JIS B 0160:2015 歯車―歯面の摩耗及び損傷―用語 | ページ 9

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2.4.3
低温スカッフィング(cold scuffing)
比較的低速で歯車が運転された,境界潤滑又は混合潤滑状態における滑り接触下では,局所的温度上昇
はあるものの接触面全体ではほとんど温度上昇がないが,局部的に油膜が切れて歯面同士が接触して起こ
る凝着による損傷。
図33−低温スカッフィングの例 [1]
図33は,建設機械用駆動歯車に見られた低温スカッフィングの例である。中央の歯の歯たけ中央部に入
った,黒い帯と白い帯との境界のすぐ歯元寄りのやや白っぽい線がピッチ点である。歯の左側の僅かな幅
でかみ合っていないところが残っており,かみ合っている部分との間に摩耗による段差の生じているのが
認められる。損傷部は全体的に歯たけ方向へのうっすらとした線模様が認められるが,明瞭ではない。

――――― [JIS B 0160 pdf 41] ―――――

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2.4.4
疲労スカッフィング(fatigue scuffing)
損傷発生までに長時間を要するスカッフィング。
マイクロピッチングが多発し,ある面積を覆い尽くすと,その領域はフロスティングとなり,小さな穴
で覆い尽くされる。そのため粗さも大きくなり,何らかのきっかけで油膜が切れると一気に焼付きが広が
り,スカッフィング状態となる。そのためスカッフィングが発生するまでに非常に長時間がかかるので,
スカッフィングの接頭語として時間経過を表す疲労なる語が付けられた。
一般に,スカッフィングの発生は荷重又は回転速度を上げるなど,運転が過酷になったときに発生する
が,疲労スカッフィングはそうしたことがなく,定常運転されている最中でも発生する。
図34−疲労スカッフィングの例
図34は,歯面全体がフロスティングで覆われた後,ピッチ点周辺を除きスカッフィング状態になり,
引き続き短時間のうちにこの図の状態となった疲労スカッフィングの例である。ほかのスカッフィングと
比べしゅう動方向の線条きずが目立ち,かつ,ピッチ点にも明瞭な線が現れる。この時点での歯形の崩れ
は極めて大きい。上端が歯先りょう(稜)である。この歯車は浸炭を施し,研削仕上げしている。

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2.5
永久変形(permanent deformations)
見かけ上,顕著な摩耗及び亀裂を伴わないで,歯形が永久的又は局所的に変形すること。
過大な応力,潤滑不良,外部環境からの加熱,異物のかみ込み,歯車箱の変形などが原因となり得る。
永久変形には,次の損傷形態を含む。
− 圧痕
− 塑性変形
− リップリング
− リッジング
− ばり
− 溶融
− 異物のかみ込み損傷
− 乗り上げ

――――― [JIS B 0160 pdf 43] ―――――

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2.5.1
圧痕(indentation)
歯面間に異物をかみ込むことによって歯面にくぼみができる損傷形態。
ピッチングなどの表面疲労現象と混同しやすいが,圧痕は穴と表面との境界が全周にわたって滑らかで
あること,穴の周りに滑らかなリングを描きやすいこと,拡大してよく観察すると,穴の内部に歯面の紋
様など表面であったことをうかがわせる徴候を残していること,などによって見分けられる。
圧痕は,その穴の周りを盛り上がらせるなど,歯面間の油膜形成を阻害したり,かみ込む異物が新たな
損傷を引き起こすので,速やかに異物の除去に努めなければならない。また,異物が大きいときには歯に
大きな変形を余儀なくさせる場合があり,その場合は異物のかみ込み損傷として扱う。
図35−圧痕の例 [1]
図35は,まがりばかさ歯車の浸炭された歯面に多数付いた圧痕の例である。写真には見られないが,別
の歯にスポーリングが発生しており,その破片をかみ込んだもの。圧痕は,穴の内部や周辺が滑らかで,
しばしば穴の周りに強い当たりによる縁取りが見られる。
拡大して観察すると,穴の内部に加工目など,穴周辺と同じものが観察される。これらの点で表面疲労
による穴と区別される。

――――― [JIS B 0160 pdf 44] ―――――

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2.5.2
塑性変形(plastic deformation)
高応力のため材料が降伏し,歯が永久変形する現象。
塑性変形は,通常軟らかい金属の歯車に多く見られるが,焼入れ硬化した歯車に見られることもある。
塑性変形には,次の損傷形態を含む。
− ローリングによる塑性変形
− 歯打ちによる塑性変形
− 歯の倒れ
− ピットの発生による歯面の圧壊

――――― [JIS B 0160 pdf 45] ―――――

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JIS B 0160:2015の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 10825:1995(MOD)

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