JIS B 0160:2015 歯車―歯面の摩耗及び損傷―用語 | ページ 16

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2.7.1.7
熱割れ(thermal cracks, heat cracks)
歯面間の滑りが大きいところで接触圧力が高くなったときに,表面に滑り方向と直角な方向に発生する
亀裂。
この亀裂はほぼ等間隔になりやすい。
浸炭硬化したウォームの歯面など,表面硬化した歯面の硬化層が大きな摩擦熱を受けるとき熱衝撃で発
生しやすい。潤滑不良が原因となることも多い。
図63−焼割れの例 [1]
図63は,ウォームに発生した熱割れの例で,中央部の歯面にほぼ等間隔で放射状の真っすぐな線として
亀裂が見られる。亀裂は,カラーチェックによって見やすくされている。
相手のウォームホイールにも同様な亀裂が入ることがある。

――――― [JIS B 0160 pdf 76] ―――――

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2.7.2
欠け(chipping)
歯先又は歯の端部に生じた局部的な損傷。
高硬度材料を用いたとき又は浸炭硬化層が歯の頂部幅に比べて深く入りすぎている場合に,起きやすい
傾向にある。セラミック歯車では,この種の破壊が最も顕著に生じる。歯先りょう(稜)部の欠け又は歯
の端部に生じた欠けから発生した亀裂が歯の折損をもたらすこともある。
歯の頂部の欠けは,激しい衝撃的な荷重がかかったとき,異物をかみ込んだとき,内部に強大な引張り
の残留応力が発生したとき,などに起きやすい。表面疲労に誘起される場合もある。
なお,欠けのうちでも特に小さなものはマイクロチッピングとして扱われる。
図64−欠けの例 [1]
図64は,遊星歯車の内歯車歯先に発生した欠けの例である。上側の歯の歯先りょう(稜)が歯幅の半分
近く欠け,白く見える。歯面の滑り方向がピッチ点から歯先に向かう条件で起きやすい。また,歯先の角
を面取りしない場合,又は歯形勾配誤差で歯先側が張り出す場合に歯先りょう(稜)の欠けが発生しやす
い。

――――― [JIS B 0160 pdf 77] ―――――

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2.7.2.1
マイクロチッピング(microchipping)
目視でしばしば見逃してしまうような小さな欠け。
浸炭焼入れなどをして硬さを高めた歯車では,歯の側端が接触する場合に発生することがある。こうし
た欠けはマイクロクラックを伴うことが多いので,歯面荷重の高い場合,その亀裂が進展して歯の折損に
至ることもある。
図65−マイクロチッピングの例 [1]
図65は,大歯車の歯先端部を拡大したもので,側端の面取りりょう(稜)部にマイクロチッピングが発
生している例である。相手の小歯車の歯幅がこの大歯車の歯幅より広くとられており,図のような歯側端
りょう(稜)部が強く接触し,欠けが生じた。歯車の負荷量を大きく取るにつれ,このような小さな亀裂
が歯の折損をもたらすことがある。

――――― [JIS B 0160 pdf 78] ―――――

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2.8
折損(tooth breakage)
歯全体又は歯の一部が欠落する損傷形態。
折損は,過負荷又は耐久限以上の応力がかかることによって生じる。こうした原因には種々の場合があ
る。設計意図に反して予期しない高いトルクがかかったり,材料強度が低い場合もあるが,ほかに,表面
疲労,欠けなど何らかの損傷による亀裂が進展する場合,歯形の経時変化などによる動的荷重の増加,加
工不良による応力集中などがある。したがって,損傷原因を追及するに当たっては,歯面観察などをつぶ
さに行い,歯の折損に至る最初のきっかけを明らかにしていかなければならない。
折損した破面の状況から,更に次の4種に細分化される。
− 過負荷折損
− せん断折損
− 塑性流動破断
− 疲労折損
2.8.1
過負荷折損(overload breakage)
僅かな回数の著しい過負荷によって発生する損傷。
このような過負荷が働いた場合,又は材料強度が雰囲気の影響などで低下した場合には,歯が塑性変形
してしまうこともあるが,そのようにはならないで,歯が折損してしまう損傷形態をいう。
過負荷折損は,破壊の損傷形態によって次の3種類に細分化される。
− ぜい性破壊
− 延性破壊
− 半ぜい性破壊
ぜい性破壊と延性破壊との違いの概略を表2に示す。
表2−ぜい性破壊と延性破壊との違い
破断面の評価特性 破断面の性格
ぜい性破壊 延性破壊
光の反射具合 きらきらしている。 灰色がかって,暗い。
光っている。 くすんでいる。
表面の形状 結晶的 絹状
粒状 マット状,繊維状
荒々しい 滑らか
きめが粗い。 きめが細かい。
方位性 主応力方向と平行,又は直角 主応力方向と傾斜,又は平行
模様 放射状にできる畝,又は シヤー・リップ,又は
リバーパターン,シェブロン,ディンプルパターン,蛇行滑り,
ヘリングボーン ストレッチング模様
塑性変形 ほとんど見られない。 顕著に見られる。
(くびれ,ゆがみ)
顕微鏡観察 へき開破壊 せん断形破壊,ディンプル

――――― [JIS B 0160 pdf 79] ―――――

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2.8.1.1
ぜい性破壊(brittle fracture)
金属組織の粒内のへき開面及び粒界を塑性変形することなく進展していく破壊。
へき開面に沿って破壊した場合,その面はしばしばきらきらと輝いて見える。破断面は,主応力方向に
平行か又は垂直となる。破断面には,亀裂の発生方向に向かった畝又はシェブロンパターンが見られる。
材料の衝撃値が低い場合に生じる。
図66−ぜい性破壊の例
図66は,かさ歯車の小歯車の全部の歯が歯元から切断されたぜい性破壊の例である。過剰浸炭によって
歯の内部まで浸炭され,歯の衝撃値が減少したために,それほど高くない荷重で簡単に折損した。破面の
大半が粒状になり,荒々しい。

――――― [JIS B 0160 pdf 80] ―――――

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