子ともいう。
3.1.6
信号(signal)
システムの入出力関係において,意図した出力を得るために,使用者が意図的に変化させる入力変数。
注記1 システムの運用及び作動に関する使用者の条件は,信号又はノイズに分類される。
注記2 信号には,能動的信号と受動的信号との2種類がある。能動的信号は,使用者が意図した出
力を得るために,使用者によって操作される。例えば,車の方向を変えるためのハンドルの
回転角度がある。受動的信号は,使用者がその出力から入力の値を知るために使用される。
例えば,熱的測定の温度がある。いずれの場合も,出力の値は入力の信号の値が変化するこ
とによって変わる。ただし,能動的な場合には使用者は出力の値を得ることが目的であり,
受動的な場合には使用者は信号の値を知ることが目的である。
3.1.7
動的特性(dynamic characteristics)
信号の値によって変わる目標値をもつ出力。
注記1 動的特性と信号との関係は入出力関数形で示される。多くの場合,システムの機能からの出
力は動的特性である。
注記2 動的特性は,動特性ともいう。
3.1.8
静的特性(static characteristics)
固定された目標値をもつ出力。
注記1 静的特性は,目標値によって,望目特性,望小特性及び望大特性の3種類に分類される。そ
の目標値は,それぞれ,有限値,ゼロ及び無限大である。
注記2 静的特性は,非動的特性(non-dynamic characteristics)又は静特性ともいう。
3.1.9
内側配列(inner array)
設計パラメータが制御因子又は標示因子として割り付けられる実験計画。
注記1 それぞれの実験処理について,SN比及び感度を用いてロバストネスを評価する。
注記2 内側配列としては,直交表を用いるのが望ましい。なぜなら,制御因子として,多くの設計
パラメータを一連の実験の中に取り込むことができるからである。
注記3 実験に用いられる因子をそれらの役割によって分類し,パラメータ設計の中での役割に応じ
て,内側配列又は外側配列に分けて割り付ける。内側配列には制御因子及び標示因子を割り
付ける。
3.1.10
外側配列(outer array)
――――― [JIS Z 9061 pdf 7] ―――――
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Z 9061 : 2016 (ISO 16336 : 2014)
SN比及び感度を評価するために,使用者の条件である変数がノイズ因子又は信号因子として割り付け
られる実験計画。
注記1 システムの運用及び作動に関する使用者の条件は,信号かノイズかに分類される。
注記2 実験に用いられる因子をそれらの役割によって分類し,パラメータ設計の中での役割に応じ
て,内側配列又は外側配列に分けて割り付ける。外側配列にはノイズ因子及び信号因子を割
り付ける。
3.2 記号
f : 自由度 (degree of freedom)
k : 信号因子の水準数 (number of levels of signal factor)
L : 線形式 (linear form)
Li : 第i水準の線形式 (linear form for level of i)
M : 信号因子 (signal factor)
Mi : 信号因子の第i水準 (signal level of i)
Mi : 信号因子の第i水準の値 (value of the signal level of i)
N : ノイズ因子 (noise factor)
n : ノイズ因子の水準数 (number of levels of noise factor)
Ni : ノイズレベルの第i水準 (noise level of i)
p0 : 標準化誤り率 (standardized error rate)
r : 有効除数 (effective divisor)
S : 感度 (sensitivity)
ST : 全変動 (total sum of squares)
Sm : 平均の変動 (sum of squares due to mean)
Sβ : 比例項の変動 (sum of squares due to linear slope β)
SN×β : 比例項の差の変動 (sum of squares due to the variation of linear slope
β between noise levels)
Se : 誤差の変動 (sum of squares due to error)
Sopt : 最適条件における感度 (estimated value of sensitivity for optimum condition)
Sbase : 比較条件における感度 (estimated value of sensitivity for baseline condition)
Scur : 現行条件における感度 (estimated value of sensitivity for current condition)
Ve : 誤差分散 (error variance)
VN : 総合誤差分散 (variance due to pooled error)
y : 出力 (output response)
β : 線形係数 (linear slope)
ΔS : 感度の利得 (gain in sensitivity)
Δη : SN比の利得 (gain in SN ratio)
η : SN比 (SN ratio)
ηopt : 最適条件におけるSN比 (estimated value of SN ratio for optimum condition)
ηbase : 比較条件におけるSN比 (estimated value of SN ratio for baseline condition)
ηcur : 現行条件におけるSN比 (estimated value of SN ratio for current condition)
ρ0 : 標準化寄与率 (standardized contribution ratio)
――――― [JIS Z 9061 pdf 8] ―――――
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Z 9061 : 2016 (ISO 16336 : 2014)
注記 対応国際規格では,幾つかの英語表記が併記されているものがあるが,JISでは,代表的な日
