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最初の場合は,苦情原因の広範囲な調査が必要であり,しばしば個別のケースに沿ったサンプリング方
法の適用が必要である。また,b) e)の状況では,サンプリングが始められる前に,物質を決定するため
の情報がある場合が多く,この場合扱うことがより容易になる。
物質の性質及びその濃度が人間に与える影響によって,測定のための条件設定が異なる。刺激物の健康
影響に及ぼす評価については,最大許容暴露量の短時間平均値が重要である。長期間の健康影響をもつ化
学物質(例えば,発がん性化合物)の場合,長時間の平均暴露量が重要である。
5 サンプリング手順
測定器は,一般にそのサンプリングに適しているだけでなく,測定器の大きさ,サンプリング量及び発
生騒音の面でそれが使われる部屋に対し,悪影響を及ぼさないことを前提とする。外気用のサンプリング
方法は,装置の大きさ,サンプリング量及び発生騒音について居室の通常利用に悪影響がない場合には室
内空気のサンプリングに使用することができる。これは,特に住宅のモニタリングで重要である。この場
合,使われる器具は騒音が小さく,サンプリング量が標準的な換気量を妨害しないことが望ましい。器具
の配置に関しても,室内の空気の濃度が均一でない可能性もあるという事実を考慮すべきである。
サンプリング時間の決定は重要な因子である。測定方法によってはサンプリング時間が異なることによ
って,測定した結果の解釈に影響をもたらすことになる。
室内空気の1時間当たりのサンプリング量は,換気量の10 %以下とする。もし換気量が分からないか,
又は測定できないときは,室内空気の1時間当たりのサンプリング量は,部屋容積の10 %以下とすること
が望ましい。
長時間にわたって(例えば,8時間)物質の平均濃度を測定するためには,長時間サンプリングに向か
ないポンプサンプリングの代わりに,パッシブサンプラを使ってもよい。しかし,パッシブサンプラは指
定された表面気流速度が維持されるような,適切な換気が行われる場所でだけ使うように細心の注意を払
うべきである。ポンプサンプリング,パッシブサンプリング共にJIS Q 17025のとおり,適切な品質保証
手順に従うものとする。
注記1 通常,短時間のサンプリングは最高1時間のサンプリング時間を意味し,長時間のサンプリ
ングは,数時間から数日までに及ぶものをいう。
注記2 サンプリング手順は,次のJISに規定されている。
JIS A 1961 室内空気中のホルムアルデヒドのサンプリング方法
JIS A 1962 室内及び試験チャンバー内空気中のホルムアルデヒド及び他のカルボニル化
合物の定量−ポンプサンプリング
JIS A 1963 室内空気中のホルムアルデヒドの定量−パッシブサンプリング
JIS A 1964 室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)のサンプリング方法
JIS A 1965 室内及び試験チャンバー内空気中揮発性有機化合物のTenax TA吸着剤を用
いたポンプサンプリング,加熱脱離及びMS又はMS-FIDを用いたガスクロマトグラ
フィーによる定量
JIS A 1966 室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)の吸着捕集・加熱脱離・キャピラリ
ーガスクロマトグラフィーによるサンプリング及び分析−ポンプサンプリング
JIS A 1967 室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)の吸着捕集・加熱脱離・キャピラリ
ーガスクロマトグラフィーによるサンプリング及び分析−パッシブサンプリング
JIS A 1968 室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)の吸着捕集・溶媒抽出・キャピラリ
――――― [JIS A 1960 pdf 6] ―――――
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ーガスクロマトグラフィーによるサンプリング及び分析−ポンプサンプリング
JIS A 1969 室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)の吸着捕集・溶媒抽出・キャピラリ
ーガスクロマトグラフィーによるサンプリング及び分析−パッシブサンプリング
6 サンプリングの時間
測定結果を評価するとき,空気汚染物質の濃度の時間変化を考慮に入れることが必要である。たばこ煙
及び化学物質(例えば,洗浄剤)は,それらを汚染の評価対象としない場合,サンプリング前に取り除い
ておく。
サンプリングの時間を選択するに当たって,注意する重要な因子は換気,汚染源の使用状況,居住者の
有無,居住者の行動,室内の状況(室内の仕上げ,その状態など),温度及び相対湿度である。
外気が室内に比べ対象物質で汚染されていないときは,室内空気中の汚染物質の濃度は窓を開放するこ
とによって必然的に減少する。同時に,それまでに達した平衡を乱すことになる。
短時間のサンプリングで,換気のすぐ後に開始する場合は,代表する値を得られない。もし測定すべき
物質が,一定して連続的に放散される場合には,窓を開け換気後,平衡に達するまで数時間を必要とする。
このことは,長時間のサンプリングにも重要となる。しかし,サンプリングが実際の居住条件下で長時間
