JIS A 1966:2015 室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)の吸着捕集・加熱脱離・キャピラリーガスクロマトグラフィーによるサンプリング及び分析―ポンプサンプリング | ページ 2

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注記1 破過容量は,気体及び吸着剤の種類によって変わる。
注記2 参考文献[4]参照
3.2
保持容量(retention volume)
クロマトグラフのキャリヤーガスによって,サンプラから溶出した少量の有機ガス成分のピーク頂点が
現れるまでに流れたキャリヤーガスの体積。
3.3
安全試料採取量(SSV: Safe Sampling Volume)
使用するサンプラの最大試料採取量。破過容量の70 %又は保持容量の50 %に等しい採取空気の体積。

4 原理

  試料空気を一つ(又は直列に接続した複数)のサンプラに体積を測定し吸引する。このとき,適切な一
つ(又は複数)の吸着剤を分析対象成分又は混合物用に選択するようにする。適切な吸着剤が選択されれ
ば,揮発性有機化合物(VOC)はサンプラに捕集され,空気流から除去される。各サンプラに捕集された
成分は,加熱によって脱離され,不活性キャリヤーガスによってキャピラリーカラム及び水素炎イオン化
検出器又は他の適切な検出器付きのガスクロマトグラフに送り,分析される。校正はサンプラに添加した
液体又は気体を用いて行う。

5 試薬・材料

  分析では高純度の分析用試薬だけを用いる。検量線用混合溶液は,1週間ごとに調製することが望まし
い。また,アルコールとカルボン酸間との縮合反応のような劣化がみられれば,更に間隔を短くして調製
する。

5.1 揮発性有機化合物(VOC)

  VOCは,サンプラへの標準液体添加(5.7及び5.8)又は標準空気添加(5.45.6)に使用する検量線用
試薬として必要である。

5.2 希釈溶媒

  希釈溶媒は,標準液体添加(5.7)に使用する検量線用混合溶液の調製に必要である。クロマトグラフ用
品質のものとする。また,分析対象成分のピークと重なる成分を含まないものとする(5.1)。
注記 通常,メタノールが使用される。化学反応又はクロマトグラム的に重なる可能性が特になけれ
ば,代わりに他の溶媒が使用できる。

5.3 吸着剤

  吸着剤は,粒径0.180.25 mm(6080メッシュ)が推奨される。各吸着剤は,サンプラに充する前
に,不活性ガス流のもとで最高使用温度より少なくとも25 ℃低い温度で一晩加熱して,前処理する。こ
れらを清浄な空気のもとで室温まで冷却した後サンプラに充し,保管するのがよい。可能であれば,分
析時の脱離温度はエージング条件よりも低く保つことが望ましい。
あらかじめ充された市販のサンプラを使用することが可能であり,この場合は前処理だけが必要であ
る。
注記1 0.180.25 mmより大きな粒径の吸着剤を用いることができる。しかし,表1表6に示す破
過特性に影響を与える。これより小さい粒径の吸着剤は,背圧の問題で勧められない。
注記2 吸着剤の詳細を附属書Cに記載し,吸着剤の選択指針を附属書Dに記載する。同等の吸着剤

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を使用できる。吸着剤の前処理及び脱離条件を,附属書Eに記載する。

5.4 検量線用標準

  検量線用標準は,必要量の分析対象成分が含まれた標準空気をサンプラに添加して調製する方法(5.5
及び5.6参照)が実際のサンプリングに最も類似するため望ましい。
この調製方法が使えない場合は,次のいずれかの方法によって精度を確認した液体添加法(5.7及び5.8
参照)を用いて調製してもよい。
a) 質量及び/又は体積の一次標準に完全にトレーサブルな添加量を与える手順が確立されている方法
b) 標準物質によって確認されている方法
c) 標準空気を用いて作成された標準によって確認されている方法
d) 標準測定方法での結果によって確認されている方法
注記 5.6,5.7及び5.8に示された添加量は,例である。特に低濃度の測定のため,より大容量を吸引
する場合は,別の添加量でもよい。

5.5 標準空気

  標準空気は,既知濃度の対象成分から独自の方法によって調製する。ISO 6141及びISO 6145規格群に
おける規定の方法が適切である。この方法での生成濃度が一次標準(質量及び/又は体積)へ十分なトレ
ーサビリティを確立できない場合,又は発生システムの化学的不活性が保証できない場合,独自の方法で
濃度を確認しなければならない。