本語表記及び英語表記に限定した。
4 ロバストパラメータ設計の概要
4.1 必要事項
ロバストパラメータ設計は,設計プロセスにおいて,ロバストネスを改善する技術的な手段を見いだす
ための合理的かつ効率的な評価方法である。そのため,次の二つの手順を踏まえることが必要である。
a) 正確かつ簡単にロバストネスを評価する手順
b) 複数の技術手段を効率的に比較する手順
この箇条では,ロバストパラメータ設計の概要について規定する。ロバストネスの評価及びパラメータ
設計実験についての詳細かつ具体的な手続きは,箇条5及び箇条6で規定する。
4.2 システムのロバストネスの評価
どのようにして,システムのロバストネスをSN比によって正確に評価できるのかについて考えると,
システムのロバストネスがそのシステムの多くの使用条件に関係しているため,単純な測定によって評価
することはできない。したがって,ロバストネスに関係する隠された要因を明確にするためには,次の二
つの観点で評価をしなければならない。
a) 理想機能の利用 理想機能は,システムが目的とする機能である。ロバストネスの評価において,シ
ステムの実際の機能を測定し,理想機能と比較しなければならない。システムの理想機能を実現する
ためには,欠陥,故障,又は品質問題を避けることが重要である。
b) ノイズ因子の活用 実際の使用状態でのシステムは,様々なノイズ条件の下で働いている。ノイズレ
ベルを変化させて実験の中に意図的にノイズの効果を取り入れるために,あらかじめ決めておいたノ
イズ条件の下でシステムの実際の機能を測定し,評価することが望ましい。ロバストネスの評価は,
ノイズ因子及びその水準の選択に強く依存している。このため,有効なノイズ戦略を立てることが重
要である。
システムの機能とは,目的を実現するために行われるシステムの働きである。例えば,電球の機能は電
気エネルギーを光エネルギーへ変換すること,風車の機能は風のエネルギーを水をくみ上げるなどの仕事
をするための回転エネルギーに変換することである。通常,機能は,入力エネルギーと出力エネルギーと
の関係を表す数学的な関数の形で表される。数学的な関数は様々な形で表される。ゼロ点比例式は,物理
の世界でエネルギー変換を表す関数として一般的である。詳細は,箇条5を参照する。
入力特性及び出力特性は,システムの理想機能によって決まる。入力特性は,入出力関係において信号
とも呼ばれる。実際の使用状態及びパラメータ設計の中では,出力の変化は,使用者が意図的に入力を変
化させることによって得ることができる。信号は,その機能を働かせるために必要なエネルギー又は情報
に関係している。信号因子は,システムの出力を制御するとき,入力を変化させるために使用者が選択す
る条件の一つである。動的特性の実験においては,信号因子は3水準以上をもつことによって,実際の入
出力関係の直線性を評価することができる。静的特性の実験においては,一つの目標出力しかないので,
信号因子は取り上げない。出力特性を単に出力という。
出力の適切な測定方法を決めることは重要である。例えば,時間に依存した現象では,出力を正確に検
出することが困難な場合がある。このような場合,新しい測定方法を開発しなければならない。出力は,
システムの目的に関係している。例えば,イルミネーションの場合では光の強度であり,水のポンプの場
――――― [JIS Z 9061 pdf 9] ―――――
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Z 9061 : 2016 (ISO 16336 : 2014)
合では水の量である。
システムの実際の機能を理想機能から外れさせるのが,ノイズ条件である。例えば,実際にシステムが
働く環境条件として,温湿度,使用時の電圧,電気的なノイズの状況,使用頻度,ストレスなどがある。
それらは外乱と呼ばれている。一方,時間経過,疲労など内乱と呼ばれているノイズ条件もある。例えば,
使用時間,アイドリング時間,長時間の使用後の劣化,システム及び/又は部品の製造ばらつきなどがあ
る。これらのノイズ条件は,システムの機能のパフォーマンスを,設計時に期待するレベルより低くする。
ロバストネスの評価の目的はこの低下量を知ることであるため,ロバストネスの評価においては,ノイズ
条件の下でのシステムのばらつきを評価しなければならない。これが,パラメータ設計の実験の中でノイ
ズ条件をノイズ因子として取り上げる理由である。ノイズ因子の三つのカテゴリは,a) 環境,b) 時間経
過及び c) 製造のばらつきである。有効なノイズ戦略のために,実際の使用条件及び環境条件の中で,様々
な種類のノイズを調べることが必要である。
ノイズ因子を用いたロバストネスの評価の概要を図1に示す。ここでは,ノイズレベルN1Nnの下で
の複数のデータX1Xnが対象システムから得られ,ロバストネスの尺度としてSN比ηを計算する。SN
比の計算式は,箇条5に示す。二つ以上のシステムを比較する場合は,全ての対象システムに同じノイズ
因子で同じノイズレベルを適用することが望ましい。
ノイズ因子
対象システム データ
ノイズレベル
N1 N2 ··· Nn SN比
評価されるシステム X1 X2 ··· Xn η
Ni···ノイズの第i水準
Xi···データ
図1−ノイズ因子によるロバストネスの評価
実験において複数のノイズ因子を適用する場合は,実験のノイズレベルを決めるために直交表を活用す
ることができる。図2では,ノイズレベルN1Nnは,直交表によって決まる,A,B,Cなどのノイズ因
子の水準の組合せである。ノイズレベルを決めるために,直交表以外を利用することもできる。
――――― [JIS Z 9061 pdf 10] ―――――
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JIS Z 9061:2016の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 16336:2014(IDT)
JIS Z 9061:2016の国際規格 ICS 分類一覧
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.30 : 統計的方法の応用
JIS Z 9061:2016の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ8101-1:2015
- 統計―用語及び記号―第1部:一般統計用語及び確率で用いられる用語