行われる場合は,短時間のサンプリングほどには重要とはならない。
上記の理由のため,換気終了後のサンプリング開始時刻を考慮して,慎重にサンプリングの時刻を計画
することは重要である。もし重大な問題がない場合には,短時間サンプリングは,換気後サンプリング操
作を始める前に,数時間待たなければならない。個別のケースで選択される時間間隔の指標は,特定の物
質又は物質群に関連する日本工業規格(日本産業規格)に規定されている(JIS A 1961及びJIS A 1964)。
間欠発生源から放散される空気汚染物の場合,サンプリング時間は,サンプリング目的に依存する。そ
の目的が最大暴露量の生じる時間に対応するか,又はより長い時間の平均暴露に対応するかである。
建物又は部屋が暖房・換気・空調システムを備えている場合は,別な考慮が必要である。例えば,換気
システムから汚染(例えば,シール材,加湿器の水,ほこりの堆積から)が生じるかもしれない。特に再
循環率が高い場合は,望ましくない汚染が,建物内のある部屋から他の部屋にもたらされるかもしれない。
空調システムによって導入された外気が,(例えば,隣接地の放散源によって)汚染されているかもしれな
い。連続運転されていない場合,サンプリングを始める前に少なくとも3時間は,換気システムの通常能
力で運転しなければならない。
7 サンプリング頻度
サンプリングの継続時間は,次によって決定される。
− 分析対象成分の性質
− 対象物質の潜在的な健康影響
− 放散源の放散特性
− 分析手法の定量下限
− 測定目的
多くの場合,特に2,3回のサンプリングで済まされる場合,同時に五つの全ての項目を考慮せず,妥協
することが必要である。
サンプリング時間の選択は,対象とする物質の健康への影響の見地から特に重要である。物質が健康へ
の急性的な影響をもつ場合,短時間のサンプリングを使うことが望ましく,物質が健康への慢性的な影響
――――― [JIS A 1960 pdf 7] ―――――
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を起こすなら長時間のサンプリングを使うほうが望ましい。
長時間のサンプリング方法は,短時間の濃度のピークを検出しない。特に物質が健康に対する短期的影
響ももつ場合,測定結果の解釈を困難にする可能性がある。
放散源の放散特性との関係で,放散源からの放散が短時間であれば,短時間のサンプリングによって定
量できることは明らかである。長時間の放散の放散源は,同じく長時間のサンプリングをするのが最も望
ましい。しかし,この一般的な規則からそれることはよく起こり得る。例えば,殺虫剤をスプレーしたと
きの短時間ピーク濃度は,短時間のサンプリングによって定量される。しかし,部屋の中の残留濃度レベ
ルが主要な目的であれば,長時間のサンプリングは,スプレーした後から行うことが適切である。
また,疑われる放散源の放散特性が,最初は未知であることがある。このような場合,連続した測定量
[例えば,水素炎イオン化検出器(FID)又は光イオン化検出器(PID)を使った一定時間のガスの総揮発
性有機化合物量]の記録がサンプリング方法を決めるための有用な情報となる。
サンプリング時間は,選ばれた分析手法の定量下限によって決定する。すなわち,サンプリング時間内
に捕集された分析対象成分は,明確な同定と信頼できる定量分析がされるべきである。また,より長時間
にわたりサンプリング時間を延長することによって,捕集された分析対象成分の量が必ずしも十分には増
加しないことに留意すべきである。目的が短時間だけの間欠放散源からの化合物の濃度を決定する場合に
は,24時間サンプリングの場合と同量の物質が,1時間サンプリングで捕集される可能性がある。さらに,
サンプリング時間の選択が不適切であるために,その情報が失われる可能性もある。
サンプリング時間は,(例えば,基準又はガイドライン値が濃度評価時間とともに指定されたケースで
は,)分析者に任せてもよい。例えば,ドイツでは,テトラクロロエチレンの場合,1週間平均値の上限値
が0.1 mg/m3として定められている[9]。その平均時間はドライクリーニング店に隣接している部屋で,平
日と休日との間で変化する週全体の放散レベルパターンをカバーするために定められた。
費用の理由で,一部屋で実施されるサンプリングの数は一般に少ない。一方,一つ(又は2,3点だけ)
のサンプリング結果を調査対象の部屋内の代表的状況としてみなす傾向もある。このような状態で,結果
が平均又は極端な状態を反映するかどうか判断することを可能にするために,結果に影響を及ぼす因子に
ついて可能な限り多くの関連情報を合わせて記載することが不可欠である。
極端な状態(例えば,換気が少ない,高温)での最大暴露量を推定するために,短期間のサンプリング
が実施されることが多い。長期間のサンプリングは,標準的な居住条件の下の,汚染の状態を測定するた
めに用いられることが多い。サンプリング時の部屋の使用状況などを正確に記録しなければならない。
総合的な評価のためには,短時間のサンプリングと長時間のサンプリングの両方を行わなければならな
い。評価は季節の相違を含めて,換気パターン及び部屋の使用状況による濃度の変化を考慮する。このこ
とは,ホルムアルデヒドと微生物の場合は,特に重要である。
ホルムアルデヒドの場合では,尿素/ホルムアルデヒド樹脂で接着している木質建材などからのホルム
アルデヒドの放散が,温度及び相対湿度によって影響を受けるので,濃度の季節変化が特に重要である(箇
条3参照)。
