JIS B 0160:2015 歯車―歯面の摩耗及び損傷―用語 | ページ 8

34
B 0160 : 2015
2.3.7.7
焼け(burning)
周速又は荷重が過大であったり,潤滑が不良のために,歯面が高温になり,変色する現象。
バックラッシが不足し,背面干渉を起こすようなときにも生じ,この場合には,表歯面及び裏歯面の両
側に過負荷の兆候が現れ,色が付いたり,焼付き又は塑性変形といった損傷も同時に見られることがある。
焼けはしばしば硬さの低下を来し,歯面又は歯元の強度の低下を引き起こすことがある。ただし,高温
そのほかの原因で歯面の色が変わっても,硬さの低下もなく,実害の生じないこともある。
図29−焼けの例 [1]
図29は,大歯車に見られた歯面の焼けの例である。歯当たり中央部の白色に見える部分が最も高温とな
った領域で,焼けた酸化物層が離している。その周辺の黒くなっているところが焼けによって生じた酸
化物質の残ったところである。

――――― [JIS B 0160 pdf 36] ―――――

                                                                                             35
B 0160 : 2015
2.4
スカッフィング(scuffing)
局所的な過度の熱発生のために油膜が切れて,歯面同士が直接接触し,接触部分が融着して再び引き
がされるために起きる激しい凝着摩耗。
損傷は,接触面の滑り速度が速い場所及び接触圧力の高い場所に発生する。極めて短時間に損傷が進展
し,歯形の変化などを伴い,歯車性能にも影響を及ぼす。
歯車の面圧強度を高めるためには,かみ合う歯面間に油膜を形成させることが有効である。しかし,運
転条件によっては,運転中に油膜が破断して凝着し合うことがある。この油膜の切れる原因は,三つに大
別される。高速高荷重条件で運転され,歯面温度が高くなり,潤滑油が本来の機能を発揮できなくなった
場合,低速高荷重で歯面に有効なくさび膜を形成できなくなった場合,及び運転中に歯面の状態が一様に
変化し,粗さが大きくなった場合である。
スカッフィングは,油膜の切れる原因によって次の三つに大別される。
− 高温スカッフィング
− 低温スカッフィング
− 疲労スカッフィング
なお,高温スカッフィングにおいて,損傷程度が低い場合には,歯車性能を劣化させない場合がある。
こうした場合には,初期スカッフィングと呼んでいる。

――――― [JIS B 0160 pdf 37] ―――――

36
B 0160 : 2015
2.4.1
初期スカッフィング(initial scuffing)
軽度な高温スカッフィングで,多くは駆動側の歯元部と被動側の歯先部周辺に生じる摩耗。
表層が軽く溶融した状態になるが,その層は薄く,しゅう動方向にぼやけた条痕の現れることが多い。
歯幅方向には,当たりの強い部分だけのこともあれば,歯幅全体にわたることもある。歯形修整をしてい
ない歯車が高荷重を受けたり,歯形又は歯すじ誤差で強当たり部があるときに発生しやすく,突起部が取
れてしまい,荷重が再配分され,局部的応力が低下することでスカッフィングはそれ以上発生しないこと
がある。このように,スカッフィングが生じても,その後被害が拡大したり,運転に支障がない場合は,
初期スカッフィングとしてそのまま放置される。
一般に,運転初期にだけ生じるが,運転途中に衝撃荷重が加わったり,潤滑系統でトラブルがあったと
きなど,それまでと異なる事態が生じたときに起きることもある。
図30−初期スカッフィングの例
図30は,はすば歯車の駆動歯車に生じた初期スカッフィングの例である。左端歯元のかみ合い始め部に
見られる横長の白い領域が損傷した領域である。図の細かな横線は,研削加工目である。
この図はレプリカ転写(スンプ)によって,損傷の発生時点に記録したもので,それ以降運転条件が変
わらない間,スカッフィングの発生程度は変化していないことが確認されている。

――――― [JIS B 0160 pdf 38] ―――――

                                                                                             37
B 0160 : 2015
2.4.2
高温スカッフィング(hot scuffing)
突発的に油膜が切れて歯面同士が直接接触することによって起きる,激しい凝着。
かみ合っている歯面間には潤滑油膜が形成され,互いに凝着し合うことを防いでいる。しかし,高速運
転歯車では潤滑油膜が油膜せん断の発熱に耐えきれず,突発的に油膜が切れて歯面同士が直接接触する状
態となり,激しい凝着を起こすことがある。この状況を高温スカッフィングと呼ぶ。歯面のこの熱的損傷
は爆発的に進行し,接触面がぎ取られることによって,秒オーダで歯面形状が悪化し,歯車振動が増加
して運転不能になることもある。
高温スカッフィングを起こした歯面は,全体的に非常に荒れた状態になることもあれば,比較的滑らか
であるが光沢のない曇った状態になることもある。拡大してみると,損傷面は滑り方向にかきむしった状
態のほか,あたかも溶けて固まったように見えることもある。
図31−高温スカッフィングの例1
図31は,高速回転中に発生したもので,高温スカッフィングが発生すると同時に振動が増加している。
1枚の歯で,6層になっている。上から,黒い歯の頂部,白い帯状が歯先領域で,スカッフィングが発達し
ており,しゅう動方向に流れは見られるが,明確な線条痕は少ない。3層目の黒くて狭い帯状領域がピッ
チ点部で,加工目が残っていることも多い。その下が歯元領域で,相手歯車の歯先りょう(稜)が当たる
領域までスカッフィングが発生している。その下の層は歯底,次いで隣の歯である。スカッフィングの発
生状態は駆動側,被動側,どちらもほぼ同じ状態であった。

――――― [JIS B 0160 pdf 39] ―――――

38
B 0160 : 2015
a)
b) c)
図32−高温スカッフィングの例2 [1]
図32 a) は,歯末側にまだら模様に出た高温スカッフィングの例である。浸炭後研削仕上げされており,
その際に研削焼けを起こしており,その軟らかい部分にスカッフィングが発生している。まだら模様にな
ったスカッフィング発生部を拡大すると,図32 b) のように,一旦溶融したように滑らかな面になってい
る。また,スカッフィングの発生していないところを拡大すると,図32 c) のように,横方向の加工目と
それが取れて鏡面状態になった部分に対し,縦方向にスクラッチングが見える。スカッフィングもスクラ
ッチングもともに凝着摩耗でありながら,両者の違いが明瞭に見られる。
なお,図32 a) の歯元面に見られる白い斑点はマイクロピッチングである。このように,損傷が複数絡
むことはよくあることなので注意を要する。

――――― [JIS B 0160 pdf 40] ―――――

次のページ PDF 41

JIS B 0160:2015の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 10825:1995(MOD)

JIS B 0160:2015の国際規格 ICS 分類一覧