5.6 標準空気添加サンプラ

  正確に測定した体積の標準空気を,例えば,ポンプを用いてサンプラ内を通過させることによって,標
準添加サンプラを調製する。サンプリングする空気の体積は,吸着剤の破過容量を超えてはならない。添
加後,サンプラを外して密栓する。試料ロットごとに新しい標準を調製する。
例えば,対象成分が10 mg/m3及び100 μg/m3となるよう,標準空気を調製する。作業場の空気の測定で
は,サンプラに10 mg/m3の空気を100 mL,200 mL,400 mL,1 L,2 L又は4 L添加する。大気又は室内
空気の測定では,サンプラに100 μg/m3の空気を100 mL,200 mL,400 mL,1 L,2 L,4 L又は10 L添加
する。

5.7 液体添加用溶液の調製

5.7.1  各液体成分約10 mg/mLを含む溶液
100 mLの全量フラスコに分析対象成分約1 gを正確にはかりとる。最も揮発性の少ない物質から計量を
始める。希釈溶媒(5.2)で100 mLにし,栓をして振り混ぜる。
5.7.2 各液体成分約1 mg/mLを含む溶液
100 mLの全量フラスコに希釈溶媒50 mLを入れる。5.7.1の溶液10 mLを加える。希釈溶媒で100 mL
にし,栓をして振り混ぜる。
5.7.3 各液体成分約100 μg/mLを含む溶液
100 mLの全量フラスコに分析対象成分約10 mgを正確にはかりとる。最も揮発性の少ない物質から計量
を始める。希釈溶媒(5.2)で100 mLにし,栓をして振り混ぜる。
5.7.4 各液体成分約10 μg/mLを含む溶液
100 mLの全量フラスコに希釈溶媒50 mLを入れる。5.7.3の溶液10 mLを加える。希釈溶媒(5.2)で100
mLにし,栓をして振り混ぜる。
5.7.5 気体成分を約1 mg/mL含む溶液
例えば,酸化エチレンのようなガスについては,高濃度の検量線用溶液を,次の方法で調製してもよい。

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純ガスの高圧ガス容器から小形の樹脂製ガス袋にガスを充し,大気圧下のガスを得る。1 mLのガスタイ
トシリンジに純ガス1 mLを満たし,シリンジの弁を閉じる。2 mLのセプタムバイアルに2 mLの希釈溶
媒を加え,セプタムキャップで栓をする。セプタムキャップを通してシリンジの針の先端を希釈溶媒に挿
入する。弁を開きプランジャーを少し引き,希釈溶媒をシリンジに導入する。ガスが希釈溶媒に溶けるこ
とで,中が負圧となり,シリンジは溶媒で満たされる。溶液をバイアルに戻す。シリンジを溶液で2回洗
浄し,洗液をバイアルに戻す。気体の法則,すなわち,気体の標準状態(温度 : 273.15 K,圧力 : 1 013.25
hPa)における1 molの気体は22.4 Lであることを利用して,加えたガスの質量を計算する。非理想状態の
気体は補正する。
5.7.6 気体成分約10 μg/mLを含む溶液
例えば,酸化エチレンのようなガスについては,低濃度の検量線用溶液を,次の方法で調製してもよい。
高圧ガス容器から小形の樹脂製ガス袋に充し,大気圧下のガスを得る。10 μLのガスタイトシリンジに
純ガス10 μLを満たし,シリンジの弁を閉じる。2 mLのセプタムバイアルに2 mLの希釈溶媒を加え,セ
プタムキャップで栓をする。セプタムキャップを通してシリンジの針の先端を希釈溶媒に挿入する。弁を
開きプランジャーを少し引き,希釈溶媒をシリンジに導入する。ガスが希釈溶媒に溶けることで,中が負
圧となり,シリンジは溶媒で満たされる。溶液をバイアルに戻す。シリンジを溶液で2回洗浄し,洗液を
バイアルに戻す。気体の法則,すなわち,気体の標準状態において1 molの気体は22.4 Lであることを利
用し,加えたガスの質量を計算する。非理想状態の気体は補正する。

