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附属書H
(参考)
動的解析
H.1 動的解析のための構造モデル
動的解析のための構造モデルには,質量の空間的な分布及び地震力に抵抗するために設けた全ての構造
要素の動的特性を反映することが望ましい。一般的には,3次元の重要な応答特性を把握するのに十分な
数の自由度を考慮に入れることが望ましい。ねじ(捩)れ応答が重要でないことを証明できる場合に限っ
て,平面モデルによることが可能である。加えて,ある層の水平剛性が水平ばね及び回転ばねでほぼ代表
できる場合は,1次元の質点及びばねモデルが,地震作用を単純かつ実用的に評価するために有用である。
構造材の挙動,地盤の挙動の影響などの詳細を考慮する必要がある場合には,連続体の構造を取り扱う
ことができる先進的な数値解析法を用いることが望ましい。これらの方法は,地動の空間的変動及び伝搬
効果を考慮するためにも有益である。
構造モデルは基部固定[図H.1 a)]でもよいし,図H.1 b)に示すような適切な水平ばね及び/又は回転
ばねで,支持地盤の応答を代表させてもよいとされている。地震動を基盤位置で定義する場合は,しばし
ば図H.1 c)に示すような地盤−基礎−構造物の相互作用モデルが用いられている。
a) 基部固定モデル b) スウェイ−ロッキング(SR)モデル c) くいがある場合の相互作用モデル
記号
1 地表面位置
2 スウェイばね
3 ロッキングばね
4 くい
5 基礎/地階
6 地盤による力
7 基盤
8 地動加速度
図H.1−地盤と構造物との相互作用モデルの例
――――― [JIS A 3306 pdf 36] ―――――
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H.2 応答スペクトル解析
H.2.1 解析法
応答スペクトル解析は,その解析の目的に沿って作成した敷地固有の応答スペクトルに対して実施する。
そのようなスペクトルがない場合には,附属書Bに示す規準化設計用応答スペクトルに地震動の強さに応
じた最大地動加速度を乗じたものを用いてもよいとされている。H.3.2.1に示す線形応答時刻歴解析の場合
と同様の剛性に関する仮定に基づく構造物の弾性構造モデルを,応答スペクトル解析にも用いることが望
ましい。地震作用及び/又はその荷重効果は,弾性のモーダル応答を組み合わせて評価することが望まし
い。
振動モードの固有振動数が互いに近接していない場合,最大応答値を推定する重ね合せには,次の式(二
乗和平方根法,SRSS法)を用いることが一般的である。
n
S iS2 (H.1)
i1
ここに, S : 対象とする応答量の最大値
Si : i次振動モードの応答量の最大値
各次振動モードの固有振動数が近接している場合もしていない場合も,ランダム振動理論によって導か
れる式(H.2)及び式(H.3)(完全2次結合法,CQC法)を用いて重ね合せを行ってもよいとされている。
n n
S (H.2)
Siρi,kSk
i1 k 1
8 χζk ) χ3 / 2
ζiζk (ζi
ρi,k (H.3)
1( χ2 )2 χ2 )
4ζiζkχ1( ζk2 ) χ2
(4ζi2
ここに, ζi : i次のモードに対する減衰定数
ζk : k次のモードに対する減衰定数
χ : i次モード固有振動数のk次モード固有振動数に対する比
構造物の応答全体に大きく寄与する全てのモードを,式(H.1)及び式(H.2)に関しては考慮することが望ま
しい。
H.2.2 地震作用及びその効果
モードの重ね合せによって得られる応答に対して,動的解析のベースシヤと等価静的ベースシヤ(8.1
に示されている)とを関連付けるための調整係数を乗じることが望ましい。ULSの検証を行うに当たって
は,応答に対して附属書Dに記載した適切な構造設計係数を更に乗じることが望ましい。
H.3 応答時刻歴解析
H.3.1 解析法
応答時刻歴解析は,線形応答解析と非線形応答解析とに分類することが可能である。解析の目的に基づ
いて適切な方法を選択することが望ましい。
H.3.1.1 線形応答時刻歴解析
線形応答時刻歴解析の目的は,線形応答を仮定して部材の応力及び建築物の全体変形を予測することで
ある。
構造部材が弾性範囲内で挙動するとみなすSLSに関する地震作用の結果を評価するためには,しばしば
線形応答時刻歴解析を適用する。しかしながら,ULSに対しては基本的に構造部材の非線形挙動が重要で
――――― [JIS A 3306 pdf 37] ―――――
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あり,H.2の応答スペクトル解析と同様に,解析で得られた部材応力に附属書Dに記載した適切な構造設
計係数を乗じることが望ましい。建築物の全体変形については,構造設計係数を乗じた上で適切な変形割
増係数を更に乗じることが望ましいが,この割増係数は構造システムの種別に応じて定めなければならな
いとされている。
H.3.1.2 非線形応答時刻歴解析
非線形応答時刻歴解析の目的は,弾性限界を超えた応答レベルにおける構造物全体の変形及び個々の部
材の必要強度並びに必要変形能力を直接予測し,構造体が目標性能を満たすのに十分な強度,減衰,剛性
及び変形性能をもっていることを暗に又は陽に実証することである。
非線形応答時刻歴解析は,構造設計係数及び変形増大係数のような規定的なパラメータに頼らず,建築
構造の非線形変形を求めることができるので,通常はULSにおける地震作用による効果を評価する場合に
適用している。加えて個々の部材の繰返し塑性変形も直接求めることが可能である。注意すべきは,非線
形応答時刻歴解析の結果が,(荷重)係数を乗じた荷重の組合せから得られる耐震要求を決定するためとい
うよりは,構造体の性能を検証するためのものということである。応答の適切な許容クライテリアを設定
し,検証に適用することが望ましい。
H.3.2 復元力特性
