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A 3306 : 2020
附属書I
(参考)
非線形静的解析及び耐力スペクトル法
I.1 非線形静的解析
非線形静的解析(プッシュオーバ解析,図I.1参照)によって,一定の水平荷重分布による構造モデル
の非線形応答を求めることが可能である。一般的に,水平力分布(各階に作用する水平力の大きさの比)
は,解析に先立ち,卓越する振動モードを考慮して規定している。さらに,この水平力の大きさを徐々に
大きくする。
水平力
図I.1−非線形静的解析
非線形静的解析によって,図I.2に示すような,各階の層せん断力と層間変形との関係を得ることが可
能である。この関係から,ベースシヤの大きさ,最も損傷を受けやすい階,崩壊メカニズムなどの問題を
検討することが可能である。さらに,図I.3に示すように構造物の降伏ヒンジの発生状況を逐次確認する
ことができ,各部材の変形及び復元力を追跡することも可能である。
記号
VE 層せん断力
Δ 層間変形
1,2,3 層番号
図I.2−層せん断力−層間変形関係の例
――――― [JIS A 3306 pdf 41] ―――――
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A 3306 : 2020
図I.3−降伏ヒンジ発生状況の例
I.2 耐力スペクトル法
図I.4に示すように,卓越する振動モードを考慮することによって,多自由度(MDOF)系は,1自由度
(SDOF)系に単純化(縮約と同義)することが可能である。この単純化されたせん断力を等価質量で除
した値Δ 代表加速度”と呼び,式(I.1)によって求める。単純化された変位Δを“代表変位”と呼び,
式(I.2)によって求めている。
図I.4−多自由度(MDOF)系の等価1自由度(SDOF)系への単純化
mixi2
Δ 2
Pi (I.1)
mixi
mixi2
Δ (I.2)
mixi
ここに, mi : i階の質量
xi : 構造物の基部に対するi階の相対変位
Pi : i階の床に作用する水平力の大きさ
その系が線形であるならば,地震時におけるΔ びΔの最大値は,図I.5に示すように,構造物の卓越
周期における,加速度応答スペクトルSa及び変位応答スペクトルSdの値に等しい。Δを横軸に,Δ 鉾
にとった曲線を性能曲線と呼び,Sdを横軸に,Saを縦軸にとった曲線を要求曲線と呼ぶ。この性能曲線と
要求曲線との交点が,予測される最大応答点となる。この要求曲線は,一般的に設計用スペクトルから定
義している。
――――― [JIS A 3306 pdf 42] ―――――
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A 3306 : 2020
記号
Δ 代表加速度
Sa 加速度応答スペクトル
Δ 代表変位
Sd 変位応答スペクトル
図I.5−最大応答値,Sa及びSd
性能曲線が非線形性を示すならば,非線形応答による付加的なエネルギー逸散によって,減衰が増加す
る。この等価減衰(定数)ζeqは,構造システムの履歴形状とエネルギー逸散部材とを考慮して定義するこ
とが望ましい。具体的な値を入手できない場合は,式(I.3)によって等価減衰(定数)を求めることができ,
ここでは線形粘性減衰(定数)を0.05と考えている。
1
ζeqγ1 .005 (I.3)
μ
ここに, γ : 構造特性に応じて決定する係数(幾つかの推奨値を表I.1に示
す。)
μ : 塑性率
表I.1−γ値の例
構造形式 γ
鉄筋コンクリート造耐震壁及び補強組積造耐震壁 0.2
じん(靱)性に富む鉄筋コンクリート造架構 0.25
耐震壁併用架構 式(I.4)を参照
モーメント抵抗型鉄骨架構 0.25
座屈拘束ブレース付鉄骨架構
座屈拘束のないブレース付鉄骨架構 特別な検討が必要
無補強組積造 0.09
じん(靱)性的な接合部をもつ木構造 0.09
通常の接合部をもつ木構造 特別な検討が必要
ζeq, WVWζeq, FVF
ζeq (I.4)
VW VF
ここに, ζeq,W及びζeq,F : 耐震壁部分及びフレーム部分について計算されたそ
れぞれの等価粘性減衰定数
VW及びVF : 耐震壁部分及びフレーム部分の基部におけるそれぞ
れのせん断力の合計
――――― [JIS A 3306 pdf 43] ―――――
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A 3306 : 2020
