JIS A 1412-2:1999 熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法―第2部:熱流計法(HFM法) | ページ 6

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及びq"を計算するのに展開式を用いられることが知られている。
平均値q=0.5 (q'+q") から,保護熱板法装置による熱伝導率の測定値の平均値 次の式のようにな
り,
dm
M q
T
更に, T) なる比が単位温度差よりはるかに大きく, 内に限られる場合は,次の
うに示す
ことができる。
2
m d 2 T d 2 T 〓(T) T
M 2
1 (C1)
d m dm T dm T !3 m 2
1
dm
もし, 0ならば
2 T (T) T
M m 1 (C2)
T m !3m 2
校正の目的には, もし未知ならば0.02と仮定し, 内の違いでなけ
ばならない。
C1.2 試験体1枚非対称構成方式 最初に第一の試験体を熱流計法装置に取り付けてe', T1'及びT2'を測定し
ついで第二の試験体を取り付けて同じくe", T1"及びT2"の測定を行う。ただし,e'及びe"はそれぞれ熱流計
の出力である。d'とd"についても求めることが必要であるTm', Tm", Tm, , び 湫
定義は,前に述べたのと同じであり,したがって,次の関係式が得られる。
T' T'
T1 'Tm Tm T2 'Tm Tm
2 2
T" T"
T1 "Tm Tm T2 "Tm Tm
2 2
ここに,Tmは両方の試験での平均温度。 び での温度差。 潔獗 とTmと
の差である。
もし,両方の試験が,理想的な諸条件の下で行われるならば 0となり, =
いま
m m'
' m
d'
m
" "m m
d"
とし,再び第1回目の試験の熱流密度q=e'fと,第2回目の試験のq"=e" fとの各べき展開式の第1項
ずつを取るようにすることによって,q=0.5 (q'+q") を計算して感度係数fを求めることが可能となり,
次の式が得られる。
2 2 泰 (T)
f 1 ( T'2 T"2 ) (C3)
e' e" !3 m
' T' " T"
の試験体についての実際の熱コンダクタンスではなくて,通常は未知のものであって,

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d', d"及び 替 定義されたものであることを認識しておくことが大事である。
校正は括弧内の項の1からの差が0.2%以内になるように実施するべきである。
C1.3 試験体1枚対称構成方式 各熱流計法の校正については,試験体1枚非対称構成の方式と正確に同
様であり式 (C3) と類似した二つの式が得られる。
なお,それぞれの場合においてf, e', e"は,それぞれの平均温度での各熱流計に対する値である。
C1.4 試験体2枚対称構成方式 非対称試験体1枚方式の構成に対する式 (C3) が再び適用される。ただ
し,e'とe"は共に校正すべき熱流計の出力eで置き換えるようにする。
この場合,q'=q"=efとなり, /2及び ∀一 地估
備考 このことは,C1.2及びC1.3の場合においても,1対の試験体をまとめて1個としたものを用い
て,ここで述べたように式 (C3) を用いて処理できる。
C1.5 校正曲線 大抵の熱流計は,温度の影響を受けるものであり,感度係数は温度によって変化すると
考えられる。したがって,上記のような測定は,熱流計装置の温度領域をカバーするようにいろいろな温
度の場合について繰り返して実施することが必要であり,校正曲線又は方程式が必要である(それらは,
感度係数と熱流計装置の温度との関係を示すべきものである)。
熱流計の起電力とqとの間の直線的関係をチェックするためには,熱抵抗の著しく異なった少なくとも
2個,又は3個の試験体を用いて校正を行うことが必要である
q=F (e) になる式が,直線的(こう配はf)でないなら,fはqによって変化するのであり,そのような
非線形の原因と考えられる理由についてチェックした後に計算するようにする(例えば,端面熱損失が大
き過ぎるような場合にこの種の現象が生じる。)。
熱流計装置へ取り付けるべき熱流計の感度及び直線性の自前調査は,その熱流計を校正用標準板の間に
サンドイッチ状に挟んで保護熱板装置(試験体1枚方式の装置が好ましい。)を用いて行うことができる。
C.2 測定装置の設計
C2.1 必要性能 熱流計法装置の設計は,次のようなパラメータについて認識した上で行う。
− この装置で試験する試験体の最小及び最大の厚さ
− 試験体の最小及び最大の熱抵抗
− 試験体にかかる最小及び最大の温度差
− 冷却熱板の最低温度
− 加熱板の最高温度
− 想定される最悪の条件下で最大許容誤差を生じるときの装置全体の正確さ及び再現性
− 周囲環境
− 熱流計法測定装置の種類
− 熱流計の感度係数, 攀 一 W・m−2)
C2.2 測定装置の寸法の試験的な設定 最初の試みとしては,熱流計の測定領域の一辺の長さLmを試験体
の最大厚さの4倍とし,外側の長さLの最大厚さの8倍となるようにする。
C2.3 熱板 試験体の熱抵抗が最小で,試験体にかかる温度差が最大の場合に熱流計を通過する熱流は最
大値となる。端面熱損失及び各熱板から周囲に向けて移動する熱量を加算する。次に,本体2.2にのべた
ような温度の均一性が得られるように,加熱板,冷却熱板,作用表面の金属板の厚さ及び冷却液体(使用
される場合には)の質量流量を決定する。