H.3.2.1 線形解析に当たっての力−変形関係の評価
構造鉄骨部材の力−変形関係の特性は全断面の特性に基づき,仕口部パネルゾーンの剛性,その他接合
部の変形の影響を考慮することが望ましい。また,コンクリートとの合成作用の影響を考慮してもよい。
組積造及びコンクリート系部材の力−変形関係の特性については,ひび割れ後の有効断面の剛性を考慮す
ることが望ましい。
H.3.2.2 非線形解析に当たっての剛性の評価
実質的な降伏以前の構造部材の剛性評価は,基本的に線形解析の場合と同様とすることが望ましい。し
かしながら場合によっては,ひび割れのない断面の剛性をコンクリート構造の初期剛性とし,小変形域で
の履歴減衰の影響を評価するために,ひび割れ発生後,降伏以前での非線形挙動を考慮することがある。
力−変形関係の特性は同様の部材の実験結果に基づき,想定する応答域内の繰返し載荷によるコンクリー
ト部材の強度及び剛性の低下を考慮することが望ましい。鉄骨部材では時としてバウシンガー効果を考慮
に入れている。図H.2に履歴モデルの例を示す。
非線形解析では,そのような影響が重要でない場合を除いて,固定荷重及び積載荷重による部材応力を
初期条件として考慮することが望ましい。
――――― [JIS A 3306 pdf 38] ―――――
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a) 通常のバイリニア型モデル b) 剛性低下トリリニア型モデル
記号
M 曲げモーメント
φ 変形角
図H.2−復元力特性モデルの例
弾性限内及びほぼ弾性限内で挙動すると予想される部材は,そのことを非線形解析で確認することを前
提条件として,線形部材としてモデル化しても構わない。
H.3.3 入力地震動
H.3.3.1 一般
基本的に水平の直交2方向又は鉛直方向の入力地震動を用意することが望ましい。立体モデルの解析に
あっては,2方向に別々に入力して解析を行ってその結果を組み合わせる代わりに,2方向に地動を同時入
力してもよいとされている。一般的には,鉛直動を附属書Eに記載したような単純な方法で別途評価する。
次の入力地震動が採用される。
a) 記録地震動。
b) 設計用スペクトルに応答スペクトルを適合させた人工地震動。
c) 震源と敷地との特性に基づく模擬地震動。
H.3.3.2 記録地震動
入力地震動として記録地震動を用いる場合は,対象構造物とその設計用地震とに応じたマグニチュード
の幅及び断層からの距離及び敷地の条件を代表するよう適切に選ぶことが望ましい。対象構造物に起こり
得る長周期化を考えた主要応答モードを捕捉する周期帯において,記録地震動の線形応答スペクトルと考
慮する限界状態(例えば,SLS又はULS)に対して設定した敷地固有の応答スペクトルとが適合するよう
に,地動記録の振幅を調整又は修正することが望ましい。敷地固有の応答スペクトルがない場合には,代
わりに附属書Bに示す規準化設計用応答スペクトルを(解析目的に応じて最大地動加速度を乗じて)用い
てもよいとされている。応答結果の評価に当たっては,記録地震動を用いることによって,時として解析
結果がそれらの記録の特定の性質による影響を強く受けてしまうこと,また,そうした現象がその敷地で
は起きないかもしれない,又は将来のどの地震によっても起きるというものではないことに留意すること
が望ましい。したがって,平均的応答をよく評価し,応答の変動についての情報を把握するために十分な
数の記録地震動を考慮に入れることが推奨されている。
H.3.3.3 応答スペクトルに適合させた人工地震動
人工地震動はしばしばランダム位相,記録地震動の位相特性又は位相差モデルを用いて,そのスペクト
ルが敷地固有の又はH.3.3.2に記載した規準化設計用応答スペクトルに適合するように作成している。考
――――― [JIS A 3306 pdf 39] ―――――
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慮する地震動のマグニチュード,他の関連する特性及び対象構造物の動的特性に照らして,十分な長さの
加速度波形の継続時間とすることが望ましい。
人工地震動は地表面又は基盤面どちらで作ってもよいが,地盤及び構造物の相互作用モデルの解析に直
接用いることができる基盤面で作成する方が合理的である。地表面で人工地震動を作成する場合は,考慮
する地震動の強さに応じた変形域での地盤の動的特性を反映することが望ましい。
H.3.3.4 模擬地震動
マグニチュード,断層位置,滑り面の分布,破壊の方向などを含む設計用地震の(諸)パラメータに加
えて,地震動の地盤伝搬特性及び表層地盤の特性に基づいて作成した模擬地震動を入力地震動としてもよ
いとされている。様々な模擬地震動作成手法が開発されており,そのうちの幾つかはISO 23469に紹介さ
れている。模擬地震動はかなり強い地震動を作り出すことができるので,その再現期間などのハザード水
準を評価することが望ましいとされている。
模擬地震動は,特にある種の構造物にとって重要な意味をもつ一定のタイプの地震の際立った特性を表
すのに有効である。逆に一般的な地震動に共通する必要事項が見落とされるおそれもある。したがって,
模擬地震動を用いて応答時刻歴解析を行う場合には,人工地震動又は記録地震動を用いた解析も併せて行
うことが望ましい。
――――― [JIS A 3306 pdf 40] ―――――
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JIS A 3306:2020の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 3010:2017(MOD)
JIS A 3306:2020の国際規格 ICS 分類一覧
JIS A 3306:2020の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISA3305:2020
- 建築・土木構造物の信頼性に関する設計の一般原則