最終的なサンプリング計画は,利用可能な器材・人員,経費,データ必要事項及び調査が実施できる時
間に必然的に依存する。
8 サンプリング場所
濃度の時間変化に加えて,場所の違いによる温度分布についても同様に考慮する。すなわち,建物中で
実施する測定については,部屋の選択だけでなく,その部屋の中で適切な場所を指定することが必要であ
――――― [JIS A 1960 pdf 8] ―――――
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る。部屋の選択は,測定の目的に依存する。また,空調システムが設置されている建物では,導入外気と
排気の測定によって,空気の汚染物の放散源が分かる。
室内の汚染源を識別することがしばしばサンプリングの目的であるが,重要な点は一般に,汚染物によ
る居住者への暴露量を決定することである。サンプリング前に,サンプリング装置を最も適切な場所に設
定することは,全ての場合に可能ではない。個人の住宅では,リビンクと寝室から選択される。放散源が
居住者の特定の活動と結びつけられ,特に汚染を引き起こしている活動がリビングで起こるのであれば,
リビングでのサンプリングは,しばしば有用である。しかし,寝室は人々が最も多くの時間を過ごすとこ
ろであるから,長期間にわたる放散源(例えば,建築材料)からの暴露は,寝室でのサンプリングによっ
て十分に特徴を把握できる。個人の住宅のサンプリングでは,測定によって部屋の使用に支障がないよう
にすることが重要である。
大きな部屋(ホール,大きな事務所など)のサンプリングの場合,サンプリング場所の選択及びサンプ
リング結果を評価するには,一つの部屋を区分して,それぞれの場所でサンプリングすることも考慮しな
ければならない。特にこれは短時間のサンプリングで適用される。
リビングが屋外の汚染源(例えば,ドライクリーニング店など)に,より近い場合は,寝室だけサンプ
リングすることは,論理的ではない。
部屋の中心は一般に,サンプリングのための最も適切な位置であると考えられる。しかし,これが不可
能ならば,サンプラは壁から1 m以上離すべきである。平均的な呼吸域(座ったときも考慮して)は床上
0.751.5 mであるので,サンプリングはこれとほぼ同じ高さで行うのがよい。例えば,ガス調理器からの
放散を測定するときなど,特別な状況では,位置設定の変更が必要になる可能性がある。これらの放散は,
室内空気の熱移動を起こすとともに顕著な濃度勾配を形成する。例えば,ガス調理器を用いている場合,
調理器より下の位置では,上の位置に比べ顕著に低いNO2濃度が観察される。このような濃度勾配は他の
放散源から生じることもあり,部屋での放散源を見付けるために使用することができる。このために,部
屋を異なった場所に区分すること,そして同時にそれぞれの場所でサンプリングすることが推奨される。
しかしながら,このような手順は部屋内部の各々の場所での換気条件が同様な場合だけ有効である。しか
し,このことは,いつでも適用できるとは限らない。機械換気の場合は,適用できない場合が多い。居住
住宅では,サンプリング装置が人の影響をできるだけ受けないよう注意したほうがよい。
換気の性能と範囲に依存する空気の動きはサンプリング点を決定するために,非常に重要である。パッ
シブサンプラが使用される場合は,特に注意が必要である。大きな断面積をもつパッシブサンプラ(いわ
ゆるバッジタイプのサンプラ)を使うとき,特に部屋の隅角部で起こり得るような,表面気流速度があま
りにも低い場合,低い濃度の測定結果となる可能性がある。直射日光を受けるところ,暖房器の近く,気
流を感じるところ及び換気経路に当たるところに置くことは,結果に影響を与えるので避けなければなら
ない。
9 並行して行われる外気のサンプリング
屋外での測定は,漏気及び換気による室内と外気の交換が行われているので,室内空気測定を補完する
ために重要である[10](可能なら建物内のサンプリング位置と同じ高さで)。
条件によっては,汚染源が確認されることがある。外気のサンプリング場所は,建物の近くとするが,1
m以上離したほうがよい。
このようなサンプリングにおいて,例えば,ビルの谷間での車両排気ガス成分のために,垂直の濃度勾
配が生じる可能性があることに留意したほうがよい。建物に空調システムが設置してある場合,外気は,
――――― [JIS A 1960 pdf 9] ―――――
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外気取入れ口の近くでサンプリングしたほうがよい。
サンプリング時における風向及び風速,その他天候の情報は重要である。
――――― [JIS A 1960 pdf 10] ―――――
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JIS A 1960:2015の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 16000-1:2004(MOD)
JIS A 1960:2015の国際規格 ICS 分類一覧
- 13 : 環境.健康予防.安全 > 13.040 : 気質 > 13.040.20 : 雰囲気
JIS A 1960:2015の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISQ17025:2018
- 試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項