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C2.4 熱流計 厚い試験体で端面熱損失が比較的大きい場合に,熱流計の端面表面温度を低下させたり,
熱流をゆがませたりすることのないようにするため,試験体に接する側の熱流計の表面温度が確実に均一
となるように設計する。また,熱流計のコア内に平面方向の熱流を発生させないようにする。コア部に平
面方向の熱流が生じると,熱電対の出力は試験体内の熱流に比例しなくなることが考えられる。
C2.5 詳細設計 装置の大きさ又は寸法に対する満足すべき値は,まず次のようなパラメータから決める。
− 試験体の最小厚さに対応する表面の許容度の決定。
− 放射率を0.8又はそれ以上にするための表面処理法(室温において酸化した金属表面及びペイント処
理による。)。
− 温度測定用センサの位置及びその取付け法,ヒータの配置,結線法,機械的接合法,厚さ測定装置な
どの詳細についての決定。
− 冷却熱板の最低温度及び加熱板の最高温度に応じた冷却システム及び加熱システムの選定。
− 装置について許容される最大の温度ドリフト及び温度変動に対応する温度自動制御システムの選定。
− 環境条件を希望の状態に整え,端面熱損失誤差を決められた値以内に保つための環境調整システムの
選定。
− 熱流計の形式と,その特性の選定(附属書D参照)。
C3. 性能確認
C3.1 平滑性 作用表面の平たんさは,その面の幅又は直径より大きな長さの鋼鉄製の直線定規を用い,
それを表面に当て,その背後から光を照射して調べることによってチェックすることができる。25
度の小さなゆがみも容易に認めることができ,更に大きなゆがみについてはすきまゲージ又は薄い紙を用
いて測定することができる。
C3.2 計算回路 直接読取り形の機器を使用する場合には,電気回路の校正を行うことが必要である。校
正用の出力端子をもつ独立した電圧源又は計器が,熱電対,温度センサ及び厚さ測定用の変換器の代わり
に用いられる。これらの電圧回路を切り換えて挿入するために高品質のスイッチ又はそれと同等のものを
回路内に備える。校正のチェック用としては二つの試験回路を準備する。そのうちの一方の回路はレンジ
の0%から10%の間の校正を分担し,もう一方では90%から100%のレンジの校正を行うようにする。直接
読取り型の機器の場合には,次回の試験を行う前にチェックするようにする。測定結果については,本体
3.5に示すようにその概要を報告する。
C3.3 熱流計
C3.3.1 予備試験 新しい熱流計又は改修の行われた熱流計は,次のような特性について試験を行うことが
必要である。
a) 零オフセット 熱流が零の場合において熱電対からの出力が零でない場合には,その原因として次の
ようなことが考えられる。
1) 低出力の測定用熱電対の電気的な接続不良。この形式のドリフトは温度依存性をもつものであり,
問題の解決のためには接続状況を改善するようにする。
2) 加熱板及び冷却熱板の温度の不均一性をチェックする。すべての操作条件下で,限度内に入ってい
るものとする。
b) 熱流計内のドリフト現象 この現象は,材料の経時変化やはく離現象によって生じることが考えられ
る。
c) 感度係数の温度こう配 これは温度差用の検出器内に使用されている温度検出器の形式(熱電対に使