式(I.4)を用いるには,床ダイヤフラムの剛性を慎重に評価する必要がある。
等価減衰(定数)ζeqに応じて,非線形性による要求(曲線)低減係数kζを計算する。式(I.5)のような式
が参考になる。
5.1
kζ (I.5)
1 10ζeq
図I.6に示すように,最大応答点は,性能曲線とkζとを考慮して低減した要求曲線の交点として算出可
能である。(この応答点に至っても,)構造部材がせん断破壊,付着破壊,圧縮破壊などの安全限界状態に
達していないならば,構造物は安全と評価される。
記号
Sa 応答加速度
Sd 応答変位
kζ 非線形性による要求(曲線)低減係数
1 降伏点
2 最大応答点
3 性能曲線
4 要求曲線(5 %減衰)
図I.6−耐力スペクトル法
――――― [JIS A 3306 pdf 44] ―――――
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A 3306 : 2020
附属書J
(参考)
地盤と構造物との相互作用
J.1 地盤と構造物との相互作用の現象(SSI)
構造物の地震設計外力を求めるときに,地盤及び構造物の相互作用の効果を考慮しない場合がほとんど
である。これらの構造物では,基礎構造の剛性を剛とみなして(基礎固定の仮定),基礎部分に設計用地震
動が入力される。しかしながら,軟らかい地盤上に建設した低層建築物又は中層建築物のような構造物で
は,相互作用効果によって,構造物の動的特性(基本周期及び減衰)が変化し,構造物の地震時応答が大
きく変化する場合もある。地盤条件による周期,減衰定数の変化などの現象を,地盤及び構造物の動的相
互作用(以下,相互作用という。)と呼んでいる。
地下部分,基礎根入れ及びくいの存在によって,地表面で定義される地震動と比べて,上部構造への入
力地震動は変化する。その入力地震動は,基礎根入れ深さ及びくいの剛性の影響を受け,振動数が高くな
るとともに小さくなる傾向がある。入力地震動の変化は,入力の相互作用と呼んでいる。一方,上部構造
の地震力による固有周期及び減衰定数の変化は,慣性の相互作用と呼んでいる。
相互作用の影響によって,構造物には次の変化が見られる。
a) 基礎固定状態と比べて,固有周期が長くなる。
b) 基礎固定状態と比べて,減衰定数が変化する。
c) 地表面で設定される地震動に比べて,構造物への入力地震動が低減する。
図J.1に,相互作用を考慮した上部構造,基礎及び地盤ばねで構成されたモデル,いわゆるスウェイ・
ロッキング(SR)モデルを示す。SRモデルには,スウェイばね及びロッキングばねを設定している。説
明を簡単にするために,上部構造を1質点系モデルとして扱う。上部構造及び基礎の慣性力によって,3
種類の変位を組み合わせている。上部構造自体の変位,スウェイばねの変位(基礎の水平モード)及びロ
ッキングばねの変位(基礎の回転モード)である。上部構造の固有周期は,上部構造の変位(ub)に基づ
いて計算している。しかし,相互作用を考慮した構造物の固有周期は,上部構造の変位(ub),スウェイ変
位(us)及びロッキング変位(ur)の総和に基づいて計算している。相互作用を考慮した構造物の(固有)
周期は,基礎固定時における固有周期より常に長くなる。地盤が軟らかくなるとともにスウェイ変位及び
ロッキング変位の影響がより大きくなる。
J.2 周期及び減衰定数の簡易な算定
図J.1 b)に示すように,三つのばねが直列に結ばれているので,SSI変位(ue)を次のように定義してい
る[式(J.1)参照]。
F F FH2
ue ub us ur (J.1)
Kb Ks Kr
ここに, F : 構造物の基本振動モードにおける等価静的水平力
H : 上部構造の等価高さ
Kb : 上部構造のばね定数
Ks : スウェイのばね定数
Kr : ロッキングのばね定数
SRモデルのばね定数(Ke)は,式(J.2)のようになる。
――――― [JIS A 3306 pdf 45] ―――――
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JIS A 3306:2020の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 3010:2017(MOD)
JIS A 3306:2020の国際規格 ICS 分類一覧
JIS A 3306:2020の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISA3305:2020
- 建築・土木構造物の信頼性に関する設計の一般原則