JIS B 0160:2015 歯車―歯面の摩耗及び損傷―用語 | ページ 13

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2.6.1.2
接触端部ピッチング(edge-contact pitting)
歯の接触している端部で発生するピット。
歯幅が違ったり,当たり歯面が食い違う場合に,相手の歯の側端部と当たる歯面の箇所に小さなピット
の発生することがある。
また,かみ合い始点及び終点となる歯先りょう(稜)と歯元領域との接触において,トロコイド干渉さ
れる歯元部にも小さなピットの発生することがある。
ピットは,一般に小さくかつ浅いので見落としやすい。しかし,設計上の限界荷重に近い状態で運転さ
れるとき,このピットに伴う亀裂が歯の折損に結びつくことがある。
図49−接触端部ピッチングの例 [1]
図49は,広い歯幅の小歯車と狭い歯幅の大歯車とがかみ合い,大歯車の側端と接触している小歯車の歯
面である。上部の刻み目は歯の頂部の加工目で,その下の右端から下端にかけての白い帯状領域は接触し
ていない部分である。黒っぽく変色している領域が接触している部分で,加工目が取れて鏡面に近い状態
である。接触痕の残っている右下部に接触端部ピッチングが発生しており,この位置は歯元部(図の下側)
で相手大歯車の歯先りょう(稜)とかみ合い,かつ,大歯車の歯の端部とかみ合っている部分である。
この歯車の歯は,モジュール3.3,ねじれ角13°のはすば歯車である。この図のピットは比較的大きい
が,もっと小さいことが多く,目視検査で見逃しやすい。

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2.6.2
マイクロピッチング(micropitting)
表面硬化歯車の加工目の畝の高い部分に生じる,加工目のピッチ幅を超さない程度の小さなピット。
このピットは,ルーペを使うなど十分な注意を払わない限り,目視では見逃してしまうほど小さい。し
かし,マイクロピッチングは発生し始めると,負荷繰返し数とともに増加する場合が多く,ある領域がピ
ットで埋め尽くされると,白く梨地(すりガラス,マット)状になり,肉眼で判別できるようになる。こ
うした状態をフロスティングという。
マイクロピッチングは小さいので,その単発的な発生は歯車の寿命及び性能に影響を及ぼすことはない
が,ピットが累積されてフロスティングになると歯形を著しく悪化させて振動を誘起させるなどの問題が
生じ,またピットを形成させる亀裂が歯面から内部へと進行してフレーキング又は歯の疲労折損を招くこ
とがあり注意を要する。
マイクロピッチングはピッチングと比較すると,その大きさを除いて酷似するが,その発生位置におい
て,ピッチングはほぼ歯元領域に限定されるのに対し,マイクロピッチングは歯先領域でも発生する。
図50−マイクロピッチングの例 [1]
図50は,マイクロピッチングが発生している歯面の拡大図である。横向きの黒い線は研削仕上げした加
工目の溝であり,白い部分は擦られて平たんになり輝いている加工目の畝部に相当する。その白い部分に
米粒状の黒点が横に並んでおり,これがマイクロピッチングである。
この状態では点検で異常とみなす徴候が認めがたく,往々にして見逃すことが多い。しかし,高速回転
のものでは,数箇月,数年単位で作用歯面がマイクロピッチングで埋め尽くされ,運転に異常を来すおそ
れがある。

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図51−マイクロピッチングのSEM写真の例 [1]
図51は,マイクロピッチングの拡大図で,SEM写真の例である。被動歯車の歯元領域で,上方にピッ
チ点がある。図中央の大きなピットの中央上部は,このピットの発生起点となっている。亀裂は,ピット
内部を扇状に進展したのが貝殻状の模様から読み取れる。
一番下のピットの亀裂発生点は,加工きずと平行な直線状をしており,上側から下側へと亀裂が進展し
ている。
なお,横方向に多くの直線が走っているが,これは加工目によるものである。
マイクロピッチングの発生を免れた領域がこの後の強当たり部となり,新たなマイクロピッチングを発
生させ,この繰り返しが際限なく継続される傾向にある。

――――― [JIS B 0160 pdf 63] ―――――

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2.6.3
フロスティング(frosting)
歯面の加工目が消えて金属光沢がなくなり,梨地状,又はにぶく曇った状態になる現象。
主に表面硬化歯車に見られ,見た目には肌荒れもなく,異常を感じさせない。しかし,歯形計測すると
摩耗していることが分かる。フロスティングが発生し始めると,その発生が継続するので,歯面の摩耗は
進行し,歯形を著しく劣化させるようになる。そのため,振動を発生させる原因となったり,歯形劣化に
伴う,各種損傷を誘発させる。
フロスティングは目視できないほど小さなマイクロピッチングが多発し,歯面のある領域を埋め尽くし
た状態であり,光の反射具合が変わることから,その発生領域が分かるようになる。このマイクロピッチ
ングを起こした歯面には亀裂の発生していることも多く,これがフレーキング,スポーリング,歯の折損
などの遠因となることもある。
図52−フロスティングの例1 [1]
図52は,まがりばかさ歯車の歯面に発生したフロスティングの例で,歯面中央部の白い島状部分が該当
する。フロスティングの発生領域内に大きなピットが見られるが,これはマイクロピッチングの亀裂が進
展して生じたフレーキングである。多くは,フロスティングだけが発生し,光沢の具合をよく観察しない
と,異常と気付かないで見逃してしまう。

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a) b)
図53−フロスティングの例2 [1]
図53 a) の歯面の白い部分が,フロスティング又はマイクロピッチングである。二つの大きな島状部分
がフロスティングの進行した領域で,この状態で最大10 μmの摩耗深さが観察されている。二つの島の間
がピッチ点で,損傷量は少ない。
島部から外れて右側に白い点が数条横たわっているが,これは粗さの突起部に並んで発生したマイクロ
ピッチングである。
島部の右端の境界付近を拡大したのが図53 b) である。この図では,マイクロピッチングと称するピッ
トが黒く,この時点で表面と称する高い凸部が輝いて白く写されている。この白い部分に次のピットが発
生し,これが時間とともに繰り返され,順に歯面が摩耗する。
なお,横方向に走る細線は加工目の溝部であり,線の消えたことは粗さの大きさ程度の量が,既に摩耗
したことを意味する。

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  • ISO 10825:1995(MOD)

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