5.8 標準液体添加サンプラ

  標準液体添加サンプラは,清浄なサンプラに標準溶液を分取,注入して調製する。サンプラを注入装置
(6.10)に取り付け,そこに不活性バージガスを流し,適切な標準溶液14 μLを分取し,セプタムを通
して注入する。適切な時間が経過後,サンプラを取り外し密栓する。試料のロットごとに新しい標準サン
プラを調製する。作業場空気には5.7.1,5.7.2又は5.7.5の溶液15 μLをサンプラに添加する。室内空気
には,5.7.3,5.7.4又は5.7.6の溶液15 μLをサンプラに添加する。
注記 希釈溶媒がメタノールの場合,サンプラから溶媒を除去するパージガスを100 mL/minで5分間
流す方法が適切であった。他の希釈溶媒を用いる場合,パージ条件は実験で決定するほうがよ
い。

6 装置

  次に規定する実験用器具及び装置を使用する。

6.1 サンプラ

  例えば,ステンレス鋼製の管で外径6.3 mm,内径5 mm及び長さ90 mmのものがある。これ以外の寸法
のものも使用可能だが,表1表6に示す安全試料採取量(SSV)はこの寸法に基づいている。例えば,
硫黄化合物などの不安定成分の分析には,ガラスコーティング及びガラス製のサンプラ(通常は,内径4
mm)を用いるのが望ましい。このサンプラの一方の端には,試料入口端から約10 mmのところに刻みを
付けたリングなどマークを付ける。サンプラには前処理された吸着剤(5.3)が充されており,極低流量
時の拡散侵入による誤差を最小とするために,吸着剤充部は加熱ゾーン内にあり,かつ,約14 mmの空
隙が各端に設けられている。
吸着剤の密度にもよるが,サンプラには2001 000 mgの吸着剤が充されている(典型的なものは約
250 mgの多孔性ポリマー,500 mgのカーボンモレキュラーシーブ又はグラファイトカーボンである。)。
吸着剤は,サンプラの一端でステンレス鋼製金網,非シラン化グラスウールプラグなどを用いて固定され

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ている。1本のサンプラに2種以上の吸着剤を使用する場合は,それらの吸着剤は吸着力の増す順に配置
し,マークを付けた試料の入口端に最も弱い吸着剤を入れ,それぞれ非シラン化グラスウールなどで隔離
する。
最大脱離温度の大きく異なる(50 ℃以上)複数の吸着剤を単一のサンプラに装しないようにする。装
すると熱安定性が最も低い(一つ又は複数の)吸着剤の劣化を起こさずにより熱安定性の高い(一つ又
は複数の)吸着剤の前処理又は脱離が不可能となる。

6.2 サンプラエンドキャップ

  サンプラは,EN 1076の条件に適合するものか,例えば,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シール
付金属スクリューキャップなどを用いて密閉する。

6.3 サンプラの結合

  2本のサンプラをPTFEシール付金属スクリューキャップで直列に接続してサンプリングしてもよい。

6.4 シリンジ

  0.1 μLまで読取り可能な10 μLの精密液体シリンジ,0.1 μLまで読取り可能な10 μLの精密ガスタイト
シリンジ,及び0.01 mLまで読取り可能な1 mLの精密ガスタイトシリンジを用いる。

6.5 サンプリング用ポンプ

  ポンプは,EN 1232[10]の条件に合致するか,又は同等のものが望ましい。

6.6 プラスチック又はゴム管

  約90 cmの長さのプラスチック又はゴム管で,ポンプ及びサンプラ,サンプラホルダを使う場合に漏れ
なく合致する径をもつものとする。サンプラと接続管とをクリップで締めることが望ましい。
サンプラの上流にプラスチック及びゴム管を用いてはならない。これらのサンプラを使用すると汚染を
引き起こしたり試料中のVOCの吸着を引き起こす可能性がある。

6.7 石けん膜流量計又は他のポンプ校正用に適した器具

  流量計は,一次標準にトレーサブルな方法で校正する。
注記 未校正の積算流量計をポンプ流量の校正に使用すると,数十%の系統誤差が生じることがある。

6.8 ガスクロマトグラフ

  水素炎イオン化検出器,光イオン化検出器,質量分析計又は他の適切な検出器付きのガスクロマトグラ
フで,最低S/N比5 : 1で1 ngのトルエンを検出できるものとする。
キャピラリーカラムは,分析対象成分が他の成分から分離できるものを使う。

