JIS B 0160:2015 歯車―歯面の摩耗及び損傷―用語 | ページ 15

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2.7.1.2
ピッチ点付近疲労亀裂(fatigue cracks in pitch line zone)
疲労によって,ピッチ点近傍から入る亀裂。
歯全体が硬く,衝撃値が低い歯車及び方向性の極めて強い歯車では,ピッチ点周辺から亀裂の入ること
がある。また,内歯車では,ピッチ点付近の応力が歯元すみ肉部の応力と同じ程度になるものもあり,ピ
ッチ点付近から亀裂の入ることがある。
a)
b)
図58−ピッチ点付近疲労亀裂の例 [1]
図58 a) の中央の歯のピッチ点近傍に亀裂が見られる。この歯車を端面側から見たのが図58 b) である。
図58 b) は,歯の右側が作用歯面で,そのピッチ点近傍辺りに亀裂が発生し,歯面に対し45°方向に進展
し,その後反作用面の歯元に抜けている。亀裂発生時の侵入方向は歯面にほぼ直角に入ることもある。こ
の歯車は,オーステンパダクタイル鋳鉄製であり,このようなピッチ点近傍からの亀裂はじん(靱)性が
乏しい材料の場合にしばしば見られる。

――――― [JIS B 0160 pdf 71] ―――――

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2.7.1.3
ピッチング起点疲労亀裂(fatigue cracks from pitting)
ピッチングを起点として歯面に発生する亀裂。
ピッチングは,歯の表面又はその極めて近傍から入る亀裂が表面層をえぐって,歯面にくぼみを生じる
現象であるが,ときにはその亀裂が内部に向かうことがある。こうした内部に向かう亀裂がまれに進展し,
歯の折損に至ることがある。歯面にピッチングが多く発生すると,歯形が崩れた形になり,動的な荷重が
増加し,亀裂の進展を容易にする。鋳鉄などじん(靱)性の乏しい材料の場合に見られる。
a)
b)
図59−ピッチング起点疲労亀裂の例 [1]
図59 a) 及びb) は同じ歯車を別の角度から見たものである。亀裂を見やすくするためにカラーチェック
が施されており,亀裂が実際より際立って太く見える。図59 a) は右歯面が作用面で,ピッチ点付近から
亀裂が入り,反作用面である左側歯面の歯元へと進展している。この歯車の作用歯面側から見た写真が図
59 b) である。ピッチングが一列に並んで発生しており,その線上に亀裂が走っている。

――――― [JIS B 0160 pdf 72] ―――――

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2.7.1.4
スポーリング起点疲労亀裂(fatigue cracks from spalling)
スポーリングを起点として歯面に発生する亀裂。
歯面が接触したとき,接触に伴うせん断応力の極めて高い部分が表面から少し内部に入ったところにあ
り,その領域で材料強度を超すと亀裂が発生する。この亀裂が進展すると,一部が表面に顔を出し,スポ
ーリングを形成するようになる。また,ごく浅い表面層だけ硬い場合には,内部歪みのために表面層の硬
い部分にひび割れを生じ,内部亀裂と結びついてケースクラッシングを発生させる。こうした亀裂が内部
へ進展すると歯の折損に至ることがある。
図60−スポーリング起点疲労亀裂の例
図60は,窒化小歯車の歯面で,接触線に沿って亀裂が多数生じている例である(左上から右下へ向かう
点々とある白い棒状のもの)。

――――― [JIS B 0160 pdf 73] ―――――

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2.7.1.5
フレッチング起点疲労亀裂(fatigue cracks from fretting)
スプライン継手のようなかみ合い運動をしない歯面間の運転中の微小な相対運動に起因するフレッチン
グを起点とする亀裂。
このフレッチングを起点とする亀裂の発生箇所は,相手の歯の側端と接触する歯幅の広い方の歯面であ
る。
a)
b)
図61−フレッチング起点疲労亀裂の例 [1]
図61 a) は,インボリュートスプラインの歯の端部に発生した亀裂が,歯の左側側端近くの歯車の全周
に及んでいる例である。フレッチングが全ての歯に起きており,発生領域との境界に沿って亀裂が走って
いる。よく観察すると,フレッチング発生部にもそれと平行な亀裂のあることがある。図61 b) は,図61
a) の歯の左端の亀裂発生部のすぐ右側を拡大したもので,約45°の角度で3本の亀裂が見える。黒い部
分がフレッチングを起こした部分である。

――――― [JIS B 0160 pdf 74] ―――――

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2.7.1.6
材料欠陥起点疲労亀裂(fatigue cracks from material defects)
材料欠陥を起点として歯面に発生する亀裂。
材料欠陥には,素材そのものの欠陥,熱処理工程によって発生するもの,そのほかに製造後の作業中に
何らかの形で素材に影響を与えて発生するものがある。
図62−材料欠陥起点疲労亀裂の例
図62は損傷した歯車の状況をスケッチした図で,矢印Aのところに亀裂が認められ,その亀裂は歯先
端部の変色している矢印Bの周りに沿って発生している。調査の結果,この変色部は周辺のマルテンサイ
ト組織が変化し,非晶質状態になっていることが分かった。この歯車は航空機用で,定められた点検プロ
グラムに従って,非破壊法による亀裂の定期検査が行われた。検査方法に通電方式による磁気試験が実施
された。その際に熱作用として組織変化による材料欠陥が生じ,亀裂の発生を招いた。

――――― [JIS B 0160 pdf 75] ―――――

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JIS B 0160:2015の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 10825:1995(MOD)

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