JIS B 0160:2015 歯車―歯面の摩耗及び損傷―用語 | ページ 10

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2.5.2.1
ローリングによる塑性変形(plastic deformation by rolling)
高い接触面圧を受けるとき,歯面の転がり滑りによって生ずる塑性流動。
このとき,駆動歯車ではピッチ点部分から歯元側では歯底に向かって,歯末側では歯先に向かって材料
が押し流される。そのため,ピッチ点では線状のくぼみができ,歯先ではばりが観察されやすい。
被動歯車ではこれと逆に,歯元側歯先側双方からピッチ点に向かって材料が押し流される。そのためピ
ッチ点に線状の突起ができ,歯先が丸みを帯びやすい。
また,いずれの歯にも端部にばりができやすい。
スカッフィングでもこれに近い状態になることがあるが,スカッフィングではしゅう動に伴う線条傷が
目立つのに対し,ローリングは押し伸ばされた塑性変形が目立つ。
図36−ローリングによる塑性変形の例
図36は,ローリングによって歯が塑性変形した例である。これは被動歯車で,ピッチ点近傍に明瞭な線
状の突起が観察される。

――――― [JIS B 0160 pdf 46] ―――――

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2.5.2.2
歯打ちによる塑性変形(plastic deformation by tooth hammering)
振動などによる衝撃が歯面に作用し,その衝撃荷重が高いとき,接触面より少し内部に入ったところで
生じる塑性流動。
こうして歯面に生じた浅く滑らかな溝を歯打ちによる塑性変形という。この溝は,かみ合い歯面間の接
触線と一致する。
図37−歯打ちによる塑性変形の例
図37は,内歯車の歯面に見られた歯打ちによる塑性変形の例である。白黒の紋様が見え,黒い線条部が
溝に相当する。歯先にはばりが見られる。

――――― [JIS B 0160 pdf 47] ―――――

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2.5.2.3
歯の倒れ(plastic leaning deformation of tooth)
過大な荷重のために歯元の応力が弾性限を超え,歯が全体として倒れる現象。
プラスチック歯車で歯車の温度が上がった状態で長時間運転されるときにも発生しやすい。
図38−歯の倒れの例
図38は,油浴潤滑運転中に発生した歯の倒れの例である。右歯面が高い荷重を受け,左方に傾いている。
この歯車はモジュール2のはすば歯車で,炭素鋼(S45C材)を焼なましして使っている。

――――― [JIS B 0160 pdf 48] ―――――

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2.5.2.4
ピットの発生による歯面の圧壊(flank crush due to pitting)
表面疲労によるピットで歯面の多くが占められたとき,突然歯面の一部が塑性変形する現象。
全体として正規の歯形を維持している限り,歯車性能に格段の影響を与えることはない。しかし,ピッ
トが多発し,健全部が歯面荷重を支えきれなくなるとその接触部が圧壊し,歯形が一瞬にして崩れる。こ
のときの歯形の崩れはピットの深さオーダとなるので,瞬間的な加速度変動を生じ,動的荷重を急増させ
るために,塑性変形が更に進行し,またほかの歯にも強い影響を及ぼす。
図39−ピットの発生による歯面の圧壊の例
図39は,スポーリングが歯面のほぼ全域に発生したため,荷重を支えられずに歯面が圧壊している例
である。片当たりの傾向にある。動的荷重が加わって激しくたたかれ,歯面が塑性変形し,目視で簡単に
分かるほど歯形が大きく崩れている。

――――― [JIS B 0160 pdf 49] ―――――

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2.5.3
リップリング(rippling)
歯面上に見られる周期的な波状に入った凹凸を伴った紋様。
風又は波に浸食された風紋又は波紋のような形を取ることが多い。紋は滑り方向と直角な方向を向き,
歯面の同時接触線方向に並ぶ。一般に,非常に小さく浅いが,ときには魚のうろこ(鱗)状で大きなもの
ができることもある。
リップリングが発生する前に,歯面が白色化したり,鏡面状態になることもある。
a)
b)
図40−リップリングの例1 [1]
図40 a) は,モジュール5のはすば歯車で,歯面全面にしゅう動方向(歯たけ方向)にスクラッチング
が入っており,よく観察するとスクラッチングのきずと直角方向にさざ波が立ったような紋様が観察でき
るリップリングの例である。歯の左端に歯の当たっていない初期状態の部分が残されており,その対比か
ら,歯面全体として摩耗がかなり進行していることが分かる。リップリングの発生位置は,図ではほぼピ
ッチ点付近であるが,滑り率が正の歯末側に発生している。
図40 b) は,図40 a) のスクラッチングが見られるピッチ点付近を拡大したものである。スクラッチン
グの線条傷を打ち消す形でさざ波状のリップリングが横たわっている。

――――― [JIS B 0160 pdf 50] ―――――

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  • ISO 10825:1995(MOD)

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