6.9 加熱脱離装置

  サンプラを2段階で加熱脱離し,脱離した気体を不活性ガスによってガスクロマトグラフに送り込む装
置である。典型的なものは,加熱脱離されるサンプラを保持すると同時に,不活性キャリヤーガスでパー
ジする機能をもつ。脱離温度及び時間は,キャリヤーガス流量と同様,調整可能である。また,自動サン
プルチューブ装,漏れ試験,脱離成分を濃縮する移送管(トランスファーライン)の冷却トラップなど
の機能を付加できるものがよい。パージガスに含まれた脱離成分は,加熱したトランスファーラインを通
ってガスクロマトグラフのキャピラリーカラムに送られる。

6.10 標準サンプラ調製のための注入装置

  ガスクロマトグラフの注入口を,標準サンプラの調製に用いてもよい。この場合,そのまま使用するこ
とも,また,分離・据え付けての使用も可能である。注入口へのキャリヤーガスラインは維持されている
ことが望ましい。サンプラを取り付けるため必要であれば,注入装置の後部を改造するのがよい。この場
合,Oリングシールで圧着する方法が便利である。

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7 サンプラの前処理

  前処理が必要なサンプラは使用に先立って,分析脱離温度又はこれより僅かに高い温度(附属書E参照)
で処理する。例えば,キャリヤーガスを流速100 mL/minの10分間流すことによって,再調製することが
望ましい。キャリヤーガスの流れは,吸着剤の再汚染防止のため,サンプリング端末への方向とするのが
よい。
その後,通常の分析パラメータを用いてサンプラを分析して,加熱脱離ブランク値が十分小さいことを
確認し,このブランク値が容認できない場合,この手順を繰り返してサンプラを再調製することが望まし
い。
一度試料の分析が済めば,サンプラは他の試料の捕集に直ちに再使用してもよい。ただし,サンプラが
再使用前に長期間放置されていた場合又は異なる分析対象成分をサンプリングする場合には,加熱脱離ブ
ランク値の確認をするのがよい。サンプリングを行わない場合又は調製済みの場合,サンプラは,適切な
PTFEフェラル付きの金属スクリューキャップで密閉し,気密容器に保管するのが望ましい。
注記 妨害ピークが,対象成分を分析したときの面積の10 %以内であれば,サンプラのブランク値は
許容される。

8 ポンプの校正

  適切に校正された専用のメータを使って,代表的なサンプラをつないだ状態でポンプを校正する。校正
された流量計の一端は,適切な作動を確保するため,大気圧とする。

9 サンプリング

  分析対象成分及び混合物に適したサンプラ(又はサンプラの組合せ)を選択する。適切な吸着剤につい
ての指針を,附属書Dに記載する。
2本以上のサンプラを連結して使用する場合は,サンプラを接続具(6.3)で結合した連結サンプラを作
製する。サンプラは,プラスチックの接続具又はゴム管でポンプに接続する。その場合,より強い吸着剤
を含むサンプラは,ポンプに最も近づけるようにする。個人暴露測定のサンプリングに使用する場合は,
サンプラユニットは胸に垂直に取り付ける。固定位置でサンプリングに使用する場合は,適切なサンプリ
ング位置を選択する。
ポンプを始動し,推奨試料空気量を使用時間内に取り込むように流量を調節する。この規格が対象とす
るVOCに対する推奨試料空気量は,110 Lである。試料の合計が1 mg(各サンプラに1 mg)を超えそ
うな場合は,過負荷を防ぐため試料空気量を減らす。
注記1 吸着剤の吸着能力を超えない限り,サンプリング効率は100 %(定量的)である。この容量
を超過すると,サンプラから成分の破過が起こる。この破過容量は,標準ガスを水素炎イオ
ン化又は同等の検出器で観察しながら,サンプリングすることで測定できる(適切な方法を,
附属書Aに規定する。)。破過容量を直接測定する代わりに,クロマトグラフで温度を高くし
て保持容量を測定し,これを室温に外挿する方法がある。適切な方法を,附属書Bに規定す
る。
なお,疎水性の低い強力な吸着剤を相対湿度65 %以上の空気の測定で使用する場合は,サ
ンプラの前段に過塩素酸マグネシウムを充した除湿管を用いるとよい。
多孔性ポリマーの破過容量は,周辺空気温度によって変化し,10 ℃上昇するごとに約1/2に減少する。
また,サンプリング流量によって変化し,5 mL/min以下又は500 mL/min以上においてかなり減少する。

――――― [JIS A 1966 pdf 10] ―――――

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JIS A 1966:2015の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 16017-1:2000(MOD)

JIS A 1966:2015の国際規格 ICS 分類一覧

JIS A 1966:2015の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISZ8710:1993
温度測定方法通則