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用されている熱電対材料の種類)又は測定用平板として使用されている材料の種類によって変化する
ものである。
d) リード線を伝って流れる熱流 このような熱流の存在する場合も考えられる。
e) 感度係数に及ぼす試験体の熱伝導率の影響(熱流計の直線性領域への影響) 熱電対の金属巻線間の
熱抵抗が小さいために生じる素線間の“熱的短絡現象”及び巻線によって生じさせられる熱流の集中
現象等は,いずれも熱流計の感度係数の変化の原因となる。
f) 感度係数に対する荷重圧力の影響(附属書D参照)
g) 温度差検出からの出力の非直線性
C3.3.2 補正 操作範囲で1%以上の変化の生じた場合には,いずれの場合に置いても補正を行うことが必
要となる。補正には,操作範囲内で変化が0.3%となるようにすることが望ましい。
C3.4 校正のドリフト 新しく熱流計装置が製作された場合には,その校正は少なくとも各週1回の割合
でチェックする。連続して行われたチェックの結果がよく一致するようであれば,チェックの頻度は減少
させてもよい。
標準板による校正試験で得られた校正の記録は保管しておく。この記録は,装置の時間の関数としての
再現性を示すものでもある。その結果が標準板の熱抵抗の測定値に対して±1.0%以上の違いを示すような
場合には,装置の各制御部(各熱板の温度など)を点検する。また,必要なら新しい感度係数及び方程式
を決める。
この装置が一定の平均温度で,何等かの形式の熱絶縁材製品の日常の品質管理目的に使用されるような
場合には,上記のような方法のほかに,更に同一製品から作った二次標準板を用いての日常校正チェック
を考慮する。
いずれの場合においても,校正値が何等かの連続的なドリフトを示すようであれば,それについて注意
深く調査して,そのドリフトの原因を突きとめ問題を解決するための行動をとるようにすることが必要で
ある。
C3.5 全体としての性能のチェック この方法で得られた測定結果は,装置についての限界が知られてい
る場合に限って保証されるものである。それらの限界を明らかにするためには,評価すべき材料と同じよ
うな熱的性質をもつ材料について,それぞれ得られた結果を比較して,その性能の確認をするようにする
必要がある。
C3.5.1 単一の標準だけでは深刻な誤差の生じる心配がある。試験すべき値の範囲をカバーするように,い
ろいろの大きさの伝熱特性をもつ一連の材料でチェックするようにすることが望ましい。
C3.5.2 この装置で,標準材料の厚さより大きな寸法のものを測定しなければならない場合には,一連の測
定を行って,ガードが不十分なためにおこる水平方向の熱移動による誤差が付加されるか否かを確かめる
必要がある。簡単な方法は,絶縁層間に放射に対して不透明な隔壁を挿入して,それぞれ一次標準法で測
定する方法である。誤差のないことが認められ,さらに,赤外線の再放射が行われないならば,この測定
によって求められた平均の熱抵抗値は個々の熱絶縁試験体について求められた平均熱抵抗値と等しくなる
はずである。

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附属書D(参考) 熱流計
この附属書(参考)は,熱流計について記述するものであり,規定の一部ではない。
D1. 熱流計の式 ほとんどのこう配型熱流計では,コア材にかかる温度差を測定するのに熱電対が使用さ
れている。
指定された平均温度T0を出発点として,コア材の熱伝導率 T0) と熱電対の熱起電力e (T) とも,べき
級数の展開式で表すことができる。
計算の結果,校正係数f (T) は,コア材の熱伝導率と起電力の温度微分係数の関数として,べき級数展開
式で表すことができる。さらに,熱流計の機械的な圧縮も考慮して,最終的に次のように書くことができ
る。
2
fu(T0 ) P f (T) e
f(T) 1 1( a)
due n E f (T0 ) e !3
ここに, T0) : 荷重のかからない状態のコア材の熱伝導率を示す級数展開式の第1

f (T0) : 同じ級数に使用される2階温度微分
, : 同じ級数に使用されるサーモパイル1接点の電圧出力の1階
と3階の温度微分
du : 荷重がかからないときの熱流計の厚さ
n : サーモパイル接点の数
燿 接点の温度と熱流計の平均温度との差
P : 熱流計に荷重をかけたときの圧力
E : コア材のヤング率
懿 熱流計に荷重をかけたときの T0) のパーセンテージ変化と
それに対応する密度のパーセンテージ変化の比
コア材が硬質の場合には,P/Eは通常の操作条件では通常0とみなしてよい。
ここに導かれたfの式は,すべてのパラメータの実際の数値と共に使用すれば,新しい熱流計の設計又
は指定の誤差内での操作範囲の規定に役立てるものである。
己 通常0.001よりも小さく 歙 (熱電対の温度差は10K
f (T) 一 T0) 0.0001よりも小さくなる場合がある。
f (T0) 一 T0) は,通常0.01よりも小さい値であり, 歙 には,
も小さい値にさえなる。f式中の大部分の項は温度依存性をもっている。測定の平均温度が変化するとき
に熱流計法装置を校正する場合,係数fの変化が生じるかもしれないが,熱流の広い範囲で使用すること
ができる。すなわち,温度差が大幅に変化しても温度差に対する校正を必要としない。しかし,どのよう
な温度差から結果に影響が生じるかを求めておくことが賢明である(附属書C1.5及び附属書C3.3参照)。
D2. 熱流計の応答性 熱抵抗の大きなこう配型熱流計は試験体1枚構成装置に適している。緩衝シートの
有無にかかわらず,隣接する熱板の温度に比較的近づけて保持される。試料が試験平均温度に調整され,
各熱板の温度が制御され,更に各熱板が試料を加熱と冷却を共にする場合には,応答性が迅速になる。
高抵抗の熱流計にかかる温度降下は,試験体2枚構成装置で使用する場合には,全体の温度差の1%よ

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JIS A 1412-2:1999の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 8301:1991(MOD)

JIS A 1412-2:1999の国際規格 ICS 分類一覧

JIS A 1412-2:1999の関連規格と引用規格一覧